映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「きみの鳥はうたえる」 柄本佑&染谷将太&石橋静河

2018-09-20 21:11:47 | 映画(日本 2015年以降主演男性)
映画「きみの鳥はうたえる」を映画館で観てきました。


函館出身の作家佐藤泰志の芥川賞候補作品「きみの鳥はうたえる」の映画化である。原作は未読。海炭市叙景、そこのみにて光輝く、オーバー・フェンスと佐藤泰志原作の映画化作品はいずれも傑作であった。函館の町を舞台に社会の底辺をさまよう人たちに存在感を持たせる。今回も期待して映画館に向かう。

結果としては、前の3作ほど良くはなかった。でも、この映画でも若い3人の若者が函館の街に放たれている。寂れつつも独特の存在感を持つ函館の街の匂いが映画全面に漂う。クラブやビリヤード場の映像は今までの作品になかったところ、猥雑で喧噪な若者のたまり場に流れる雰囲気はいい感じだ。函館山や路面電車を3人のバックの映像にチラチラ登場させるのを見ると、直近に三度函館で遊んだ自分はなんかわくわくしてしまう。

調べると、この題ってビートルズ「And your bird can sing 」の日本語訳ですってね。アルバム「リヴォルバー」の中にあるジョン・レノンの曲、ジョンとジョージのツインギターで軽快に始まるジョン・レノンのヴォーカルが印象的な自分の好きな曲だけど、映画の中じゃ全然流れなかったなあ。全く気づかなかった。


函館郊外の書店で働く「僕」(柄本佑)は、失業中の静雄(染谷将太)と小さなアパートで共同生活を送っていた。ある日、「僕」は同じ書店で働く佐知子(石橋静河)とふとしたきっかけで関係をもつ。彼女は店長の島田(萩原聖人)とも抜き差しならない関係にあるようだが、その日から、毎晩のようにアパートへ遊びに来るようになる。こうして、「僕」、佐知子、静雄の気ままな生活が始まった。


夏の間、3人は、毎晩のように酒を飲み、クラブへ出かけ、ビリヤードをする。佐知子と恋人同士のようにふるまいながら、お互いを束縛せず、静雄とふたりで出かけることを勧める「僕」。

そんなひと夏が終わろうとしている頃、みんなでキャンプに行くことを提案する静雄。しかし「僕」は、その誘いを断り、キャンプには静雄と佐知子のふたりで行くことになる。次第に気持ちが近づく静雄と佐知子。函館でじっと暑さに耐える「僕」。3人の幸福な日々も終わりの気配を見せていた……。 (作品情報引用)


アパートで同居する男2人に女の子が絡まる函館が舞台の青春映画、僕と佐知子が何気ないきっかけでぐっと近づいていく。2人が働く本屋の店長と付き合っていたのに、佐知子は気がつくと若い僕との付き合いが楽しくなる。僕の同居人の静雄も加えて夜通し遊んでいくうちに静雄にも情が移る。三角関係になるわけだ。でも、激しい葛藤があるわけではない。淡々とストーリーが流れる。起伏の少なさが若干物足りない。

石橋静河がいい。石橋凌と原田美枝子の娘と聞くと驚くが、何となく面影はある。かわいい。ここでは柄本佑と軽い絡みを見せるが、バストトップは見せない。若くして大胆に脱いだお母さんとは違うなあ。母娘バストの形は似るというが、24歳だからかまだ出し惜しみだ。


クラブのシーンでは、ソロで踊ったりする。うまいというわけではないが、まあ味のあるダンスを踊っていると思ってプロフィルを見たら、一応はダンサーという肩書きもあるんだね。萩原聖人演じる中年の店長と不倫関係にあるという設定だけど、不自然さがない。大人びている。親も親なんでませた人生送ってきたんだろう。この若い2人がともに好きになってしまうような女の子ってこんな感じなのかな。最後の余韻は悪くない。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「万引き家族」 是枝裕和&リリー・フランキー&安藤サクラ、

2018-06-03 17:06:27 | 映画(日本 2015年以降主演男性)
映画「万引き家族」を映画館で観てきました。

カンヌ映画祭パルムドールを受賞した是枝裕和監督の作品である。先行公開であるが、当然映画館に向かう。題名からして社会の底辺の人たちを描いているのは読み取れる。しかし、この家族は本当の家族ではない。かといって、園子温の「紀子の食卓」の『レンタル家族』とも違う。リリー・フランキー、安藤サクラ、樹木希林の3人がそろっただけで映画の質の高さが想像できる。

いきなりスーパーでリリー・フランキーと息子と思しき子供がコンビを組んで、監視員の目をかいくぐり巧みに万引きを成功させるシーンが映し出される。観客にまず印象付けるのだ。家ではその成果品を持ってくるのを待っている昭和の匂い漂う古家に住む3人の家族がいる。一連の是枝作品と似たような展開と感じながら、話の流れを追う。

再開発が進む東京の下町のなか、ポツンと残された古い住宅街に暮らす一家。日雇い労働者の父・治(リリー・フランキー)と息子の祥太(城桧吏)は、生活のために“親子”ならではの連係プレーで万引きに励んでいた。

その帰り、団地の廊下で凍えている幼い女の子を見つける。思わず家に連れて帰ってきた治に、妻・信代(安藤サクラ)は腹を立てるが、ゆり(佐々木みゆ)の体が傷だらけなことから境遇を察し、面倒を見ることにする。祖母・初枝(樹木希林)の年金を頼りに暮らす一家は、JK見学店でバイトをしている信代の妹・亜紀(松岡茉優)、新しい家族のゆりも加わり、貧しいながらも幸せに暮らしていたが……。 (作品情報引用)


最近話題の幼児虐待もこの映画のポイントだ。団地の外でたたずむ少女の身体にはやけどの跡がある。きっと食べ物をろくに食べさせてもらえないのかと感じ、家に引っ張り思い切り食べさせると、夜にうんこを漏らしてしまう。自宅に返そうとしたら夫婦喧嘩の声を聞き、もう一度戻してしまう。これも一種の誘拐だが、これを見て悪いことをしていると感じる観客もいないだろう。ときおり、幼児虐待の事件をテレビニュースで観て、なんと無責任な奴らと感じるが、かわいそうなのは子供である。


フランスの著名な新聞『フィガロ』がカンヌパルムドールという栄誉ある賞の受賞を安倍総理大臣が祝福しないのはおかしいという記事を書いている。しかし、この映画を見ていて、政治が悪いからこんな奴らがいるんだという主張があるようには見えない。社会のひずみでこういうドロップアウトした連中というのが一定数必ずいるもんだ。これは古今東西必ずいるわけで、政治のせいでも何でもない。格差社会というなら、その昔はもっと貧しく、こういう人たちはもっといた。安倍さんも気にせずに祝福すればいいのにと思う。それともバカな昭恵夫人の一言余計なパフォーマンスを恐れているのか??

印象的なシーンがいくつかあった。柄本明が営む駄菓子屋でよく翔太が万引きをしていた。今回もつれてきた女の子と一緒に店に入ってきて、女の子が万引きをする。見て見ぬふりをしていた店主も、「妹にこんなことをさせるなよ」とアイスキャンディーをよこすシーンがある。これをきっかけに翔太に心境の変化が起こる。脳裏に残るシーンだ。

あとは、リリーフランキーと安藤サクラがちょっかい出しながら、くっついてしまうシーンだ。油がのった30代の熟れた身体をあらわにする安藤サクラもなまめかしいが、子供たちが帰ってきて真っ裸の2人が大慌てするシーンがおかしい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「孤狼の血」役所広司と松坂桃李

2018-05-23 20:01:13 | 映画(日本 2015年以降主演男性)
映画「孤狼の血」を映画館で観てきました。

昭和の広島を舞台にしたやくざ映画というと「仁義なき戦い」を連想する。しかも、白石和彌監督の一連の作品「日本で一番悪い奴ら」「彼女がその名を知らない鳥たち」はいずれも自分もお気に入りだ。今回は広島県の架空の街呉原市のマル暴担当刑事の2人役所広司と松坂桃李が主人公、それを江口洋介、真木よう子、石橋蓮司、ピエール瀧などが脇を固める。観てみると、予想以上におもしろい。ストーリーは単純そうで、そうはならない意外性がある。

昭和63年、広島の呉原では暴力団組織が街を牛耳り、新勢力である広島の巨大組織五十子会系「加古村組」と地元の「尾谷組」がにらみ合っていた。ある日、加古村組関連の金融会社の社員が行方不明になる。ベテラン刑事の刑事二課主任・大上章吾(役所広司)巡査部長は、そこに殺人事件の匂いをかぎ取り、新米の日岡秀一(松坂桃李)巡査と共に捜査に乗り出す。


いきなり養豚場が映し出され、若い男がリンチにあっている。豚のクソを食べさせられたり、ひどいもんだ。指を詰められたりした挙句殺される。これが金融会社の社員だ。その人間が行方不明になり、マル暴の2人が動き出しているが、怪しいと思われる組関係者はなかなか口を割らない。携帯電話のない黒電話で、捜査員たちがたむろう部屋では机でみんなタバコを吸っている。いかにも昭和らしい猥雑な雰囲気の中話が進んでいく。

1.「ベテランと未熟者」の対比を描く刑事もの
若い刑事とベテラン刑事がチームを組んで犯罪捜査にあたる。このパターンは古今東西の警察アクション映画の定番だ。日本でいえば、黒澤明監督「野良犬」志村喬と三船敏郎のコンビ、デンゼルワシントンが悪徳刑事を演じてアカデミー賞主演男優賞を受賞した「トレーニングデイ」が自分のお気に入りだ。いずれも「ベテランと未熟者」の対比を見事に描いている。


この映画はむしろ「トレーニングデイ」に近い。役所広司の悪徳刑事ぶりが、麻薬組織の元締めに入り込み、金や麻薬を平気で横領するデンゼルワシントンの腐敗刑事ぶりに通じる。銃を乱射し、イーサンホンク演じる若い刑事に平気で強い麻薬を吸わせる。ここではいつものデンゼル・ワシントンと違い徹底的にワルに徹していた。多分作者は影響を受けたのではないか?

2.役所広司の悪徳刑事ぶり
ヤクザから平気で金をもらったり、捜査のためには平気で放火したり家屋に不法侵入する。行方不明の男を探してくれとやってきた女を取調室でやってしまう。このパフォーマンスは深作欣二監督、菅原文太主演「県警対組織暴力」で、松方弘樹演じるやくざ組織の幹部とつるみ、若いヤクザを手玉に取る刑事ぶりを思わず連想してしまう。


県警本部から派遣された松坂桃李演じる若い刑事は、本当は役所広司演じる刑事を内偵するように本部の警視から指示されている。いい加減で腐敗に満ち溢れている大上刑事に嫌気がさし、何度も処分してくれと警視に訴えるが、大上刑事は泳がされたままだ。そして行為もエスカレートしていくのだ。ヤクザがペニスに入れ込んだ真珠を素っ裸にして抜き取ってしまうシーンには笑える。

それを演じる役所広司もうまい。深作欣二作品での菅原文太よりも悪い存在かもしれない。やりすぎという感じもあるが、ワルを演じる役所広司の存在が強烈なスパイスとなって効いてくるのだ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「素敵なダイナマイトスキャンダル」 柄本佑&前田敦子

2018-04-18 17:58:44 | 映画(日本 2015年以降主演男性)
映画「素敵なダイナマイトスキャンダル」を映画館で観てきました。

昭和のエロ雑誌編集長末井昭の自伝の映画化である。ダイナマイトというのは主人公が子供のころ、母親が隣家の男とダイナマイトで心中をしたというところから出ている。母親が自殺したことは主人公のトラウマになっていたが、大人になってからダイナマイトでの心中が他人との話題のネタになっているので自虐的に取り上げた題名のようだ。


ピンサロの看板描き、エロ本、パチンコ必勝法雑誌の編集とともに主人公の歩んできた人生を描く。バックで示す昭和の猥雑な風景から独特の匂いが立ちこめている。昭和の風呂なしアパート、昭和20年代を感じさせる平家木造家屋、場末のホテルでのエロ雑誌撮影風景、ピンサロで半裸の女と客が抱き合う姿などが次から次へと出てくる。なかなかおもしろい。柄本佑はコミカルな動きをしていて好演、裸になってピンクのペンキを頭からかぶって道路にペインティングする。おかしい!妻役の前田敦子もかわいらしい妻を演じている。

まずは主人公末井(柄本佑)がエロ雑誌の露出度が強いと警察署で幹部(松重豊)に絞られているシーンからスタートする。


そのあとで、末井の回想がはじまる。1955年末井が育った岡山の山村エリアを映す。のどかなところだ。そこで末井の母親(尾野真千子)が隣家に住む男とダイナマイト自殺を図る。父親と懸命に方々探したのにあったのは粉々になった死体であった。その後、近所で白い目で見られたので1965年学校を出ると、すぐさま工員になるべく大阪に向かう。

大阪では徒弟状態でこき使われて、すぐさま川崎に出稼ぎに出ている父親のもとへ移る。川崎の工場も封建的な状態であった。父親は荒れた生活をしているので、イヤになり1人住まいをする。牛乳配達をしながら工員をやっていた。そのころ同じ下宿先で牧子(前田敦子)と出会う。そのあと、グラフィックデザインの専門学校に通学した後、デザイン会社に勤める。そこで仲良くなった先輩が描いたキャバレーの看板に魅せられ、キャバレーの広告作りに職を得て勤め始める。


独特なエロなタッチが受けて、ほかのピンサロからも描いてくれと言われる。そのあと、エロ雑誌の編集長になる。エロ写真に交じって、有名著述家からの書いた原稿が入った変わったエロ雑誌作りで次第に人気雑誌となるのであるが。。。


学校秀才でない裏街道まっしぐらの人物の話は楽しい。エロ雑誌サブカルチャー世界では成功者であろう。ピンサロ看板からエロ雑誌編集と少しづつ生活をランクアップさせている。自分の記憶にはないが、「写真時代」は30万部超も売れたようだ。羽振りもよくなる。そういう下半身産業での成長?物語にトラウマになったダイナマイト事件当時の映像を混ざらせ、雑誌社の新人社員との浮気や商品取引での大失敗や飲み屋のママからの無尽につきあって店の改装に散財させられるなどの荒れた生活も描いている。


こうなりたいという人物ではない。でも見ていて楽しい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「くも漫」

2018-02-12 19:28:22 | 映画(日本 2015年以降主演男性)
映画「くも漫」は2017年公開の日本映画


中川学の漫画の映画化である。なんとなく面白そうという感覚で観た。低予算がにじみ出る構成だが確かに笑える。自閉症の子供を担当する代用教員が、遊びに入った風俗店でくも膜下出血になってしまう。幸い命に別状なく回復するが、どこで倒れたということもなかなか言い出せずにいることを面白おかしく語る。

29歳の中川学(脳みそ夫)は長年のニート生活を経て、父親(平田満)のコネでようやく教育現場の職を得る。初めて人生の歯車がかみ合い始めた高揚感と抑えきれない性欲から風俗店へと繰り出す中川。ところがNo.1風俗嬢ゆのあ(柳英里紗)から最高のサービスを受け、絶頂を迎えようとしたまさにその瞬間、中川はくも膜下出血を発症してしまう……。


やがて完治率わずか30%の病から生還した中川は、風俗店で倒れたことをひたすら周囲に隠そうとするのだが……。 (作品情報より)

小品だけどいい感じだ。
中学の教員だったけど、生徒たちに相手にされず、逆登校拒否で引きこもりになる。父親の紹介で自閉症の子相手の特殊学級で教えはじめ、最初はうまくいかなかったが、ようやくなついたことで自分へのご褒美で風俗に抜きに行く。最初はババアがでてきて、これじゃ無理だと店をかえていくと今度はかわいこちゃんだ。


いわゆる地方都市の転勤もしてきたけど、人口10万程度の街であれば、商店街の一角にこういう風俗街がある。救急車で運ばれた病院で手術をうけ、両親が見守る中、九死に一生で助かる。ヘルス嬢は洋服をたたんで渡してくれたが、靴は忘れたままだった。それを母親がおかしいと言い出す。何で靴がないの?商店街で倒れたなら、どこかにあるはずだと。ヘルスに行かれたらヤバいとひやひやする主人公だ。

親戚も見舞いに来てくれたが、何かおかしいと言い出す。それにもドッキリだ。こんな話が続くわけだが、とにかく笑える。

年末、大宮のソープで火事があり、お客とソープ嬢が焼け出されてしまう悲しい出来事があった。いわゆる大宮北銀座で中山道の街道沿いを少しづれたエリアにある。おそらくは江戸の昔から宿場で遊郭があったのであろう。もはや、建て替えもできないところだから、いったん火事となると閉塞的な空間から逃げ出すことができず、こういう悲劇になってしまう。ちょっと抜きにというのは元気な男性諸氏の生理的行為だが、こんな話があると怖くなってしまう。

ここではクモ膜下出血の大病で倒れてしまう。先ほどの話同様にこんなことになったら、ヤバいなあと思うが、それでも血気盛んな男性たちは懲りずに行くでしょう。


それにしてもこの風俗嬢実にかわいい、本当にやさしそう。。といっても普通の女性にはこの気持ちわからないだろうなあ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「あゝ荒野 後編」 菅田将暉&ヤン・イクチュン

2017-10-27 19:16:49 | 映画(日本 2015年以降主演男性)
映画「あゝ荒野 後編」を映画館で観てきました。


前編はなかなかの出来であった。当然、観に行かねばと思い、超満員の映画館に向かう。上映館が少ないので混んでいるなあ。前編の鑑賞後で、寺山修司の原作を購入したが、後編をみるまでお預けで2時間半を超える長丁場に向かう。

会社のある新宿高層ビル街でのトレーニングシーンが目立ち、見慣れている光景に気分が高揚する。因縁の相手との対決で気分を盛り上げ、バリカンの予想外の展開に身を任す。最後に向けては原作に忠実であるが、ちょっとやりすぎじゃないという感じもする。

前編のほうがよかったんじゃないかな?上映時間が長時間になるのは、原作にない部分の設定が多すぎるからではないか。因縁の相手である裕二を設定するのは仕方ないとしても、どうでもいいデモのシーンとかバリカンの父親を元自衛隊員にしてしまうのはあんまり褒められたものでもない気もする。

プロのボクサーとして着実に力をつけている新宿新次(菅田将暉)は、少年院に入る前に裏切りにあった因縁の相手・裕二(山田裕貴)との対戦が決まり、片目(ユースケ・サンタマリア)やトレーナーの馬場(でんでん)とともにトレーニングをはじめる。そのころ、母(木村多江)から兄貴分のバリカン建二(ヤン・イクチュン)の父が自分の父を死に追い込んだことを知らされる。それでも、特に変化なくバリカンと付き合いを続ける。


そのころ、海洋ボクシングジムのオーナーである宮本社長(高橋和也)はジムの地主石井(川口覚)から土地有効活用に絡んで、ジムの立ち退きを要求されていた。宮本は石井を誘ってジムの実情を説明しようとする。そこで、バリカンの戦いぶりと人柄に惚れ、石井はバリカンにある提案をする。

そして、新宿新次は裕二との対戦を迎える。試合場でセコンドに入るはずのバリカンがいないことに気づく。バリカンは石井の紹介でジムを移籍したのだ。新次はわれを忘れて裕二に立ち向かう。

バリカンは移籍後力をつけていく。しぶとい戦いを続け連戦連勝だ。もともと自殺研究会のリーダーの彼女(今野杏南)の窮地をあることで救っていた。バリカンへの感謝をこめて試合を見に来るようになったこの美しい女性が童貞のバリカンに引き寄せられるのであるが。。。

1.白熱のファイト
新宿高層ビル、大久保の裏小路、大久保から高田馬場へ向かう道で新次とバリカンはランニングを続ける。そして、うらびれたジムで徹底的に体を鍛えて試合に臨む。少年院に行く前に裏切りにあった裕二は原作にはない。原作では少年院にどうして入ったかは言及されていない。この設定はオリジナルだが、いきなり新次対バリカンになるよりは1つのピークを作るという意味でいいのではないか。
ただ、この試合の内容はいただけない。裕二に対して、恨みがあるのはわかる。殺したい気持ちになるのもわかる。でも、ボクシングルールを無視したような動きはよくない。亀田甲毅がタイトル戦で反則したときの動きのようだ。減点はあれど、試合は続く。これってちがうんじゃない?これで勝負がつくというのは変じゃない??

2.宮本社長の取り扱い
原作を読むと、 宮木社長(原作では本でなく木)はスーパーの経営者ということになっている。しかも、宮木社長の手記なんかもとりあげられている。昭和41年当時は価格破壊でスーパーマーケットがいちばんの成長株だったわけだ。今はリアル店舗がネット通販に押されているときで、スーパーをクローズアップはできない。映画での宮本社長は介護施設やボクシングジムを経営している。介護というのは補助金目当てにまじめな仮面をかぶった裏の奴らも参入する現代のビジネスかもしれない。うさんくさい顔をさせると、高橋和也はうまい。


原作と共通する場面は、新次が宮木社長のオナニーを偶然に見てしまうということ。このコミカルな感じも演じる高橋和也のうまさが光る。どこで新次に見られるかということは原作を読んでいない人へのお楽しみにしておく。

3.ヌード三景
一作目で菅田将暉とやりまくっている木下あかり のベットシーンは経済学の「限界効用逓減の法則」どおり一作目ほどは衝撃を受けない。 2作目ではもともと木下の母親であるという設定の河井青葉が、ユースケサンタマリア扮するジムのオーナーが通い詰める飲み屋楕円で働くということになっている。「私の男」でもヌードを見せていたが、今回もモデル出身の裸体をさらす。


そして、意外な掘り出し物があった。今野杏南である。自殺研究会のイベントで自らドローンからの攻撃を受けて亡くなったリーダーの彼女だ。それがバリカンの目の前に現れる。自殺研究会のリーダーの子を身ごもっていた彼女が流産してしまうのだ。図書館で倒れた時、そばにバリカンがいて助ける。そして、2人は近づいていき、ラブホに入る。そこで見せつける今野杏南のボリューム感タップリの美しいバストにビックリ。映画を見ていた全ての男性は思わずゴックンとしてしまったのでは?

4.原作と違う余計な設定
原作に付け加えてよかったと思える部分もあるが、変な場面も多い。どうもこの脚本家はデモとか好きなのか?東日本大震災の被災者の設定やバリカンの父親が自衛隊員とするのもどうかと思う。変に反体制の雰囲気を醸し出させるのはちょっと余計だな。ヤン・イクチュンの母国では徴兵制がある。徴兵制反対なんてプラカードを韓国の人が見たら、日本人は能天気だなと思うであろう。

寺山修司の原作は思いのほか簡潔でいい小説であった。新宿大映とか緑屋とか西口会館とか今はもうない新宿の固有名詞を見るたびに気分は高揚する。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「あゝ荒野 前編」 菅田将暉

2017-10-17 20:06:38 | 映画(日本 2015年以降主演男性)
映画「あゝ荒野 前編」を映画館で観てきました。


「あゝ荒野」は寺山修司が昭和41年に書いた長編小説に基づき、菅田 将暉が主演した映画である。現代新宿に時代の軸足を変えているが、2021年東京オリンピック後の近未来社会という前提である。

菅田 将暉は個人的に好きな俳優である。かなり出演量をこなす中で、少しづつ実力を蓄えている印象をもつ。パッションが強いインパクトのある演技ができる現代日本を代表する俳優になりつつある。一方、ヤン・イクチュンは映画「息もできない」で我々をあっと言わせた。韓国得意のバイオレンス映画である。「シーバ」の罵声を最後まで連発しながら、借金の債務者から容赦なく暴力的に取り立てる怖い男を演じた。この演技は日本でも高く評価され、キネマ旬報ベスト1となる。

そんな2人が組むのであれば、悪い映画ができるはずがない。ただ、上映時間が長いせいか、やっている映画館が少ない。新宿に向かうが、事前にネットをみると予約でいっぱいである。ひそかに人気である。さすがに2時間半をこえる長さは重いなあという感じであるが、期待通りの作品で続編を楽しみにしたいという気持ちをもって前半を見終えた。

新宿新次(菅田将暉)は振り込め詐欺の常習犯であったが、仲間の裕二(山田裕貴)に裏切られた喧嘩のあと警察に引っ張られた。2021年ようやく入った少年院を出所して、元アジトのある新宿に戻ってきた。たむろしていた喫茶店で元の相棒から、裏切った裕二がボクシングジムにいることを聞く。顔を見た途端、怒りを込めてリングに上がるが、裕二のボディパンチを浴び倒れる。


一方、新宿の床屋で働くバリカン銀二(ヤン・イクチュン)は元自衛隊の幹部を父親に持ち、母親は韓国人だが、両親は離婚している。今は酒浸りの父親と暮らしている。どもりがひどく、韓国語も日本語も不十分で、ひきこもった人生を送っている。


新次が一発食らったボクシングジムの外には、片目こと堀口(ユースケサンタマリア)がいて、自分が作ったボクシングジムの勧誘をしている。バリカンも床屋のティッシュ配りをしているところで、偶然出会う。父親の虐待につかれ、強くなりたい願望を持つバリカンがジムに向かうと、同じように新次もボクシングジムの門をたたく。ジムで2人の練習は始まった。そこにトレーナー(でんでん)が加わり、2人はデビュー戦を目指す。


登場人物がわりと多い。自殺扇動の運動家、ボクシングジムの出資スポンサーとその秘書、バリカンの父親、ラーメン屋でバイトする私設売春婦などなど。みんないい人生を送っていない。そういう話をそれぞれに小出しに出していく。内容盛りだくさんで上映時間が長時間になるには仕方ないか。そんな中でも新宿新次が街でナンパした女ヨシコ(木下あかり)の存在が雰囲気を盛り上げる。

1.ヤン・イクチュン
暴れまくっていた「息もできない」とは全く対照的な男を演じる。同一人物とは思えない。当然日本語はうまくないわけだが、どもりとはいい設定をした。ボクシングシーンも弱々しい。後半どう変わるのか?それとも破滅するのか?原作をみずに楽しみにしたい。


2.木下あかり
新次が街でナンパした女とホテル直行だ。気が付くとずっとやりまくりだ。そういう血気の強い若者の相手を受けとめる。父親がいないので、売春まがいのことをしていた母親を見て育つ。結局同じようなものだ。男と一緒にホテルに行った後、財布からこっそりお札を抜け出す。悪い奴だ。
新次との情事のあとも、なけなしのお金をもっていってしまう。でも、しばらくしてラーメン屋で新次と再会、もともとムカついていたが、意外にも似た者同士くっついていく。


経験豊富?と思しき熟れた裸体を前面にだす。気前がいい。この脱ぎっぷりの良さはいろんな映画に起用される気がする。

3.木村多江
いつもより色っぽい雰囲気だ。化粧の仕方も違う。ユースケサンタマリアがやっているボクシングジムのスポンサーの情婦(秘書)という設定である。謎めいた雰囲気を残すが、実は主人公ととんでもない関係にあることがわかる。(ネタバレなので言わない)


ただ、2021年に失業者であふれているという脚本設定になっている。これはどうかな?2017年の今、アベノミクスの効果が出て有効求人倍率はバブル水準の1.5を超えている。しかも、若者の人口減で人手不足に拍車がかかっている。経済音痴の脚本家はついついリーマン前後の悪い状況を思い浮かべるけど、ベビーブームに生まれた日本の最多人口の集団も70歳半ばでは失業者というより引退の身だし、これだけは違うんじゃないかな?映画の中身の良さとは関係ないけれど。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「アウト・レイジ最終章」 ビートたけし

2017-10-15 19:18:50 | 映画(日本 2015年以降主演男性)
映画「アウト・レイジ最終章」を映画館で観てきました。

「アウト・レイジ」シリーズもついにこれで終わりだ。前二作の痛快さは日本映画界を代表する傑作である深作欣二監督「仁義なき戦い」にも劣らない。騙し騙されというひっくり返しがテンポよく最後まで続く。暴対法ができて、町から暴力団排除の声が出て久しいが、映画界でのやくざ映画の人気が衰えないのはどういうことなのか?

アウトレイジシリーズでは、ふだんは善人の役をやっている人がもっともらしいやくざの役をやっている。「仁義なき戦い」では一度死んだやくざが続編で別の役をやるなんてことがある。さすがにここでは三浦友和も加瀬亮も椎名桔平もでてこない。やくざに密着する警察官小日向文世もでてこない。でも、たっぷりと埋め合わせる役者はそろっているし、西田敏行、塩見三省の2人も最後までどすを利かす。これもうまい。韓国系フィクサーの金田時男がいかにも政財界にも顔の利く超大物という設定どおりの風格がでている。


日本の二大勢力だった関東山王会と関西花菱会の巨大抗争後、韓国に渡った元大友組組長・大友(ビートたけし)は、日韓を牛耳るフィクサー張会長(金田時男)の下で市川(大森南朋)ら手下を従え、済州島の歓楽街を裏で仕切っている。ある日、買った女が気に入らないと日本のヤクザからクレームが入る。クレームの主は花菱会直参幹部・花田(ピエール瀧)だったが、女を殴ったことで逆に大友から脅されて大金を請求される。花田は側近たちに後始末を任せ、ひとり日本に帰国する。後始末を任された側近が張会長の若い衆を殺害してしまい、激怒した大友は日本に戻ろうとするが、張会長に制止される。


山王会を実質支配下に収める花菱会の新会長の座には、前会長の娘婿で元証券マンの野村(大杉漣)が就いていた。金さえ稼げれば何でもありという野村のやり方に、古参幹部の若頭・西野(西田敏行)は敵意を燃やしていた。西野を厄介払いしたい野村は、若頭補佐・中田(塩見三省)に若頭の跡目を取らせようと手を回すが、本心は二人を揉めさせ、いずれまとめて捨ててしまう算段だった。


一方、花田が張会長率いる巨大グループを敵に回したことを知った西野は、花菱会の会長代理として、花田を連れて張会長に詫びを入れに行くことにするが、その裏には大金を稼ぐ花田の金をむしり取ろうという魂胆があった。野村は自分の地位を守るため、この西野の行動を利用しようとするが、野村の思惑に勘づいた西野も奇策を講じる。花菱会と張グループの揉め事の裏で、野村と西野の覇権争いが始まり、事態は張会長襲撃にまで発展する。張会長の身に危険が及んだことを知った大友は、張会長への恩義に報いるため、また殺害された若い衆と、過去の抗争で殺された兄弟分・木村の仇を取るため、日本に戻る決意をする。(作品情報より)

あえてそういう名前にしたであろう野村という名の会長になった大杉漣が最後に受けるお仕置きが、映画「北陸代理戦争」で西村晃がくらうのと同じで、土の中に首だけ出して埋められて受けるのをみて笑った。


ただ、いかんせんネタ切れの感はあるかもしれない。東映映画「仁義なき戦い」の場合は役者の数が足りないから、一度は死んだ俳優をもう一度生き返した。そういう映画会社のしがらみはないとはいえ日本の役者には限りがある。「アウトレイジ」も死んだ人を生き返すようなことをやらざるを得なくなる。いい感じの潮時なのかもしれない。北野たけしの次の構想に期待したい。

アウトレイジ ビヨンド
裏切りがはびこる第二作


アウトレイジ 最終章 [DVD]
ついに終わりだ
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「三度目の殺人」福山雅治&役所広司

2017-09-18 19:34:48 | 映画(日本 2015年以降主演男性)
映画「三度目の殺人」を映画館で観てきました。


是枝裕和監督の新作は殺人犯人役の役所広司とその弁護を務める福山雅治のコンビだという。ミステリータッチのようだ。福山雅治の作品は「SCOOP」も観た。自分的には好きな作品である。是枝監督とのコンビは「そして父になる」以来である。

いきなり役所広司の殺人シーンが流れ、逮捕され福山雅治が弁護するシーンが出てくるので犯行は間違いないので、減刑に向けての話かと連想する。しかし、次から次へと新事実が出てきて役所広司と被害者家族との関係が暴露されわけがわからなくなる。映画としては上質なサスペンスだけれど、ちょっとエンディングに向けてはよくわからない?

観ているものに何かを考えさせる映画のであろうか?ちょっと消化不良のまま見終わる。

容疑者の三隅(役所広司)が以前勤めていた食品加工会社の社長を殺し、遺体に火をつけた容疑で逮捕される。三隅は、30年前にも強盗殺人の前科があった。今回有罪なら死刑は確実だ。弁護士の重盛(福山雅治)は、同僚の摂津(吉田鋼太郎)から殺人事件の弁護をひき継ぐ。腕利きの弁護士重盛は無期懲役に持ち込もうと三隅と面談を始める。


そんなおり、三隅は週刊誌に、社長の奥さんの美津江(斉藤由貴)に頼まれて保険金目当てで社長を殺したと告白した。重盛は美津江にそそのかされ殺人を犯したという方向性で、助手の川島(満島真之介)と三隅の身辺を調べ始める。すると、三隅の家に、脚の不自由な娘が出入りしていたとの話を三隅の大家から聞く。それは社長と美津江の娘・咲江(広瀬すず)だった。被害者の娘と容疑者の接点を探ると新しい事実が浮かび上がってくるのであるが。。。


演技的には申し分ない。不倫問題で世間を騒がせている斉藤由貴も彼女らしい演技でいい。ラストに向けての刑務所の面会室での役所広司福山雅治とのやり取りは緊迫感がある。これはさすが千両役者という感じである。しかし、その後の展開がよくわからない。妄想か?真実か?よくわからない殺害現場のシーンがいくつも出るので、観ている我々を混乱させる。


考えてみれば、夜の暗い河原に被害者である元社長が行くのも不自然だし、被害者の娘広瀬すずと被疑者役所広司との関係も変だ。そういう方向なの?と思っているとあっけない裁判結果になる。自分の感度が悪いのか?うーんわからない?三度目の殺人というのに殺人は2回しかない。もう一人誰か殺したという話もない。結局この題名が示す殺しの相手は。。。ということなのか!

そして父になる
是枝監督と福山雅治とのコンビ(参考記事


海街diary
是枝監督と広瀬すずのコンビ(参考記事
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「幼な子われらに生まれ」 浅野忠信&田中麗奈

2017-08-30 19:21:07 | 映画(日本 2015年以降主演男性)
映画「幼な子われらに生まれ」を映画館で観てきました。


なかなかの傑作である。浅野忠信主演の新作は、田中麗奈演じる妻と連れ子2人と暮らす男を演じる。夫婦ともバツイチで再婚、男にも前妻との間に生まれた娘がいる。微妙な年齢に育った娘の反発に戸惑う男の姿を巧みに演じる。重松清の原作をベテラン荒井晴彦が脚本化し、「繕い裁つ人」「少女」三島有紀子監督がメガホンをとる。

「映画芸術」をホームグラウンドとした批評家として一言多い荒井晴彦であるが、脚本家としては超一流である。余韻を残す間の取り方がうまい。それでも「この国の空」はそんなに好きになれなかったが、この映画ではセリフにならない情感のこもったシーンのつくり方が実にうまい。それに合わせての浅野忠信の熟練した演技がよく、女流監督による女性のいやらしい部分の見せ方もうまい。おそらくは本年屈指の作品と評価されるであろう。

東京郊外に住むサラリーマン田中信(浅野忠信)はバツイチで再婚、専業主婦の妻・奈苗(田中麗奈)と妻の連れ子2人と幸せに暮らしていた。ところが、夫婦の間に新しい子供ができたことで、連れ子の長女が猛反発するようになる。一方で、キャリアウーマンの元妻・友佳(寺島しのぶ)との間にもうけた実の娘と3カ月に1度会うことになっていた。


血のつながらない長女は子供が生まれて捨てられるのではと辛辣になり、「本当のパパに会わせて」というようになる。もともと奈苗は家庭内暴力で離婚し、長女もその被害を受けていたのにそう言われることに息苦しさを覚え始める信は、奈苗の元夫・沢田(宮藤官九郎)と会うことになるのであるが。。。


浅野忠信は好演だが、田中麗奈演じる奥さんが可愛い。いいなと思わせるシーンがいくつもある。一方で寺島しのぶ演じる元妻がいやな女だ。何で私の気持ちがわからないと元夫に言う話し方が実にいやらしい。観ていてムカつく。でもこういうセリフを女性から引き出す三島監督のうまさもあるのであろう。小学校6年生の設定という連れ子もいやな女になりきっている。

1.浅野忠信
もともとは温厚で家庭思いのサラリーマン。セリフにも定時退勤で、有休を全部消化なんて自分からすると考えられない男だ。ドロップアウトで一方通行になる子会社出向も淡々と受け入れる。インターネットの通信販売の倉庫でブルーカラー的な仕事だ。何より家族が大事と考えていたのに、連れ子の長女から強い反発を受ける。フィクションといえどもつらいシーンである。それでも冷静に抑えていたのが、ある時爆発する。その気持ちわかるなあ。


宮藤官九郎演じる妻の元夫に会うシーンがある。流れ流れて、今もまともな生活をしていない。連れ子の娘を思い、低姿勢で競艇場でギャンブルに興じる元夫に会おうとする姿はいじらしい。田中麗奈演じる妻が何で自分の娘の無謀な反発を許してしまうのか?と劇中ながら思ってしまうが、そのあとに素敵なシーンが残されている。

2.別れた娘との出会いとジーンとするシーン(ネタバレ)
寺島しのぶ演じる元妻の間に娘がいる。3か月に一回会うことになっているが、元妻の夫が余命短いことがわかり、次回の面談は遠慮してくれと言われる。でもそのことは娘に伝わらず、娘は父親に無理やり会おうとする。そこで2人は会うが、その際に元妻の夫が危篤という電話がかかってくる。ところが、突然の落雷で電車も動かない。


娘を連れて、病院まで急ぐ。そして病室まで行く。その際、浅野忠信がこん睡状態の元妻の夫に向かって「今まで娘を育ててくれてありがとう」というシーンには胸がジーンとする。

ここでは子連れの母がいずれも再婚する設定になっている。夜の飲み屋にいくと、母子家庭の母親がいっぱい働いている。まあ、今回のケースはレアなんだろうなあ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「溺れるナイフ」菅田将暉&小松菜奈

2017-07-05 18:43:42 | 映画(日本 2015年以降主演男性)
映画「溺れるナイフ」は2016年公開の菅田将暉と小松菜奈主演の作品


なんとなく気になっていた作品である。激しい暴力表現が映画の中でずっと続く「ディストラクションベイビーズ」菅田将暉と小松菜奈は共演している。髪を染めた菅田将暉の雰囲気が変だけど、「ディストラクションベイビーズ」同様地方の町でのロケ作品で小松菜奈との取り合わせがよさそうだ。それでも結局DVDスルーとなってからみた。映画が始まりしばらくして河口に映る工場と鉄橋を見てこのロケ地は和歌山の新宮だなと確信する。それがわかったとたんに次第に映画に引き寄せられる自分に気付く。


東京で人気モデルとして活躍していた望月夏芽(小松菜奈)は、父の都合で東京から遠く離れた田舎町「浮雲町」に引っ越すことになる。祖父(ミッキーカーチス)が経営する旅館に同居するのだ。そんな夏芽が神の地だという海辺の出入り禁止エリアに迷い込んだとき、髪を染めた一人の青年に出会いときめく。学校に行ってみると、その青年はなんとクラスメイトの長谷川航一朗(菅田将暉)だったのだ。彼は浮雲町の有力者の子孫だ。


転校した中学では有名人の夏芽が田舎に突然転校してくるということで同級生は大騒ぎだ。傲慢なコウこと航一朗の奔放さに戸惑う夏芽は同世代の注目を集めながら、次第にコウに惹かれ合うようになる。コウの幼馴染松永カナ(上白石萌音)や大友勝利(重岡大毅)は2人が付き合うことを応援している。コウと付き合いだした夏芽だったが、火祭りの日、突然祖父の旅館に泊まりに来ていた客がお祖父さんが倒れたとウソをつき夏芽を車に乗せ人気のない場所に連れ込もうとする。お祖父さんが倒れたのはウソだと気づき、コウは懸命に夏芽の元へ駆けつこうとするのであるが。。。


菅田将暉と小松菜奈が話すセリフはまだ未熟な中学生を思わせる稚拙な感じだけど、これはこれで仕方ないだろう。田舎町を舞台に奔放な若者をそれなりに頑張って演じている印象を受ける。

1.新宮と南紀の田舎町
高良健吾、鈴木杏主演中上健次原作の映画「軽蔑」では新宮の町がロケに使われている。商店街や路地裏まで舐めるように新宮の町を映し出していた。鈴木杏演じるヒロインがストリッパーをしていた新宿歌舞伎町との対比を際立たせる。中上健次の主たる小説の舞台である南紀新宮市は本当に遠い。東京駅から特急を乗り継いでも最短で7時間半かかる。映画の設定になっている東京から5時間ではここまでは行けない。熊野川河口に列車が走る新宮大橋があり、その向こうに北越紀州製紙の工場が見える。工場が位置するのは三重県だ。この河口に向けての風景は美しい。


歴史が古い街だけあって、城址や神社など映画のロケにはぴったりくるロケーションづくりができる。新宮市から和歌山側に南に向かい、風景のきれいな勝浦、串本方面でいい場所をピックアップして、小松菜奈と菅田将暉を巧みに風景に溶け込ませている。ロケハンティングには成功していて、映像造りは若手監督ながらうまい。

2.印象的なシーン
主演2人は期待通りの活躍であるが、目についたのはジャニーズwestの重岡大毅である。中学時代は単なる物分かりのいいクラスメイトであるが、夏芽に事件が起き、2人が別れざるを得なくなり、重岡大毅演じる大友が一気に夏芽に接近する。それはそれでうまくいくのであるが、都会育ちの夏芽が映画を撮るために田舎町を去らなければならない。そのままでいて欲しい気持ちが強い大友を振り切り夏芽が東京に向かおうとする。


別れをめぐる2人のやりとりが場末のスナックであり、あきらめた大友が吉幾三の「おら東京さ行くだ」をおもむろに歌いだす。このシーンがこの映画で一番印象に残る。コミカルな重岡大毅のパフォーマンスは結構ロングバージョンなのに飽きずに笑える。小松菜奈も本気で笑っている感じだ。平成の初め、自分も和歌山にいた。その頃行きつけた場末のスナックにあたかもいるような感じがしてきた。この感じは悪くない。それだけで映画をみた甲斐があった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「淵に立つ」 深田晃司&浅野忠信

2017-06-18 20:55:17 | 映画(日本 2015年以降主演男性)
映画「淵に立つ」は2016年公開の日本映画


カンヌ映画祭「ある視点」部門審査員賞受賞作品である。深田晃司監督作品は「ほとりの朔子」を見ている。二階堂ふみ演じる福島の田舎町を旅する浪人生が主人公の作品で、非常に感受性の強い少女が大人になるときの微妙な時期を描くみずみずしい映画という印象を受けた。今回は町工場が舞台だが、場所を特定していない。平凡な親子三人家族に浅野忠信演じる夫の旧友が突然住み込みで働くことになる。それにより変貌する家族の姿を描いていく。

深田晃司監督自らの脚本で、予想のつかない展開に持ち込まれるストーリー作りは巧みである。

町の平凡な町工場に夫鈴岡敏雄(古舘寛治)、妻章恵(筒井真理子)と10歳の娘が暮らしている。そこにある日突然1人の男が姿を現す。男は八坂(浅野忠信)といい夫の旧友である。八坂はここで働かせてほしいといい、10年ぶりに出会ったという夫は素直に受け入れる。突然住み込みの男性が働くことは当然妻は聞いていない。驚くが、丁重にふるまう八坂は一緒に住みだす。


その後、娘が八坂になつき、八坂が幼いころに習ったというオルガンの練習曲を娘に教えてあげると、母親も八坂に好感を持つようになる。そして、4人で川のほとりに遊びに出かけたとき、八坂と母親は急接近する。しかし、ここである事件が起きてしまう。

8年後娘は身障者になってしまっていた。新しい住み込みの青年山上(太賀)が夫と一緒に仕事をしていた。絵心がある山上は娘のスケッチを描いている。その山上があるとき八坂という人が以前働いていましたよねと夫に告げる。そして、自分は会ったことはないけれど、山上の実子だと告白するのであるが。。。


小さな零細企業の中で、妻が住み込みの従業員とできてしまいねちっこい愛を重ねるというようないかにも日活ポルノみたいな流れを途中まで連想したら、ここで急激な転換点をつくる。実にショッキングだ。転換点の前に八坂が妻の身体を手籠めにしようとして妻に猛烈な抵抗を受けるシーンが映し出される。そのあとはそれ自体のむごいシーンは映さないが、とんでもないことが起こる。

浅野忠信演じる八坂は、住み込み始めるときはバカ丁寧な態度で通す。しかし、映像は八坂が夫に対して急に言葉遣いを変えて責め立てるシーンを映し出す。この不気味な姿が見どころだ。


あとは妻役の筒井真理子の感情の起伏を丹念に追っていく。陰のある同居人になぜか衝動的に魅かれ、女の欲望をよみがえさせる。しかし、彼女が思っていた以上の意外な展開に驚くと同時に、夫が何でこの男を受け入れたのかということに絶望する。何から何まで悪い方向におちていくことにうろたえる女心をうまく演じている。これはなかなかうまい。

この2人と人生を達観しながらもときどき感情の起伏の激しさを見せる工場主を演じる古舘寛治がいい感じだ。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「追憶」 岡田准一&降旗康男&木村大作

2017-05-07 18:04:23 | 映画(日本 2015年以降主演男性)
映画「追憶」を映画館で観てきました。


岡田准一の新作である。それだけではこの映画見に行かない。監督降旗康男と撮影木村大作という老大家による久々の作品というのだ。気になってしまい、映画館に向かう。降旗康男監督作品は高倉健の遺作「あなたへ」以来である。

富山県警の刑事四方篤(岡田准一)の私生活は荒れていた。行き過ぎた捜査で警察幹部から叱責を受けるばかりか、妻(長澤まさみ)とは別居し、生活が荒れている母(リリィ)からはいつも金をせびられている。その四方が富山の街で旧友川端悟(柄本佑)とばったり出くわし、飲みに行く。


川端が経営するガラス屋は経営難で従業員の給与も支払えないほど金策に困り、輪島で土建業を営む2人の旧友田所啓太(小栗旬)のところへ金を借りに行く途中であると川端は言っていた。痛飲した後川端は町のサウナに泊まるといって四方と別れた。

むかし親に捨てられた3人は涼子(安藤サクラ)が営む喫茶店に常連客の光男(吉岡秀隆)とともに身を寄せていた。ところがいたたましい事件が起き、離れ離れになっていたのだ。


四方は殺人事件が起きたという一報を受けて、港に向かう。その死体を見て驚く。なんと川端だったのだ。しかし、同僚には自分の知り合いだということは何も言わない。そして、旧友の田所のことが気になってくるのであるが。。。

現代映画界を代表する豪華スターによる映画である。当たり役に恵まれている岡田准一を見に来ているファンも多いだろう。でも自分みたいな連中もいるのでは?ここのところ若手とともに老けに老けた降旗康男と木村大作が宣伝を兼ねてテレビ画面にでるのが気になっていた。

2人のコンビでの最高傑作は高倉健主演「夜叉」であろう。いかにも降旗康男監督作品らしい荒波の海岸で映る映像は美しく、ビートたけしのチンピラやくざ役が冴え、妖艶な色気をもつ田中裕子が絡まる。元やくざの役の高倉健がいざこざの中で刺青姿を一瞬見せるところがこの映画のポイントだ。もちろん木村大作のキャメラも冴えわたる。

降旗康男の映像というと、冬の寒々しい映像を連想する。それをわかっているがごとく、北国の荒々しい波が打ち寄せる雪景色を冒頭の回想シーンで出して、我々のような降旗、木村ファンの期待に応える。それはそれでうれしい。また、日本海に沈む夕日を俳優のバックに巧みに映し出したり、日本海の荒波を追いかけ合う車のバックに映すシーンなど粋なキャメラワークと映画構図を観るだけでこの映画を見てよかったと思う。エンディングロールの最後に撮影者で木村大作とともに岡田准一のクレジットがある。これもすごいよね。


音楽の千住明は自分の知人の同級生だったが、ここでは降旗、木村コンビの映像に昭和テイストで絡む。それはそれでよかった。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「バンコクナイツ」 富田克也

2017-02-27 21:03:41 | 映画(日本 2015年以降主演男性)
映画「バンコクナイツ」を映画館で観てきました。

東京ではテアトル新宿でしか「バンコクナイツ」をやっていないので、ものすごい超満員である。
評論家筋の評価がいかにも賛否両論、こういった映画は観てみるに限る。自分はタイにはいったことがない。でも自分の友人にはタイの夜を楽しんでいる連中が多数いる。一時よりは値段も高くなったかもしれないが、病気を気にしながらもみんなよく遊びに行っている。予告を見ると、そういう歓楽街の店での女の子の顔見せのシーンもある。面白そうだ。


日本に来ているジャパユキさんの映画は一時期はよくあったが、ここではタイの田舎からバンコクへ出稼ぎに来ている若い女の子がクローズアップされる。金を稼ごうとみんな必死だ。自分のカラダを売ることに躊躇しない。それに絡むのが現地にいる日本人たちだ。店の客は現地駐在員が連れてくるお偉いさんたちであるが、ここでメインとなるのは、何かのきっかけで東南アジアに行き、そのまま居座ってしまう男たちだ。どちらかというと、ヒモのような存在で堕落に堕落を重ねた男たちばかりだ。

もう少しエロイ映画だと思ったら、意外にそうでもない。仏教国だからなのか?


タイの首都、バンコク。日本人専門の歓楽街タニヤ通りの人気店、「人魚」でNO.1のラック(スベンジャ・ポンコン)は、イサーン(タイ東北地方)からバンコクへ出稼ぎに出て5年が経った。日本人のヒモ、ビン(伊藤仁)を連れまわし高級マンションで暮らす一方、ラックの支える大家族は、遥かラオスとの国境を流れる雄大なメコン川のほとり、ノンカーイ県に暮らしていた。確執が絶えない実母ポーンと今は亡きアメリカ軍人だった2番目の父との息子、ジミー。ラックは種違いの弟ジミーを溺愛している。

ある晩、謎の裏パーティーで、ラックは昔の恋人オザワ(富田克也)と5年ぶりに再会する。ノンカーイから出て来たてだったラックの初めての恋人がオザワだった。元自衛隊員のオザワは、今では日本を捨てバンコクで根無し草のようにネットゲームで小銭を稼ぐしかない沈没組。オザワがラックに会うには金がいる。戸惑うふたり…。そんな折、オザワはかつての上官で、現在はバンコクで店を営む富岡にラオスでの不動産調査を依頼される。
かくして、いくつもの想いを胸に秘めたラックとオザワは、バンコクを逃れるように国境の街ノンカーイへと向かうことになったが…(作品情報 引用)


3時間はさすがに長い。でも雰囲気がドキュメンタリータッチで、カット割りが激しいというより、長まわしというわけではないが、それぞれの場面場面で時間をとるので凡長ではない。出ている俳優たちは素人のにおいを感じさせるセリフを話す。

1.日本人主人公の素性
元自衛隊員の設定である。勉強が嫌いで、高卒でぶらぶらしていたら町で自衛隊員に勧誘されたなんてよくあるパターンだ。入隊後そのままPKOで派遣されて現地に行き、カンボジアは天国だという。人気ナンバー1の女の子の故郷に一緒に行き、現地の家族と意気投合する。東南アジアにはまって住み着いてしまう奴はフィリピンに多いと聞いたが、タイにもかなりいそうだ。タイに没落しているその仲間たちをここではクローズアップさせる。


2.バンコクの日本人向け歓楽街
歓楽街タニア通りの看板には英語と併せて日本語カタカナが書かれている。行ったことがないのでわからないが、現地駐在員たちも相当行っているんだろう。日本から出張できた連中はみんなエッチ系に行きたがるはずだし、顔見せの「自分を選んでモードの視線」に常にさらされているのかもしれない。社長さん?たちと女の子がバンコク中心を流れるチャオプラヤー川沿いのしゃれた店でデートするシーンもある。「お店出したいよ」と女の子がせがむけど、日本人は冷静なんて感じだ。



この映画では店の女の子がけなし合うシーンもある。我々から見ると、タイの女の子はみんな同じように見えるけど、やれ〇✖族だの△◇族だのいって女の子のグループ同士が対立する。女性がつく夜の店で、いかにもという女のサガの火花が飛ぶのは万国共通だ。

3.ノンカーイとラオスと間を流れるメコン川
メコン川というのは4300キロもあるというわけだから長い。蛇行してカンボジアやベトナムを流れている。一昨年ホーチミンからクアラルンプールに飛行機で向かった時にメコン川の河口を見たのが印象的だ。主人公の田舎はラオスとの国境近くにあるメコン川が流れているそばだ。このノンカーイの町を目指すとき、上空から映し出すシーンがある。どす汚れたようなメコン川がクローズアップされる。この映画ではバンコクだけでなく、こういう田舎のシーンがあるのがいい。


川の反対側はヴィエンチャンというラオスの町、田舎のシーンだけど、意外にバーでたむろう外人たちも多い。フランス人のようだ。ベトナム戦争でも町は変貌したようだが、セリフを聞くとその前哨戦で独立をめぐってフランスと現地レジスタンスが戦ったインドシナ戦争の影響が大きいようだ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「日本で一番悪い奴ら」綾野剛 

2017-02-14 21:13:37 | 映画(日本 2015年以降主演男性)
映画「日本で一番悪い奴ら」は2016年公開の綾野剛主演映画である。

これは面白い!
テンポがよく、警察と暴力団員との裏の癒着を巧みに描いている。綾野剛もこの役柄に乗っているという感じで、ワイルドに演じている。


菅原文太があばずれ刑事役で、癒着する暴力団員を松方弘樹が演じた深作欣二監督の傑作「県警対組織暴力」が日本映画の警察暴力団の癒着ものとしては最高峰の出来である。綾野剛と中村獅童の悪のコンビぶりは菅原、松方コンビほどの重厚感はないが、リズミカルなテンポの良さで「県警対組織暴力」に次ぐいい出来にしている。

大学柔道部で活躍していた諸星要一(綾野剛)は柔道の腕を買われ北海道警察に勧誘されたあと、期待通り柔道部員として活躍する。しかし、26歳で北海道警察本部の刑事となった後は周囲から邪魔者扱い。あくの強い先輩刑事・村井定夫(ピエール瀧)は高級クラブで飲みながら、刑事が認められるには犯人を挙げて点数を稼ぐことが必要、そのためには協力者S(スパイ)を作れと説く。


諸星は事件の起きそうなエリアを中心に自分の名刺をばら撒きまくる。そのころいったんコテンパンにした暴力団員から先輩がシャブを持っているという内通を得て、むりやり部屋に入り込み、覚せい剤・拳銃を見つけ逮捕する。その功績で本部長賞を授与されるが、完全な違法捜査であった。それはないぞと暴力団側が激怒し、幹部の黒岩勝典(中村獅童)に呼び出される。諸星はビビりながらも黒岩と向かい合い、結局気に入られ兄弟盃を交わし、黒岩が諸星のSとなる。


その後、諸星は31歳で札幌中央署暴力犯係(マル暴)に異動し、ロシア語が堪能な山辺太郎(YOUNG DAIS)を黒岩から紹介される。さらに太郎からロシアルートの拳銃横流しに精通するパキスタン人アクラム・ラシード(植野行雄)を紹介され、共にSとして付き合う。

警察庁長官などの要人への銃撃事件が増加して、道警本部にも銃器対策課が新設される。諸星は第二係長を拝命する。手っ取り早く拳銃の摘発をしたいと上司に相談されると、所持者不明の銃をコインロッカーに入れて摘発を偽装する。


これをきっかけにロシア人から1丁2万円でトカレフを購入して摘発件数を水増しするようになる。諸星は銃器対策課から予算を引き出し、山辺とラシードとインチキをたくらむようになるが。。。

1.警察官のポイント制
柔道では活躍したが、刑事となると全然ダメ。そんな諸星が暴力団ともつながっている先輩刑事から検挙にもポイント制があって、いい点数を取らないとだめだ。なんてビジネスの世界で認められるのと同じような感覚の話をされる。まじめな連中だけと付き合っていても検挙ポイントの高い奴らの情報はとれないとワルと接触しないとダメという。すなわちSと言われる内通者(スパイ)からの情報があればいくらでも情報が来るというのだ。事件の起きそうな物騒なエリアで名刺を配りまくる。そこが面白い。


映画では殺人18点、傷害7点、暴行4点、覚せい剤保持1kg以上10点、20g以上7点。。。なんて表を映し出す。こういう表そのものって今まで映画では見たことない。町のチンピラをコテンパンに暴行して、なんかあれば俺に言え!なんて名前を売るために名刺を渡しているうちに、そのチンピラから自分の兄貴分を売る話が来るのだ。覚せい剤のポイントが頭に浮かびやる気満々の諸星だ。でもこの時の諸星に理性はない。1人で令状なくチンピラの兄貴分の家に飛び込み、手錠を掛けて部屋中シャブを探しまくる。なかなか見つからない。違法捜査はむずかったのかと思った矢先にツキが回る。

このあたりの展開の良さがたのしい。

2.拳銃の摘発
かの有名な国松警察庁長官殺人事件など銃撃事件が増えてきて、北海道警察も黙ってはいられない。そこでマル暴で中村獅童たちと組んで好き勝手やっていた諸星だったらいい拳銃所持情報得られるだろうと白羽の矢がたつ。でもやっていることは不正、捜査費用を使って安い拳銃を買うなんてこともやる。何それ!!という感じだが、こんなもんだろうか?これはまんざら嘘じゃないだろう。

しかも、おとり捜査ということで、いったんまとまったシャブの輸入を見逃して、そのあと相手が図に乗って拳銃を大量に輸入するところで検挙するなんてことをたくらむ。いやはやひどいもんだ。


ここでの綾野剛はのっている。「新宿スワン」のスカウトもいい感じだけど、警察官としてチンピラ相手に喧嘩する姿のキレが抜群にいい。女を犯すシーンの強引さもいい。これは適役だな。

日本で一番悪い奴ら
警察暴力団癒着の実録もの


恥さらし 北海道警 悪徳刑事の告白
映画のモデルの告白
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする