映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「バンコクナイツ」 富田克也

2017-02-27 21:03:41 | 映画(日本 2015年以降主演男性)
映画「バンコクナイツ」を映画館で観てきました。

東京ではテアトル新宿でしか「バンコクナイツ」をやっていないので、ものすごい超満員である。
評論家筋の評価がいかにも賛否両論、こういった映画は観てみるに限る。自分はタイにはいったことがない。でも自分の友人にはタイの夜を楽しんでいる連中が多数いる。一時よりは値段も高くなったかもしれないが、病気を気にしながらもみんなよく遊びに行っている。予告を見ると、そういう歓楽街の店での女の子の顔見せのシーンもある。面白そうだ。


日本に来ているジャパユキさんの映画は一時期はよくあったが、ここではタイの田舎からバンコクへ出稼ぎに来ている若い女の子がクローズアップされる。金を稼ごうとみんな必死だ。自分のカラダを売ることに躊躇しない。それに絡むのが現地にいる日本人たちだ。店の客は現地駐在員が連れてくるお偉いさんたちであるが、ここでメインとなるのは、何かのきっかけで東南アジアに行き、そのまま居座ってしまう男たちだ。どちらかというと、ヒモのような存在で堕落に堕落を重ねた男たちばかりだ。

もう少しエロイ映画だと思ったら、意外にそうでもない。仏教国だからなのか?


タイの首都、バンコク。日本人専門の歓楽街タニヤ通りの人気店、「人魚」でNO.1のラック(スベンジャ・ポンコン)は、イサーン(タイ東北地方)からバンコクへ出稼ぎに出て5年が経った。日本人のヒモ、ビン(伊藤仁)を連れまわし高級マンションで暮らす一方、ラックの支える大家族は、遥かラオスとの国境を流れる雄大なメコン川のほとり、ノンカーイ県に暮らしていた。確執が絶えない実母ポーンと今は亡きアメリカ軍人だった2番目の父との息子、ジミー。ラックは種違いの弟ジミーを溺愛している。

ある晩、謎の裏パーティーで、ラックは昔の恋人オザワ(富田克也)と5年ぶりに再会する。ノンカーイから出て来たてだったラックの初めての恋人がオザワだった。元自衛隊員のオザワは、今では日本を捨てバンコクで根無し草のようにネットゲームで小銭を稼ぐしかない沈没組。オザワがラックに会うには金がいる。戸惑うふたり…。そんな折、オザワはかつての上官で、現在はバンコクで店を営む富岡にラオスでの不動産調査を依頼される。
かくして、いくつもの想いを胸に秘めたラックとオザワは、バンコクを逃れるように国境の街ノンカーイへと向かうことになったが…(作品情報 引用)


3時間はさすがに長い。でも雰囲気がドキュメンタリータッチで、カット割りが激しいというより、長まわしというわけではないが、それぞれの場面場面で時間をとるので凡長ではない。出ている俳優たちは素人のにおいを感じさせるセリフを話す。

1.日本人主人公の素性
元自衛隊員の設定である。勉強が嫌いで、高卒でぶらぶらしていたら町で自衛隊員に勧誘されたなんてよくあるパターンだ。入隊後そのままPKOで派遣されて現地に行き、カンボジアは天国だという。人気ナンバー1の女の子の故郷に一緒に行き、現地の家族と意気投合する。東南アジアにはまって住み着いてしまう奴はフィリピンに多いと聞いたが、タイにもかなりいそうだ。タイに没落しているその仲間たちをここではクローズアップさせる。


2.バンコクの日本人向け歓楽街
歓楽街タニア通りの看板には英語と併せて日本語カタカナが書かれている。行ったことがないのでわからないが、現地駐在員たちも相当行っているんだろう。日本から出張できた連中はみんなエッチ系に行きたがるはずだし、顔見せの「自分を選んでモードの視線」に常にさらされているのかもしれない。社長さん?たちと女の子がバンコク中心を流れるチャオプラヤー川沿いのしゃれた店でデートするシーンもある。「お店出したいよ」と女の子がせがむけど、日本人は冷静なんて感じだ。



この映画では店の女の子がけなし合うシーンもある。我々から見ると、タイの女の子はみんな同じように見えるけど、やれ〇✖族だの△◇族だのいって女の子のグループ同士が対立する。女性がつく夜の店で、いかにもという女のサガの火花が飛ぶのは万国共通だ。

3.ノンカーイとラオスと間を流れるメコン川
メコン川というのは4300キロもあるというわけだから長い。蛇行してカンボジアやベトナムを流れている。一昨年ホーチミンからクアラルンプールに飛行機で向かった時にメコン川の河口を見たのが印象的だ。主人公の田舎はラオスとの国境近くにあるメコン川が流れているそばだ。このノンカーイの町を目指すとき、上空から映し出すシーンがある。どす汚れたようなメコン川がクローズアップされる。この映画ではバンコクだけでなく、こういう田舎のシーンがあるのがいい。


川の反対側はヴィエンチャンというラオスの町、田舎のシーンだけど、意外にバーでたむろう外人たちも多い。フランス人のようだ。ベトナム戦争でも町は変貌したようだが、セリフを聞くとその前哨戦で独立をめぐってフランスと現地レジスタンスが戦ったインドシナ戦争の影響が大きいようだ。

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映画「LA LA LAND」 ライアン・ゴズリング&エマ・ストーン

2017-02-26 14:26:56 | 映画(自分好みベスト100)
映画「LA LA LAND」を映画館で観てきました。

これは最高!!です。
予想を上回る素晴らしい作品だ。


冒頭から渋滞の高速道路でのミュージカルタッチのシーンでまずは度肝を抜かれる。黒人女性の歌声からから始まって、色彩豊かな衣装で着飾った男女が止まっている車の上でジャンプしながら心地よいテンポの曲で踊りまくる。そこには渋滞の車で待っているライアン・ゴズリング&エマ・ストーンの主人公たちが映し出される。

冒頭のシーンでうーんいいじゃん!と思っていると俳優を目指すミアの部屋でのシーン。部屋はイングリッドバーグマンの壁紙だ。ポストプロダクションの活躍が抜群で、原色を基調にした色彩設計豊かな空間の中でのリズミカルなシーンが続く。すごくいいじゃんと思っているうちに映画が進み、素晴らしく心地よい時間を過ごせる。

この映画の予告を見たことがある人は多いだろう。こうやって映画を見終わると、それぞれのシーンがうまく加工されて予告編ができていることがわかる。ある意味、この映画の予告編の編集度はずば抜けていると映画を見終わって感じる。



夢を叶えたい人々が集まる街、ロサンゼルス。映画スタジオのカフェで働くミア(エマ・ストーン)は女優を目指していたが、何度オーディションを受けても落ちてばかり。ある日、ミアは場末の店で、あるピアニストの演奏に魅せられる。

彼の名はセブ(ライアン・ゴズリング)、いつか自分の店を持ち、大好きなジャズを思う存分演奏したいと願っていた。やがて二人は恋におち、互いの夢を応援し合う。しかし、セブが店の資金作りのために入ったバンドが成功したことから、二人の心はすれ違いはじめる……。(作品情報より)

毎回オーディションを落ちまくっている俳優の卵をエマ・ストーンが演じる。同じような俳優仲間とハリウッドの豪邸でパーティをして、プールで大騒ぎ。そんなことしているうちに駐車していた車もレッカー移動、まいったと思って深夜の街を歩くと、一軒のジャズクラブがある。気になりそこに入ると、1人のジャズピアニストが素敵なメロディを奏でているという構図で、2人は出会う。


その時ジャズピアニストであるライアンゴズリングは自分の思うような曲が弾けないことにいらついていた。周りは誰も聞いていないのに、客にゴマするようにクリスマスソングをピアノで弾く。ここでマスター(JKシモンズ)に逆らい、自作のメロディアスな曲を弾き語る。それを聞いていたのがエマストーンだ。でも言うとおりにしないライアン・ゴズリングは「FIRE!!」すなわちクビである。

実はこの2人は渋滞の車で一度出会っていた。そして、このジャズクラブで2人であい、その後エマ・ストーンは俳優たちのパーティでロックの演奏のバックをやっていたライアン・ゴズリングにまた再会するのだ。

恋の始まりはこういう偶然が何度も起こる。実際にもよくあることだ。その出会いを包む心地よい音楽が耳につく。最初にジャズクラブでライアン・ゴズリングが弾くメロディアスな曲が反復される。いろんな場面でアレンジを変え鳴り響く。この反復で主題曲が自分の脳裏に刻み込まれ、ハートが揺さぶられる。そして前半戦から飛ばしていく。その心地の良さにずっと気分がハイテンションになれる。

恋の行方はそんなに単純にはいかない。それもミソだが、脚本はびっくりするほど複雑ではない。ここでは現代ハリウッドの精鋭による色彩設計の良さとすぐれた美術および衣装そしてセンスのいい音楽を思いっきり堪能したい。


これから見る人も多いのでネタバレ的なことは今一度あとで加筆したいが、途中でちょっとだれ気味になった時点から最終につながり、ラストのジャズクラブで始まるシーンが素晴らしい!もしこうあったら?ということなのか、どっちが真実なのか?一瞬戸惑うが、こういうことなのかとわかり妙に涙がこぼれてきた。同性たる男への同情か?そしてそのあとのエンディングロールの間、誰も席を立たなかった。誰もが余韻に浸っていた。

ラ・ラ・ランド
ともかく楽しい
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9年目の雑感2

2017-02-22 22:44:29 | Weblog
映画は楽しめればいい。量か質か?これでもか、これでもかといい映画、自分に合った映画を探し求める。
2006年ころから見た映画の題名だけをピックアップして記録しているが、もう2222本を超える。それだけ見たわけだ。ここのところ年間200本割っている。dvdで旧作をどれだけ見れるかにもよる。


以前映画検定を受験しようとして、映画の古典をまず見ておくことが必要と見はじめた。その時に、いちばん参考になったのが芝山幹郎著「映画一日一本」である。安易な名前だが、中身は濃い。ヒッチコック、ビルワイルダー、アルドリッチ、ジョンフォードなどの名匠のピックアップはさすが目が効いて、日本では小津安二郎、黒澤明、溝口健二、成瀬巳喜男などの監督の名作を巧みに解説してくれる。自分にとってはバイブルのようなものだ。そういう古典を知った後に、名画座やdvdで若干古めの作品をみる。それはそれで楽しい。芝山幹郎氏の映画に関する著作は全部読んだが、いずれも素晴らしい。

新作は好きな評論家が勧めているものであれば、はずれはほとんどない。それに加えて好きな監督の新作をピックアップする。
週刊文春のシネマチャートはすぐれものだ。評者の一人芝山幹郎氏のセレクトは天下一品で簡潔で的確な文章もいい。彼が4点以上つけたものは映画館で見るようにしている。日経新聞金曜夕刊の映画記事もすぐれものだ。ここで5つ星はほとんどはずれがないし、4つ星でもピックアップする価値がある。それこそ以前は芝山幹郎が日経新聞で解説書いていた時期があった。あとは東大教授藤原帰一氏の毎日新聞の映画コラムがいい。忙しい人だから選択してして見に行っているはずで、作品の選択は間違いない。本も読んで、映画も見てとなると時間は限られる。まずは信頼できる達人がピックアップしたものに行くのがいいと思う。

映画で自分の知らない世界が体感できるのはすばらしい。

本屋探訪も楽しい。amazonはポイントがつくし、プライム会員なので発注したらすぐ来る。しかもマーケットプライスで意外に安い値段で買えることがある。でも立ち読みはできない。
御茶ノ水~神保町の街並みを歩くのは大好きだ。カレー屋だけでなく中華など食べ物屋の老舗も多い。現在の勤務地からも近く、休みの日もひまさえあればぶらぶらしている。まずは新刊を扱う大書店にいく。東京堂書店の平置きは実に選択するセンスがいい。いかにも目利きのきく店員がいるのがわかる。サブカルチャー系、映画や美術系など趣味の本も充実している。ここの喫茶コーナーは居心地がいい。

御茶ノ水の丸善も品選びが自分に相性いい。一連の古本屋には以前入ったが、最近はさほどでもない。amazonがないころは絶版本を懸命に神田じゅう探したことがあった。ないことが多かった。amazonのマーケットプライスは本当に便利だ。以前絶版になった伊藤整の「氾濫」がどうしても読みたくなって、神田の古本屋を探しまくったけどなかった。でもamazonですぐさま見つかる。全国を探せば絶版本を書棚にそろえている人がいるのだ。便利な世の中になったものだ。地元新宿では西口「ブックファースト」が居心地いいし、品ぞろえが豊富で土日はポイント還元率も高い。東口の紀伊国屋の一階平置きが何気なく面白い本をピックアップしている。思いがけない出会いも多い。

そういいながら図書館で借りている比率も高い。一連の本屋まわりで気になった本で新刊でなければさいたま市図書館の検索を見て、どこの図書館にあるかを確認して車ですっ飛んで行く。意外にあるものだ。

これだけインプットしまくりで、アウトプットがおろそかになっている。これも9年目の課題だ。
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9年目の雑感1

2017-02-19 04:16:46 | Weblog
ちょうど丸9年になる。勢いでできたブログだ。映画中心にコメントしているが、以前ほどアップの頻度が高くはない。本も映画も数を気にしているが、量よりは質に転換すべきところなのであろうか?同じ本や映画を何度も読んでものにするという態度も必要なのか?以前アップした映画をもう一度見て推敲し直してもう一度アップするなんてことやってみようかな

サラリーマン生活も同じ会社に結局30年以上いることになった。商売人の息子だし、会社に長くいるつもり全くなかった。だから気に食わない奴がいると年上でも逆らったものだった。20代のころはとても会社に長くいるような仕事をしていなかったし、周りからもそうみられていなかった。単なる担当者だったり、マネジャーの頃に比べれば、数字責任は重くなったが仕事は楽になった。携帯電話やiPadがあると、わざわざ会社に行かなくてもできることも多い。朝は早く7時半には出社するが、夕方は6時までいない。5時半には帰る体制だ。会社飲みは残業のようなものだ。飲みに行く時もなるべく早くからにしてもらう。それでも「飲みの残業」は行くと、かなり長くなりタクシーで帰る。

最近映画を見たり、本を買ったりする以外お金を使うことがなくなった。ゴルフは嫌い。営業系はゴルフやらないとダメといわれるが、やらなくても出世には影響ない。休みに会社関係者に会うのは最悪だ。飲みに行くのは接待を受けるか、会社の交際費が使えるときに限る。学生時代の友人たちとそう飲みに頻繁に行くわけではない。飲みが続くと、会社のイントラに非公開のダミーの予定を入れる。飲みの誘いをガードするためだ。家で晩酌しないの?といわれるが、誰かの誕生日とかのイベントごと以外はしない。自分より酒量が全然少ない人でも毎日飲もうとする人は割といる。ビール欲しくなるでしょうと言われるが全く欲さない。いわれること自体不思議だ。酒の飲み過ぎモードだと、脳細胞がどうにかなる。頭脳が破壊されていく感じである。頭脳が破壊されると本が読めないから家では飲まない。この間も飲み会を仮病で逃げた。

洋服も買わない。買っても年一回スーツを買う位だ。Y シャツの仕立て券はたまにもらえる。正月福袋の仕立てのYシャツ作ろうとしたら、これだけあるならいいだろうと妻に言われた。ネクタイだけはたまに買う。でもブランドはワンパターン。時計はもともと30年以上しない。飲むとすぐ外すクセがあるからだ。別にそれで困らない。携帯電話で時間を見ればいいし、会議室には時計がある。

以前、車はひら営業のころは月に2000キロ運転していたが、今は1年に3000キロも運転しない。新車はいらない。昔好きだったジャガーEタイプが欲しいが、買っても乗らないだろうからいらない。気になる本があると、まず図書館にあるかを検索する。意外にあるものだ。さいたま市はいくつもの図書館のどれかに所蔵されている。図書館で借りた本は書き込みなどで汚せないというが、付箋をつけて読んで、付けた部分をipadで写真を撮る。いつでも見れる。本を買いすぎることもない。そうすると、意外にお金が貯まる。旅行は年一回家族旅行いくだけ、家族は海外に関心がない。その他で会社からみであちらこちら行ける。

両親は70代半ばでなくなった。親の両親で80代まで生きた人はいない。自分の命はあと15年がいいところだ。父はタバコ吸ったが自分は大嫌い。そこだけが違うので80歳に挑戦できるか。ある人に老後いや定年後何をするのか今から準備したほうがいいと言われた。さすがにリタイア生活で借り入れはしたくない。商売はじめるなんて無理だろう。でもどうやって過ごすか準備が必要か?そのあたりが9年目の課題か
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映画「オフィス 檻の中の群狼」 

2017-02-18 20:41:00 | 映画(韓国映画)
映画「オフィス檻の中の群狼」は韓国のスリラーサスペンス映画


韓国のクライムサスペンスのレベルは日本映画をはるかに超越する。よくできている数ある作品でも自分はスピード感、極度の残虐性、脚本の意外性から「チェイサー」がいちばん度肝を抜く作品だと思っている。その脚本家が監督で作った作品となれば、思わずDVDの棚からピックアップする。

予備知識はほぼゼロに近い形で見た。その他の作品でもよく見るぺ・ソンウが呆然としながら自宅に帰り、母親、妻、子供の3人が仲良くテレビを見ているときに訳もなくハンマーを振りかざそうとしている。そしていきなり殺してしまう。何これ??


そのあと、彼が勤めていたオフィスが映し出される。刑事が来てもみんなこそこそ話をしている。我関せずとばかりに、課長が何でそんなことをしたのかわからないという。その中でインターンで働いている女の子をクローズアップする。このあたりは手探りでストーリーが進んでいく感じだけど、途中からテンポがあがっていく。いかにも韓国クライムサスペンス風だが、スリラーの様相も呈してくる。なんかドキドキしてくる。ハラハラ系の映画だ。

ある日、勤勉なキム・ビョングク課長(ぺ・ソンウ)は、帰宅後、家族を殺害して姿をくらます。翌朝、刑事ジョンフン(パク・ソンウン)は、キム課長の勤めていた会社に聞き込み調査をするが、上司の部長や同僚をはじめ誰も多くを語ろうとせず、特にキム課長と仲の良かったインターンのイ・ミレ(コ・アソン)は何かを隠しているようだった。


刑事は事件の直後、キム課長が会社に戻ってきた映像を捉えた防犯カメラを入手するが、その後、彼の足取りがつかめず、事件は迷宮入りをする。キム課長が捕まらず同僚たちが不安がる中、オフィス内で視線を感じたり、彼のパソコンが勝手に起動するなど奇妙な出来事が起きる。そして、彼の存在に気づいた時、同僚たちが次々と事件にまきこまれていく。

1.恐怖感の高まり
観客をビックリさせようとするサービス精神が監督にあるかどうかで見ていて楽しいかどうか分かれる。ブライアンパルマ監督は観客を驚かせるのが大好きな1人である。ホンウォンチャン監督が脚本を書いた映画「チェイサー」もこう次くるのかと思わせる場面が多かったが、ここでは途中でスリラーの色彩が強くなり、現実と虚実の境目をはっきりさせず、ホラー映画と思わせてしまう展開にする。のけぞる場面も多いけど、怖いもの見たさで目を伏せながら見てしまう。



2.有名シーンの抜き取り
殺す側とやられる側がオフィスの中をまさぐりあう展開はいかにもヒッチコック流だし、トイレの中の殺人は「サイコ」の有名なシャワーシーンのパクリだね。上からナイフを指す刺し方もジャネットリーが刺されるのと同じだ。殺された人間が下に駐車してある車に落下して行くシーンは、トムクルーズが殺し屋を演じた「コラテラル」を連想させる。ジェイミーフォックスが上から落ちた死体におののくシーンにつながる。本を読んでいるときに「〇▲引用」と書いてあるみたいな感じだ。


3.インターンの女の子
韓国では過酷といわれる学歴社会を勝ち抜いた一部のステイタス以外はいい就職にたどりつけないといわれる。正社員への道はなかなか険しいもののようだ。現状有効求人倍率が1.3の日本よりははるかに厳しいだろう。3か月たって判断するというのに、この主人公は何も告げられない。まわりからはいじめられ、外国の大学を出た美人のインターンまで入ってくる。やってられないよという感じの彼女が怒りを爆発ということだが、さすがにやり過ぎ。


でも、このオフィスにいる連中嫌な奴らばかりなので、思わずスッとする気分にはなれる。

オフィス 檻の中の群狼
オフィス内スリラー
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映画「山口組三代目」 高倉健

2017-02-15 08:45:08 | 映画(日本 昭和35年~49年)
映画「山口組三代目」は1973年(昭和48年)の東映映画である。


その名の通り山口組三代目組長田岡一雄氏の幼少期から山口組二代目時代に幹部にのぼりつめていこうとする時期までを描いた作品である。当時男盛りの高倉健が田岡組長を演じる。現在のように暴力団対策法が浸透する前の時代なのでできた映画だろう。現在ではさすがにこの実録物はつくれないだろう。

山口組三代目田岡一雄は下から這い上がった男で世襲ではない。これはある意味立身出世物語だといえよう。最近のやくざ映画のようにかなり裏の世界に入り込んでいるわけではない。創価学会の「人間革命」に通じる部分がある。

田岡一雄は幼くして父を亡くし、6歳の時に母が過労でなくなってしまい孤児となってしまう。叔父が見かねて引き取ったが、その妻はそんな子はいらないとばかりに冷遇されて育った。神戸の川崎造船に就職するが、上司の理不尽な指導に腹を立て田岡(高倉健)は会社を辞めてしまう。一雄の給料をあてにする叔父一家のもとには帰れないと市内の歓楽街を歩いていると、小学校の同級だった山口組二代目の弟とばったり会う。家に帰れない田岡を事務所に連れていき、めしを食わせてあげる。親切な仲間たちに感激し、組の下部組織の連中と一緒に暮らすようになる。

先輩たちにかわいがられ福原遊郭に遊びに行った田岡がごつい身体をした柔道家にからまれる。最初は投げられるばかりであったが、目つぶしで相手を倒す。こうしているうちに山口組の舎弟たちにも認められ、やがて二代目山口組の組員となる。

このあとはいくつかの逸話が続く。
山口組二代目がかわいがっていた大関(玉錦がモデル)がある幕内力士といざこざが起きたときに、その幕内力士のところへ殴り込みに行き、短刀で頭を割った話や海員組合の労使抗争を解決しようとして乗り込んだ先輩組員が殺されてしまったのに対して、復讐する話などが続く。そこに居酒屋の看板娘だった女性と田岡とのロマンスが絡むといった構図だ。

1.1973年の東映実録路線
前年藤純子(現:富司純子)が引退し、東映のやくざ映画路線も難しい局面にあった。そのとき、73年正月第二週の「仁義なき戦い」が大ヒットする。評論家筋からも絶賛の評価を受け、すぐさま4月には続編が公開される。テレビに押されて日本映画の衰退がいわれていた時期に、東映はこの年映画全盛時代の以来の興行収入を得る。その時期、任侠映画の名プロデューサー俊藤浩滋は山口組三代目を引っ張り出すことを考える。早速高倉健を連れて田岡一雄組長にあいさつに向かい、快諾を得るのだ。当時の東映岡田社長も子息の田岡満氏を企画プロデューサーとして映画化を進める。上場会社の社長とやくざの親分の合意なんて話は今じゃ絶対あり得ないよね。

2.警察の反発
1973年のお盆映画「山口組三代目」「仁義なき戦い」を超える大ヒットとなる。まだ中学生だった自分からすると、これを放映している映画館に入ることすら怖かった。やくざにコテンパンにされてしまうような感じを持っていた。もっともそのころ、未成年を超越する少年だったのにこっそり日活ポルノは観ていた。
続いて「山口組三代目襲名」も大ヒット、「仁義なき戦い」同様続編を企画するところで、さすがに警察から東映に手入れが入る。田岡満経由で山口組にお金が流れたという疑惑である。岡田茂社長、俊藤浩滋プロデューサーをはじめとして徹底的に兵庫県警に絞られ、このあとは続編はつくられなかった。(映画の奈落 完結編 伊藤彰彦著 引用)

「仁義なき戦い」でこの年突如大スターになった菅原文太と高倉健が男を張り合う決闘シーンがこの映画の最大の山場だ。さすがに格上の健さんがいい男っぷりを見せる。

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映画「日本で一番悪い奴ら」綾野剛 

2017-02-14 21:13:37 | 映画(日本 2015年以降主演男性)
映画「日本で一番悪い奴ら」は2016年公開の綾野剛主演映画である。

これは面白い!
テンポがよく、警察と暴力団員との裏の癒着を巧みに描いている。綾野剛もこの役柄に乗っているという感じで、ワイルドに演じている。


菅原文太があばずれ刑事役で、癒着する暴力団員を松方弘樹が演じた深作欣二監督の傑作「県警対組織暴力」が日本映画の警察暴力団の癒着ものとしては最高峰の出来である。綾野剛と中村獅童の悪のコンビぶりは菅原、松方コンビほどの重厚感はないが、リズミカルなテンポの良さで「県警対組織暴力」に次ぐいい出来にしている。

大学柔道部で活躍していた諸星要一(綾野剛)は柔道の腕を買われ北海道警察に勧誘されたあと、期待通り柔道部員として活躍する。しかし、26歳で北海道警察本部の刑事となった後は周囲から邪魔者扱い。あくの強い先輩刑事・村井定夫(ピエール瀧)は高級クラブで飲みながら、刑事が認められるには犯人を挙げて点数を稼ぐことが必要、そのためには協力者S(スパイ)を作れと説く。


諸星は事件の起きそうなエリアを中心に自分の名刺をばら撒きまくる。そのころいったんコテンパンにした暴力団員から先輩がシャブを持っているという内通を得て、むりやり部屋に入り込み、覚せい剤・拳銃を見つけ逮捕する。その功績で本部長賞を授与されるが、完全な違法捜査であった。それはないぞと暴力団側が激怒し、幹部の黒岩勝典(中村獅童)に呼び出される。諸星はビビりながらも黒岩と向かい合い、結局気に入られ兄弟盃を交わし、黒岩が諸星のSとなる。


その後、諸星は31歳で札幌中央署暴力犯係(マル暴)に異動し、ロシア語が堪能な山辺太郎(YOUNG DAIS)を黒岩から紹介される。さらに太郎からロシアルートの拳銃横流しに精通するパキスタン人アクラム・ラシード(植野行雄)を紹介され、共にSとして付き合う。

警察庁長官などの要人への銃撃事件が増加して、道警本部にも銃器対策課が新設される。諸星は第二係長を拝命する。手っ取り早く拳銃の摘発をしたいと上司に相談されると、所持者不明の銃をコインロッカーに入れて摘発を偽装する。


これをきっかけにロシア人から1丁2万円でトカレフを購入して摘発件数を水増しするようになる。諸星は銃器対策課から予算を引き出し、山辺とラシードとインチキをたくらむようになるが。。。

1.警察官のポイント制
柔道では活躍したが、刑事となると全然ダメ。そんな諸星が暴力団ともつながっている先輩刑事から検挙にもポイント制があって、いい点数を取らないとだめだ。なんてビジネスの世界で認められるのと同じような感覚の話をされる。まじめな連中だけと付き合っていても検挙ポイントの高い奴らの情報はとれないとワルと接触しないとダメという。すなわちSと言われる内通者(スパイ)からの情報があればいくらでも情報が来るというのだ。事件の起きそうな物騒なエリアで名刺を配りまくる。そこが面白い。


映画では殺人18点、傷害7点、暴行4点、覚せい剤保持1kg以上10点、20g以上7点。。。なんて表を映し出す。こういう表そのものって今まで映画では見たことない。町のチンピラをコテンパンに暴行して、なんかあれば俺に言え!なんて名前を売るために名刺を渡しているうちに、そのチンピラから自分の兄貴分を売る話が来るのだ。覚せい剤のポイントが頭に浮かびやる気満々の諸星だ。でもこの時の諸星に理性はない。1人で令状なくチンピラの兄貴分の家に飛び込み、手錠を掛けて部屋中シャブを探しまくる。なかなか見つからない。違法捜査はむずかったのかと思った矢先にツキが回る。

このあたりの展開の良さがたのしい。

2.拳銃の摘発
かの有名な国松警察庁長官殺人事件など銃撃事件が増えてきて、北海道警察も黙ってはいられない。そこでマル暴で中村獅童たちと組んで好き勝手やっていた諸星だったらいい拳銃所持情報得られるだろうと白羽の矢がたつ。でもやっていることは不正、捜査費用を使って安い拳銃を買うなんてこともやる。何それ!!という感じだが、こんなもんだろうか?これはまんざら嘘じゃないだろう。

しかも、おとり捜査ということで、いったんまとまったシャブの輸入を見逃して、そのあと相手が図に乗って拳銃を大量に輸入するところで検挙するなんてことをたくらむ。いやはやひどいもんだ。


ここでの綾野剛はのっている。「新宿スワン」のスカウトもいい感じだけど、警察官としてチンピラ相手に喧嘩する姿のキレが抜群にいい。女を犯すシーンの強引さもいい。これは適役だな。

日本で一番悪い奴ら
警察暴力団癒着の実録もの


恥さらし 北海道警 悪徳刑事の告白
映画のモデルの告白
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映画「マリアンヌ」 ブラット・ピット&マリオン・コティヤール

2017-02-12 19:26:13 | 映画(洋画:2016年以降主演男性)
映画「マリアンヌ」を映画館で観てきました。


ブラット・ピットがいかにも元来の彼らしい雰囲気で出演している映像を予告編で観て気になっていた。英国の特殊工作員である主人公がカサブランカでフランス人女性の秘密工作員と組んでドイツ大使を殺害する任務を遂行した後で、なんと彼女がドイツのスパイであることがわかるという話である。この時代ってスパイ合戦の様相が強い時期で、恋に落ちて結婚したにもかかわらず妻を始末する指令が出ているというきわどい話である。

まるでハンフリーボガードとイングリッドバーグマンの「カサブランカ」にオマージュをささげるような部分も散見されるが、これはこれでいい感じである。判明してからわずかな時間のあいだに別れ別れにならざるを得ない設定がさすがに切ない。思わず泣けてくる。

1942年。カナダ人の諜報員マックス(ブラット・ピット)がモロッコの砂漠にパラシュートで降り立つ。マックスはイギリスの特殊作戦執行部に所属している。そのままカサブランカに向かい一人のフランス人女性マリアンヌ(マリオン・コティヤール)と落ち合う。ドイツ軍によるパリ陥落からモロッコに移り住むことになったマリアンヌと偽装夫婦を演じている。マリアンヌはすでにカサブランカの社交界で上流の人たちと交わり、任務遂行にむけて準備をしていた。2人はドイツの外交官たちと近づくことができ、ドイツ大使が出席するパーティに出席する。

マックスとマリアンヌの2人は心惹かれながらも、お互い一線は越えない付き合いをしていた。作戦履行で命を落とす可能性があることもあり、2人は結ばれる。作戦は成功し2人はロンドンに戻る。入国許可が出たマリアンヌと結婚し、可愛い娘にも恵まれたとき、マックスが軍の上層部から呼び出しを受けるのであるが。。。


1.1940年代初期のフランス情勢
1939年、ドイツ軍のポーランド侵攻で第二次世界大戦が始まり、1940年6月にパリは陥落する。その後、ペタン内閣は南仏のヴィシーで傀儡政権をつくり、実質ドイツの支配下にある。もともと1912年よりフランスの保護領であったカサブランカはドイツ占領直後、連合軍の反撃が始めるまでドイツよりのヴィシー政権の支配下にあった。この映画の舞台となる1942年はドイツ軍が街を闊歩している状態である。


2.映画「カサブランカ」
映画「カサブランカ」は1942年に制作されている。徹底的に敵であるドイツ攻撃をしている作品となっている。この映画の時代背景に合わせるように「マリアンヌ」はつくられている。2人の諜報部員がカサブランカの街で落ち合うクラブはハンフリーボガード演じるリックの経営するクラブをバリバリ意識しているのは間違いない。「マリアンヌ」のクラブ看板も「rick's」となっているように見えたんだけど。。。ちょっと自信がない。

「マリアンヌ」の脚本で「カサブランカ」を意識している部分が2つあった。(ここからネタバレ)
マリアンヌがドイツ軍のスパイであるという調査報告があり、夫となったマックスが懸命に否定する。しかも、今自分の妻である女性は本当のマリアンヌではないというのだ。マリアンヌと会ったことがある反体制派の男を懸命に探す。その特徴を聞く。ドイツ軍兵士が集まる場所でピアノの伴奏で「ラ・マルセイエーズ」を高らかに歌い上げていたというのだ。


マックスは祈りながらマリアンヌにピアノを弾かせようとする。映画「カサブランカ」ではリックのクラブの中でドイツ軍兵士を前にして「ラ・マルセイエーズ」を歌うシーンがある。つながりが感じられるシーンだ。

ラストシーンは空港である。映画「カサブランカ」ではイングリッド・バーグマンとその夫がハンフリーボガードからもらった通行証をもって外国へ飛び立つ。そこでは名優クロード・レインズ演じるフランスの駐留警察の警部がいて、本当は逮捕しなければならないところを見逃すといういかにも浪花節的な世界である。ここではマリアンヌと外国へ逃避行しようとするマックスが軍の空港に行き、飛行機のエンジンをかける。そこには英国軍の上司たちが来ている。そこから先は見てのお楽しみだが、上司たる軍幹部が同じような動きを見せる。「カサブランカ」を意識している流れと感じた。


でも最後は泣けるなあ。映画としては普通だと思うんだけど、子供のことを思うと、なんかかわいそうでね。結婚式最後のお涙頂戴場面のような雰囲気だな。

カサブランカ
カサブランカを意識している場面多し


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映画「クリーピー 偽りの殺人」 西島秀俊&香川照之

2017-02-05 18:42:59 | 映画(日本 2015年以降主演男性)
映画「クリーピー 偽りの殺人」は2016年公開の黒沢清監督作品


予告編から不気味な映画であった。いやらしい役を演じると天下一品の香川照之の表情が狂気に迫り、いったいどうなるんだろうと思わせたが、怖そうなのでDVDスルーになってしまった。映画は黒澤清監督らしい展開で、徐々に恐怖感を強める。出来は悪くないと思うし、あれ?これってどうなるの?と思わせる場面も多い。

ある事件をきっかけに刑事を辞め、犯罪心理学者として大学講師になった高倉(西島秀俊)は妻の康子(竹内結子)と共に新しい町へ越してきた。 康子が隣の家へあいさつ行くと、その家の主人西野(香川照之)が顔を出したが、不気味な感じだった。


高倉は犯罪の研究で6年前に起きた一家失踪事件に関心を持ち、事件現場へと足を運んだが、異様な雰囲気を感じた。そんな時、高倉が例の事件現場へ出向いていたことを知り、かつての相棒 野上(東出昌大)が訪れる。二人でその現場へ向かうと、そこには現場の近くに事件の唯一の生存者、当時中学生だった娘の早紀(川口春奈)が立っていた。

高倉が生存者の早紀に接触をもち、話を聞くと、事件が起こる前に外から部屋の窓を見上げる男がいたらしい。再度気になり、野上が失踪事件の現場の隣家に入り込むと五人の遺体を発見する。その内三体は失踪した家族のもので、二体はその家の夫婦のものであろうと。あやしいと思ったその隣の家の人間は死んでいたのだ。


ある日高倉が家に帰るとそこには西野と彼の娘澪の姿があった。二人は康子に料理を教えてもらうために来ているのだという。他にも異常性を感じることがいくつかあったが、娘との関係も不自然で気になり、高倉は野上に西野の素性を調べるように依頼した。西野に関する情報を調べた野上は自ら西野の家を訪れた。野上は自分の持っている資料にある西野の免許証に写っている男ではないことに気づく。そのまま玄関から家の奥に戻っていった西野を追うように野上が部屋に入っていったが。。。。

1.宮台真司の評価
社会学者で首都大学東京教授の宮台真司はこの作品を「CURE」以降20年間の進化がみごとに封印されている。として評価している。そしてこう続ける「違和感」を抱かせる切れ切れの映像断片を用いて、違和感の淵源である全体を観客に想像させる。(宮台真司 正義から享楽へより引用)映画全般に怖いムードを立ち込めらせるのは、ヒッチコックと同じような手法であるその違和感を言語化すれば「存在してはならないものが存在する」という感覚である。次から次へと存在してはならないものが出てくるところが怖い。


2.中盤から終盤にかけて(ネタバレあり)
断片的な怖い場面が続き、積み重ねでこの映画が怖いものとなっている。中盤から竹内結子の動きがおかしい。香川照之と妙なやりとりをしている。しかも、手には注射針がうたれている跡がある。あの男にやられているのか!そういう中、西島秀俊が隣の家に突入する。そして香川照之ともみ合っているときに竹内結子が突如夫に注射器をうちつける。ものすごく怖いシーンである。え!西島までやられちゃうの?だったらあの男誰が始末するの?映画がどう決着するのか?ドキドキさせる予兆のシーンだ。こういうあたりの展開はうまい。


3.これって変?!と思ったシーン
引っ越した先の隣の家に変な人がいることがわかる。この人いやだと言いながら、竹内結子演じる妻はシチューが残っているのでと、その隣の家を訪問する。おいおい、こんなことするかね?しかも、食べ残りのシチューなんて食べたいと思う??病人がいるとわかっているということでなければ、食べ残りをもっていくこと自体失礼だよね。これって絶対変!

主人公の助手が一人で隣の家に入っていく。そして姿を消す。なんで一人なんだろう。街を走っているパトカーを見ると、必ず2人乗っている。何かあったらということで、コンビを組ませる訳である。しかも、同じようにベテラン警部が1人で隣の家に入っていく。そうしないとストーリーが進まないわけど、こんなことって現実にはないでしょう。

香川照之の家のなかは要塞のようだ。最初から設計しないと、普通の家ってなかなかこうは改造できないはずである。これだけ改造するなら金もかかる。自分じゃできないでしょう。しかも、この男は目を付けた家にかわるがわる侵入していくようだ。その都度こんな改造しているの?これもちょっと変

クリーピー 偽りの隣人
不気味な隣人


正義から享楽へ-映画は近代の幻を暴く-
宮台真司久々の映画評論はなかなかいける
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映画「沈黙」 マーチンスコセッシ&アンドリュ―・ガーフィールド

2017-02-03 21:55:11 | 映画(洋画:2016年以降主演男性)
映画「沈黙」を映画館で見てきました。

ハリウッド映画の巨匠マーチン・スコセッシ監督が遠藤周作の「沈黙」を映画化したという。自分は原作を読んでいないし、篠田正浩監督の「沈黙」も見ていない。どちらかというと、宗教系の映画は観念的なセリフが多く、苦手なクチである。そんな自分が一昨年同郷のノンフィクション作家星野博美女史の「みんな彗星を見ていた」を読んで感動した。「踏み絵」という言葉自体は知っていても、数万人の日本人キリシタンが殉死していたという事実は知らなかった。


その迫害が映像として見れる。しかも、マーチンスコセッシが監督ということでスパイダーマンのアンドリュー・ガーフィールドやリーアムニーソンの大物が出演している。3時間近くの上映時間は長いので、見るのを一瞬ためらう。でも日本史の中でも悲しい事実を、日本人だったらつくれないかもしれない湾曲の事実を映像化してくれてよかったと思う。もう少し短い方がいいとは思うけど、完成度は高い。

17世紀、江戸時代初期幕府による激しいキリシタン弾圧がおこなわれていた。イエズス会の宣教師ロドリゴ(アンドリュ―・ガーフィールド)とガルペ(アダム・ドライバー)は司祭フェレイラ(リーアム・ニーソン)が日本で捕えられ棄教したといううわさを聞き、まずマカオに向かう。そこで日本人キチジロー(窪塚洋介)に出会う。キリスト教徒ではないとキチジローは言っているが、日本に帰りたがっていると聞き、一緒に船で旅立ち日本のトモギ村に密入国する。


そこでは「じいさま」と呼ばれる村長のイチゾウ(笈田ヨシ)、敬虔な信者モキチ(塚本晋也)を中心にした隠れキリシタンが信仰を捨てずにいた。2人は村人達と交流を交わし、布教活動を行っていく。キチジローは自分の村である五島列島にも2人の宣教師を招き、布教を広める。


それも束の間、キリシタンがトモギ村に潜んでいることを嗅ぎ付けた奉行が村に訪れ、2人の宣教師の身柄を要求した。そして幕府の取締りは厳しさを増し、やがてキチジローの裏切りによってロドリゴもガルペも追われる身となり、信仰を守って処刑に甘んじようとする信者のもとにゆこうとしたガルペは死んでしまう。ロドリゴは長崎奉行井上筑後守(イッセー尾形)に棄教を迫られ、信仰を捨てれば捕らわれた日本人信者の命を助けようと告げられる。



1.拷問

いきなり雲仙の火山口のそばで、熱湯を次から次へとキリシタンにかけるシーンが映る。その横にはリーアムニーソンが演じる司祭が処刑を待っている。改心させるのが大きな目的である。そのあとに映るのは海の中に十字架を置き、そのには張り付けられたキリスト教信者がいる。満潮になっていくと、海の水が波に乗って容赦なく信者たちを苦しめる。これは実写でうつされる。これを演じる方もつらい。当然一発撮りというわけでないだろうからきついなあ。


ほかにも藁でくるわれた身体の逆さづりや火あぶりの刑などいやいやすごい拷問だ。戦前共産党員や小林多喜二のようにプロレタリア小説を書く社会主義者などが憲兵に引っ張られて、拷問の上転向させるなんてことはくりかえしおこなわれていたと聞くが、人数的にはキリシタンの拷問よりも少ないかもしれない。

2.踏み絵

殺されるくらいなら、踏み絵しちゃえばいいじゃないと無宗教の自分は思うけど、このころの日本人キリシタンってずいぶん頑固だし、ばかだよね。なんて言ったらおこられるか?

星野博美著「みんな彗星を見ていた」を読むとすごい話がたくさん出てくる。「死や拷問に際して恐怖に脅えたり、痛がったり、逃げようとしたりしてはいけない。」 (p238)ので「直火でなく緩慢な火で長時間苦しませ、棄教しやすくする手段を使いはじめている」 (p238)すごい拷問だ。殺されたのは外国人宣教師だけでなく、30万人いたキリスト教徒のうち4万人ちかくが亡くなっている。たかが踏み絵という問題ではなくなる。

ここでは宣教師たちが改心を余儀なくされる。そこには村人たちが迫害を受けるのが見ていられないからという理由もある。そうなったときに、改心した宣教師たちは日本人として生きていく道を選んでいくのだ。むごい仕打ちの前半戦もあるが、日本人になり、妻をめとって生きていく宣教師たちの生きざまに強い関心を持った。

3.俳優たち
アンドリューガーフィールド、リーアム・ニーソンと一流スターも登場するが、外人さんたちは慣れない土地で、普通の演技をしているという感じだ。ここではイッセー尾形演じるのらりくらりの演技が際立つ。緩急のつけ方が巧みなイッセー尾形アンドリューガーフィールドをからかうのが滑稽

今回は台湾で撮影されたという。九州と比較すると南になり、気候や風景も変わるだろうが、不自然ではなかった。改心した宣教師たちを寺で映すシーンがある。こういう寺が台湾では残っていると思えないので、日本国内なのかな?
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