映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「対外秘」チョジヌン

2024-11-20 22:12:01 | 映画(韓国映画)
映画「対外秘」を映画館で観てきました。


映画「対外秘」は90年代初頭の韓国釜山を舞台にした国会議員候補選出に伴う裏話がベースとなる映画である。韓国映画界の人気俳優チョ・ジヌン、イ・ソンミンの2人に加えてキム・ムヨルが加わる。監督は「悪人伝」のイ・ウォンテである。韓国の政界の暗闇にメスを入れた作品は、どれもこれも面白い。しかも,日経新聞映画評で時代劇評論家の春日太一が満点をつけている。わりと韓国映画に評価が甘い評価者だが、思わず期待して映画館に向かう。

1992年、釜山。党の公認候補を約束されたヘウン(チョ・ジヌン)は、国会議員選挙への出馬を決意する。ところが、陰で国をも動かす黒幕のスンテ(イ・ソンミン)が、公認候補を自分の言いなりになる男に変える。激怒したヘウンは、スンテが富と権力を意のままにするために作成した〈極秘文書〉を手に入れ、チームを組んだギャングのピルド(キム・ムヨル)から選挙資金を得て無所属で出馬する。地元の人々からの絶大な人気を誇るヘウンは圧倒的有利に見えたが、スンテが戦慄の逆襲を仕掛ける。だが、この選挙は、国を揺るがす壮絶な権力闘争の始まりに過ぎなかったーー。(作品情報 引用)


期待したほどではなかった。
釜山は日本人にとってはソウルと並んでなじみ深い街だ。九州から船でも行き来できる場所で映画にもずいぶんと取り上げられる。直近はタワマンだらけになったようだ。漁業従事者が多かっただけに利権も絡んだだろう。

そんな釜山のマル秘開発計画がこの映画のキーポイントだけど、時代が90年代前半だとそこまで開発が進んでいないかもしれない。映画ではあまり突っ込んだセリフがないので、マル秘文書に関わるプラスマイナスが自分にはよく理解できなかった。開発となれば、その場所の土地を買っておけばものすごく儲かるというよくある話だ。

国会議員になるためにまともに何か動くのでなく、主人公ヘウンが高利貸しのヤクザと組んでムチャクチャをさせる構図だ。最近はどうかわからないが、ひと時代前の韓国政界にはこんな構図があったのだろう。。途中から敵味方逆転させることが多くなっても、それが不自然に感じイマイチのれない作品だった。


主演の2人の作品はこれまで数多く見ている。特にチョ・ジヌンが日本でもリメイクされた「最後まで行く」で演じた悪役は最強で最も怖い悪役刑事だった。それ以来、注目している俳優である。最近チョジヌン主演の名義貸しの韓国映画を見たが,あまり面白くなかった。予告編でチョジヌンの演説姿が出てきて盛り上がるように見えたけど、理解しづらい裏話だらけだった。

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映画「シングル・イン・ソウル」

2024-11-08 21:12:58 | 映画(韓国映画)
映画「シングルインソウル」を映画館で観てきました。


映画「シングルインソウル」ソウル居住の独身男女の物語である。映画「建築学概論」が好きで、そのスタッフが製作に関わったというコメントが気になる。平穏な映画が観たいという欲求とソウルの街中が楽しめそうという観点で選んだ作品だ。監督はキム・ボムス、脚本は『KCIA 南山の部長たち』『密偵』のイ・ジミンだ。

ソロ活好きで気ままなシングルライフを楽しむ、カリスマ塾講師で人気インフルエンサーのヨンホ(イ・ドンウク)。出版社の有能な編集長だけれどひとりでいる事が苦手で恋愛に関しては妄想癖のあるヒョンジン(イム・スジョン)。

シングルライフと観光地がテーマのエッセイ「シングル・イン・ザ・シティ」シリーズの作家と編集者として出会ったふたりは、ライフスタイルも価値観も何もかもが違い、本をめぐって事あるごとに対立するが、企画が進むにつれ一緒に過ごす時間も悪くないと思い始める。(作品情報 引用)


大きな緩急がなく平穏に流れる韓国映画では珍しい展開だ。
韓国映画特有のドロドロした雰囲気は皆無のラブコメで、今まで数多くの韓国映画のどれかで見たことあるなあというソウルの街角風景が映し出される。

カリスマ塾講師を演じるイ・ドンウクは日本で言えば井ノ原快彦になんとなく似ていて、「今でしょ」の林修講師のような感じで塾で小論文を教える。自分の講義をマスターしたらソウル大学でもどこでも入れると自信満々だ。いくつかの恋に失敗して、グルメに洋服に自分のためにカネを使うと決心する都市部のシングルだ。ソウル中心部を流れる漢江を見渡せる夜景がキレイなマンションでシンプルなインテリアの部屋に住む。


小さな出版社の編集長を演じるイム・スジョンは髪にクシも通さずオシャレに気を使わない。乗ってるクルマも洗車すらせずに汚い。仕事一本槍の雰囲気だ。部下の信頼は厚い。編集者としては優秀で、作家にピッタリ寄り添う。自分が編集に携わった本を誰かが立ち読みしているのを見て感激して仕事を頑張っているという。韓国の女性はみんな酒が強い上方漫才のような女子社員たちとみんなで飲みに行った時のパフォーマンスが楽しい。


そもそも合わない2人は徐々に接近する。
塾講師ヨンホのホテルバイトでの初恋話を聞きながら、徐々に盛り上がっていく。そこで出てくる初恋の相手がイ・ソムでビックリする。「愛のタリオ」は割とエロティックな場面が抑え気味の韓国映画の中では珍しく、イソムが乳首丸出しの絡みを披露する。アレ?本当にやっているんじゃないだろうか?と思わせる。それから彼女が出てくるたびにドキッとする。


初恋話に絡むのが村上春樹「ノルウェイの森」だ。自分は昭和の頃に読んだこの作品を韓国映画の登場人物が劇中で読むのに驚く。他の映画でも取り上げられているし、どうやら韓国でも村上春樹は人気があるようだ。
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映画「消された男 DEADMAN」チョ・ジヌン

2024-10-21 20:17:51 | 映画(韓国映画)
映画「消された男 DEADMAN」を映画館で観てきました。


映画「消された男 DEAD MAN」は韓国サスペンス映画で人気俳優のチョジヌンの主演だ。「お嬢さん」「毒戦」などの代表作ははあるが、日本でもリメイクされた「最後まで行く」悪役が不気味な恐ろしさで怖かった。チョジヌンはその時々で違った顔を見せる。彼の出演作なので今回マークする。単なる名前貸しのつもりが陰謀に巻き込まれ、死んだことにさせられてしまう男を演じる。

妻に離婚を迫られたり窮地に陥るイ・マンジェ(チョ・ジヌン)は「名義貸し」の雇われ社長としてスポーツ業界の会社に勤める。言われるままに身を隠すように言われてマカオに行くと、TVで自分に1000億ウォン横領の疑いがかけられてそのまま行方不明になっているニュースを見て驚く。

気がつくと、何者かに拉致されて中国の私設刑務所に閉じ込められてしまう。そこで苦役の生活をする間にすでに死亡していたことになっていた。2年半過ぎた時、謎の女性シム女史が現れ、彼を救い出す。彼女は大統領選に絡む政治コンサルタントだった。マンジェは刑務所を脱出できたがシム女史は彼を利用して政界工作を企てていた。

残念ながら期待外れだった。
定評のある韓国クライムサスペンスでここまでつまらないのはかなり珍しい。話自体が訳がわからず、展開も微妙で眠気を呼んでしまう。大金が絡んでもスリリングでない。韓国映画の詐欺がらみはおもしろい映画多いけどね。。。


仕事探しに廃車が大量に置いてあるところへ行き、「深く考えすぎると稼げない」名前を貸すと金になるよと言われる。韓国っぽい古い建物で印鑑を作ったりする場面の後普通に仕事をする。雇われ社長は日本のサラリーマン社会でもよくある話で、オーナー社長の代わりに実務をやる訳だが、今回は単に名前を貸すだけ。一応出社して個室を持って承認の印は押す。ただ、陰謀にハマってから後のストーリーがよく理解できない。刑務所を脱出後の大統領選に絡んでの両陣営の策略も映像を追ってもちんぷんかんだ。韓国の人ならわかるのかなあ?せっかくのチョ・ジヌンの登場だけど、見どころも少なく気がつくと終わってしまう。


楽そうに見える名義貸しだけど、ハマると怖いなあと言うことだけは教訓となる。確かに借金が絡むと個人財産まで持っていかれるもんね。それだけわからせてくれる映画にすぎなくて韓国クライムサスペンスにしては残念選択ミスもたまにはあるだろう。
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映画「ソウルの春」 ファン・ジョンミン&チョン・ウソン

2024-08-24 18:06:23 | 映画(韓国映画)
映画「ソウルの春」を映画館で観てきました。


映画「ソウルの春」朴大統領暗殺後に軍部主体の政権となるきっかけの粛軍クーデターという実話に基づく韓国映画だ。ソウルオリンピック前の韓国の重要場面の真相に迫る。キム・ソンス監督がスケールの大きい作品に取り組む。

当時KCIAによる金大中拉致事件以来日本では韓国に対して得体の知れない怖さをもつようになった。同時に全斗煥大統領(チョン・ドゥファン)による政権は軍部主体のイメージが強く、学生だった自分から見ても不気味な存在だった。映画でも全斗煥が鎮圧した光州事件など圧政が何度も取り上げられている。粛軍クーデターの真相を知るのは初めてで、隣国の歴史を知る意味でも価値のある作品だ。現代韓国史の重要場面を描いた作品はどれもこれもおもしろい

1979年10月26日、朴正熙大統領が自らの側近により暗殺された。世間では民主化を期待する一方で、陸軍では暗殺事件の合同捜査本部長に就任したチョン・ドゥグァン保安司令官(ファン・ジョンミン)を中心に粛清を図っていた。陸軍内の派閥“ハナ会”の将校と徒党を組んでいることを参謀総長チョンサンホ(イ・ソンミン)はよく思っていない。東部の司令官に左遷する噂も立っていることに反発してチョンはクーデターの策略を練る。


1979年12月12日、ノ・テゴン(パク・へジュン)らのハナ会の仲間と念入りにつくったシナリオに基づき首都ソウルでクーデターを決行する。まずは参謀総長が逮捕拉致される。一方で、参謀総長の推挙で首都警備司令官に昇進したイ・テシン(チョン・ウソン)は途中でクーデターを察知して司令部に戻り指揮を取る。前線の軍隊がソウル市内に入るのを食い止めるべく各方面に指示する。 

電圧の高い映画で、ビリビリとした体感を感じたままラストまで緊張感を保つ。
現代韓国史の真相に迫る実録モノ映画が次々公開されている。いずれも傑作だ。しがらみでつくれない日本と違うところだ。全斗煥がその後大統領になることは既知の事実である。結末がわかっていてもこの映画がおもしろいのは、クーデターに成功するまでの過程がすんなり行かないからだ。韓国で大ヒットしたのは、この歴史上の事実と同世代に生きた人たちが大勢存命だからだろう。現在のようにハングル文字ばかりの表記でなく漢字表記もまだ残っている時代だ。

TVや新聞に映るクーデターシーンは街の中を軍部の戦車が占拠する完成形だ。結末はわかっても、軍事クーデターってどのように進んでいくのか?われわれは知らない。もともとは軍部を統括する既存勢力による支配をよく思っていない連中による暴力的な反発だ。画面分割の手法を多用して、同時進行している動きを緊迫感あるように見せてくれる。

戦前の日本には五一五、ニニ六と若手将校による政界の大物を殺害するクーデターがあったが、戦後はない。映画には複雑な人間関係と軍部内の上下関係が根底に流れる。詳細をいろんなシーンで見せてくれる。

⒈ハナ会(ハナファ)と全斗煥
ハナ会はセリフにも次から次へと出てくる組織名だ。陸軍士官学校OBによる私的組織で、朴正熙大統領時代から存在した。司令部や前線の各部隊の要職にハナ会のメンバーがいて、全斗煥が彼らと組んで参謀総長率いる既存勢力から権力奪還を目論んだのだ。結局、クーデターで軍部内での権力を握った後はハナ会メンバーで要職を固めたという。


⒉大統領閣下
この映画を観るまで、朴大統領の後の大統領は全斗煥だと思い込んでいた。任期が短い崔圭夏大統領という存在を知らなかった。1979年に朴大統領が暗殺される前の1975年に首相となり、暗殺後大統領代行を経て12月6日に大統領に就任している。このクーデターのすぐ前だ。全斗煥が参謀総長も朴大統領暗殺時に犯人のそばにいたので逮捕する許認可を得るためにクーデターの間何度も大統領の元へ行く。この映画では何度もそのシーンがある。崔圭夏は当然許諾しない。全斗煥はクーデターを成功させ、国防大臣を味方に入れて追認を許容させる。

⒊ファンジョンミン
ハゲのカツラをかぶっていつもながらの派手なパフォーマンスだ。たまたまNetflixで最新作「クロスミッション」を見たばかりだ。アクの強い役柄が得意で正義の味方というより悪の親玉のキャラクターが似合う。全斗煥はこのクーデターで軍部内の権力を奪いとり、最終的には翌年大統領となって独裁者となる。どう見ても、正統なやり方ではない。そこには激しい銃撃戦も絡むし、死亡者も多数でている。前線軍の出動もある。ここまでアクの強い役柄ができるのはファンジョンミン「人には強いものに導かれたい願望がある」と自分の周囲に取り込むチョンを演じる。


⒋チョン・ウソン
クーデターから既存勢力を守る首都警備司令官だ。イ・テシンはこの要職に就きたかった訳ではない。参謀総長からの要請を自分がその器でないと何度も断るシーンがある。ただ、いざ役職につくならしっかりやると映画の中でも要の活躍だ。結果はわかっていても次々とクーデターの勢力に対抗する手段を探るディテールが興味深い。この映画は実在人物の名前をかえている。イ・テシンにも張泰玩(チャン・テワン)というモデルがいる。Wikipediaによると、クーデターで完全に失脚した訳ではなく、その後会社の社長や国会議員にもなったと聞くと意外に思った。


イ・ジョンジェと組んだ「ハント」でも全斗煥大統領の警護活動をする役柄だった。「アシュラ」でも悪徳市長の手下になる役柄でファンジョンミンと共演している。破茶滅茶な殺し合いになった葬儀のシーンが脳裏に残る。女の復讐を描いた「愛のタリオ」は韓国らしいドロドロとした映画で、エロチックなシーンも多いけどチョンウソンが登場する。おもしろい映画だ。もともとは普通の二枚目俳優だったけど、役柄は広がった。
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Netflix映画「クロスミッション」 ファンジョンミン

2024-08-16 18:02:25 | 映画(韓国映画)
Netflix映画「クロスミッション」を観ました。


Netflix映画「クロスミッション」は韓国の人気俳優ファン・ジョンミンが主演。Netflixのホームを探っていると韓国大物俳優が気になってしまう。やり手刑事の夫として主夫をしているファンジョンミンに妻に隠す特殊工作員としての過去があり、事件に巻き込まれるという話だ。

ファンジョンミンはこのブログでも何回も登場している韓国クライムサスペンスには欠かせない存在だ。泥くさいプロフィールが得意で善悪両刀使いだ。ソル・ギョング、イ・ジョンジェをはじめとしてスター級俳優がNetflixに登場するが、ファンジョンミンの映画は初めてか?興味深いので観てみると一気に観てしまう。

女性刑事のカンミソン(ヨムジョンア)は男刑事たちを従えて難事件を解決する格闘能力もあるやり手だ。家では激務のミソンに代わって主夫のパクガンム(ファンジョンミン)が家事を任されている。

夫のガンムが街に出た時、女性が暴行を受けている場面に出くわす。とっさに助けると旧知のヒジョン(チョンへジン)だった。ガンムは元特殊工作員でヒジュンと一緒に任務に加わっていた。特殊部隊にいたことは妻のミソンには言っていない

2人が一緒にいるところをたまたまミソンの警察の仲間が見つける。報告を受けたチーム長(チョンマンシク)が浮気ではないかと気にしていることがミソンにバレて、ミソンもガンムを密かに尾行する。ガンムはヒジュンの夫が行方がわからないことに犯罪組織が絡んでいると読んで足を突っ込む。

軽めの韓国クライムサスペンスが軽快だ
Netflix映画なのでカネがかかっていてメジャー俳優も揃えられる。コメディタッチな部分もあり、あきずに楽しめる。暇つぶしの娯楽にはいい感じだ。
作品情報を読み込んでいなかったので、ヘラヘラした主夫のファンジョンミンに驚く。男まさりの刑事の妻を支える役だ。いつもとファンジョンミンのイメージと違い、これは普通のドラマかと一瞬思ってしまう。すると、ファンジョンミンらしいアクションが飛び出す。ここでは刑事である妻の格闘シーンも多くW主演に近い存在感を見せる。

⒈ファン・ジョンミン
韓国一級のクライムサスペンスではファンジョンミンの個性が生きる。自分がブログで取り上げた作品でもさまざまな役をこなす。「新しき世界」では華僑犯罪組織の親分、「コクソン」では祈祷師、「アシュラ」では利権をむさぼる市長、「ただ悪より救いたまえ」では引退寸前の殺し屋などでファンジョンミンらしいアクの強さを見せる。「工作 黒金星」ではテイストが違うけど今回と同じ特殊工作員だった。それなのにどうしたんだろうと最初は思う。でも違った。

その昔は特殊工作員で今は違うという設定はリーアムニーソンやデンゼルワシントンが得意とする役柄だ。身内を助けるパターンが多いけど、ここでは刑事である奥様を助けるというか共闘する。過去の映画で見せた破茶滅茶ぶりがここでも発揮される。近日公開の次回作では全斗煥大統領を演じるらしい。楽しみだ。


⒉ヨムジョンアとおなじみの脇役たち
ヨムジョンアが大活躍だ。機関銃をぶっ放す。格闘シーンも多いし、犯人検挙後の打ち上げで酔いつぶれるシーンもある。近作「密輸1970」でも登場して、海女さんのリーダー役を演じる。この映画ではキムヘスが破茶滅茶なキャラだったのに対してまともな海女さんだ。あの映画からはこんなアクションができるようには見えない。ちょっと広末涼子に似ているなと思っていた。

韓国映画を観ていると、こいつお馴染みの顔だなあというのがいつも数人いる。今回は警察のチーム長のチョンマンシクだ。日本公開分だけでも8作を観ている。コミカルなテイストがあるので起用しやすいのであろう。ファンジョンミンとの浮気を疑われるチョンヘジンの途中からの変貌も見ものだ。彼女もいろんな作品で出会う。ふと気がついたのだが、ヨムジョンアもチョンヘジン身長170cm以上ある。韓国人女優は皆長身だ。モデル出身なんだろうか?


⒊バキュームカーでの突撃とカーチェイス
この映画での陰謀は軍の機密費に関わるものだ。行方不明の元同僚の行方を探るために、偽の通行証をつくってバキュームカーでファンジョンミン演じるガンムが軍の施設に入り込む。下水道の完備で最近日本ではバキュームカーを見なくなったので若い人わかるかなあ。

軍の施設から逃走している時に背後から追いかけられる。バキュームカーのホースで後続車を交わすのは最高。というか笑える。そこでのカーチェイスが見ものだ。一般道でこんなクルマのロケができる映画への寛容性韓国社会にあるのかなと感じる。
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映画「このろくでもない世界で」

2024-07-31 17:12:14 | 映画(韓国映画)
映画「このろくでもない世界で」を映画館で観てきました。


映画「このろくでもない世界で」は韓国得意のクライムサスペンスである。お気に入りの俳優が出ているわけではないが、直感で選択する。長編デビュー作のキム・チャンフン監督の作品。原題はオランダを意味する。韓国の下層社会に生きる高校生がやむなく裏社会稼業に従事せざるをえない状況を追っていく。既視感があるストーリーとも言えるが、若くして堕ちていく主人公を追う。

継父のDVに怯える18歳のヨンギュ(ホン・サビン)は、義理の妹ハヤン(キム・ヒョンソ)を守るために暴力沙汰を起こして高校を停学、その上、300万ウォンの示談金を求められる。町中華のバイトで稼ごうとするが、遠く及ばない。暴力沙汰でクビになる。


ヨンギュは、ひょんなきっかけで裏社会組織のリーダー、チゴン(ソン・ジュンギ)に助けてもらう。チゴンは同じ育ちの匂いをヨンギュに感じたのだ。ヨンギュはその後も金銭的に厳しくチゴンのもとで働かせてもらいたいとお願いする。路上駐車のバイクを盗んで裏ルートで売る仕事の手伝いをするのだ。チゴンの本業裏金融の世界でも手助けをしてヨンギュは徐々にチゴンに認められていく。ところが、難題の依頼を受けざるを得ない状況になる。

韓国の下層社会と裏社会の狭間を生きる青年の物語だ。
元々の父親を知らずにシングルマザーのもとで育った高校生が母とDVの義父と血のつながっていない妹と暮らす。生活は苦しい。いつも通りの韓国下層社会の物語で、裏社会に転落するパターンもよくありそうだ。暴力表現は韓国らしくかなりドギツイ。日本映画「あんのこと」で示す下層社会と似て家庭環境はよくない。ただ、違うのはこの映画では当事者が更生しようとするシーンがない。堕ちていくだけだ。


18歳の貧困少年ヨンギュと、裏社会の男チゴンの友情が見どころだ。韓国映画では毎度の定番のように見えるが、裏金融の取り立てのきびしい部分も映し出す。ヨンギュのことをかっているといっても、2人の関係にもかなりの紆余屈折がある。リーダーの上にいわゆるドンがいて、政治の世界も絡んだ面倒な世界だ。言うこと聞かない奴の始末にも手をつけろとドンを通じて命令が下る。共感が持てる登場人物はいないけど映画の全体レベルとしては、それなりと感じる。

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映画「密輸 1970」 キムヘス

2024-07-13 07:18:32 | 映画(韓国映画)
映画「密輸1970」を映画館で観てきました

映画「密輸1970」は海に密輸品を投げ込み海女さんがそれをピックアップしてこっそり運ぶ話が題材の韓国映画だ。海女さんをこんなことで活用する発想自体に驚く。監督は「モガディシュ脱出までの14日間」で凄まじいアクションを見せてくれたリュスンワンだ。韓国では随分とヒットしたらしい。

主演のキム・ヘス「国家が破綻する日」「コインロッカーの女」などで主演を張ったベテラン女優で、出演作は割と観ている。70年代半ばのドン臭い派手な格好で立ち回る。同じく海女さんのリーダーであるヨムジョンハは広末涼子系ルックスのいい女。2人をはじめとして韓国の人気俳優を揃える。

1970年代中盤、韓国の貿易港クンチョンで海女さんのグループが、工場の汚染水の影響で獲った海産物が売り物にならず困っている。その頃、税関を通さないために海に投げ込んだ密輸品を海女さんに引き揚げてもらう話がくる。リーダーのジンスク(ヨムジョンハ)は仲間の生活を考えてやむなく引き受けてうまくいった。ところが、税関の取締りにあい逮捕されてジンスクは刑務所生活だ。

危機一髪逃げたチュンジャ(キムヘス)はソウルで裏流通で一旗あげる。2年が経ち、チュンジャは釜山で密輸ルートをおさえていたクオン(チョインソン)と知り合い、故郷クンチョンに戻ってきて以前のような密輸を再度企てる。ジンスクは反発するが、生活のためにもう一度海女さんに引き揚げを手伝わせる。それには税関も黙っていなかった。


娯楽として十分楽しめる作品だ。
夏には疾走する船が漂う海や海底が前面に映像に出る作品の方が観ていて涼しげで気分がいい。映画のバックに流れる音楽が、昭和50年(1975年)前後の東映映画やTVのアクション番組のムードを漂わせる。リズムギターの音色がまさにそうだ。韓国演歌も昭和の匂いだ。監督はかなり東映映画を観ているのではないか。


わざとやっているのだろうが、女性陣の風貌もまったく洗練されていない。チリチリパーマで服装のセンスがバタくさい。ソウルオリンピック前の貧しかった韓国の姿そのものだ。このノスタルジックな雰囲気に惹かれる人も多いだろう。亡くなった自分の父親はこの時期韓国によく遊びに行っていた。当時の韓国人は幼少時日本語教育を受けていたせいか流暢に日本語を話す人が多く、運び屋をお願いされたこともあったそうだ。日本人の自分が観ても、コンプライアンス感皆無のこの世界を見るのが楽しい。雰囲気がBC級映画のたたずまいだが、ストーリーは韓国映画らしく単純ではない。

キムヘス演じるチュンジャは幼い頃から家政婦をやっていて金儲けには貪欲だ。常に悪知恵を働かせる。危機一髪の場面をいつもすり抜ける。昨日の敵が今日の友になったり、敵味方交錯して訳がわからなくなるのも東映のヤクザ映画と似たようなものだ。密輸を絡めてチンピラと税関が通じていて、カネにめざとい奴らが悪いことをする。収賄もアリアリだ。最近の韓国はどうなんだろうか。


それにしても、この海女さんたちが海底を潜水するシーンはどうやって撮ったんだろう。全部海なのかなあ?それともプールにセットしたのか?いずれにせよ、長い時間素潜りで海底の密輸品をもあさる海女さんたちに脱帽するしかない。酸素ボンベをつけたチンピラと海女さんが海底で対決して、チンピラのボンベをはずすシーンもどうなっちゃうんだろうと思わせる。
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映画「スリープ SLEEP」 イ・ソンギュン

2024-06-30 17:31:11 | 映画(韓国映画)
映画「SLEEP 」を映画館で観てきました。


映画「スリープ」は昨年末亡くなった韓国のイ・ソンギュン主演のスリラー映画だ。最近公開作がでたホン・サンス監督の「ソニはご機嫌ななめ」チョンユミイソンギュンが共演している。自由奔放なチョンユミがよかった。新人監督ユジェソンのこの作品を元の親分ポンジュノが推奨している。

昨年末のイソンギュンの自殺は実に残念だ。訳のわからない女にハマったのか?薬物所持の疑いで最後は悲惨だった。実際に何があったのだろう?これまでの活躍には敬意を表したい。金大中のずる賢い選挙参謀を演じた「キングメーカー」が特に好きだった。この作品が遺作かと思ったら、どうやらまだあるらしい。

舞台俳優ヒョンス(イソンギュン)は、コールセンターのチーム長である妻スジン(チョン・ユミ)と一緒に暮らしている。妻は身もこもっていた。ある夜突如「誰かが入ってきた」と夫が叫ぶ。その時点から急に寝付きが悪くなる。自ら顔を掻きむしって傷だらけ。病院に行くと睡眠障害と言われる。

その後も奇怪な行動が続く。夜中に突如として起き出して、冷蔵庫で生魚を食べたり,窓から飛び降りようとしたり不穏な動きが続く。夢遊病のようだ。せっかく妻は出産したのにヒョンスの様子がおかしいので妻の母親は心配して霊媒師のような巫女を呼ぶ。


残念ながら自分にはあわない映画だった。
イソンギュンとチョンユミの韓国の2大スターが共演するにはスケールが小さい
霊のような何かに取りつかれるパターンは韓国サスペンス系では比較的多い。秀吉の朝鮮出兵で16世紀に仏教禁止となった朝鮮では宗教への信仰というよりシャーマニズム信仰が朝鮮大陸の伝統だ。19世紀末に朝鮮を訪れたイザベラバード女史の名著「朝鮮紀行」でもシャーマニズム信仰が取り上げられる。ファンジョンミンが祈祷師を演じた「コクソン」もそのテイストが強い。ただ、「コクソン」のもつ迫力と怖さがない。

この映画は韓国サスペンス系では珍しく途中のリズムが悪く、眠気を誘う状態になりがちだ。部屋中に貼ってあるお札が異常で、最終に向けてチョンユミも豹変して人智を超えた世界に持ち込むがのれない。


韓流ドラマ好きが以前よりも増えている気がする。自分と同年代周辺のおばさんたちとの話題で韓流の話題が欠かせない。若い韓流スター好きもいるが、どちらかというとストーリーの予測がつきにくいことでの韓流ストーリー好きが多い。いいことだと思う。日本も見習うべきだ。映画「パラサイト」というよりドラマ「マイディアミスター」での活躍もあってかイ・ソンギュンのファンも多い。観客にも熟年女性ファンの姿が目立つ。ただ、怖いということだけでは先日観た「ターゲット」の方が恐怖感を覚えた。

イソンギュン
の次作に期待する。
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映画「ターゲット 出品者は殺人鬼」キシンヘソン

2024-06-26 18:30:33 | 映画(韓国映画)
映画「ターゲット 出品者は殺人鬼」を映画館で観てきました。


映画「ターゲット 出品者は殺人鬼」は韓国得意のクライムサスペンス。中古品売買が盛んにネット上で行われている韓国では詐欺犯罪が多発しているらしい。解説によれば、1日あたり228件の被害届とは多い。中古品売買での犯罪をパクヒゴン監督が題材としている。以前,振り込み詐欺を題材にした2022年の韓国映画声 姿なき犯罪者年間ベスト級の面白さだった。こういう特殊犯罪の手口を題材にした韓国映画はどれもこれもおもしろい。今回もその系統かと映画館に向かう。

スヒョン(キシンヘソン)はネットで中古の洗濯機を購入する。しかし、後日壊れた洗濯機が届き、詐欺にあったことに気づく。警察に行ってもすぐ捜査してくれない。スヒョンは、出品者のアカウントに直接連絡をとり、返金を要求するが相手にされない。感情的になったスヒョンは、相手に怒りに満ちたメッセージを送りつけると、出品者から執拗な嫌がらせを受けるようになる。


予想通り緊迫感あふれるサスペンスだ。
ホラー映画を思わせる恐怖の波状攻撃で次から次へと主人公を恐怖に陥れる。観ているこちらもドッキリだ。映画を見終わると、中年女性が怖かったねえと語り合っていた。娯楽として見る価値は十分だ。

1,ネット上の恨みつらみ
ネット上の売買で中古品の起動しない洗濯機が送られてきたわけだから,購入者がクレームをつけるのは当然のことだろう。しかし,この出品者は気がつくと、IDもなくクレームがつけられない状態になっている。何とか別のサイトから見つけ出して、詐欺だと訴えていく。しかし、それが恨みを買うことになってしまった。

被害者の自宅にこれでもかとピザやチキンなどの出前が押し寄せる頼んでない食べ物を次から次にデリバリーで持ってくるのだ。それだけではない。出会い系でこの部屋で待っていると、男性が夜押し掛けてくる。なるほど,こんな仕返しがあったのか。


その辺から恨みと仕返しの応酬が続く。見るも無惨だ。警察は動かない。こんな話は日本でもあるのだろうか?やはりこの手の犯罪は、いかにも韓国っぽい感じがしてくる。

2,不死身の悪者
韓国映画の悪者はともかく強い。不死身の殺人鬼だ。そう簡単には仕留められない。しかも、ネットを駆使して徹底的な嫌がらせをするだけでない。映画が始まり、中古品売買で物品を取りに行き、出品者が殺されるシーンからしばらくの間悪者の姿が見えない。ともかく顔が見えない。それだけで不気味だ。

姿を現してからも、悪者は強さを発揮する。被害を受ける人たちが1人、2人と出てくるのだ。韓国の路地のような狭い道路でのカーチェイスはなかなかの迫力だ。そんな逃走劇があっても捕まらない。刑事との格闘場面でももうダメかと思っても生き延びる


実は被害者のスヒョンは建築会社の工事リーダーだ。格闘場面で施工中の現場が出てくる。そこで主人公が釘打ち機を武器に使用するのだ。こんなのは初めて見た。格闘場面もアイディアに満ちあふれていてスリリングだった。
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映画「貴公子」キムソンホ

2024-04-29 21:13:57 | 映画(韓国映画)
映画「貴公子」を映画館で観てきました。


映画「貴公子」は韓国得意のアクションサスペンス作品で、名作「新しき世界」パクフンジョン監督がメガホンをもつ。GWに入って何気なくNetflixオリジナルの日本のアクションモノ「シティハンター」を観るが、面白くない。リカバリーで何かアクションモノを観ようとこの映画を選択する。実績のある監督だけに期待できそう。

地下格闘技の世界でボクサーをやっているフィリピン在住の青年マルコ(カンテジュ)は、母親の医療費を捻出するために略奪の一味にも加わる養護施設育ちの底辺を彷徨う男だ。そこに富豪の父親の代理人と称する弁護士が現れる。すぐさま韓国に帰国して欲しいと飛行場に急ぐ。航空機の中で友人だと名乗る不気味に笑う男(キムソンホ)に声をかけられる。


韓国で父親と称する男に会いに行こうと、弁護士と同乗していると、飛行機で出会った男が運転するベンツが幅寄せをしてきて、クルマは道路を外れて大破する。追ってきた男から懸命に逃げようとするが。


韓国アクション映画らしくレベルは高く、スリリングな場面が続く。
カーチェイスと家の屋上や塀をつたわっての逃亡劇は見ごたえ十分だ。


フィリピンと韓国の混血をコリアンフィリピーノ略して「コピノ」というらしい。これは初めて聞く。日本に大挙して出稼ぎに来たジャパユキさんが混血の子どもを産んでいたのと同じように韓国でも同じようなことがあったのであろう。施設で育った青年だ。裏社会の格闘技でキックボクシングをやって母親の治療費のために金を稼ぐが、強奪にも加わる。バクチにもカネを投入して負けている。

その混血青年マルコが富豪の息子とわかるので、てっきり彼が主人公の貴公子だと思ったら違う。徹底的に追跡する常に不気味な笑みを浮かべる男が実は貴公子なのだ。演じるキムソンホはNHKからフジTVに移った青井アナウンサーに似ているイケメンだ。

最後まで味方なのか悪役なのかよくわからない。この男だけ意図が見えない。格闘能力は高い。コピノと言われる混血少年をひたすら追い続ける。観客に恐怖心すら起こさせる。韓国クライムアクションによく登場する不死身な男だ。マルコはひたすら逃げまくる。スリラー映画での悪役みたいだけど結局主役だ。


マルコの追跡にかかわるユンジュという女や富豪の息子にあたるハンなど残忍な奴らも登場させてのカーチェイスはもの凄い迫力だ。中央分離帯のない自動車専用道路でバシバシUターンを連発する。高級車やベンツもつぶしてしまう。カメラアングルもいったいどうやって撮っているんだろうというスリリングなショットだ。

韓国映画の予算取りは日本より大きい感じがする。日本映画ではなかなかこうはいかない。東南アジアでの外国ロケの映画も目立つ。ここでも不気味なフィリピンの夜を映し出す。映像のレベルは高い。
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映画「ビヨンド ユートピア 脱北」

2024-01-15 19:33:42 | 映画(韓国映画)
ドキュメンタリー映画「ビヨンド ユートピア 脱北」を映画館で観てきました。


映画「ビヨンド ユートピア」北朝鮮からの脱北者が実際に国境を越えるのを追うドキュメンタリー映像である。予告編から大体の内容の想像がついたが,好奇心でみたくなった。監督は数々の映画の編集に関わっているマドレーヌ・ギャヴィンである。

息を呑むようなシーンが続く。目が離せない。
脱北に成功する事例と失敗した事例の両方が語られる。いずれも多数のブローカーが絡んでいる。実にうさん臭い
必見のドキュメンタリーだ。

ソウルに住む牧師が脱北に関与している。脱北と言うと北朝鮮から国境を越えて中国に行くことだけを想像する。ただ、この牧師は中国からは出禁になっている。脱北に失敗して中国で拘束されると北朝鮮に強制送還される。失敗して拘束された人たちへの当局からの仕打ちは半端じゃない拷問だ。結局,中国に渡った後、車で長距離の移動をして,ベトナムに渡りその後ラオスに移動する。最終的にメコン川の国境を渡りタイに渡る。タイに行かないとラオスも北朝鮮の友好国だけにとらわれると強制送還される。


命がけの脱出である。まずは北朝鮮から中国に移動すること自体が大変だ。容易に川を渡って中国に渡る人たちが多かった時期もあったようだ。現場の監視が厳しくなり脱北の難易度が極めて高い。国境を渡ってもその先には高い山がある。この映画の映像はコロナ前の脱北だ。コロナになった後は中国からベトナムに行くこともできず,牧師のところに脱北の希望がずいぶんと来ていても、なかなか着手できないようだ。

映画の中では,北朝鮮のリアルな街頭映像が何度か出てくる。
本当に貧しそうだ。よく韓国映画で北朝鮮の街路を映し出している映像と大きく変わらない。

もともと朝鮮戦争の休戦後はむしろ南より北の方が豊かだった時代もあった。日本統治時代に,北朝鮮エリアで開発した日本の産業プロジェクトが多く、北朝鮮がそれを無償で継承できたことも影響している。日本統治が朝鮮発展に寄与したことも多い。1970年代後半から,韓国が驚異的な経済成長を遂げる。逆に北朝鮮はソ連の崩壊に伴ってそれまで潤沢だった援助が受けられなくなった。そこで大きな差がついた。北朝鮮の指導者は,ひたすら核開発に向かう一方で,国民の生活は無視されている。


この映画を観て初めて知ったこともいくつかある。中国から大陸を縦断してベトナム、ラオス経由でタイに行って7ヶ月過ごしてから韓国に行くという脱北ルートは初めて知った。あと、金日成主席は当然日本統治下の朝鮮で育ったと思っていた。ところが、幼い頃から中国で育ったので、北朝鮮建国でスピーチする時には朝鮮語が不得手で特訓したなんて話も初めて知った。

ひたすらおかしいのは,脱北している家族の80過ぎの老婆がこの場に及んでもまだキムジョンウンのことを若くして英雄とするスピーチをすることだ。「キムジョンウンの周りが悪い。みんなで国を豊かにしなければならない。」とまで言う。狂っているとしか思えない。一種の宗教みたいなものだろう。北朝鮮では聖書は禁止されているらしい。聖書に載ってるような神話のような話が,北朝鮮でも同じように作られてそれが国民に信じられている。ただ,天皇を神様とした戦前の日本も大して変わらないんじゃないかと自分は感じる。ハイエク「隷属への道」で語る全体主義の残酷な世界北朝鮮にはエスカレートして存在する。


この老婆が脱北に成功して韓国で生活しているときの顔立ちは,脱北途中の顔と全く違っていた。いい顔つきに変わった。ただ1つだけ疑問だったのは,数多いブローカーへの報酬が一体どこから出ているのかがよくわからなかった。失敗した事例の時に,脱北させようとした母親とブローカーとの電話のやりとりを聞くと,特殊詐欺に騙されている老人たちを思わせるようなやり取りにしか見えなかった。それでもすがるのであろう。
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映画「宝くじの不時着 1等当選くじが飛んでいきました」

2023-12-31 08:30:53 | 映画(韓国映画)

映画「宝くじの不時着 1等当選くじが飛んでいきました」を映画館で観てきました。

映画「宝くじの不時着 1等当選くじが飛んでいきました」は朝鮮半島の国境38度線上で宝くじの当選クジをめぐって韓国、北朝鮮両国兵士が右往左往するコメディだ。メジャーな韓国俳優は出ていない。普通だと見過ごしてしまいそうだが、「笑いが止まらない」という評判で面白そうな気配を感じる。

朝鮮半島の国境軍事境界線板門店に駐在中の韓国兵士パク・チョヌ兵長(コ・ギョンピョ)が何気なく拾ったロトクジがなんと57億ウォン(約6億円)の賞金に当選してしまう。本にはさんでこっそり持っていたのに、風にクジが吹き飛ばされて北朝鮮側国境を越えてしまう。大慌てのチョヌは夜中にこっそりと国境の金網をくぐっていくと、北朝鮮兵に銃を突きつけられる。飛んでいった宝くじを偶然ひろった北朝鮮兵リ・ヨンホ(イ・イギョン)だったのだ。

ひろったヨンホは自ら引き換えができないのでチョヌに交渉を持ちかける。持ち分でもめる。しかし、国境線でお互いに交渉しているのが、南北両軍の上司にわかってしまい結局3対3での交渉となる。結局、韓国側で金銭引き換えると同時に逃亡しないように、南北お互い1人ずつ人質を出すことになるのであるが。。。

確かに笑えるコメディだ。

板門店の軍事均衡地帯では朝鮮戦争停戦から長期にわたってお互いに牽制しあっている。そこでの緊張をもとにこれまで映画がつくられてきた。軍事衝突が絡んでそんなに明るい話はない。でも、これはコメディだ。

せっかく当たった宝くじがすっ飛んでいけば誰もがあせる。それがお笑いになるのか?いや、宝くじの行方を探すだけではこんなにも面白くならない。南北両側に多彩な登場人物を用意して、いくつもの伏線となるエピソードを用意する。それを物語の行方とともに少しずつ回収する。韓国映画らしい脚本づくりのうまさを感じる。北朝鮮美人兵士と韓国兵士との禁断の恋も用意する。

特におもしろくなってくるのは、南北両側から人質を出した後だ。当然、オフィシャルな話ではない。交渉にあたる3名と一部の身内以外は内緒で、人質が敵軍に配属される。

北朝鮮側に配属された兵は、最初特殊部隊で瓦割りなどの剛健な鍛錬を受けるが、すぐさま農場に移される。なかなか繁殖が進まなくて困っていた農場だった。ところが、ニワトリや豚たちが交わりやすいようなムードたっぷりの工夫をしただけで、気がつくと次々と卵ができる。食糧事情の悪い北朝鮮では大歓迎だ。平壌に行ってくれとまで言われる。逆に焦る。このやりとりが笑える。

韓国軍に配属された北朝鮮兵が国境線上の大量の地雷が埋まっているエリアを演習中、仲間が地雷に引っかかる。ミスると大爆発だ。とっさに的確な処置をして助けてしまう。うわさが伝わり連隊長は大喜びだ。激励に来て何処出身だと言われて、北朝鮮の町の名前を言おうとして思わずハンブルクと言ってしまう。ドイツの戦争映画を繰り返し観ていてドイツ語を話す。それを上司が良いように訳す。かわす会話が楽しい。

その人質は、宝くじの当選金をもらうまでは戻らない。でも、当選金をもらう前に宝くじをなくさないように股に挟む。そう簡単に引き換えできない。予期せぬ関門をくぐらないといけないのだ。こんな感じで笑えるネタを最後まで用意する。実に楽しい。

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映画「PHANTOM ユリョンと呼ばれたスパイ」 ソルギョング& イ・ハニ

2023-11-23 18:50:18 | 映画(韓国映画)
映画「PHANTOM ユリョンと呼ばれたスパイ」を映画館で観てきました。


映画「PHANTOM ユリョンと呼ばれたスパイ」は日本統治時代の朝鮮京城で、朝鮮総督暗殺を目論む反日の隠密組織が暗躍する姿を描くアクション映画である。「毒戦」イ・ヘヨン監督がメガホンを持ち、ソル・ギョングと「イカゲーム」のパク・ヘスなど韓国のメジャー俳優が出演している。この2人は昨年「夜叉」で共演している。これは良くできていた。

日本統治時代の朝鮮を描いた韓国映画では、「お嬢さん」「密偵」などをこのブログでも取り上げている。それぞれに時期は異なる。当然、反日のムードが強いのは承知してそれぞれの映画を観ている。
英国人女性イザベラバード「朝鮮紀行」を読むと、1890年代の李氏朝鮮時代のソウルが不衛生でひどい状態だったことなど朝鮮の後進性を示す記述がある。日韓併合の後に、識字率が低かった朝鮮の教育水準が向上したのは間違いない。産業も発展した。日本が朝鮮の発展を推進した一方で、日本の統治には問題もある。それ故の反発も数多く起きている。ここでどういう描き方をするのか観てみる。

1933年の京城(現ソウル)反日組織「黒色団」が日本の幹部の暗殺を目論んでいた。朝鮮総督府に新しい朝鮮総督が着任する。歓迎の会で巫女の姿の女が暗殺を目論んだが未遂に終わる。朝鮮総督府内にまだ「ミリョン」という名のスパイが潜んでいるのではと警護隊長の高原(パク・ヘス)は、可能性のある4人、情報受信係 監督官の村山(ソルギョング)、暗号記録係のチャギョン(イ・ハニ)、政務総監秘書の佑璃子(パク・ソダム)、暗号解読係長ウノを人里離れた場所に呼び込む。


ちょっとわかりづらい映画だ。
スパイ映画らしい騙し合いの中で、爆弾が飛び交う激しいアクションシーンが続く。かなり激しい。バックでは音楽が高らかに鳴り響く。音楽のレベルは高い。通常の日本のアクション映画よりもお金がかかっている。

日本の幹部に日本人を起用していると、明らかに日本側の登場人物に属するとわかるが、朝鮮語も時おり話すとどっちの立場かわからなくなる。特にソルギョング演じる村山の立場が途中でわからなくなった。登場人物が不死身な設定もスパイ映画にはよくあるが、これだけ撃たれても、刺されても死なない場面が多すぎる印象を持った。


1933年の京城の街を映し出す。VFXとセットだと思うが、良くできている。マレーナディートリッヒ「上海特急」の映画看板がある街中で、2人の怪しい女性のやりとりを見せる。当時の京城はこんなにムードのある街だったのか?戦前に存在した朝鮮神宮のかなりの高低差がある階段と鳥居を映し出す。


加えて、旧朝鮮総督府の格調高い建物を映す。朝鮮神宮に新任の朝鮮総督が向かった後で、巫女が突如銃を撃つ。この巫女は前夜映画館のそばにいた女で見覚えのある顔だ。「愛のタリオ」で復讐をする女を演じるイ・ソムだ。HPの出演者リストにないし、エンディングロールはハングルで解読不能だけど間違いないだろう。元ミスコリアのイ・ハニと一緒に映る。


日本語のセリフが多い。韓国人俳優たちはセリフに難儀しただろうなあと感じる。若干不自然なイントネーションではあるが、以前観た「お嬢さん」よりはマシである。ソルギョングが映画「力道山」で力道山役を演じた時、不自然さがなく日本語はうまいと感じた。日韓併合から20年経っているので、当時の若い朝鮮人は日本語を流暢に話したであろう。日本の士官学校にいた朴正煕元大統領はもとより、金大中元大統領も日本語が上手だった。

この映画はあくまでフィクションだ。終戦まで12年もある時期に朝鮮総督が撃たれた事実はない。でも、日本人を悪く貶めようとするのも仕方ないことであろう。怖いもの見たさについこの映画を観てしまう。
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映画「ハント HUNT」イジョンジェ

2023-10-01 17:41:24 | 映画(韓国映画)
映画「ハント HUNT 」を映画館で観てきました。


映画「ハント」はNetflixの「イカゲーム」の主演イ・ジョンジェが監督も兼任する韓国現代史の暗部を描くスパイ映画で、数々の作品で主演を張るチョン・ウソンの共演である。1980年代のストーリーでフィクションだと字幕がいきなりでる。とは言うものの、当時の韓国大統領は全斗煥であり、映画でも当然変わらない。われわれの世代だと、金大中拉致事件もあって、KCIAという名に恐怖感を覚えた。KCIAの名前は安全企画部という名に継承されていた。安全企画部の内部での権力闘争と二重スパイ問題に焦点をあてる。

1980年代、韓国の全斗煥大統領が訪米した際、ワシントンDCで韓国民主化を叫ぶデモが行われている。その場面で何者かが大統領へ発砲しようとする。韓国安全企画部の海外グループ長のパク(イジョンジェ)と国内グループのキム(チョンウソン)も現地にいて警護活動をおこなう。両者は対立していた。大統領の車の移動ルートが事前に北朝鮮に伝わっていることがわかり、パクとキムは互いに猜疑心をもって組織内にいるスパイ探しをする。一方で大統領暗殺計画北朝鮮により着手されていることがわかって、組織内部でのスパイ探しに一層拍車がかかる。


韓国得意の現代史の史実をベースとしたアクション映画で、ドンパチは激しい。ただ、同じジャンルの韓国映画の傑作と比較すると、5点満点で3.5位のレベルかなあ。
香港映画「インファナルアフェア」は警察がマフィアに、マフィアが警察にスパイを侵入させる名作である。この映画にも似ているようなテイストがある。ここでは韓国の諜報組織に入り込む北朝鮮のスパイに焦点をあてる。でも、映画では誰かはわからずをつくる展開だ。重要機密が密かに北朝鮮当局に送られている。80年代は至るところで北朝鮮による爆破事件が起きた。この映画はバンコクで大統領殺害がからんだ修羅場となるが、ミュンマーで起きたアウンサン廟爆破事件に題材を得ていると思われる。


日本の在日でも南と北のそれぞれの支持者に分かれるが、北朝鮮派の朝鮮学校出身なのに南にいるのはおかしいなんて女子大生が拷問を受けている場面がある。この映画の拷問はかなり酷い

スパイ映画は敵と味方が入り乱れてわけがわからなくなることが多い。この映画も誰がスパイなのか犯人探しのような体裁をもつ。それが、ラスト30分前に「え!」と驚く場面となる。さすがに自分も驚くが、どうやってラストまで展開するのか目が離せなくなる。それでも、最終のドンデン返しは南北両陣営とも何を考えているのかわからなくなる。


北朝鮮という脅威があり、実際にスパイ戦やドンパチもあったわけで、韓国映画は平和な日本と比べればネタは多い。今の日本はそんなことで心配することがないので幸せだ。数多くの映画を観ていくと韓国現代史の要旨がよくわかる。

実際にリストアップされている俳優陣とは別に韓国映画の主演級大物が突然現れる。いわゆるカメオ出演だ。仁川に北朝鮮の飛行機で亡命する飛行士がファンジョンミンだったり、パク次長の昔の知り合いで重要登場人物の女性の親になるイソンミンなど。「ただ悪より救いたまえ」で残忍な殺人鬼を演じたイジョンジェがファンジョンミンと激しく対立する。イジョンジェの初監督作品にご祝儀で出たという感じかな。
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映画「あしたの少女」 ペ・ドゥナ

2023-08-30 09:01:27 | 映画(韓国映画)
映画「あしたの少女」を映画館で観てきました。


映画「あしたの少女」は韓国映画、人気女優ペ・ドゥナが傑作「私の少女」でも組んだチョンジュリ監督の作品である。ペ・ドゥナは「私の少女」刑事役を演じた後で、直近では是枝裕和監督の「ベイビーブローカー」でもねちっこい刑事役が印象的だった。どうした訳か今回も刑事役である。実質的な主演は高校生役のキム・シウンで韓国独特の実業高校の実習生制度が映画のテーマになる。韓国の実業高校では、高校生が単位の一環として実習生として数ヶ月企業に勤める制度があるようだ。実話を題材にして脚本化したようだが、かなり深刻な話で驚いた。

日本でもブラック企業なんて言葉があるけど、さすがに一時代前ならともかく、ここまでこの映画に映る韓国の労働事情ほどひどい話はないんじゃないかなあ。搾取もはなはだしい。韓国の暗部が浮き彫りになる。


高校生のソヒ(キム・シウン)は、担任教師から大手通信会社の下請けのコールセンター運営会社を紹介され、実習生として働き始める。しかし、会社は顧客の解約を阻止するために従業員同士の競争をあおり、契約書で保証された成果給も支払おうとしなかった。
そんなある日、指導役の若い男性チーム長が自殺したことにショックを受けたソヒは、自らも孤立して神経をすり減らしていく。やがて、凍てつく真冬の貯水池でソヒの遺体が発見され、捜査を担当する刑事・ユジン(ペ・ドゥナ)は、彼女を自死へと追いやった会社の労働環境を調べ、いくつもの根深い問題をはらんだ真実に迫っていくのだった…(作品情報 引用)


よくできている映画だと思う。しかも、わかりやすい。
半端ないリアル感で高校生のソヒを追う。元来うつの傾向がある子ではなく、飲み屋で自分たちの陰口をたたく男に絡んでいくくらいの元気のいい子だ。そんな高校生が理不尽な対応に呆れ果てて自死を選ぶ構図を丹念に描いていく。説明口調ではなく、いくつかのエピソードを重ねて韓国の実業高校生の実習制度の理不尽さを訴えていくのは監督のうまさであろう。現状の労働事情に対するチョンジュリ監督の強い抗議と主張を感じる脚本だ。

実習生だからといって、就業契約書どおり給与を支払わない。勤務するコールセンターにかかってきた顧客からの解約申出を説得して継続させるとポイントがついて、報奨金を支払う約束だ。しかし、主人公の給与明細には金額が反映されない。上司は何ヶ月かしたら支払うと言って支払わない。高校の先生のところへ行っても、そのまま仕事を続けろと言われる。ひょっとしたら企業と高校がグルなのかもしれない。次第に八方塞がりになっていく。


通常自殺だと判明すると、警察の捜査は中断する。しかし、警察の上司がもう解決している事件だから捜査を止めろと言っても、ペ・ドゥナ演じる刑事は労働管理に問題ありと徹底的に追及する。ここでのペ・ドゥナのパフォーマンスはカッコいい。胸がスッとする。高校に乗り込んで教頭がウダウダ言っていると、刑事のペ・ドゥナが殴ってしまう。さすがに日本映画だとこんなシーンはないだろうなあ。


この映画では、主人公の高校生が飲酒する場面が何度もでてくる。これにも驚いた。映画を見終わった後思わず調べてしまう。どうやら、韓国では19歳から飲酒可能だそうだ。しかも、それは数え年で、19歳になるときの1月1日から飲めるようだ。ただ、それにしてもちょっとフライング気味の飲酒ではと感じる。もっとも日本は最近未成年飲酒にきびしすぎる気がするけど。
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