映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「密輸 1970」 キムヘス

2024-07-13 07:18:32 | 映画(韓国映画)
映画「密輸1970」を映画館で観てきました

映画「密輸1970」は海に密輸品を投げ込み海女さんがそれをピックアップしてこっそり運ぶ話が題材の韓国映画だ。海女さんをこんなことで活用する発想自体に驚く。監督は「モガディシュ脱出までの14日間」で凄まじいアクションを見せてくれたリュスンワンだ。韓国では随分とヒットしたらしい。

主演のキム・ヘス「国家が破綻する日」「コインロッカーの女」などで主演を張ったベテラン女優で、出演作は割と観ている。70年代半ばのドン臭い派手な格好で立ち回る。同じく海女さんのリーダーであるヨムジョンハは広末涼子系ルックスのいい女。2人をはじめとして韓国の人気俳優を揃える。

1970年代中盤、韓国の貿易港クンチョンで海女さんのグループが、工場の汚染水の影響で獲った海産物が売り物にならず困っている。その頃、税関を通さないために海に投げ込んだ密輸品を海女さんに引き揚げてもらう話がくる。リーダーのジンスク(ヨムジョンハ)は仲間の生活を考えてやむなく引き受けてうまくいった。ところが、税関の取締りにあい逮捕されてジンスクは刑務所生活だ。

危機一髪逃げたチュンジャ(キムヘス)はソウルで裏流通で一旗あげる。2年が経ち、チュンジャは釜山で密輸ルートをおさえていたクオン(チョインソン)と知り合い、故郷クンチョンに戻ってきて以前のような密輸を再度企てる。ジンスクは反発するが、生活のためにもう一度海女さんに引き揚げを手伝わせる。それには税関も黙っていなかった。


娯楽として十分楽しめる作品だ。
夏には疾走する船が漂う海や海底が前面に映像に出る作品の方が観ていて涼しげで気分がいい。映画のバックに流れる音楽が、昭和50年(1975年)前後の東映映画やTVのアクション番組のムードを漂わせる。リズムギターの音色がまさにそうだ。韓国演歌も昭和の匂いだ。監督はかなり東映映画を観ているのではないか。


わざとやっているのだろうが、女性陣の風貌もまったく洗練されていない。チリチリパーマで服装のセンスがバタくさい。ソウルオリンピック前の貧しかった韓国の姿そのものだ。このノスタルジックな雰囲気に惹かれる人も多いだろう。亡くなった自分の父親はこの時期韓国によく遊びに行っていた。当時の韓国人は幼少時日本語教育を受けていたせいか流暢に日本語を話す人が多く、運び屋をお願いされたこともあったそうだ。日本人の自分が観ても、コンプライアンス感皆無のこの世界を見るのが楽しい。雰囲気がBC級映画のたたずまいだが、ストーリーは韓国映画らしく単純ではない。

キムヘス演じるチュンジャは幼い頃から家政婦をやっていて金儲けには貪欲だ。常に悪知恵を働かせる。危機一髪の場面をいつもすり抜ける。昨日の敵が今日の友になったり、敵味方交錯して訳がわからなくなるのも東映のヤクザ映画と似たようなものだ。密輸を絡めてチンピラと税関が通じていて、カネにめざとい奴らが悪いことをする。収賄もアリアリだ。最近の韓国はどうなんだろうか。


それにしても、この海女さんたちが海底を潜水するシーンはどうやって撮ったんだろう。全部海なのかなあ?それともプールにセットしたのか?いずれにせよ、長い時間素潜りで海底の密輸品をもあさる海女さんたちに脱帽するしかない。酸素ボンベをつけたチンピラと海女さんが海底で対決して、チンピラのボンベをはずすシーンもどうなっちゃうんだろうと思わせる。
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映画「スリープ SLEEP」 イ・ソンギュン

2024-06-30 17:31:11 | 映画(韓国映画)
映画「SLEEP 」を映画館で観てきました。


映画「スリープ」は昨年末亡くなった韓国のイ・ソンギュン主演のスリラー映画だ。最近公開作がでたホン・サンス監督の「ソニはご機嫌ななめ」チョンユミイソンギュンが共演している。自由奔放なチョンユミがよかった。新人監督ユジェソンのこの作品を元の親分ポンジュノが推奨している。

昨年末のイソンギュンの自殺は実に残念だ。訳のわからない女にハマったのか?薬物所持の疑いで最後は悲惨だった。実際に何があったのだろう?これまでの活躍には敬意を表したい。金大中のずる賢い選挙参謀を演じた「キングメーカー」が特に好きだった。この作品が遺作かと思ったら、どうやらまだあるらしい。

舞台俳優ヒョンス(イソンギュン)は、コールセンターのチーム長である妻スジン(チョン・ユミ)と一緒に暮らしている。妻は身もこもっていた。ある夜突如「誰かが入ってきた」と夫が叫ぶ。その時点から急に寝付きが悪くなる。自ら顔を掻きむしって傷だらけ。病院に行くと睡眠障害と言われる。

その後も奇怪な行動が続く。夜中に突如として起き出して、冷蔵庫で生魚を食べたり,窓から飛び降りようとしたり不穏な動きが続く。夢遊病のようだ。せっかく妻は出産したのにヒョンスの様子がおかしいので妻の母親は心配して霊媒師のような巫女を呼ぶ。


残念ながら自分にはあわない映画だった。
イソンギュンとチョンユミの韓国の2大スターが共演するにはスケールが小さい
霊のような何かに取りつかれるパターンは韓国サスペンス系では比較的多い。秀吉の朝鮮出兵で16世紀に仏教禁止となった朝鮮では宗教への信仰というよりシャーマニズム信仰が朝鮮大陸の伝統だ。19世紀末に朝鮮を訪れたイザベラバード女史の名著「朝鮮紀行」でもシャーマニズム信仰が取り上げられる。ファンジョンミンが祈祷師を演じた「コクソン」もそのテイストが強い。ただ、「コクソン」のもつ迫力と怖さがない。

この映画は韓国サスペンス系では珍しく途中のリズムが悪く、眠気を誘う状態になりがちだ。部屋中に貼ってあるお札が異常で、最終に向けてチョンユミも豹変して人智を超えた世界に持ち込むがのれない。


韓流ドラマ好きが以前よりも増えている気がする。自分と同年代周辺のおばさんたちとの話題で韓流の話題が欠かせない。若い韓流スター好きもいるが、どちらかというとストーリーの予測がつきにくいことでの韓流ストーリー好きが多い。いいことだと思う。日本も見習うべきだ。映画「パラサイト」というよりドラマ「マイディアミスター」での活躍もあってかイ・ソンギュンのファンも多い。観客にも熟年女性ファンの姿が目立つ。ただ、怖いということだけでは先日観た「ターゲット」の方が恐怖感を覚えた。

イソンギュン
の次作に期待する。
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映画「ターゲット 出品者は殺人鬼」キシンヘソン

2024-06-26 18:30:33 | 映画(韓国映画)
映画「ターゲット 出品者は殺人鬼」を映画館で観てきました。


映画「ターゲット 出品者は殺人鬼」は韓国得意のクライムサスペンス。中古品売買が盛んにネット上で行われている韓国では詐欺犯罪が多発しているらしい。解説によれば、1日あたり228件の被害届とは多い。中古品売買での犯罪をパクヒゴン監督が題材としている。以前,振り込み詐欺を題材にした2022年の韓国映画声 姿なき犯罪者年間ベスト級の面白さだった。こういう特殊犯罪の手口を題材にした韓国映画はどれもこれもおもしろい。今回もその系統かと映画館に向かう。

スヒョン(キシンヘソン)はネットで中古の洗濯機を購入する。しかし、後日壊れた洗濯機が届き、詐欺にあったことに気づく。警察に行ってもすぐ捜査してくれない。スヒョンは、出品者のアカウントに直接連絡をとり、返金を要求するが相手にされない。感情的になったスヒョンは、相手に怒りに満ちたメッセージを送りつけると、出品者から執拗な嫌がらせを受けるようになる。


予想通り緊迫感あふれるサスペンスだ。
ホラー映画を思わせる恐怖の波状攻撃で次から次へと主人公を恐怖に陥れる。観ているこちらもドッキリだ。映画を見終わると、中年女性が怖かったねえと語り合っていた。娯楽として見る価値は十分だ。

1,ネット上の恨みつらみ
ネット上の売買で中古品の起動しない洗濯機が送られてきたわけだから,購入者がクレームをつけるのは当然のことだろう。しかし,この出品者は気がつくと、IDもなくクレームがつけられない状態になっている。何とか別のサイトから見つけ出して、詐欺だと訴えていく。しかし、それが恨みを買うことになってしまった。

被害者の自宅にこれでもかとピザやチキンなどの出前が押し寄せる頼んでない食べ物を次から次にデリバリーで持ってくるのだ。それだけではない。出会い系でこの部屋で待っていると、男性が夜押し掛けてくる。なるほど,こんな仕返しがあったのか。


その辺から恨みと仕返しの応酬が続く。見るも無惨だ。警察は動かない。こんな話は日本でもあるのだろうか?やはりこの手の犯罪は、いかにも韓国っぽい感じがしてくる。

2,不死身の悪者
韓国映画の悪者はともかく強い。不死身の殺人鬼だ。そう簡単には仕留められない。しかも、ネットを駆使して徹底的な嫌がらせをするだけでない。映画が始まり、中古品売買で物品を取りに行き、出品者が殺されるシーンからしばらくの間悪者の姿が見えない。ともかく顔が見えない。それだけで不気味だ。

姿を現してからも、悪者は強さを発揮する。被害を受ける人たちが1人、2人と出てくるのだ。韓国の路地のような狭い道路でのカーチェイスはなかなかの迫力だ。そんな逃走劇があっても捕まらない。刑事との格闘場面でももうダメかと思っても生き延びる


実は被害者のスヒョンは建築会社の工事リーダーだ。格闘場面で施工中の現場が出てくる。そこで主人公が釘打ち機を武器に使用するのだ。こんなのは初めて見た。格闘場面もアイディアに満ちあふれていてスリリングだった。
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映画「貴公子」キムソンホ

2024-04-29 21:13:57 | 映画(韓国映画)
映画「貴公子」を映画館で観てきました。


映画「貴公子」は韓国得意のアクションサスペンス作品で、名作「新しき世界」パクフンジョン監督がメガホンをもつ。GWに入って何気なくNetflixオリジナルの日本のアクションモノ「シティハンター」を観るが、面白くない。リカバリーで何かアクションモノを観ようとこの映画を選択する。実績のある監督だけに期待できそう。

地下格闘技の世界でボクサーをやっているフィリピン在住の青年マルコ(カンテジュ)は、母親の医療費を捻出するために略奪の一味にも加わる養護施設育ちの底辺を彷徨う男だ。そこに富豪の父親の代理人と称する弁護士が現れる。すぐさま韓国に帰国して欲しいと飛行場に急ぐ。航空機の中で友人だと名乗る不気味に笑う男(キムソンホ)に声をかけられる。


韓国で父親と称する男に会いに行こうと、弁護士と同乗していると、飛行機で出会った男が運転するベンツが幅寄せをしてきて、クルマは道路を外れて大破する。追ってきた男から懸命に逃げようとするが。


韓国アクション映画らしくレベルは高く、スリリングな場面が続く。
カーチェイスと家の屋上や塀をつたわっての逃亡劇は見ごたえ十分だ。


フィリピンと韓国の混血をコリアンフィリピーノ略して「コピノ」というらしい。これは初めて聞く。日本に大挙して出稼ぎに来たジャパユキさんが混血の子どもを産んでいたのと同じように韓国でも同じようなことがあったのであろう。施設で育った青年だ。裏社会の格闘技でキックボクシングをやって母親の治療費のために金を稼ぐが、強奪にも加わる。バクチにもカネを投入して負けている。

その混血青年マルコが富豪の息子とわかるので、てっきり彼が主人公の貴公子だと思ったら違う。徹底的に追跡する常に不気味な笑みを浮かべる男が実は貴公子なのだ。演じるキムソンホはNHKからフジTVに移った青井アナウンサーに似ているイケメンだ。

最後まで味方なのか悪役なのかよくわからない。この男だけ意図が見えない。格闘能力は高い。コピノと言われる混血少年をひたすら追い続ける。観客に恐怖心すら起こさせる。韓国クライムアクションによく登場する不死身な男だ。マルコはひたすら逃げまくる。スリラー映画での悪役みたいだけど結局主役だ。


マルコの追跡にかかわるユンジュという女や富豪の息子にあたるハンなど残忍な奴らも登場させてのカーチェイスはもの凄い迫力だ。中央分離帯のない自動車専用道路でバシバシUターンを連発する。高級車やベンツもつぶしてしまう。カメラアングルもいったいどうやって撮っているんだろうというスリリングなショットだ。

韓国映画の予算取りは日本より大きい感じがする。日本映画ではなかなかこうはいかない。東南アジアでの外国ロケの映画も目立つ。ここでも不気味なフィリピンの夜を映し出す。映像のレベルは高い。
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映画「ビヨンド ユートピア 脱北」

2024-01-15 19:33:42 | 映画(韓国映画)
ドキュメンタリー映画「ビヨンド ユートピア 脱北」を映画館で観てきました。


映画「ビヨンド ユートピア」北朝鮮からの脱北者が実際に国境を越えるのを追うドキュメンタリー映像である。予告編から大体の内容の想像がついたが,好奇心でみたくなった。監督は数々の映画の編集に関わっているマドレーヌ・ギャヴィンである。

息を呑むようなシーンが続く。目が離せない。
脱北に成功する事例と失敗した事例の両方が語られる。いずれも多数のブローカーが絡んでいる。実にうさん臭い
必見のドキュメンタリーだ。

ソウルに住む牧師が脱北に関与している。脱北と言うと北朝鮮から国境を越えて中国に行くことだけを想像する。ただ、この牧師は中国からは出禁になっている。脱北に失敗して中国で拘束されると北朝鮮に強制送還される。失敗して拘束された人たちへの当局からの仕打ちは半端じゃない拷問だ。結局,中国に渡った後、車で長距離の移動をして,ベトナムに渡りその後ラオスに移動する。最終的にメコン川の国境を渡りタイに渡る。タイに行かないとラオスも北朝鮮の友好国だけにとらわれると強制送還される。


命がけの脱出である。まずは北朝鮮から中国に移動すること自体が大変だ。容易に川を渡って中国に渡る人たちが多かった時期もあったようだ。現場の監視が厳しくなり脱北の難易度が極めて高い。国境を渡ってもその先には高い山がある。この映画の映像はコロナ前の脱北だ。コロナになった後は中国からベトナムに行くこともできず,牧師のところに脱北の希望がずいぶんと来ていても、なかなか着手できないようだ。

映画の中では,北朝鮮のリアルな街頭映像が何度か出てくる。
本当に貧しそうだ。よく韓国映画で北朝鮮の街路を映し出している映像と大きく変わらない。

もともと朝鮮戦争の休戦後はむしろ南より北の方が豊かだった時代もあった。日本統治時代に,北朝鮮エリアで開発した日本の産業プロジェクトが多く、北朝鮮がそれを無償で継承できたことも影響している。日本統治が朝鮮発展に寄与したことも多い。1970年代後半から,韓国が驚異的な経済成長を遂げる。逆に北朝鮮はソ連の崩壊に伴ってそれまで潤沢だった援助が受けられなくなった。そこで大きな差がついた。北朝鮮の指導者は,ひたすら核開発に向かう一方で,国民の生活は無視されている。


この映画を観て初めて知ったこともいくつかある。中国から大陸を縦断してベトナム、ラオス経由でタイに行って7ヶ月過ごしてから韓国に行くという脱北ルートは初めて知った。あと、金日成主席は当然日本統治下の朝鮮で育ったと思っていた。ところが、幼い頃から中国で育ったので、北朝鮮建国でスピーチする時には朝鮮語が不得手で特訓したなんて話も初めて知った。

ひたすらおかしいのは,脱北している家族の80過ぎの老婆がこの場に及んでもまだキムジョンウンのことを若くして英雄とするスピーチをすることだ。「キムジョンウンの周りが悪い。みんなで国を豊かにしなければならない。」とまで言う。狂っているとしか思えない。一種の宗教みたいなものだろう。北朝鮮では聖書は禁止されているらしい。聖書に載ってるような神話のような話が,北朝鮮でも同じように作られてそれが国民に信じられている。ただ,天皇を神様とした戦前の日本も大して変わらないんじゃないかと自分は感じる。ハイエク「隷属への道」で語る全体主義の残酷な世界北朝鮮にはエスカレートして存在する。


この老婆が脱北に成功して韓国で生活しているときの顔立ちは,脱北途中の顔と全く違っていた。いい顔つきに変わった。ただ1つだけ疑問だったのは,数多いブローカーへの報酬が一体どこから出ているのかがよくわからなかった。失敗した事例の時に,脱北させようとした母親とブローカーとの電話のやりとりを聞くと,特殊詐欺に騙されている老人たちを思わせるようなやり取りにしか見えなかった。それでもすがるのであろう。
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映画「宝くじの不時着 1等当選くじが飛んでいきました」

2023-12-31 08:30:53 | 映画(韓国映画)

映画「宝くじの不時着 1等当選くじが飛んでいきました」を映画館で観てきました。

映画「宝くじの不時着 1等当選くじが飛んでいきました」は朝鮮半島の国境38度線上で宝くじの当選クジをめぐって韓国、北朝鮮両国兵士が右往左往するコメディだ。メジャーな韓国俳優は出ていない。普通だと見過ごしてしまいそうだが、「笑いが止まらない」という評判で面白そうな気配を感じる。

朝鮮半島の国境軍事境界線板門店に駐在中の韓国兵士パク・チョヌ兵長(コ・ギョンピョ)が何気なく拾ったロトクジがなんと57億ウォン(約6億円)の賞金に当選してしまう。本にはさんでこっそり持っていたのに、風にクジが吹き飛ばされて北朝鮮側国境を越えてしまう。大慌てのチョヌは夜中にこっそりと国境の金網をくぐっていくと、北朝鮮兵に銃を突きつけられる。飛んでいった宝くじを偶然ひろった北朝鮮兵リ・ヨンホ(イ・イギョン)だったのだ。

ひろったヨンホは自ら引き換えができないのでチョヌに交渉を持ちかける。持ち分でもめる。しかし、国境線でお互いに交渉しているのが、南北両軍の上司にわかってしまい結局3対3での交渉となる。結局、韓国側で金銭引き換えると同時に逃亡しないように、南北お互い1人ずつ人質を出すことになるのであるが。。。

確かに笑えるコメディだ。

板門店の軍事均衡地帯では朝鮮戦争停戦から長期にわたってお互いに牽制しあっている。そこでの緊張をもとにこれまで映画がつくられてきた。軍事衝突が絡んでそんなに明るい話はない。でも、これはコメディだ。

せっかく当たった宝くじがすっ飛んでいけば誰もがあせる。それがお笑いになるのか?いや、宝くじの行方を探すだけではこんなにも面白くならない。南北両側に多彩な登場人物を用意して、いくつもの伏線となるエピソードを用意する。それを物語の行方とともに少しずつ回収する。韓国映画らしい脚本づくりのうまさを感じる。北朝鮮美人兵士と韓国兵士との禁断の恋も用意する。

特におもしろくなってくるのは、南北両側から人質を出した後だ。当然、オフィシャルな話ではない。交渉にあたる3名と一部の身内以外は内緒で、人質が敵軍に配属される。

北朝鮮側に配属された兵は、最初特殊部隊で瓦割りなどの剛健な鍛錬を受けるが、すぐさま農場に移される。なかなか繁殖が進まなくて困っていた農場だった。ところが、ニワトリや豚たちが交わりやすいようなムードたっぷりの工夫をしただけで、気がつくと次々と卵ができる。食糧事情の悪い北朝鮮では大歓迎だ。平壌に行ってくれとまで言われる。逆に焦る。このやりとりが笑える。

韓国軍に配属された北朝鮮兵が国境線上の大量の地雷が埋まっているエリアを演習中、仲間が地雷に引っかかる。ミスると大爆発だ。とっさに的確な処置をして助けてしまう。うわさが伝わり連隊長は大喜びだ。激励に来て何処出身だと言われて、北朝鮮の町の名前を言おうとして思わずハンブルクと言ってしまう。ドイツの戦争映画を繰り返し観ていてドイツ語を話す。それを上司が良いように訳す。かわす会話が楽しい。

その人質は、宝くじの当選金をもらうまでは戻らない。でも、当選金をもらう前に宝くじをなくさないように股に挟む。そう簡単に引き換えできない。予期せぬ関門をくぐらないといけないのだ。こんな感じで笑えるネタを最後まで用意する。実に楽しい。

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映画「PHANTOM ユリョンと呼ばれたスパイ」 ソルギョング& イ・ハニ

2023-11-23 18:50:18 | 映画(韓国映画)
映画「PHANTOM ユリョンと呼ばれたスパイ」を映画館で観てきました。


映画「PHANTOM ユリョンと呼ばれたスパイ」は日本統治時代の朝鮮京城で、朝鮮総督暗殺を目論む反日の隠密組織が暗躍する姿を描くアクション映画である。「毒戦」イ・ヘヨン監督がメガホンを持ち、ソル・ギョングと「イカゲーム」のパク・ヘスなど韓国のメジャー俳優が出演している。この2人は昨年「夜叉」で共演している。これは良くできていた。

日本統治時代の朝鮮を描いた韓国映画では、「お嬢さん」「密偵」などをこのブログでも取り上げている。それぞれに時期は異なる。当然、反日のムードが強いのは承知してそれぞれの映画を観ている。
英国人女性イザベラバード「朝鮮紀行」を読むと、1890年代の李氏朝鮮時代のソウルが不衛生でひどい状態だったことなど朝鮮の後進性を示す記述がある。日韓併合の後に、識字率が低かった朝鮮の教育水準が向上したのは間違いない。産業も発展した。日本が朝鮮の発展を推進した一方で、日本の統治には問題もある。それ故の反発も数多く起きている。ここでどういう描き方をするのか観てみる。

1933年の京城(現ソウル)反日組織「黒色団」が日本の幹部の暗殺を目論んでいた。朝鮮総督府に新しい朝鮮総督が着任する。歓迎の会で巫女の姿の女が暗殺を目論んだが未遂に終わる。朝鮮総督府内にまだ「ミリョン」という名のスパイが潜んでいるのではと警護隊長の高原(パク・ヘス)は、可能性のある4人、情報受信係 監督官の村山(ソルギョング)、暗号記録係のチャギョン(イ・ハニ)、政務総監秘書の佑璃子(パク・ソダム)、暗号解読係長ウノを人里離れた場所に呼び込む。


ちょっとわかりづらい映画だ。
スパイ映画らしい騙し合いの中で、爆弾が飛び交う激しいアクションシーンが続く。かなり激しい。バックでは音楽が高らかに鳴り響く。音楽のレベルは高い。通常の日本のアクション映画よりもお金がかかっている。

日本の幹部に日本人を起用していると、明らかに日本側の登場人物に属するとわかるが、朝鮮語も時おり話すとどっちの立場かわからなくなる。特にソルギョング演じる村山の立場が途中でわからなくなった。登場人物が不死身な設定もスパイ映画にはよくあるが、これだけ撃たれても、刺されても死なない場面が多すぎる印象を持った。


1933年の京城の街を映し出す。VFXとセットだと思うが、良くできている。マレーナディートリッヒ「上海特急」の映画看板がある街中で、2人の怪しい女性のやりとりを見せる。当時の京城はこんなにムードのある街だったのか?戦前に存在した朝鮮神宮のかなりの高低差がある階段と鳥居を映し出す。


加えて、旧朝鮮総督府の格調高い建物を映す。朝鮮神宮に新任の朝鮮総督が向かった後で、巫女が突如銃を撃つ。この巫女は前夜映画館のそばにいた女で見覚えのある顔だ。「愛のタリオ」で復讐をする女を演じるイ・ソムだ。HPの出演者リストにないし、エンディングロールはハングルで解読不能だけど間違いないだろう。元ミスコリアのイ・ハニと一緒に映る。


日本語のセリフが多い。韓国人俳優たちはセリフに難儀しただろうなあと感じる。若干不自然なイントネーションではあるが、以前観た「お嬢さん」よりはマシである。ソルギョングが映画「力道山」で力道山役を演じた時、不自然さがなく日本語はうまいと感じた。日韓併合から20年経っているので、当時の若い朝鮮人は日本語を流暢に話したであろう。日本の士官学校にいた朴正煕元大統領はもとより、金大中元大統領も日本語が上手だった。

この映画はあくまでフィクションだ。終戦まで12年もある時期に朝鮮総督が撃たれた事実はない。でも、日本人を悪く貶めようとするのも仕方ないことであろう。怖いもの見たさについこの映画を観てしまう。
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映画「ハント HUNT」イジョンジェ

2023-10-01 17:41:24 | 映画(韓国映画)
映画「ハント HUNT 」を映画館で観てきました。


映画「ハント」はNetflixの「イカゲーム」の主演イ・ジョンジェが監督も兼任する韓国現代史の暗部を描くスパイ映画で、数々の作品で主演を張るチョン・ウソンの共演である。1980年代のストーリーでフィクションだと字幕がいきなりでる。とは言うものの、当時の韓国大統領は全斗煥であり、映画でも当然変わらない。われわれの世代だと、金大中拉致事件もあって、KCIAという名に恐怖感を覚えた。KCIAの名前は安全企画部という名に継承されていた。安全企画部の内部での権力闘争と二重スパイ問題に焦点をあてる。

1980年代、韓国の全斗煥大統領が訪米した際、ワシントンDCで韓国民主化を叫ぶデモが行われている。その場面で何者かが大統領へ発砲しようとする。韓国安全企画部の海外グループ長のパク(イジョンジェ)と国内グループのキム(チョンウソン)も現地にいて警護活動をおこなう。両者は対立していた。大統領の車の移動ルートが事前に北朝鮮に伝わっていることがわかり、パクとキムは互いに猜疑心をもって組織内にいるスパイ探しをする。一方で大統領暗殺計画北朝鮮により着手されていることがわかって、組織内部でのスパイ探しに一層拍車がかかる。


韓国得意の現代史の史実をベースとしたアクション映画で、ドンパチは激しい。ただ、同じジャンルの韓国映画の傑作と比較すると、5点満点で3.5位のレベルかなあ。
香港映画「インファナルアフェア」は警察がマフィアに、マフィアが警察にスパイを侵入させる名作である。この映画にも似ているようなテイストがある。ここでは韓国の諜報組織に入り込む北朝鮮のスパイに焦点をあてる。でも、映画では誰かはわからずをつくる展開だ。重要機密が密かに北朝鮮当局に送られている。80年代は至るところで北朝鮮による爆破事件が起きた。この映画はバンコクで大統領殺害がからんだ修羅場となるが、ミュンマーで起きたアウンサン廟爆破事件に題材を得ていると思われる。


日本の在日でも南と北のそれぞれの支持者に分かれるが、北朝鮮派の朝鮮学校出身なのに南にいるのはおかしいなんて女子大生が拷問を受けている場面がある。この映画の拷問はかなり酷い

スパイ映画は敵と味方が入り乱れてわけがわからなくなることが多い。この映画も誰がスパイなのか犯人探しのような体裁をもつ。それが、ラスト30分前に「え!」と驚く場面となる。さすがに自分も驚くが、どうやってラストまで展開するのか目が離せなくなる。それでも、最終のドンデン返しは南北両陣営とも何を考えているのかわからなくなる。


北朝鮮という脅威があり、実際にスパイ戦やドンパチもあったわけで、韓国映画は平和な日本と比べればネタは多い。今の日本はそんなことで心配することがないので幸せだ。数多くの映画を観ていくと韓国現代史の要旨がよくわかる。

実際にリストアップされている俳優陣とは別に韓国映画の主演級大物が突然現れる。いわゆるカメオ出演だ。仁川に北朝鮮の飛行機で亡命する飛行士がファンジョンミンだったり、パク次長の昔の知り合いで重要登場人物の女性の親になるイソンミンなど。「ただ悪より救いたまえ」で残忍な殺人鬼を演じたイジョンジェがファンジョンミンと激しく対立する。イジョンジェの初監督作品にご祝儀で出たという感じかな。
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映画「あしたの少女」 ペ・ドゥナ

2023-08-30 09:01:27 | 映画(韓国映画)
映画「あしたの少女」を映画館で観てきました。


映画「あしたの少女」は韓国映画、人気女優ペ・ドゥナが傑作「私の少女」でも組んだチョンジュリ監督の作品である。ペ・ドゥナは「私の少女」刑事役を演じた後で、直近では是枝裕和監督の「ベイビーブローカー」でもねちっこい刑事役が印象的だった。どうした訳か今回も刑事役である。実質的な主演は高校生役のキム・シウンで韓国独特の実業高校の実習生制度が映画のテーマになる。韓国の実業高校では、高校生が単位の一環として実習生として数ヶ月企業に勤める制度があるようだ。実話を題材にして脚本化したようだが、かなり深刻な話で驚いた。

日本でもブラック企業なんて言葉があるけど、さすがに一時代前ならともかく、ここまでこの映画に映る韓国の労働事情ほどひどい話はないんじゃないかなあ。搾取もはなはだしい。韓国の暗部が浮き彫りになる。


高校生のソヒ(キム・シウン)は、担任教師から大手通信会社の下請けのコールセンター運営会社を紹介され、実習生として働き始める。しかし、会社は顧客の解約を阻止するために従業員同士の競争をあおり、契約書で保証された成果給も支払おうとしなかった。
そんなある日、指導役の若い男性チーム長が自殺したことにショックを受けたソヒは、自らも孤立して神経をすり減らしていく。やがて、凍てつく真冬の貯水池でソヒの遺体が発見され、捜査を担当する刑事・ユジン(ペ・ドゥナ)は、彼女を自死へと追いやった会社の労働環境を調べ、いくつもの根深い問題をはらんだ真実に迫っていくのだった…(作品情報 引用)


よくできている映画だと思う。しかも、わかりやすい。
半端ないリアル感で高校生のソヒを追う。元来うつの傾向がある子ではなく、飲み屋で自分たちの陰口をたたく男に絡んでいくくらいの元気のいい子だ。そんな高校生が理不尽な対応に呆れ果てて自死を選ぶ構図を丹念に描いていく。説明口調ではなく、いくつかのエピソードを重ねて韓国の実業高校生の実習制度の理不尽さを訴えていくのは監督のうまさであろう。現状の労働事情に対するチョンジュリ監督の強い抗議と主張を感じる脚本だ。

実習生だからといって、就業契約書どおり給与を支払わない。勤務するコールセンターにかかってきた顧客からの解約申出を説得して継続させるとポイントがついて、報奨金を支払う約束だ。しかし、主人公の給与明細には金額が反映されない。上司は何ヶ月かしたら支払うと言って支払わない。高校の先生のところへ行っても、そのまま仕事を続けろと言われる。ひょっとしたら企業と高校がグルなのかもしれない。次第に八方塞がりになっていく。


通常自殺だと判明すると、警察の捜査は中断する。しかし、警察の上司がもう解決している事件だから捜査を止めろと言っても、ペ・ドゥナ演じる刑事は労働管理に問題ありと徹底的に追及する。ここでのペ・ドゥナのパフォーマンスはカッコいい。胸がスッとする。高校に乗り込んで教頭がウダウダ言っていると、刑事のペ・ドゥナが殴ってしまう。さすがに日本映画だとこんなシーンはないだろうなあ。


この映画では、主人公の高校生が飲酒する場面が何度もでてくる。これにも驚いた。映画を見終わった後思わず調べてしまう。どうやら、韓国では19歳から飲酒可能だそうだ。しかも、それは数え年で、19歳になるときの1月1日から飲めるようだ。ただ、それにしてもちょっとフライング気味の飲酒ではと感じる。もっとも日本は最近未成年飲酒にきびしすぎる気がするけど。
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映画「小説家の映画」 ホンサンス&キムミニ

2023-07-06 19:27:19 | 映画(韓国映画)
映画「小説家の映画」を映画館で観てきました。


映画「小説家の映画」は独特の作風をもつ韓国の映画監督ホン・サンスベルリン映画祭で銀熊賞を受賞した作品だ。韓国映画ってサービス精神旺盛で、ストーリーの逆転を楽しめる娯楽映画が多いのに、ホン・サンスの作品って真逆な気がする。軽い起伏はあっても意外性はない

言葉に頼らずに映像で見せるのが本筋とばかりに観客の理解能力を試すような映画が多くなってきたのと反対にセリフは多い。しかも、超長回しカットで構成される。日本で一般公開される他の韓国映画と比較すると、ホン・サンスって本国で受け入れられているのかな?と正直思ってしまう。

それでも日本の評論家筋の評判はいつも通りよい。不倫状態が続くプライベートでのパートナーであるキムミニと前作「あなたの顔の前に」超絶長回しショットを巧みに演じて自分を驚かせたイ・ヘヨンが出るとなると見逃せない。

長らく執筆から遠ざかっている著名作家のジュニ(イ・ヘヨン)が、音信不通になっていた後輩を訪ね、ソウルから離れた旅先で偶然出会ったのは、第一線を退いた人気女優のギルス(キム・ミニ)。初対面ながらギルスに興味を持ったジュニは、彼女を主役に短編映画を撮りたい、と予想外の提案を持ち掛ける。(作品情報 引用)

実際には街を見渡す展望台で映画監督夫妻に会う。以前ジュニが書いた作品を映画にしようとして別の作品を選んだ監督だった。3人で公園を散歩しているときに人気俳優を見つけて話をする。ここで映画監督と小説家の会話が噛みあわず、初対面なのに小説家と女優が2人で食事に向かう。そして、映画を一緒につくろうと意気投合するのだ。


ホン・サンスのスタイルはかわらない。
長回し中心の映像で、確かな演技力を要求する。朴正煕元大統領を連想する元来の韓国人ルックスのイヘヨンがこの映画でもメインに動く。ただ、モノクロ画面なので顔の輪郭はわかりづらい。よくもまあこんな長いセリフを覚えられるなと思ってしまう。さすがである。

いかにもスランプに陥っている小説家であるかのように時折ヒステリックになる。偶然あった映画監督の話をへし折る。イヤな女のムードも出すけど、後輩の本屋の店主や女優ギルスとの会話はスムーズだ。前作のように死が迫っている役柄のもつ悲愴感はない。ヘビースモーカーで時折喫煙するその雰囲気で何かの意味を持たせる。屋上でのタバコの一服が印象的だ。


キムミニを最初に観たのは宮部みゆき原作「火車」だ。その後、日本統治時代の朝鮮を描いたエロティックサスペンス「お嬢さん」での大胆な演技が印象に残った。いずれも日本に縁がある映画だ。一連のホン・サンス作品では常連である。人気俳優と共演するメジャー作品に以前のようには出演していない。不倫問題のせいだろうか?


この映画の中で、キムミニ演じる女優ジュニが最近出演していないことをもったいないと出会った映画監督が言う。すると、小説家のギルスが妙にケンカ腰に絡むシーンがある。小学生でもあるまいし、余計なお世話だと言い切る。これって最近の実際のキムミニにからめているセリフのような気がする。


なぜか最後だけキムミニのカラー映像だ。演技も脚本もレベルが高い作品だとは思う。
好きかと言われるとどうかなあ?
でも、ついつい観てしまう。
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映画「告白、あるいは完璧な弁護」

2023-06-27 19:23:23 | 映画(韓国映画)
映画「告白、あるいは完璧な弁護」を映画館で観てきました。


映画「告白、あるいは完璧な弁護」は韓国得意のクライムサスペンスだ。密室殺人の真犯人に絡むミステリーだというだけの予備知識である。スペイン映画のリメイクのようだけど、それなりに改変したという。映画館にあるポスターでキムヨンジンの顔が妙に気になっていた。「シュリ」で注目を浴びたあとしばらくは主要作品に登場してよく観ていた。もう50になる。韓国映画らしい意外性のあるストーリーを期待したが、十分に満喫できた。

この映画のストーリーは何を語ってもネタバレになりそうなので慎重にたどってみる。

IT企業の社長ユミンホ(ソ・ジソブ)が不倫相手だったセヒ殺害事件の犯人として逮捕収監されていたが釈放され自己所有の別荘に向かう。そこへ依頼を受けた弁護士ヤンシネ(キムヨンジン)が訪れて事情を確認しはじめる。ユミンホは自らは無罪だったと主張する。
それと同時に、セヒ(ナナ)と一緒にいた時に交通事故に巻き込まれていたことを告白する。セヒが運転している時に対向車とぶつかりそうになり、結局相手の車の運転手が障害物に追突して死んでいることがわかる。警察を呼べばいいものを不倫現場で巻き込まれるのを嫌がったセヒとともに事故処理をする。
この事故処理をめぐって事件が複雑になる。それがこのストーリーの肝になってくる。


お見事な韓国クライムサスペンスである。おもしろかった
基調となるのが、殺人事件の被疑者とされる社長と依頼を受けた女性弁護士との雪の中の山荘での対話だ。社長の独白に合わせての回想シーンが続く。先日観た「怪物」よりも黒澤明の「羅生門」に近いスタイルだ。意図的に観客を騙そうという意識が強く、「怪物」より緊迫感があっておもしろい。リメイクとはいえ、かなり練った脚本だ。

元々被疑者とされた殺人事件をたどると、謎の人物からユミンホ社長がホテルの一室に呼び出されていくと、そこに同じように誰かに呼ばれたセヒがいた。すると、目を離したすきに何者かに頭を打たれて意識を失う。目を覚ますとセヒが殺されている。その時通報を受けた警官が駆けつけ、ユミンホ社長が現行犯でつかまる。その時、入り口の鍵も、窓の鍵も閉まっている密室状態だった。

ユミンホの会社の弁護士が動いて釈放されたが、今後の裁判で無罪とするために敏腕女性弁護士を雇う。それがヤンシネで、どんな細かい情報でも教えてくれとユミンホからの聞き取りを始める。


そこで交通事故が起きたことを話す。実際には両方の車両がぶつかっているわけではない。ユミンホが警察に電話すれば済むことだ。でも、不倫発覚を恐れた女の方が回りくどいことをする。その時、セヒが運転していたユミンホの車も動かなくなっていた。通りかかった親切な人がたまたま自動車整備をしていて修理をしてもらう。修理が済んで、整備工の家でごちそうになっている時、衝撃の発見をしてしまう。

もう少し話を進めてもいいのだが、この辺りにしておく。


観客に錯覚を起こさせる映画だ。裁判で有利になるために、何でも話してくれというヤンシネ弁護士はユミンホから徹底的に聞き込む。そして、ヤンシネ弁護士なりの推理も働かせた作戦も教授する。この辺りがすべて再現映像になる。こういうことなのかと思ったその後で逆転、そして逆転だ。よくもまあ考えたものだ。

「告白、あるいは完璧な弁護」「最後まで行く」と同様に一つの交通事故にとんでもない背景があったことがわかり、それと密室殺人事件とをつなげていく。複雑な内容なのにわかりやすい。これもおもしろかった。韓国映画のストーリーは奥が深い。ネタが多い。
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映画「不思議の国の数学者」チェ・ミンシク

2023-04-29 21:56:44 | 映画(韓国映画)
映画「不思議の国の数学者」を映画館で観てきました。


映画「不思議の国の数学者」脱北した数学者と高校生とのふれあいを描いた韓国映画だ。数学者をメインにした映画にはおもしろい映画が多い。大好きだ。今回は韓国得意のクライムサスペンスで名を売ったチェミンシクが主演で、久々に見るような気がする。いつものようにワルを演じる訳ではない。

全国で上位1%に入る成績のいい生徒が集まる名門高校に通うジウ(キム・ドンフィ)は数学が苦手であった。ふとしたきっかけで夜間警備員ハクソン(チェ・ミンシク)に数学の能力があることがわかり、夜の誰もいない教室で教えを請うことになる話だ。


やさしい肌合いをもつ中年数学者と高校生の友情を描いた作品だ。
先日新作「Air 」を公開したばかりのマットデイモンとベン・アフレックのコンビの名作「グッドウィルハンティング」小川洋子「博士の愛した数式」のエッセンスが盛り込まれている。そこに韓国教育事情と格差問題、南での脱北者の扱いなどをからませている。全体に流れるムードからは、いつもの韓国映画のドギツさは感じられない。脚本も手がこんでいるわけでもない。観やすい映画だ。

⒈警備員に高校生ジウが近づく理由
ある時、ジウが寮の仲間とつるんで酒を飲もうと買い出しに出た時に夜間警備員のハクソンに捕まってしまう。ジウは寮を追い出される羽目になり、夜ふらついているとハクソンに出会って泊めてもらう。その時に数学の宿題を手元に置いてうっかり寝てしまう。授業にでると何故か書いてある宿題の答えを答えると正解だ。しかも、他の答えも含めて全問正解だ。これってあの人民軍と呼ばれている警備員が解いたのか?

父親を子供の頃に亡くして、シングルマザーに育てられたジウは生活困窮者の特別枠でレベルの最も高い高校に入った。数学の点数が上がらないので担任から転校を勧められている。ハクソンも立ち話を聞いてその事情がわかり、ジウを夜間の誰もいない部屋で指導することになったのだ。


⒉韓国高校生事情
ジウが通う高校は共学である。日本では、東大合格ランキング上位で共学というと渋谷幕張、日比谷くらいだと思ったら、関西の西大和学園も共学のようだ。だからあんなにレベル上がったのか。共学で女子生徒もいないとストーリー立てがやりづらいかもしれない。お金持ちの娘の同級生女子をキャスティングに加えることで味付けしているのは悪くない。

今は東大でも推薦で入学する時代だけど、この映画では内申にこだわっているようだ。韓国の受験戦争が厳しいというのは有名だけど、推薦枠で進学するのも重要視されるのであろうか?また、数学の成績にかなりこだわっている印象を受ける。


⒊脱北の数学者
脱北者の映画って割と多い気がする。どちらかというと、ワル系か格闘能力とかが優れているという方向になる。理数系の才能を持った脱北者の設定は初めて観た。映画「グッドウィルハンティング」マットデイモンは大学構内の清掃員で、大学の教授がみんな解けないだろうという数学の問題を黒板に書いたままにして、それを誰もいない時に清掃員のマットデイモンが解いてしまうという設定があった。似たようなものである。これはこれで構わない。

この数学者ハクソンは未解決問題で有名なリーマン予想の証明を出しているということになっている。すごい数学者というのがジウにもわかるのだ。ただ、半島初のノーベル賞を受賞する可能性があると映画内のTVニュースで言っているが、ノーベル賞に数学がないのを知らないのかなあ?数学はフィールズ賞だし、しかも年齢制限もある。これは大きなミスだな。


⒋オイラーの等式
小川洋子原作「博士の愛した数式」ではオイラーの等式にずいぶんとこだわった。この数学者ハクソンも同様だ。確かに美しい式だ。黒板に書かれる数式その他は、オイラーの公式を求める時の証明をアレンジしたみたいな匂いがした。高校の数学IIIから大学に入ってすぐ学ぶ解析のレベルかもしれない。日本がゆとり教育に転向した頃に、もしかして高校数学のレベルも韓国は上がったのであろうか?数学は北では兵器の道具になり、南では大学進学の道具使われたというハクソンのセリフがあった。

映画の中での校内試験のテストで、女の子が書いている解答をみるとメラネウスの定理のような式を途中までかいて途中で終わってしまった。こういう初等幾何系の問題は日本でも中学から高校程度だろう。問題の設定も疑え、途中経過にこだわるという数学者の教えの趣旨はもちろん悪くない。でも、数学が苦手というのであれば、暗記数学にこだわっておった方がいい気がするけどね。久々、80過ぎて野口悠紀雄先生が勉強法の本を書いたけど、あえて「数学は暗記」と書いてあった。自分も学生時代に数学は得意な方だったけど、肝心なところで失敗した。暗記数学を知らなかったからだと思う。当然高等数学レベルは違うけど。Q.E.D.が連発されているのをみて、受験生時代に若き長岡亮介がよく使っていたのを思い出した。


あとは音楽と数学の関係に言及しているのはよかった。元東京外語大学長のの亀山郁夫が書いた「人生百年の教養」で音楽と数学は学問的に近いと論じていたのを思い出した。
無数のおたまじゃくしをちりばめた五線譜は天才が知力の限りを尽くして組み立てた数式そのものである。音楽とは,文理横断的思考の賜物とも言える「学」なのです。(人生百年の教養 p43 )
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映画「別れる決心」タンウェイ&パクチャヌク

2023-02-20 05:09:14 | 映画(韓国映画)
映画「別れる決心」を映画館で観てきました。


映画「別れる決心」は韓国映画界の巨匠パクチャヌク監督の作品。中国から「ラストコーション」の演技で世界をアッと言わせたタン・ウェイを迎えているミステリー仕立ての映画である。評判が良いので注目していたが、タンウェイが韓国映画に出るのはどうして?と思っていた。今回は悪女を演じる。


役所の職員が岩山の山頂から転落死する事件が発生する。中国人の妻ソレ(タンウェイ)が、夫の死に落胆していない様子を見て、ヘジュン警部(パクヘイル)はソレが犯人ではないかと疑い取り調べをはじめる。ソレにアリバイがあり、捜査は一段落するが、ヘジュン刑事はスマホの解析である事実に気づく。同時にもう一度ソレを問い詰めるという話である。

比較的難解な映画である。
スマホの解析が捜査のポイントになっている。スマホ機能を巧みに使った現代のIT事情に即した話だ。この映画を理解するには2度以上観ないと難しいかもしれない。いったんアリバイで取調べが終了しているのに前半戦でスマホである事実がわかる。それでもいったんはそのまま無実となる。

意外にアッサリしてこんなもんかと思いきや、後半戦に入り一気におもしろくなってくる。まさに、映画の構造はアルフレッドヒッチコック「めまい」である。あの時は、一度は死んだと思わせたキムノヴァク別人になって再び姿を現すのには驚いた。この映画ではタンウェイはすぐは死んでいない。いったん捜査は終了していたので地方に異動していたヘジュン警部の前にソレが突然姿を現したのだ。しかも、また何か起こるのかと思ったら、起きてしまうのだ。


映画を観終わった後に、ネタバレサイトに行くと、え!こういうことだったのかと思うことばかりである。観ている最中には気づかないことが多い。数多くの伏線がいろんなセリフや行動に含まれているのだ。比較的称賛の声が多いけど、一度観ただけでみんなわかるのかな?と率直に思う。

⒈パクチャヌク
衝撃的だったのは名作「JSA」で、「シュリ」とともに韓国映画のレベルが高くなっていることを日本人にも知らしめた。ソル・ギョング主演でカンヌ映画祭グランプリを受賞した「オールドボーイ」の表現は残虐そのもので、日本占領下の朝鮮を舞台とした「お嬢さん」エロそのものである。米国映画デビューのサイコスリラー「イノセントガーデン」にもえげつない要素がある。


でも、この映画では、残虐、エロティックという表現はほとんどない。殺人が絡んでも韓国映画独特の残虐な場面はない。どうもそれは意識したようだ。「ベニスの死」でも使われたマーラーの交響曲で情感を高める。あくまで、刑事と被疑者の交情に焦点をあてるためなのだろうか。空間を感じさせるカメラワークは終始一貫してうまい。山と海の両方で見どころをつくる。

映画では「高級寿司」が会話のネタになり、実際に寿司の折詰弁当が出てくる。「お嬢さん」戦前の日本統治を話題にするくらいだから、パクチャヌク監督もそれなりに日本に関心を持っているのかもしれない。

⒉タンウェイ
アンリー監督「ラストコーション」ではトニーレオンとの絡みが本当にやっているのでは?と思わせるような激しい演技だった。あの当時から15年ほど経っているが、変わらぬ美貌を持つ。まさにサイコサスペンスとも言えるこの作品で、表情の変化だけでセリフなしでも何かをわれわれに感じさせる「悪女映画」の系譜に加えられる作品になった。


映画を観る前に、韓国映画だけど中国語で話すのかな?と思っていたら、韓国語のセリフをきっちり話していた。うまい下手は自分にはわからないが、韓国語を勉強したようだ。その上で、自動翻訳機に向かって中国語で話して、それを機械が韓国語で伝えるシーンがいくつかあった。今後はこういうハイテク機器の利用が増えてくるかもしれない。真意は母国語でないと伝わらないことも多い。最後に向けて、ディテールは違っても物語構造「めまい」と似ているので、キムノヴァクと妙にダブって見れてしまう。
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映画「パーフェクトドライバー 成功確率100%の女」 

2023-01-23 19:32:20 | 映画(韓国映画)
映画「パーフェクトドライバー 成功確率100%の女」を映画館で観てきました。


映画「パーフェクトドライバー」は「パラサイト」ソンガンホの娘役を演じたパクソダム主演のアクション映画だ。裏の車輸送請負人と言うと、ジェイソンステイタム「トランスポーター」ライアンゴズリング「ドライヴ」を連想する。いずれもスピード感ある娯楽の最高峰だ。ただ、今回のドライバーは女性。韓国系サスペンス映画のスリリングな展開を期待して映画館に向かう。ここでの悪役は人気TVシリーズ「マイディアミスター」の三兄弟の1人ソンセビョクである。メガネ姿でないので気がつきにくい。

車のスクラップ工場で働くウナ(パクソダム)は、裏の輸送ブツを途中の妨害をかわしながら確実に時間どおり届けるドライバーだ。賭博に手を染めた元プロ野球選手が国外脱出するにあたって、ムスコと一緒に連れ出そうとする。そうはさせないと裏の顔を持つ警察のチームリーダー(ソンセビョク)から狙われる。


いきなり、ウナのドライブテクニックを見せる。これがまたすごい。執拗に追ってくる敵を交わしにかわす。カッコいい。これって「トランスポーター」「ドライヴ」のスタートと一緒である。主人公の実力を見せつけて観客の目を引きつけるのだ。

この間の梨泰院の群衆パニックでもわかるように、韓国の大都市は新旧の街並みが入り乱れて細い道路が多い。舞台になる釜山の狭い路でのカーチェイスはスリリングだ。歴史ある欧州の都市でのアクション映画を観るような気分になれる。


でも期待したほどではなかった
「パラサイト」で社長の息子役だった少年を起用して主人公ウナと組ませる。多額のお金が入っている貸し金庫の鍵を持っているというのだ。それをめぐってのドタバタ劇が続く。


深みを持たせようとして、ドライバーウナを脱北者に仕立てる。主人公を追う国家組織も横ヤリに存在させる。方々に入り乱れたアクション劇も見せつけてくれる。それにしても、イマイチのれなかった。色んなアクション映画の引用が多いのは仕方ない。ただ、ストーリーづくりのうまい韓国映画には珍しく脚本が全部読めてしまう意外性がないのが自分には弱いところだったかもしれない。
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映画「非常宣言」 ソ・ガンホ&イ・ビョンホン

2023-01-09 09:56:02 | 映画(韓国映画)
映画「非常宣言」を映画館で観てきました。


映画「非常宣言」はバイオテロに遭遇した旅客機のパニック映画である。韓国の2大スター、ソン・ガンホとイビョンホンの共演である。カンヌ映画祭で主演女優賞を受賞したチョン・ドヨンが国交大臣役で加わる。予告編で,ホノルル行きの飛行機がウィルスをまき散らされパニックになる映像を見ていた。2大スターの共演ならそれなりのレベルだろうと推測して映画館に向かう。

仁川発ホノルル行きの旅客機に異常人物が搭乗する。事前に犯行予告をSNSにアップしていた。飛び立った飛行機の中にウィルスがまき散らされ乗客が次々と倒れる。犯人を捕まえたが,バイオテロと判明した段階でアメリカの当局から着陸の許可が出ない。被害は乗客ばかりでなく搭乗員にまで及び,機長も疾患して操縦不能となり飛行機は墜落しそうになる。

出来過ぎの展開であるが,娯楽として楽しめる。
飛行機という密閉空間はサスペンス映画の道具としては相性が良い。ハイジャックなどを題材にしてパニック映画として数々の名作が作られてきた。この映画はそれらに比べても、スマホやSNSのハイテクな題材を加えてネタが満載だ。しかも、不気味で変質的な異常犯罪者を登場させる。死に至るウィルスを旅客機という密閉空間に撒き散らす。コロナ感染に戸惑う現代社会に即した題材である。


どこにでもいるような若者の変質者は,犯罪の目的が金銭目当てではなく,ただ単に大量殺人を起こしたいだけである。序盤戦から空港内で不穏な行動を起こす。映画の中には不気味な雰囲気が漂う。団地の中の1室で人体実験をしてウィルスの効果を確認した上で,犯行に及ぶ。本人は生き延びるつもりはない。巻き添えにすることだけを考えている。普通じゃない。ただ,我々も安倍元総理事件を身近に体験しているので,こんな変質者が世の片隅にいる事だけはわかっている。


それにしても,次から次にこの旅客機は窮地に立たされる。ウィルス感染はもとより,長時間運行による燃料切れの不安,緊急着陸を要請した日本とアメリカからの着陸拒否,韓国に帰国しようとしたときの住民の着陸反対運動など次々と面倒な障害が出現する。以上に挙げただけではない。当事者を苦難に突き落とすことだけでいえば、これまでのパニック映画を大きく上回っている。出来過ぎのストーリーとは言え,いかにも,観客をドキドキさせようとする脚本のうまさが光る。それを映像に具現化させたのもすごい。墜落しそうになる機内の無重力空間のような場面には驚いた。

⒈ソンガンホ
熱血刑事役である。住民の通報で,テロの犯行予告が出ていることを知る。また, 異臭のする団地の部屋の捜索をして人体実験で殺された死体を発見する。被疑者が仁川発ホノルル行きの旅客機に搭乗していることがわかり,慌てて航空当局に飛行機を引き返すように要求する。でも、根拠がないと突き返される。飛行機はそのままホノルルに向かって進んでいる。ところが、その飛行機に乗って自分の妻がバカンスで遊びに行っていることを知りまた驚く。

途中で,犯人の素性が分かり,熱血刑事は証拠をピックアップしようと犯人が在籍した元会社に乗り込もうとする。きっちりした証拠に基づいた捜査令状を出せるわけではないので会社内には入れない。そこで押し問答が起きる。この辺の熱血刑事ぶりは「殺人の記憶」の頃のソン・ガンホを彷彿させる。


⒉イビョンホン
最初はアトピー疾患で悩む娘を連れている単なる乗客であった。ただ,娘につきまとう変人と空港で出会う。,旅客機でその男の搭乗を確認して,ウィルストラブルが起きた後で客室乗務員にあいつは怪しいと訴えるだけの乗客に過ぎなかった。ただ,副操縦士とは面識があるらしい。一体どんな存在だろうかと思っていた後で,機長のウィルス感染で操縦不可能となった時点で存在感を示す。実はもともと同じ航空会社の機長だったのだ。


2人のスターは,面と向かって共演はしない。1人は韓国にいて, 1人は旅客機の中だ。娯楽作品としてねられた脚本に加えて格の違う2人のスターを登場させるだけで,映画の水準が高くなった。
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