映画「恋文」を名画座で観てきました。
「恋文」は1985年の神代辰巳監督作品である。萩原健一とのコンビというだけでこの映画の存在は気になっていたが、DVDになっていない。これまで観れていなかったので、名画座に駆けつける。連城三紀彦の直木賞受賞作「恋文」を映画化した。
妻(倍賞美津子)と小学生の息子を持つごく普通の家庭の美術教師(萩原健一)のもとに昔の恋人(関根恵子)から白血病で余命が短いという手紙が届く。死ぬまで面倒を見ようとする夫と親戚のふりをして元恋人と接近する妻との三角関係を描いている。
ストーリー自体はあまりのれない。こんなつまらない話でよく直木賞とったなと思ってしまう。何もかも不自然で、登場する誰にも感情移入はできない。ただ、神代辰巳監督の映画術は冴えわたる。
昭和にデートバックしたなあと実感する映画である。井上堯之の音楽にもいつもの切れ味はない。バックに不必要に流れるだけで古さを感じる。まさに70年代のクサいTVドラマを見るようだ。携帯電話はもちろんない頃だ。連絡をつけるために、公衆電話を使ったり、行く先で電話の呼び出しをする。現代と行動範囲がまったく違ってくる。今で考えると、不自由極まりないが、神代辰巳監督は萩原健一と倍賞美津子を巧みに方々へ疾走させる。「恋文」ではこの2人のピークの姿を見るだけで十分価値はある。
⒈萩原健一
岸恵子との「約束」では顔立ちが未熟な感じがする。その後、TVの「太陽にほえろ」「傷だらけの天使」や「前略おふくろ様」などを経て俳優らしさが色濃くなってくる。「青春の蹉跌」あたりで、我々がイメージする俳優ショーケンの顔になる。神代辰巳監督とは意気投合できたのであろうか?共演作は多い。内田裕也も同様だが、神代辰巳は破天荒な男の使い方に長けている。
この役柄ちょっと変わった役柄だ。円満な家庭を築いていたのに、死の病に侵された昔の恋人の面倒をみるというだけで、学校をやめてしまう。しかも、元恋人の手紙を家に残して飛び出してしまい、今や消えた風景である東横線に向かい合う渋谷川沿いのバラックに住み着いて、築地の場外で働く。
もともと破天荒そのものな私生活と連動するような役柄の方が得意なはずだが、「青春の蹉跌」での弁護士の卵といい、「恋文」の元美術教師といいインテリ的な匂いが入る。この時代のショーケンはそんな役も楽にこなす。飲んで暴れて警察に何度もやっかいになるという設定になっているが、「傷だらけの天使」で見るような暴れまくるハチャメチャな演出はない。
⒉倍賞美津子
この頃はアントニオ猪木と結婚していた。20代の倍賞美津子には現代的な美人というイメージをまだ小学生の自分は持っていた。猪木と結婚すると発表されたときは驚いたなあ。でも、今村昌平監督作品「復讐するは我にあり」で豊満なバストを世間に見せつけてくれたときは、その衝撃に当時大学生の自分はもっと驚いた。
この映画の頃、ちょうど39才である。絶えず、いい役がまわっていて女優としていちばん輝いていた。それだけに美しい。雑誌の編集者という役柄だ。キャリアウーマンが似合う雰囲気をもつ。一眼レフを持つ倍賞美津子を映したショットがカッコいい。演技も安定している。キネマ旬報の主演女優賞をはじめ、賞を総なめするのもうなずける。
昭和の頃、80年代であることは間違いない。どうしても時期を特定できないが、一度だけ実物を見たことがある。ホテルニューオータニのトロピカルラウンジ「トレーダービックス」に男の取り巻きを連れて飲んでいた。すごい迫力だった。まさに後光がさしていた。最近映画館の予告編で佐藤健の新作で年老いた倍賞美津子を見た。本当に老けた。今回名画座で観れるということで足がむいたのも、当時絶頂の倍賞美津子を見たかったのだ。よかった。
⒊高橋恵子
萩原健一演じる主人公の元恋人で余命短い白血病の患者を演じる。高橋伴明と結婚して間もない頃だ。自分はデビューまもない大映倒産寸前の「おさな妻」の頃からのファンである。少年の頃はよく「お世話」になった。70年代後半は精神的に不安定だったのか?失踪事件を起こしたり、常にスキャンダルと背中合わせだった。
ここでは、花嫁姿まで見せつけるが、高橋恵子はそんなに素敵だと思わない。もっときれいな高橋恵子ってもう少し後の方が拝めると思う。
⒋神代辰巳
神代辰巳監督はいくつか鋭いショットを見せつける。西新宿の地下道で、通勤時に一斉に駅から高層ビル方向に向かって歩く大勢の人混みの反対方向に萩原健一と倍賞美津子を歩かせるショットがうますぎる。それに加えて、カメラに向かって萩原健一と倍賞美津子を並んで座らせ、長回しで演じさせるシーンも大画面にはえる。交互に横向きの2人を切り返すアングルもいい。大人の恋というのを強く意識させる。
「恋文」は1985年の神代辰巳監督作品である。萩原健一とのコンビというだけでこの映画の存在は気になっていたが、DVDになっていない。これまで観れていなかったので、名画座に駆けつける。連城三紀彦の直木賞受賞作「恋文」を映画化した。
妻(倍賞美津子)と小学生の息子を持つごく普通の家庭の美術教師(萩原健一)のもとに昔の恋人(関根恵子)から白血病で余命が短いという手紙が届く。死ぬまで面倒を見ようとする夫と親戚のふりをして元恋人と接近する妻との三角関係を描いている。
ストーリー自体はあまりのれない。こんなつまらない話でよく直木賞とったなと思ってしまう。何もかも不自然で、登場する誰にも感情移入はできない。ただ、神代辰巳監督の映画術は冴えわたる。
昭和にデートバックしたなあと実感する映画である。井上堯之の音楽にもいつもの切れ味はない。バックに不必要に流れるだけで古さを感じる。まさに70年代のクサいTVドラマを見るようだ。携帯電話はもちろんない頃だ。連絡をつけるために、公衆電話を使ったり、行く先で電話の呼び出しをする。現代と行動範囲がまったく違ってくる。今で考えると、不自由極まりないが、神代辰巳監督は萩原健一と倍賞美津子を巧みに方々へ疾走させる。「恋文」ではこの2人のピークの姿を見るだけで十分価値はある。
⒈萩原健一
岸恵子との「約束」では顔立ちが未熟な感じがする。その後、TVの「太陽にほえろ」「傷だらけの天使」や「前略おふくろ様」などを経て俳優らしさが色濃くなってくる。「青春の蹉跌」あたりで、我々がイメージする俳優ショーケンの顔になる。神代辰巳監督とは意気投合できたのであろうか?共演作は多い。内田裕也も同様だが、神代辰巳は破天荒な男の使い方に長けている。
この役柄ちょっと変わった役柄だ。円満な家庭を築いていたのに、死の病に侵された昔の恋人の面倒をみるというだけで、学校をやめてしまう。しかも、元恋人の手紙を家に残して飛び出してしまい、今や消えた風景である東横線に向かい合う渋谷川沿いのバラックに住み着いて、築地の場外で働く。
もともと破天荒そのものな私生活と連動するような役柄の方が得意なはずだが、「青春の蹉跌」での弁護士の卵といい、「恋文」の元美術教師といいインテリ的な匂いが入る。この時代のショーケンはそんな役も楽にこなす。飲んで暴れて警察に何度もやっかいになるという設定になっているが、「傷だらけの天使」で見るような暴れまくるハチャメチャな演出はない。
⒉倍賞美津子
この頃はアントニオ猪木と結婚していた。20代の倍賞美津子には現代的な美人というイメージをまだ小学生の自分は持っていた。猪木と結婚すると発表されたときは驚いたなあ。でも、今村昌平監督作品「復讐するは我にあり」で豊満なバストを世間に見せつけてくれたときは、その衝撃に当時大学生の自分はもっと驚いた。
この映画の頃、ちょうど39才である。絶えず、いい役がまわっていて女優としていちばん輝いていた。それだけに美しい。雑誌の編集者という役柄だ。キャリアウーマンが似合う雰囲気をもつ。一眼レフを持つ倍賞美津子を映したショットがカッコいい。演技も安定している。キネマ旬報の主演女優賞をはじめ、賞を総なめするのもうなずける。
昭和の頃、80年代であることは間違いない。どうしても時期を特定できないが、一度だけ実物を見たことがある。ホテルニューオータニのトロピカルラウンジ「トレーダービックス」に男の取り巻きを連れて飲んでいた。すごい迫力だった。まさに後光がさしていた。最近映画館の予告編で佐藤健の新作で年老いた倍賞美津子を見た。本当に老けた。今回名画座で観れるということで足がむいたのも、当時絶頂の倍賞美津子を見たかったのだ。よかった。
⒊高橋恵子
萩原健一演じる主人公の元恋人で余命短い白血病の患者を演じる。高橋伴明と結婚して間もない頃だ。自分はデビューまもない大映倒産寸前の「おさな妻」の頃からのファンである。少年の頃はよく「お世話」になった。70年代後半は精神的に不安定だったのか?失踪事件を起こしたり、常にスキャンダルと背中合わせだった。
ここでは、花嫁姿まで見せつけるが、高橋恵子はそんなに素敵だと思わない。もっときれいな高橋恵子ってもう少し後の方が拝めると思う。
⒋神代辰巳
神代辰巳監督はいくつか鋭いショットを見せつける。西新宿の地下道で、通勤時に一斉に駅から高層ビル方向に向かって歩く大勢の人混みの反対方向に萩原健一と倍賞美津子を歩かせるショットがうますぎる。それに加えて、カメラに向かって萩原健一と倍賞美津子を並んで座らせ、長回しで演じさせるシーンも大画面にはえる。交互に横向きの2人を切り返すアングルもいい。大人の恋というのを強く意識させる。