映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「花芯」 村川絵梨&瀬戸内寂聴

2016-08-29 19:57:15 | 映画(日本 2013年以降主演女性)
映画「花芯」を映画館で見てきました。


映画「花芯」は1957年(昭和32年)の瀬戸内晴美(寂聴)原作の小説が題材、「花芯」とは子宮のことで発表当時はポルノ小説かと物議を呈したらしい。以前日経新聞「私の履歴書」で瀬戸内寂聴自ら自分の半生を記したとき、不倫の恋の描写が激しいので面食らった覚えがある。それはもうきわどい表現で、日経連載の新聞小説「失楽園」を読んでいるときと同じようなドキドキ感があった。それ以来若き日の彼女の作品はずいぶんと読んだし、この作品も読んできわどさに閉口した。数年前「夏の終り」満島ひかり主演で映画化されたが、同じような私小説的な不倫物語である。でも今回は主演女優の村川絵梨が圧倒的にいい。


今回うわさを聞き、見に行こうとして事前情報を得たが、知っている俳優が少ない。主演の村川絵梨も知らなかった。今回瀬戸内自ら村川絵梨の裸体の美しさに言及しているコメントがある。確かに美しい。戦後間もないという時代背景を意識した着物姿も素敵で、彼女一人でもっている作品といってもおかしくない。

終戦が近付いてきた頃、主人公園子(村川絵梨)には親から押し付けられた大学生の婚約者雨宮がいた。彼は文学を志そうとしていたが、徴兵を逃れようとして理系に転向しようとしている。そのせこさに対しては主人公は軽蔑のまなざしを向けた。それでも自分の父親が病に倒れたこともあり、愛はなかったが、婚約者と結婚する。そして、男の子を生む。夫は主人公の妹と親しげに話しこむのを見て、ますますいやになっていく。


その後、2人は転勤で京都へ住み移る。その家は後家さんが貸主として切り盛りしていたが、同じ下宿人には夫の先輩にあたる越智という男がいた。主人公は一目見た時から越智に惹かれた。夫の帰宅も遅く、大家さんと越智を含めた麻雀をするようになる。しかし、ほどなく大家と越智が男女の関係にあることに気づくのであるが。。。


終戦前から昭和20年代を通じての話である。出演者が男女問わず、現代的な顔をしているので軽い違和感がある。それでも、村川絵梨は清楚な美貌を持っているにもかかわらず、大胆な乱れ方をするのがなかなか刺激的である。


1.瀬戸内寂聴
今の若い人はほとんど得度したあとの瀬戸内寂聴しかしらないであろう。彼女が出家したときはマスコミは大騒ぎだった。彼女がそういう道に進むのも、それまで情熱的な恋愛をしてきたことへの猛省もあったのであろう。幼い子供とは別れ別れになりながらも男に走るという生き方をした有名人女性はそうはいないだろう。この「花芯」を発表したときに子宮小説と批判され、文壇の世界からしばらく干されたのは気の毒だが、こうして美人女優がこの作品を演じることには瀬戸内寂聴も満足感をもつであろう。


2.村川絵梨
朝のテレビ小説にも出演したそうだが、全く見ない自分にとっては「風のハルカ」という題名すら知らない。いかにも終戦前後の着物を着こなすが、地味な着物なのにものすごくよく見える。松たか子のような清純派の顔立ちに、若いころの樋口加奈子の大胆さを兼ね備える。なんて素敵なんだろう。感度がよさそうな小ぶりなバストを大胆にあらわにして、男たちと交わる。清楚系の顔立ちとの落差の激しさに思わず食い入るように見てしまう。



花芯
原作のきわどさに驚くしかない


村川絵梨 『 Miles Away
村川絵梨の写真集で楽しむ
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映画「キクとイサム」 今井正

2016-08-05 08:20:24 | 映画(日本 昭和34年以前)
映画「キクとイサム」は昭和34年(1959年)の今井正監督作品、「どっこい生きている」との名画座二本立てを見てきました。


キネマ旬報1位作品を5本も監督している今井正の作品の中でも、「キクとイサム」は個人的には特に優れた作品だと思う。戦争が終結して米軍兵士が駐留する中で、日本人女性との多くのカップルが存在したという。そして混血の子供が生まれたのだ。ここでは福島の山奥の農村で祖母と暮らす黒人との混血姉弟にスポットをあてる。混血の子供への差別をクローズアップしているが、全体に流れるムードはコメディにも似たものである。水木洋子の脚本はすばらしいが、それには北林谷栄演じる祖母の存在が大きい。お見事だ。

会津の田舎の小学校で、男まさりに遊ぶ体格のいい女の子キク(高橋恵美子)が映しだされる。彼女は農家を営む祖母のしげばあさん(北林谷栄)と弟イサム(奥の山ジョージ)と暮らしている。しげばあさんの娘でキクとイサムの母親は2人を生んだあと、すでに病気で亡くなっていて、2人はばあさんに育てられていた。しかし、体格もよく近所の悪ガキとのケンカが絶えない2人はばあさんの手に負えなくなっていた上、ばあさんは腰が悪かった。

ある日、病院で腰の治療を受けるため、ばあさんはキクに野菜かごを背負わせて町へ出て行った。2人で野菜を売り歩いたあとで、そのまま診療所に行き院長(宮口精二)から診察をうける。キクはばあさんから貰った十円で町の行商(三井弘次)からくしを買うと楽しそうに先に帰った。混血の姉弟の面倒をみるのに苦慮しているばあさんをみて、院長はアメリカの家庭への養子縁組の世話をしている人間を知っているという話をする。

しばらくすると、カメラを下げた見知らぬ男(滝沢修)が村へ現れ、仲間と遊んでいたイサムの写真をとった。キクはその場から逃げた。姉弟のどちらかを養子縁組するために男が現れたのだ。イサムは学校で友達から「クロンボ」とからかわれ、ケンカばかりしていた。キクはアメリカに行くことを嫌がったが、イサムはいいよと受ける。
結局イサムはアメリカの農園主に引きとられることになる。出発の時、引き取りに来た男に連れられて、汽車に乗りこむ。しかし、そのあとイサムは急にさみしくなり必死に泣きわめく。キクは走り去る汽車の姿を追った。キク一人がばあさんと残されたのであるが。。。


主役2人はこの映画のために探しだされた無名の黒人との混血の子供たちであるが、脇を固めるのはこの時代の日本映画や演劇界を支えたそうそうたるメンバーだ。滝沢修、宮口精二、三國連太郎、東野英治郎、殿山泰司、三島雅夫、多々良純などの男性陣に加えて荒木道子、賀原夏子と加わると、自分が幼い頃昭和40年代のお茶の間のテレビで良く見かけた顔が揃い親しみがわく。特に女教師を演じた荒木道子はそののち「ただいま11人」で大家族の母親役を演じ、ずっとお母さんのイメージが強かったが、ここではスマートでなかなかいい女ぶりだ。

1.混血の子供と水木洋子
今井正と水木洋子はこの二人を探しだすために、かなりの時間をかけたという。もともとは主役のキクの女の子はイメージが対照的な子だったのをあえて、太っちょでいかにも体格のいい黒人の父親をもつといったイメージの高橋恵美子水木洋子が起用したという。そして、彼女らしさを出す脚本にしたという。このあたりはさすがといった感じだ。

自分の前の勤務地であった千葉市川の高級住宅地の中に水木洋子記念館というのがあった。谷口千吉とも結婚していた時期があったというが、独身だった彼女は市川市に全財産寄付したというさすがだ。浮雲、山の音、おとうとなどすばらしい作品を残した水木洋子が、ここではやさしい目線で2人の姉弟を追っている。しかも、北林にしゃべらせるばあさん言葉が滑稽で、近所の人たちの田舎言葉の調子もコメディのようだ。キクが芝居一座に酒を飲まされた上で、八百屋のオート三輪の上に子守している赤ん坊を置いていってそのまま近所の悪ガキとケンカするシーンもおもしろい。本当にうまい脚本だ。

2.北林谷栄
この映画のころは48歳だったという。平成になってからもおばあさんを演じ続けた北林も永遠のおばあさん女優といえよう。しかも、演技作りでこの作品では前歯をぬいたという。凄いプロ魂だ。賞を軒並みさらっていったのは当然と言えよう。このほかの作品では大島渚作品「太陽の墓場」、今村昌平作品「にっぽん昆虫記」が印象に残る。


最後に向けてのキクとばあさんの交情がいい。後味がいい映画だ。

(参考作品)
キクとイサム
今井正監督と脚本水木洋子の名コンビ
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映画「どっこい生きている」 今井正

2016-08-03 20:25:38 | 映画(日本 昭和34年以前)
映画「どっこい生きている」は昭和26年(1951年)公開の今井正監督作品、名画座で見てきました。


昭和26年のキネマ旬報の5位に位置する作品だ。今井正監督というとキネマ旬報ナンバー1作品が5作もある名監督だけど、彼の作品はあまりdvdレンタルには置いていないし、アマゾン価格も高い。こういう今井正特集は貴重だけど、仕事も忙しいのでこの日に焦点を絞る。

戦後の復興途中でまだ貧しかった東京の街で、底辺を彷徨う家庭にスポットをあてる。朝早くから職安に大勢集まる労務者の姿を映しだす。そこには男性労働者だけでなく赤ちゃんを背に背負った主婦の姿もある。なんとなく次の展開が予測できてしまうような脚本だけど、東京の昭和20年代を再現したセットで今の俳優が演じるのでなく、平屋のボロ家が立ち並ぶリアルな20年代映像が実に迫力がある。社会性が強いと言われる今井正監督の作品にしては赤系イヤミはなかった。今は格差社会といわれるが、この時代は半端じゃなかったことがうかがわれる。今を悪く言う人どう思うんだろうなあ。


毛利修三(河原崎長十郎)は日雇い労働者で職安に通う身だ。ようやく妻(河原崎しず江)と子供二人を養っていたが、借家の立ち退きを迫られ途方に暮れる。やむなく妻と子供を田舎へかえして、自分は労務者向けの簡易宿で寝泊まりし、日雇い生活を続ける。何気なくある町工場の旋盤工募集のビラを見て、訪問すると雇われることがきまった。しかし、給料日までしのぐ手持ちの金が全くないので、職安仲間の水野(木村功)から金を借りようとするが、子だくさんの大家族で生活は苦しそう。同じ寮に住む秋山婆さん(飯田蝶子)に頼むと、戦災者寮の連中から少しづつカンパを集めて400円を集めてくれた。ところが、その夜簡易宿にいる花村(中村 翫右衛門)からすすめられた酒を飲みすぎてしまい、酩酊してしまいお金を持っていることが雑魚寝の同宿の連中にばれてしまう。そして、寝た間に誰かに現金を盗まれてしまう。しかも、最初に前借話を工場主にしていたことを嫌がられ、町工場の就職もふいになってしまう。途方にくれたとき、花村に悪い仕事を一緒にやろうと誘われて手を出してしまうのであるが。。。

1.昭和26年のキネマ旬報ベスト10
1位が小津安二郎の「麦秋」、2位が成瀬巳喜男の「めし」と原節子作品が2作続き、3位が吉村公三郎監督で京マチ子主演の「偽れる盛装」、4位が木下恵介監督で高峰秀子主演の「カルメン故郷に帰る」と日本映画史の代表作が並んでいる凄い年なので、5位であっても仕方ないだろう。上位の4作に比べると、社会のドツボな面が大きくクローズアップされる。何より昭和26年のまだ舗装されていない道路が多い東京の姿が良くとらえられている。

2.飯田蝶子
自分が子供のころ、テレビのおばあちゃん役というと飯田蝶子か浦辺 粂子だった。飯田蝶子といえば、加山雄三の若大将シリーズのおばあちゃん役が代表作だろう。あの映画では老舗スキヤキ屋の店主の母親で、典型的な江戸の商家によくいる孫に甘いやさしいおばあちゃんだった。ここではやり手ババアといった感じで、男まさりで一歩も引かないというたくましい面が前面に出ている。なかなかの好演だ。




3.追いつめられる主人公
主人公は戦前二人の旋盤工を雇っていた町工場の主だったという。戦争で潰してしまったのか、有名なお化け煙突が見えるおそらくは足立方面のボロ屋に住むが、建て替えに伴う立ち退きにあう。行き先もなく、妻と子供を実家に帰し、相変わらずの日雇い暮らし。ようやく定職にありつけたと思ったら、持ち金がなく、知人の長屋仲間のカンパでなんとか助かる。ところが、簡易宿泊所で酔いつぶれてしまい、ごろ寝で寝ている中で金を盗まれる。


てな感じで徹底的に主人公をイジメ抜く。この後もイジメが続く。
これでもかこれでもかといじめてあとは死ぬだけというとところにまで持っていくが、最後に一筋の光を与える。でもこの人たちうまくいくのかしら??
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