映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「誰よりも狙われた男」フィリップ・シーモア・ホフマン

2014-10-30 05:52:14 | 映画(洋画 2013年以降主演男性)
フィリップ・シーモア・ホフマンの遺作映画「誰よりも狙われた男」を映画館で見てきました。 
これはよくできている映画だ。
ハンブルクの美しい映像に陰謀渦巻くショットがきれいにとけこむ映像美が際立つ作品であった。


スパイ映画という予備知識だけで映画を見た。途中解説がないので、登場人物の関係がよくわからないなあと感じる場面もいくつかあった。それでも彼らを映しだす構図がしっかりしていて、撮影者の技量を感じた。登場人物はフィリップ・シーモア・ホフマン以外もレイチェル・マクアダムス「東ベルリンから来た女」のニーナ・ホス「ラッシュ」のレーサー役ダニエル・ブリュールなどのドイツ人俳優など主演級がずらりと並び、それぞれに存在感を持たせるところもよい。 


ドイツの港湾都市ハンブルク。諜報機関でテロ対策チームを率いる練達のスパイ、ギュンター・バッハマン(フィリップ・シーモア・ホフマン)は、密入国したひとりの若者に目をつける。彼の名前はイッサ(グレゴリー・ドブリギン)といい、イスラム過激派として国際指名手配されていた。

イッサは人権団体の若手弁護士の女性、アナベル・リヒター(レイチェル・マクアダムス)を介して、銀行家のトミー・ブルー(ウィレム・デフォー)と接触。彼の経営する銀行に、イッサの目的とする秘密口座が存在しているらしい。一方、マーサ・サリヴァン(ロビン・ライト)率いるCIAの介入も得たドイツの諜報界はイッサを逮捕しようと迫っていた。しかしバッハマンはイッサをあえて泳がせ、彼を利用することでテロリストへの資金支援に関わる“ある大物”を狙おうとしていた―。

そしてアナベルは、自分の呪われた過去と決別しようとしているイッサを命がけで救おうとする。


また彼女に惹かれるブルーも、バッハマンとそのチーム員イルナ(ニーナ・ホス)やマキシミリアン(ダニエル・ブリュール)と共に闇の中に巻き込まれていくのだった……。(作品情報より引用)

1.ハンブルク
大学の第2外国語がフランス語でドイツには苦手意識がある。ハンブルクで連想するのは、「ラブミードゥ」でデビューする前のビートルズが遠征していた場所ということくらいだ。港湾都市と知っていたが、地図を見てビックリ。映画を見終わるまで海に面している場所と思っていたら、内陸の都市なのだ。大きな川なんだなあ。


フィリップ・シーモア・ホフマンが船にのって沖合に出て、自分の手下と内密の話をする場面がある。どうみても海だ。しかも、同じように高い建物の階上のカフェテラスで、ロビン・ライト扮するCIAのリーダーと密談している場所から見下ろす港の風景をみても海だと思っていた。このようなハンブルクの風景を映画の中にふんだんに入れているところが、この映画の魅力である。
猥雑な夜のクラブや欧州の昔風のアパートの屋上でレイチェル・マクアダムスとイスラム過激派の青年を映すショットもいい。

2.フィリップ・シーモア・ホフマン
アカデミー賞主演男優賞を受賞した「カポーティ」の奇声で彼を知るようになった。ただ、彼が出演するそれまでの作品もほとんど見ていることにその後気づいた。その後も「ミッションインポッシブル」「ザ・マスター」の悪役、シドニールメットの遺作で個人的にそのスピード感が好きな「その土曜日、7時58分」での演技は抜群だ。最近の「25年目の弦楽四重奏」も上質な味わいがある。


この映画ではタバコをずっと吸ってばかりいる。エージェントといっても、派手なアクションや格闘シーンがあるわけではない。標的を泳がしながら、動きを探ってじんわりと裏の世界を追う仕事師だ。腹が出ていて体型は醜く、動きも鈍い。カッコ悪い諜報員だが、この役他の人には無理なんだろうなあ。彼が出演する作品はどれもこれもいい映画だったので本当に残念。ご冥福を祈りたい。

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映画「戦場のメリークリスマス」 大島渚

2014-10-29 21:54:39 | 映画(日本 昭和49~63年)
映画「戦場のメリークリスマス」は大島渚監督による83年の映画作品だ。


テーマ曲があまりにも有名、題名が「戦場」となっているが日米の交戦シーンはない。捕虜収容所における英国捕虜と管理する日本兵との関わりを描く。ここでは2人の超一流ミュージシャンを中心にストーリーが展開する。デヴィッド・ボウイと坂本龍一だ。それにジョニー大倉、内田裕也という2人のミュージシャンが加わり捕虜収容所におけるヒューマンドラマを展開する。

ストーリーはどうってことない。
ここではこれらのミュージシャンとビートたけしのふるまいを見て楽しむということだろう。

1942年、ジャワに日本軍の浮虜収容所があった。日本軍軍曹ハラ(ビートたけし)は英国軍中佐ロレンスを叩き起こし、閲兵場に引き連れて行く。広場にはオランダ兵デ・ヨンと朝鮮人軍属カネモト(ジョニー大倉)が転がされていた。カネモトはデ・ヨンの独房に忍び込み彼を犯したのだ。ハラは日本語を操るロレンスを立ち合わせたのだった。


そこへ、収容所長ヨノイ大尉(坂本龍一)が現れ、察した彼はハラに後刻の報告を命じて、軍律会議出席のためバビヤダへ向かった。法廷では、英国陸軍少佐ジャック・セリアズ(デヴィッド・ボウイ)の軍律会議が開廷された。ヨノイは異様な眼差しでセリアズを凝視する。セリアズは浮虜収容所へ送られてきた。ヨノイはハラに、セリアズをすぐに医務室へ運ぶよう命令する。そこへ浮虜長ヒックスリが連れてこられた。ヨノイは彼に、浮虜の内、兵器、銃砲の専門家の名簿をよこせと命ずるがヒックスリは拒否する。

ある日、ヨノイの稽古場にハラが現れ、ロレンスが面会を申し入れていると告げる。ヨノイは唐突に、自分は二・二六事件の3ヵ月前満州に左遷されたため、死に遅れたのだと語った。そして、その場でカネモトの処刑をいい渡した。処刑場にはヒックスリ以下浮虜側も強制的に立ち会わされ、ハラがカネモトの首を切り落とした瞬間、デ・ヨンが舌を噛みきった。「礼を尽くせ」とヨノイは命ずるが浮虜たちは無視する。激昂したヨノイは、収容所の全員に48時間の謹慎と断食の行を命じる。ロレンスとセリアズは独房入りとなった。

ロレンスは、たった2度しか会わなかった女性の思い出の中へ。セリアズは、耳許に内向的だった弟の歌声を聞く。2人は司令室に連行された。そこには「ろーれんすさん。ふあーぜる・くり~すます」と笑いかけるハラがいた。ハラは2人に収容所に帰ってよいといい渡す。ヨノイの命令で、浮虜全員が閲兵場に整列させられたが、病棟の浮虜たちがいない。病人たちをかばうヒックスリに、激怒したヨノイは再び「兵器の専門家は何人いるか」と問う。「おりません」とヒックスリ。ヨノイは「斬る」と軍刀を抜いた。そのとき、浮虜の群からセリアズが優雅に歩み出、両手でヨノイの腕をつかむと、彼の頬に唇を当てたが。。。


男色系恋愛映画というのがある。そういう映画とは一線を引くが、デヴィッド・ボウイが登場してから坂本龍一をはじめとした日本兵の調子がくるってくる。客観的に見てもここでのデヴィッドボウイの美青年ぶりが際立つ。ぞくっとするようないい男ぶりだ。パブリックスクール時代の想い出と弟がくらうイジメの話が挿入されるがちょっとついていけなかった。

1.デヴィッドボウイ
デビューしてからもう10年たつ頃だ。キャロルが初めて登場したフジテレビ「リブヤング」で、自殺した評論家今野雄二がデビュー以来何度も紹介していた。今野は有名な男色系だ。1983年といえば、「レッツダンス」が全米ヒットチャート1位をとる。ディスコで何度もかかった曲である。そういう世界の頂点にある時期にこの映画に出演したという事実が凄い。


最近では化粧しているミュージシャンが珍しくない時代となったが、デビュー時のデヴィッドボウイの化粧姿には驚いた。ここでのデヴィッドボウイは化粧なしで、しかも端正なマスクを見せる。美しいといってもいいかもしれない。あえて女性を一人も出演させなかったのにはデヴィッドボウイを際立たせる意味があったのではと感じる。

2.坂本龍一
イエローマジックオーケストラで脚光を浴びたのは1979年である。82年には矢野顯子と結婚している。演技を見ればわかるように、まったくの素人である。大島渚もよく出演させたなあと思うけど、独特のオリエンタルムードを持っている。デヴィッドボウイに対抗させるには彼しかいなかったろう。87年の「ラストエンペラー」では甘粕大尉を見事に演じるようになるのであるが。。。


3.ジョニー大倉
キャロルの解散は75年で、もう8年たっている。いまや醜い姿をさらしているが、俳優としての基礎を固めつつある時期で、矢沢永吉との差は今ほど極端に開いているわけではなかった。81年の「遠雷」は今もって傑作とされる。ここでは日本兵として罰せられる朝鮮人兵を演じている。情けない顔をさらしているだけであるが、元々在日のジョニーが戦争中も差別を受けていた朝鮮人の姿を見せつける。

4.内田裕也
浮虜収容所の所長役である。ここ最近は凄い色の髪をしてヤクザまがいの表情を見せる。この作品では端正な顔でかっこいい。65年の「エレキの若大将」での司会役、この映画、2003年の「赤目四十八瀧心中未遂」の刺青師の3つを比較してみると面白い。


こんな4人を見れるだけでも価値がある。ビートたけしはまだツービートの漫才で売っていたころで、映画の世界に本格的に足を突っ込んでいなかった。坊主姿の顔は戦前の日本人そのものの表情と言っていいだろう。最後のシーンは感動したという人も多いが、さほどでもなかった。

(参考作品)
戦場のメリークリスマス
日本兵と捕虜の奇怪な関係


ラストエンペラー
甘粕大尉を演じる坂本龍一


レッツ・ダンス
全盛期のデイヴィッドボウイ


赤目四十八瀧心中未遂
内田裕也を見比べる
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映画「男はつらいよ 私の寅さん」 渥美清&岸恵子

2014-10-28 19:58:07 | 映画(日本 昭和35年~49年)
映画「男はつらいよ 私の寅さん」は昭和48年(1973年)のシリーズ第12作である。
シリーズで最大の観客動員があったとのことだ。


マドンナは岸恵子である。当時フランス在住で、まだヨーロッパに渡航する人が少ない頃、羨望のまなざしで、昭和の日本国民から眺められていた。彼女の兄役が人気の絶頂から転落する頃の前田武彦である。
寅さんや柴又の家族の振る舞いはいつもの通り。

柴又のとらやでは、九州へ家族旅行を計画していた。でもおいちゃん(松村達雄)は浮かぬ顔、おみくじで凶を引いてしまったのだ。もしかして寅さん(渥美清)が帰ってくるのではと一同で思っていたところへ寅さんが帰ってくる。
妹さくら(倍賞千恵子)とおいちゃんはなかなか言い出せなかったが、御前様(笠智衆)が旅行安全のお守りと餞別を持ってきて寅さんにもわかってしまう。
いつものようにドタバタするが、家族は無事大分から熊本への旅をすることができる。
毎日酩酊しながら、寅さんも留守番の役割を果たした。

そんな時、寅さんの小学校同級生デベソ(前田武彦)がとらやを訪ねてくる。医者の息子だったが、今は放送作家のようだ。
早速とらやの2階で酒を酌み交わし、旧交を温める。うちに来いよと言われ、画家である妹りつ子(岸恵子)の住む実家に行く。酔っていた寅は、絵具をつい滑らせ、描いている最中のキャンパスを汚してしまう。ちょうどそのとき、妹が帰ってくる。それを見て激怒したりつ子は寅を追い出すが、その後りつ子が言いすぎたととらやを訪れ、寅はご機嫌になる。


そこに画廊の主(津川雅彦)がりつ子を訪ねてくる。彼は懸命にりつ子を口説こうとしているのであった。それを見てまた振られたのかと思った寅は旅に出ようとしたが、妹にとっては嫌な存在とわかるとまた残ることになり、寅は一気に入れ込んでいくようになるのであるが。。。

1.前田武彦
ちょうど1970年をはさんで68年ごろから73年までの活躍はすごかった。
芳村真理とコンビ司会をしたフジテレビ「夜のヒットスタジオ」は、芸能人ゴシップネタの話題をふりまき続けた。また、大橋巨泉と組んだ「巨泉前武ゲバゲバ90分」は人気司会者のコンビでコント55号やハナ肇の奇想天外のギャグを毎週見るのが楽しみだった。


そんな全盛時を経て、1973年に前田武彦は人気絶頂だけに起こす勇み足をする。
ある共産党議員が当選したら番組で万歳をすると、選挙応援で言ってしまう。実際に当選して本当に万歳をしてむしろ右よりのフジサンケイグループ鹿内オーナーの反感を買う。その後は干されてしまう。
この映画が撮影されたのが、いつなのかはわからない。ただ、ちょうど干された時期だけに同じ共産党支持者である山田洋次監督が前田の起用を図ったと考えてもいいかもしれない。

2.岸恵子
前田武彦演じる放送作家の弟で画家と言う設定だ。当時41歳で古巣の松竹映画に出演する。
フランス人映画監督と結婚して、パリに在住というイメージは今からすると考えられないくらいハイソなイメージであった。
この寅さん映画の前に萩原健一共演「約束」に出演していて、日本での露出度が増えてくる。
三浦友和、山口百恵のゴールデンコンビによるテレビの「赤い」シリーズは当時の中高生はみんな見ていた。そこでの「パリのおばさん」というイメージは普通の日本人からすると手の届かない存在にしか見えなかった。しかし、1975年に離婚。
夫の監督収入では率直なところ食えなかったのではないか?だから離婚前くらいから日本に出稼ぎに来ていたのだろうか。
遠く離れた日本で我々の持つイメージとはちがっていたのかもしれない。


そういう中、撮られたこの作品を見てみると、岸恵子に昭和30年代のような華がない。今の41歳よりはふけている。でもこのあと日本での出演が増え、横溝正史作品を市川崑が監督した「悪魔の手毬唄」での犯人役はすばらしい好演であった。この寅さん映画の出演は彼女にとって重要な過渡期だったのかもしれない。

シリーズ最高の観客動員となると、この2人の出演は当時話題だったかもしれない。中学生の自分はロックや洋画に夢中でまったく見向きもしなかったのであるが今見ると興味深い。
別府、熊本の温泉地帯の雑然とした昭和らしい映像や当時の服装を見ながらもう40年も経ってしまったのかと考え込む。

(参考作品)
第12作 男はつらいよ 私の寅さん
岸恵子に憧れる寅


悪魔の手毬唄
岸恵子の最高傑作


巨泉×前武 ゲバゲバ90分! 傑作選
ゲバゲバ90分のコントを堪能する
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ジャックブルース死す

2014-10-27 18:53:10 | 偉人、私の履歴書

クリームのベーシストであるジャック・ブルース氏が亡くなった。。
これは実に残念だ。
71歳なのでまだ若いなあ。肝臓病と伝えられている。
エリッククラプトン、ジンジャーベイカーという昔の仲間から追悼するコメントも報道されている。


そののちソロボーカルとして圧倒的な人気を誇るエリッククラプトンクリームのリードボーカルだったとおもっている人が意外に多い。
「サンシャイン・オブ・ユアラブ」も「ホワイト・ルーム」ジャックブルースのリードボーカルである。
「ホワイトルーム」で一瞬エリッククラプトンが歌うパートがあるが、ひでえ音痴だ。サイケデリックなギターは抜群だけど。。
逆にジャックブルースはいい声している。


そもそもヒットチャートを上昇するヒット曲で売るバンドではないからこんな話は意味ないかもしれないけど
「アイ・シャット・ザ・シェリフ」が全米ヒットチャート1位になった時、エリッククラプトンも歌がうまくなったものだと思ったっけ。

クリーム時代で何より歴史的名演といえるのはライブヴァージョンの「クロスロード」だ。



これを最初に聞いたとき、本当にぶったまげた。
エリッククラプトンのコンサートに行きたいといっている若者に「クロスロード」を聴かせて、これ誰のギターかわかる?とあえて聞いてみる。
マニアはともかく、普通は誰もわからない。今や枯れきった演奏をするエリッククラプトンと同一人物に思えないのだ。
クリームってすごかったんですね。と改めて言われる。



そんな連中にもう一度曲を聴かせて、じっくりとベースとドラムに注目せよ!!という。
生き物のように躍動するジャックブルースのベースはエリッククラプトンと技を競い合っている。ツインギターで演奏しているがごとく凄いベースだ。血気盛んなプレーといえる。
ジンジャーベイカーと3人でケンカしているようにも感じられるが、バランスが意外にも均衡してしまう。
そして意趣卓越なるロック史上最高のプレイとなっている。

2005年に久々にクリームが再結成され、再度演奏する「クロスロード」を聴いた。
枯れた味を出すエリッククラプトンのプレイは昔とちがう円熟味のあるものだった。

3人揃ってもう一度やって欲しかったなあ!!

もう一度「ホワイトルーム」のジャックブルースの声を聴いてご冥福を祈りたい



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映画「メカニック」 チャールズ・ブロンソン

2014-10-27 05:32:31 | 映画(洋画 89年以前)
映画「メカニック」はチャールズブロンソンが主演する1972年の犯罪サスペンスだ。


全盛時のチャールズブロンソン演じる殺人請負人の物語である。
まずは主人公の実力を示すための映像を映す。気がつくと、セリフがない。寡黙な殺し屋が、周到に準備する場面を映し、いっきに引き込んでいく。途中で、若者がブロンソンの仲間に入っていく。その後はアクションシーンが続いていく。CGなき時代のスタントマンたちの奮闘ぶりは見ごたえある。それでも、高級車と思しき車が次から次へと大破する場面を見ながらもったいないなと、美しいイタリアの海岸べりの風景を見ながら思う。

アーサー・ビショップ(チャールズ・ブロンソン)は完璧な仕事振りから“メカニック”と呼ばれる殺し屋だ。彼はある組織からの指令に従って用意周到に仕事をこなす一匹狼だった。そんな彼に組織の幹部で古くからの友人の暗殺命令が下り、いつもの如く的確に仕事をこなす。標的がいるアパートを大爆発を起こし、始末した。

翌日、家には次の指令が届いていた。分厚い封筒の中には犠牲者の完全な資料が入っていた。その犠牲者は、死んだ父の友人で、組織の1員でもあるハリー・マッケンナ(キーナン・ウィン)だった。ハリーは事故死と処理され、その葬式でアーサーは彼の息子スティーヴ(ジャン=マイケル・ヴィンセント)と会った。


その友人の息子スティーブとひょんな事から知り合う。スティーブと妙に気が合ったビショップは彼を助手として仕事を手伝わせ始め、次第にプロの殺し屋に仕立てていくのだったが、そんな時、イタリアでの大きな仕事が決まる。支度をしていたビショップが目にしたものは“彼を殺せ”と言う組織からスティーブへの指示書だったが。。。

1.ゴルゴ31
無口で用意周到に仕事を遂行するというと、「ゴルゴ31」をすぐさま連想する。最初15分以上、ブロンソンはセリフなしでその仕事ぶりを見せる。相手の行動パターンを写真でとらえて、仕事する場所での細工もこっそり忍びこみ丹念に入れる。じっと見ていると面白い。「ゴルゴ31」はその正体、私生活を絶対に見せないが、ここではクラッシック音楽を愛する男として描かれる。若干の人間臭さがあるところが、完ぺきな仕事師ではないあかしかもしれない。



2.ジル・アイアランド
チャールズブロンソンについては、かなりここで取り上げている。小学校から中学にかけて「マンダム」の宣伝のイメージが自分たちにとってはあまりに強烈だった。実際に映画も見に行った。「雨の訪問者」なんて映画はフランシスレイ作曲の主題歌も好きだったし、ジル・アイアランドが印象的で、こういう人が奥さんなんだと妙なワクワク感を感じていた。今回はコールガール役だ。ストーリーの流れからすると、中途半端に入ってくるだけの役だが、共演しないとブロンソンに変な虫がついてしまうのでは?と疑心暗鬼になっていたのであろう。


ジャン=マイケル・ヴィンセントと言ってもピンとこないが、顔を見てどこかで見たことあると必死に考えた。そうだ。ジョンミリアスの名作「ビッグウェンズデイ」のサーファーだ。うーん懐かしい!

ホテルを引き払う時スティーヴが陽気に声をかけアーサーの愛飲するワインで2人は乾杯した。グラスをあけながらアーサーがぶっ倒れる。おいおいそうかと思いながら、ラストでの逆転がお見事だ。これってどういうこと?
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映画「グレース・オブ・モナコ」 二コール・キッドマン

2014-10-23 22:41:48 | 映画(洋画:2013年以降主演女性)
映画「グレース・オブ・モナコ」を映画館で見てきました。


評判はわりと普通、どうしようかな?と思っていたけど、アルフレッドヒッチコックが王妃になったグレースケリーをもう一度映画に誘い出すという話が盛り込まれていると知り、関心を持ち映画館に向かった。

結果的に、映画の出来は予想通り普通だったけど、ときおりニコールキッドマンが本物のグレースケリーに似ているなあ?と思わせる部分があった。全然似ていないと思っていたが、化粧次第で似てくるものなのであろうか?映像の解像度がぼんやり気味だからそう見えるのかもしれない。

1956年、オスカー女優のグレース・ケリー(ニコール・キッドマン)は、モナコ大公レーニエ3世(ティム・ロス)と結婚。1961年12月、二人の子供に恵まれるも王室の中で孤立していたグレースの前に、脚本を手にしたヒッチコック(ロジャー・アシュトン=グリフィス)が現れる。「マーニー」という新作映画の出演依頼に訪れたのだ。


そんな中、モナコ公国に危機が降りかかる。フランスが、無税の国モナコに移転したフランス企業から税金を徴収して支払うよう要求、「従わなければモナコをフランス領とする」と声明を出したのだ。もし戦争になれば、軍隊もない小国モナコは、一瞬で占領されてしまう。


政治で頭がいっぱいのレーニエに無視されたグレースはハリウッド復帰を望むが、国家の危機的状況に発表は控えられる。だが情報が漏れ大々的に報道、グレースの相談役で後見人のタッカー神父(フランク・ランジェラ)は、フランスのスパイがいると警戒する。

1962年7月。国民の公妃への不満が高まる中、励ましてくれるのは義姉のアントワネット(ジェラルディン・ソマーヴィル)と、船舶王オナシス(ロバート・リンゼイ)の愛人マリア・カラス(パス・ベガ)だけだった。やがてレーニエはフランス企業への課税を了承。しかしド・ゴールは、モナコ企業にも課税してフランスに収めろと脅し同然の要求を突き付ける。レーニエは行き場の無い怒りをグレースにぶつける。
結婚式の記録映像を見ながら涙にくれるグレースの傍らで神父は「人生最高の役を演じるためにモナコに来たはずだ」と諭す。


数日後、神父はグレースを外交儀礼の専門家であるデリエール伯爵(デレク・ジャコビ)の元へ連れて行く。モナコの歴史、王室の仕組み、完璧なフランス語、公妃の作法、正しいスピーチ――グレースの夏は厳しい特訓で過ぎていった。(kinenote引用)

1.モナコへのフランスの干渉
62年にフランスがモナコに対してこういう干渉をしたことを初めて知った。まさに「タックスヘイヴン」で数多くのフランス企業がモナコに本拠をうつしたということだ。でもフランスの言い分が正当だろう。広いフランス領土の一角にある小国へみんな移ってしまったら、税収は大幅減だ。しかも、アルジェリアとの争いは続いていて戦費はかかる一方である。フランス兵に国境閉鎖され、通行が容易にできなくなる。


モナコ王室から史実と違うことがあると反発を受けているようだが、この映画のようにグレースケリーが活躍したとすると、まさにモナコ版ジャンヌダルクのようなものだ。映画によれば、政治の議論にも首を突っ込み、自分の意見をはっきり言う女性だったとのこと。これは意外である。

まさにシンデレラレディという印象しかなく、こんなに苦労したのかというのもビックリだ。
自分的には彼女の映画作品ではヒッチコック作品「泥棒成金」が一番好きだ。


2.アルフレッド・ヒッチコック「マーニー」
ヒッチコックがモナコへきたのは61年の暮れ。「マーニー」が公開されたのは64年だ。結果的には「鳥」が63年公開なので公開まで時間がかかったようである。「サイコ」をヒットさせてのっている時に、グレースケリーに映画に出てくれとモナコへ口説きに行ったようだ。「マーニー」自体は評論家筋の評判が今イチのようだが、光の使い方がうまく、映像のトリックがヒッチコックらしく絶妙でハラハラ感もあり自分は大好きだ。主人公は「007」で売り出し中のショーンコネリーと「鳥」のティッピ・ヘドレンだ。


この映画では女主人公がコソ泥をはたらく。
でも冷静に考えると、王妃が泥棒役っていうのは立場上ありえないだろうし、やる気になるのかなあ??グレースケリーが役の練習を入れ込んでし始めるシーンがあるけど、ちょっと疑問??

61年にヒッチコック「マーニー」への出演依頼に行った時、「007」の第1作「ドクターノウ」は公開されていない。当然グレースケリーとの相手役としての格を考えるとすると、ショーンコネリーのはずはない。この映画のヒッチコックのセリフで今スパイ映画に出る俳優が相手役だと言っているのは違うんじゃないかなあ?
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映画「ある殺し屋の鍵」 市川雷蔵

2014-10-22 17:43:05 | 映画(日本 昭和35年~49年)
映画「ある殺し屋の鍵」は67年(昭和42年)公開市川雷蔵主演の現代劇


「ある殺し屋」はなかなか面白かった。続編である。監督森一生、撮影宮川一夫は変わらず、サポートする脇役がグレードアップする。そののち20年以上テレビ等で活躍する面々である。昭和のサスペンスで、何かが抜けている感じがして、ちょっと物足りない部分もあるが、佐藤友美が美しいので十分カバーする。

表向きは日本舞踊の師匠である新田(市川雷蔵)は、実は凄腕の殺し屋だった。彼の素姓は、彼と親しい芸者秀子(佐藤友美)も知らなかった。ある日新田は、石野組幹部荒木(金内吉男)から、政財界の秘密メモを握る脱税王朝倉(内田朝雄)を消してくれと頼まれた。二千万の報酬で仕事を引受けた新田は綿密な調査の末、朝倉の泊るホテルのプールを仕事場と決めた。


その日、何も知らずに朝倉と遊んでいた秀子に邪魔されはしたが、新田は針一本の武器で朝倉を殺した。証拠も、目撃者もない、瞬時のことだった。だが、石野組は新田を裏切り、彼を消そうとした。新田は危うくその手を逃れ、報酬だけは自分の手に入れると、再び自分を殺そうとした石野(中谷一郎)と荒木を始末した。このことから、新田は石野の背後に政界の大物が黒幕として存在することを知った。

仕事の報酬である札束の入ったケースを貸しロッカーに預け、自分を利用して殺そうとした者の正体を探るために政治記者に化けた新田は、朝倉の弁護士菊野の口から、この件に遠藤建設が絡んでいることをつきとめた。その遠藤(西村晃)が秀子のレジデンスに通っていることを知って、新田は遠藤を締めあげ、黒幕の名を聞き出そうとしたが。。。

1.市川雷蔵
ドーランを強く塗る時代劇のメイクと異なり、現代劇ではあっさりとしている。ただし、声に迫力がある。そんな雷蔵を宮川一夫のカメラが的確にとらえる。白黒映画で鍛えた陰影のとらえ方のうまさはいかにも大映らしい。前回の小料理屋のオヤジと異なり、踊りの師匠となっている。雷蔵自ら踊る演技は優雅でさすがという感じだ。

必殺仕事人張りに相手の急所を針でひと刺しして始末していく姿はカッコいい。現代ではあらゆるところに防犯カメラがあるので、こうはうまくいかないのでは?と思うけど、ここまでの殺し屋なら防犯カメラの死角もつけるのかな?


2.佐藤友美
当時26歳である。実に美しい。自分が大学生の時、彼女は30代後半だったと思うが、大好きだった。サスペンスドラマの常連で色っぽさを発揮する。人に好きな女優を問われ、佐藤友美と言っていたなあ。年上だけど、憧れてしまう存在だった。ここでは敵味方の間で風見鶏のようにふるまう峰不二子ばりの悪女を演じる。

3.脇役が豪華
政界の黒幕が山形勲で、この当時でいえば、一番の適役だろう。脱税王森脇がモデルと思われる消す相手の内田朝雄はそのきれいな禿げっぷりが特徴で、「細うで繁盛記」新珠三千代をカヨ!と呼ぶ伊豆弁が一番印象に残る。西村晃は建設会社の社長で中谷一郎がヤクザの組長だ。やがて水戸黄門で一緒になるとは夢にも思わなかったろう。中谷一郎は圧倒的強さを発揮した水戸黄門とちがって、ここでは???あとは「マグマ大使」の声をやった金内吉男もこの時代はよく見かけた顔だ。

「ある殺し屋」は結局2作で終わる。過密スケジュールをぬって、大映のあらゆる作品に出演していたころの市川雷蔵だ。2年後の死がいまだに悔やまれる。
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韓国映画「レッドファミリー」 製作脚本キムギドク

2014-10-19 10:35:39 | 映画(韓国映画)
韓国映画「レッドファミリー」を映画館で見てきました。
これは面白い!



キムギドク製作脚本なのに、気付かなかった。まずは外れのない監督だから見に行くしかない。
彼の作品となると、同じ韓国映画でも観客が多い。座席の空きがないくらいの状態だ。

キムもリュックベッソンのようになったのか、脚本製作に徹して、メガホンは他の監督に任せる。今回は新人だ。南北問題を題材にした映画は数多いけれど、高度なスパイものよりも楽しめる。

仲がよくて、うらやましいと隣人に言われる理想の韓国の一家があった。祖父(ソン・ビョンホ)、夫(チョン・ウ)、妻(キム・ユミ)、娘(パク・ソヨン)の4人家族だ。

 
彼らは北朝鮮のスパイ「ツツジ班」であった。昼間は家族でドライブしたが、軍事地域を撮影する任務だった。家に入りドアを閉めると妻は豹変する。形相を変え祖父の足を蹴りあげる。妻役のベク班長(キム・ユミ)は、祖父役のミョンシク(ソン・ビョンホ)と夫役のジェホン(チョン・ウ)の些細な失敗を叱責する。娘役のミンジ(パク・ソヨン)も一緒だった。

隣家に同じような家族が住んでいた。家ではいつも怒鳴りあっていた。班長は「まさに資本主義の限界だ」と毒づく。「我ら朝鮮は決して堕落してはならない」という班長は訓示する。嘆いてばかりの祖母、自己中心的な夫、料理一つ出来ない浪費家の妻、そんな両親に敬意の欠片もない息子のチャンス─隣の韓国人一家は、どうしようもないダメ家族だった。

ツツジ班には、当局から脱北者の暗殺指令が下り、それを履行するのが任務だ。
その功労にたいして勲章も与えられた。彼らの任務はすべて監視されている。失敗すれば、母国に置いて来た家族の命が危ない。4人は何よりもそれを恐れていた。


そんな時、隣家から、祖母の誕生パーティに招かれ、渋々応じる4人。なぜか班長がグイグイとワインを飲み、酔っぱらってしまう。帰宅した班長は自分も今日が誕生日だと打ち明け、「あんなに言い争う家族が、妙にうらやましい」と漏らす。夫亡き後、ただ一人の家族である娘が、堪らなく恋しくなったのだ。


翌週、ミンジの誕生日だと聞いた隣の家族が、今度はワインとケーキを手に押し掛けて来る。学校でイジメられているチャンスをミンジが助け、二人は互いに好意を抱いていた。ニュースを見ながら北を批判する隣の家族に、ついムキになって反論する4人。最後にミンジは「南北両国が心を開いて話し合うべきだ」と主張、一家を盗聴する党の人間にマークされてしまう。

そんな中、ジェホンの妻が脱北に失敗したと聞いた班長は、大手柄を立てて彼女を釈放させようと考え、“転向した反逆者”である北朝鮮の元将校を独断で暗殺する。ところが、彼は北に機密を送る、重要な二重スパイだったが。。。。


北朝鮮のスパイ
彼らの立場のつらさが鮮明に出ている。もともと当局の指示に対して、忠実に暗殺業務を請負っていたのに、手柄を立てようと命令にない脱北者を暗殺してしまう。実は二重スパイだったのだ。彼らは消されるしかない。でも隣の家族を全員殺すなら命だけは助けてやるといわれる。蓮池さんが帰国した時、監視の朝鮮人たちがいた。結局あまりに公衆の面前だったので、監視が蓮池さんたちに危害を与えるなんてことなかったけど、公でなければ監視によって始末されるしかない。


普通は追手を次から次へと殺して脱北するなんて場面も予想されるけど、彼らには祖国にいる家族という「人質」がいるのである。自分が逆らったら家族が処刑を受ける。こうなると、展開が予想できなくなる。キムギドクはどういう風にラストに持っていくのかが気になった。最後に向けて、こうするしかないという結末かと思いしや、1つだけ光を与えた。救いがあった。

キム・ユミもパク・ソヨンもなかなかの美形だ。北朝鮮のスパイというと、美人が演じるのが定番になっている。芯の強い役柄で、そのきりっとした美形がはえる。2人とも今後の作品を追いかけたい。

特にパク・ソヨンに注目した。

隣の長男は同じ年代だ。彼は同級生からカツアゲをされたり、イジメにあっている。そのいじめの場面にさっそうと現れて、いじめっ子をボコボコにする。痛快だ。隣の奥さんは高利貸しの取り立てで責められている。家に乱入して、取り立てしようとしている。その仕打ちに対しても、持ち前の格闘術でやっつける。こういった痛快な場面をつくるのがキムギドクらしくないともいえる。

そういえば4人スパイの親玉が、裏町の小さな工場にいる。この場所「嘆きのピエタ」に舞台になった場所みたい。ここでの話もなかなか面白かった。

観客の多さにはちょっとビックリだ。最後に向けて、ハンカチを目にあてている女性も目立った。
観客の中には在日の人たちも割といるだろう。特に北朝鮮の人たちはどういう気持ちで見ているのかが気になった。
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映画「ニンフォマニアック Vol.1」 ステイシー・マーティン

2014-10-15 20:01:35 | 映画(洋画:2013年以降主演女性)
映画「ニンフォマニアック Vol.1」を映画館で見てきました。
予告編で見て、すごい刺激的なセリフと映像が気になっていた。
題名を直訳すると「色情狂」とのこと、なんか70年代前半の東映ピンク路線みたいだなあ。


最近、邦画も洋画もわざわざ映画館行くのがないので消去法で選択。エロ満載で男ばかりと思いしや、ちょっとインテリ風のお姐さんも割といて満員でした。「ダンサー・イン・ザ・ダーク」「メランコリア」などを手掛けるデンマークの鬼才ラース・フォン・トリアー監督がメガホンをとるけど、ユマサーマン、シャイア・ラブーフといった主演級が出演するのも気になる。

ある冬の晩、道に倒れている女性が通りがかりの年配の男セリグマン(ステラン・スカルスガルド)に助けられる。どうしてこうなったんだい?とセリグマンに聞かれ、ジョー(シャルロット・ゲンズブール)は子供のころから語ってもいいかと確認してその半生を語り始める。ジョーの幼少時の性への関心から、妙齢を迎え処女を喪失し、若き日のジョー(ステイシー・マーティン)が男漁りをするようになった話が続いていく。。。

こればかりは色々ストーリー書くより予告編を見た方がよさそうだ。




前半は5章に分けられている。ジョーの半生をつづる。

1.ステイシーマーティン
ヌード全開でひたすら活躍するのはステイシー・マーティンである。
まだ23歳という彼女が、さまざまな男と肌を合わせる場面を次から次へと演じる。ものすごく強烈というほどではないが、一部場面では自分の股間も少し変調してしまう。


何せ娼婦でもないのに、一日7,8人といたすというのだ。これは色情狂だ。自分の父親が危篤状態になっていても、病院職員をつかまえてやってしまう。時間でスケジュールが決められていて、次から次へと男がくる。
こんな役やるのも大変だよね。それにしても、7歳から13歳まで日本にいらっしゃったとは驚きだ。まさかその時は違うよね。

2.シャイア・ラブーフ
この映画の一番の役得がシャイア・ラブーフだ。ひたすらステイシー・マーティンの身体をむさぼるうらやましい役だ。見ていると、本当にやっているんじゃないかと錯覚してしまうショットも見受けられる。
そこにフィボナッチ数が絡むという後講釈には笑うしかない。ジョーが処女を喪失した折り、いきなり前から3回腰を動かす。そして後ろむきにしてから5回腰を動かす。そこでフィニッシュだけど、そのとき映像に3と5を表示してその数字を強調する。
何それ!


3.フィボナッチ数
1,1、2,3,5,8,13,21,34,55.。。と続いていくのがフィボナッチ数列だ。
例えば5,8の次の数は13だ。5+8である。しかも、5以降あとの数は前の数の約1.62倍となり、前の数はあとの数の約0.62倍だ。黄金分割比の基本である。
ジョーの語る男あさり遍歴に、セリグマンが哲学、宗教、釣り、音楽に造詣が深いという設定になっているので広範な知識で応じる。なかなか面白い。フィボナッチ数は数学が題材の映画ではちょこちょこ使われる。トムハンクスの「ダヴィンチコード」では暗証番号として使われたり、株式市場を予測する数学の天才を描いたダーレン・アロノフスキー監督「π」でもフィボナッチ数が語られる。でも男がセックスの時に何回腰を動かしたなんてばかげた話は聞いたことがない。こういう話に強引に持ち込んだのには笑えた。

4.ユマサーマン
「パルプフィクション」「キルビル」のユマサーマンは大好きだ。今回彼女が出てくるので、なんかセクシーショットがあるのかと期待した。でもその期待は空振り↓


ヒステリックな女を演じる。主人公ジョーが遊んでいる男の一人で妻帯者がいる。ジョーは深入りしないようにしているので、あなたは妻子がいるからダメだわと言ったら、離婚するといって旦那が来て、ついでに妻と3人の子供が飛び込んでくるという構図。ユマサーマンは浮気相手の家に殴りこんできた妻というわけだ。少し前の彼女なら逆はあっても、こういう役はやらなかっただろう。でもこれからお声がかかるかも?何せ迫力はあるからね。

5.強烈な音楽
スタートで一瞬静かな光景を無音で映したと思ったら、いきなりすごいヘビメタだ。なかなか強烈な主題歌だ。余分なバックミュージックは少なく、いざという所で象徴的な曲をかける。そのバランスは実に素晴らしい。
主人公ジョーが友人Bと列車の中でどちらがおおぜいの男とやれるか?賭けようとさっそうと車中を歩く時、映画「イージーライダー」の主題歌であるステッペンウルフ「ワイルドで行こう」がかかる。このタイミングもいい。セリグマンの対比法の講釈に合わせてバッハのパイプオルガン曲が流れるタイミングも悪くない。


映像もモノクロにしたり、画面分割やクロスカッティングをつかったりさまざまなトライをしているところは好感が持てる。
単なるポルノにはしないぞという意思が強い映画である。

(参考作品)

ニンフォマニアック Vol.1/Vol.2
性に狂った一人の女
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映画「バチカンで逢いましょう」 マリアンネ・ゼーゲブレヒト

2014-10-15 17:55:41 | 映画(欧州映画含むアフリカ除くフランス )
映画「バチカンで逢いましょう」は名作「バグダッド・カフェ」マリアンネ・ゼーゲブレヒト主演のローマを舞台にしたドイツ映画だ。


「バグダッド・カフェ」で活躍したマリアンネ・ゼーゲブレヒトが、いいおばあさんになったな!とジャケットを見て思う。あのパフォーマンスを思い出しつつ、dvdを手に取ってしまう。ドイツ人のおばあさんのローマでの珍道中といった感じだ。

マルガレーテ(マリアンネ・ゼーゲブレヒト)は40年前に夫とドイツのバイエルンからカナダのビッグベア・クリークに移住し、幸せに暮らしていた。そして、長年連れ添った夫ロイズルの葬儀を済ませた。長女マリー(アネットフィラー)は遠く離れた一軒家で一人暮らしをする母の家を売却し、自分の家へ呼び寄せることにした。
ところが、マリーの家で一緒に暮らせるはずだったのに、マリーは彼女に新設の老人ホームを勧める。みんなで行くと約束をしていたローマ旅行もうやむやにされてしまう。敬虔なカソリックの信者であるマルガレーテには、どうしてもローマ法王の前で懺悔したいことがあったのだ。ある朝、マルガレーテは置手紙を残して、空路ローマに旅立った。

ローマに住む孫娘マルティナ(ミリアム・シュタイン)の家に転がり込んだマルガレーテは、さっそくバチカンへ向かった。だが、法王と会うのは簡単なことではなかった。そこで、イタリア人の老詐欺師ロレンツォ(ジャンカルロ・ジャンニーニ)と出会う。彼は盲人を装って法王に会おうとしていたのだ。


マルガレーテは集団謁見の日に再訪する。神聖な法王の前で偽りの姿をさらす老詐欺師を見つけ、懲らしめようと、持っていた護身用のスプレーを吹きかけたところ、それが法王を直撃してしまう。逮捕され、大きく報道されてしまう。尋問を受けるマルガレーテを救ったのは盲人を装っていたロレンツォだった。彼は警察に事件はすべて自分のせいだと説明し、マルガレーテは釈放される。

一方、マルガレーテはロレンツォの甥ディノとも不思議な縁で出会っていた。ディノの母親はドイツ人で彼らはローマでバイエルン料理店を経営していた。店の料理は不味く、倒産寸前だった。最初は客として来店したマルガレーテも、あまりにひどい料理に自ら厨房で料理を作り始めてしまう。やがてマルガレーテはその店のシェフとして働くことになり、彼女の作る料理は大評判となって店は一気に繁盛する。


法王襲撃犯として国際ニュースにまでなった母を心配して娘マリーもローマへやってきた。そして、彼女は40年間家族の誰にも話したことのない秘密をマリーに明かす。だが、その秘密のあまりの衝撃に母と娘は大喧嘩を始めてしまうが。。。。


第2外国語がフランス語だったので、ドイツ語はまったく分からない。スイスに行った時も、ドイツ語を話されるとバンザイ状態。それでもドイツ映画のコメディは「ソウルキッチン」などなかなか面白いものがある。古くは「ローマの休日」新しいところではウディアレンの映画「ローマでアモーレ」とローマ観光的映画は多々あれど、今回は若い孫役の娘とイタリア人の老詐欺師を中心にコミカルに展開させる。

1.「バグダッド・カフェ」との類似
「バグダッドカフェ」は傑作である。アメリカ西部の片田舎のドライブインに一人のドイツ人が夫とはぐれてくる。彼女はきれい好きで、流行らないドライブインでものすごい活躍を見せる。伊丹十三「タンポポ」のように一気に店に躍動感を与える。そこでは女の友情も語られる。


マルガレーテは孫の家の行った時、アパートは散らかしたままで、壁は裸の女のペインティングできたなくなっていた。早速部屋ををきれいに掃除する。これを見て「バグダッドカフェ」を思い出す。この映画を見てから、自分はドイツ人が整理整頓をする人種というイメージを持ってしまった。ここでも同様、シェフとなる店でもきれいに掃除する。


あとは料理である。本当は故郷のバイエルン料理を食べに行ったつもりだったのに、出てきたものはお粗末そのもの。食材を自分で扱って、「ウィーン風カツレツ」なるものをつくる。結局それはランチの献立になり、顧客を呼ぶようになる。
そんな感じで「バグダッドカフェ」のオマージュ満載である。

2.支える脇役たち
この詐欺師どこかで見たことある!そう「007慰めの報酬」でも見かけたのだ。ジャンカルロ・ジャンニーニはイタリアを代表する国際スターだ。服装もセンスがいい。いかにも陽気なイタリア人らしくコメディタッチにのっていく。スパイ映画だけが彼の持ち味ではないのだ。
イタリアにいる孫を演じるミリアム・シュタインが可愛い。結局現地のロックカフェに勤めて、ロッカーと同棲している。親の心配をよそにハネを伸ばしているという設定だ。フランス娘もいいけど、ドイツ人もいい女多いよね。ウィーン生まれという彼女はその美貌はハリウッドまでとどろくのではないかな?


定番のローマの風景は抜群、最初に映るカナダの山風景もすごくきれいだ。
観光的要素もあり、それなりに楽しめた。


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映画「とらわれて夏」 ケイト・ウィンスレット

2014-10-14 20:32:37 | 映画(洋画:2013年以降主演女性)
映画「とらわれて夏」は2014年日本公開のアメリカ映画


「JUNO ジュノ」「マイレージ、マイライフジェイソン・ライトマン監督の作品には外れがない。そう思っていたが、今一つ映画館に向かう吸引力がなかった。逃亡者との接近という設定に関心が持てなかった。
それでもDVDで見てみると、構成のうまさは感じる。熟女になりつつあるケイトが放つ女の性欲が熱い。

9月初めのレイバーデーの連休が迫る、アメリカ東部の閑静な町が舞台だ。シングルマザーのアデル(ケイト・ウィンスレット)とその息子である13歳のヘンリー(ガトリン・グリフィス)は、逃亡犯のフランク(ジョシュ・ブローリン)と出くわしてしまう。絶対に危害は加えることはないという言葉を信じ、アデルは彼を自宅にかくまうことにする。


強面のフランクは、意外にも家の中を補修したり、車のタイヤを取り換えたり、大人の男のいないアデルの家で手際良く立ち回る。アデルとヘンリーも徐々に安心しだす。料理を作り、ヘンリーに野球を教えるフランクは家族の一員のようになっていくのであるが。。。

アデルは夫と別れていた。ヘンリーは自分の父親とも会っていたが、母親と暮らす道を選んでいた。その家庭に父親が戻ってきたかのように、家庭の諸事をフランクがこなしていくのだ。かくまうつもりは全くなかったが、2人は徐々にフランクになじんでいく。


1.数々のドッキリ
前半戦から、家にいることがばれてしまうのではというスリルを感じる。
まずは、隣人の初老男性が訪問してくる。殺人犯の囚人が脱獄しているらしい。くれぐれも気をつけるようにと果物を持ってやってくる。息子が出ると、君が出ると危ないよ!大丈夫かい?と言われ、裏にいた母アデルは焦る。
その後で、アデルの友人である近所の奥さんが、自分の父親が急病だと知的障害者の息子を預ける。アデルは拒絶したが、むりやり押し付けられる。フランクはその子も同じようにかわいがる。でもテレビに映る脱獄犯の顔を見て、何かを訴えようとする。ドッキリするが、迎えに来た近所の奥さんに息子はピンタをくらい、正体がわからない。

この手のドッキリがこの後も続く。
このスリルが続いた後、どうなるのか?全く先入知識がなく見た自分はこの先どうなるのかドキドキする。
なかなかのハラハラ度合いが楽しい。

2.媒介する出演者たち
脇役の使い方がうまい映画である。3人だけが登場人物でなく、単なる密室劇にしていない。近所のおじさん、おばさん、銀行員、息子が親しくなった少女、近所まわりの警察官それぞれの登場でスリル感が増幅する。これは原作および脚本のうまさだろう。用心深くない息子のパフォーマンスがちょっと安易と感じさせる。フランクの逃亡がやばくなっていくが、どうなるかわからない展開に持ち込んでいる。


3.ケイトウィンスレット
以前より熟女ぽい体つきになってきた。「タイタニック」レオナルド・ディカプリオと肌を合わせたころの若さはない。「愛を読む人」「レボリューショナリーロードなどいくつかの映画で見せた熟女ものAVのようなパフォーマンスを見せるかと思ったけど、そうはならなかった。でもこの映画では露骨に裸を見せていないのにもかかわらず、ケイトの強烈な性欲がにじみ出ていた。40代女性の熱い疼きを脱がずに感じさせる。このあたりはうまい。
クリントイーストウッドとメリルストリープの共演である「マディソン郡の橋」で見せてくれた大人の愛の様なものを感じさせてくれた。「LAギャングストーリーの警部役が実にうまいと思ったジョシュ・ブローリンとのコンビは絶妙だ。今回は髭をたくわえて、誰だかわからないくらいにもなっている彼の方が、ディカプリオに比べると、一気におばさんになったケイトにはちょうどよくあっている。

最後はちょっと出来過ぎかな?
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映画「メイジーの瞳」

2014-10-13 15:06:37 | 映画(洋画:2013年以降主演女性)
映画「メイジーの瞳」は2014年日本公開のアメリカ映画だ。


離婚した父母と、その2人がその後に再婚する継父母の合わせて4人の間で彷徨う6歳の女の子の話をネタばれ気味に語る。
ちょっと日本では考えづらい展開だが、政府が女性の地位向上に必死になっている日本でも近い将来こんな話があるかもしれない。少女は純粋である。ところが、実の父母はまったくそりが合わないし、離婚した後もまったく自分勝手だ。逆にその結婚相手のほうが優しくしてくれる。人間らしい生活を送っている。

この話の展開は見る前は想像つかなかったけど、実際にありそうに見えてくる。
メイジー視線で大人のいやらしさが語られる。

メイジー(オナタ・アプリール)は、ニューヨークマンハッタンに住む6歳の少女だ。ロック歌手の母スザンナ(ジュリアン・ムーア)と美術品のブローカーである父ビール(スティーヴ・クーガン)は常にののしり合っていたが、2人は離婚することになる。裁判官の調停で父母の共同親権となり、二人の家を10日ごとに行き来することになった。ところが、父も母も、子供に割く時間を持っていなかった。


やがて、ベビーシッターだったマーゴ(ジョアンナ・ヴァンダーハム)が父の新居に来ることになる。メイジーは元々仲良しだった彼女にすぐに打ち解け、父は再婚する。一方で、その当てつけのように母は若くて男前のバーテンダーリンカーン(アレキサンダー・スカルスガルド)と結婚する。彼もメイジーの大切な友だちになった。


だが自分のことに忙しいスザンナとビールは、次第にそれぞれのパートナーにメイジーの世話を押し付け始める。そんなある日、彼らの気まぐれに我慢の限界を超えたマーゴとリンカーンは家から出て行くことを決意。スザンナはツアーに出発し、メイジーは独り夜の街に置き去りにされてしまうが。。。

メイジーにとっては継父母となる若者たちとの関わりがやさしく映しだされる。。
日本では、継父による幼児虐待の記事がよく目立つ。元ヤンキーのママさんが見つけてきた男は、たいていDVの固まりなんて構図がある。ここでは対照的だ。若くて背が高くてカッコいい新しいお父さんを娘は学校で自慢げに友人たちに紹介する。彼の仕事場であるバーカウンターにちゃっかり座って、ジュースを飲んだり、公園で遊んでもらったりするのだ。継母も同様に親しく接する。


メイジーは、実の父母といるときより、むしろその若い継父母と一緒にいるときの方が心安らかに過ごせるようになる。
多忙を極める母親は常にイライラしている。内田樹がよく語っているが、アメリカ映画ではこういう母親は悪く描かれるケースが多い。男性からの嫌悪感がむき出しに表現される。日本で「女性嫌悪」の映画がヒットしたことがないけど、「危険な情事」や「ディスクロージャー」などアメリカでは正反対だ。

メイジーは継母とだって仲わるくはない。


そんな中意外な展開に進んでいく。
あまりに自分勝手な元々の2人に呆れている継父母が仲良くなってしまうのだ。
メイジーにとって、実の母親は怖い存在でしかない。その恐れる姿がこの映画のキーポイントなのであろう。
ジュリアン・ムーアはそのヒステリーババアを実にうまく演じる。

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映画「恋する惑星」 トニーレオン&フェイウォン&ブリジットリン&金城武

2014-10-06 04:43:14 | 映画(アジア)
映画「恋する惑星」は94年の香港映画
ウォンカーウァイ監督の出世作で香港映画のスタンダードだ。何度もこの映画を見ている。


香港好きの自分からすると、最近の香港での民主化デモ騒ぎは本当に心配である。英国のサッチャー首相と小平との会談で50年間は今までの政治経済体制を変えないと決まったはずだ。その主旨が、中国共産党という圧倒的な権力に押さえつけられてしまうのでは?と気になる。この映画はまだ中国返還前の映画だ。コロニアル文化とオリエンタルなムードがうまく混ざり合って出来たあの香港をなつかしみたくなり、またdvdを手にした。いかにも今より猥雑な香港だけど、いい感じだ。

映画は2つの物語で構成される。

〈重慶マンション:Chunging House〉
刑事223号(金城武)は、雑踏の中で金髪にサングラスの女(ブリジット・リン)とすれちがう。
「そのとき、彼女との距離は0.5ミリ-57時間後、僕は彼女に恋をした」
女は重慶マンションを拠点に活動するドラッグ・ディーラーで、密入国したインド人に麻薬を運ばせる仕事を請け負っている。刑事223号はエイプリル・フールに失恋。ちょうど1か月後の自分の誕生日まで失意の日が続いていた。
金髪の女は啓徳空港へ。しかし、麻薬を渡したインド人の姿はなかった。ほどなく命を狙われた彼女は相手を銃殺し、走り逃れる。


刑事223号と金髪の女は偶然入ったバーで知り合う。恋人を忘れるため、その夜会った女に恋しようと決めている刑事223号に女はそっけない。それでも二人は閉店まで飲み続けホテルに泊る。彼女は眠り込み、やがて静かな一夜が明ける。刑事223号は25歳の誕生日の朝を迎えるが。。。

〈ミッドナイト・エクスプレス:Midnight Express〉
刑事223号は小食店〈ミッドナイト・エクスプレス〉で、新入りの娘フェイとすれちがう。
「そのとき、彼女との距離は0.1ミリ-6時間後、彼女は別の男に恋をした」


刑事633号(トニー・レオン)は店の付近を巡回している。彼にはスチュワーデスの恋人(チャウ・カーリン)がいた。二人には別れの予感があった。ある日、フェイはスチュワーデスが刑事633号にあてた手紙を店主からことづけられる。手紙には彼の部屋の鍵が入っていた。
フェイは刑事633号のことが気になりだしていた。鍵を持って部屋に忍び込む。フェイは口実を見つけては店を抜け出し、彼の部屋で『夢のカリフォルニア』のCDを聞きながら、少しずつ自分好みに模様替えしていく。やがて二人は部屋で鉢合わせ。店を訪れた刑事633号は彼女をデートに誘う。大雨の夜、待ち合わせ場所の店「カリフォルニア」に633号はむかうのであるが。。。

1.重慶マンション
「恋する惑星」なんて何でこんな名前になったの?という題名がついているけど、原題は「重慶森林」である。重慶は四川の都市名だけど、香港でいえば誰しもが重慶マンションのことを指すことだとわかる。

沢木耕太郎の「深夜特急」で、主人公はいきなりこの雑居ビルに宿泊する。九龍側のメインストリートに面するけど、うさんくさそうな人物がうろうろしている。1階のすぐ横の両替屋のレートはウソみたいに高いけど、2階へ行くと香港№1の両替料率に変わる。その代わり気味の悪いインド人に遭遇する。交換したばかりの金がぼったくられそうで怖い。


2.ブリジットリン&金城武
ブリジットリンは金髪でサングラスを外さないので、誰だかわからない。その金髪女は重慶マンションの中でインド人たちに仕事を持ちかける。麻薬の運び屋だ。ウォンカーウァイ監督はあの猥雑極まる重慶マンションの中を思いっきり悪さをさせ、手持ちカメラを用いて臨場感を出す。今は無き啓徳空港でのシーンを見ると、懐かしく思える。


そのお相手は金城武だ。振られ男だけにカッコいい役ではない。それでも、夜のバーで口説くシーンでは、広東語、北京語、英語、日本語と何でもございだ。感情をむき出しに演じるのはまだ若かったからできることだろう。

3.トニーレオン&フェイウォン
今や中国全土を代表する俳優となったトニーレオンもまだ見るからに若い。そして香港警察の制服がよく似合う。「インファナルアフェア」も「花様年華」も撮られていないころだ。いたずらっぽく忍びこむフェイウォンもかわいい。いかにも香港人らしく、とっかかりが無愛想だ。ファイナルファンタジーの主題歌を歌うのはもう少し後だ。当時、スクウェアのtopに後輩がいて、飲みに行った時よくこの曲聞いたものだった。


村上春樹「シェエラザード」を読んだ時、片思いの同級生の家に忍び込む高校生の時の想い出を語る話があった。その時とっさに思い浮かんだのは「恋する惑星」のフェイウォンだ。優雅に金魚を水槽に入れ込んだり模様替えをする彼女がかわいい。

4.印象的な挿入歌
お店でうるさいくらいママス&パパスの「カリフォルニアドリーミン」が高らかに響く。これが耳について離れない。ウォンカーウェイ監督はこの曲を、カリフォルニアに行きたいという意味と香港のナイトスポット「ランカンフォン」の名店「カリフォルニア」にひっかけた。



あとは優雅に鳴り響くダイナワシントンの「what a difference a day makes」がうまく合っている。ウォンカーウァイ監督は自分と同世代なので、一世代違うはずだが、「花様年華」でもナットキングコールの歌をメインにしていたし、いわゆる一時代前のスタンダードが好きみたい。

5.ランカイフォン:蘭桂坊
初めて香港に行った時、親友に連れてこられてから毎度必ず寄っている。金融街セントラル:中環のすぐ山手なので欧米人が多い。その連中がビール片手に道端でだべっていたり、バーの中で大はしゃぎしている姿にはビックリした。東京では六本木や麻布のごく一部にそういう場所があるけど、明らかに香港ならではの別世界である。
(ユーチューブにいい動画があった)↓


「カリフォルニア」はその中の一つだ。「Midnight Express」はもうないという。
いつも香港へ行くと夜が更けるまでこのあたりで遊んでいる。暴動で大騒ぎの今はどうなっているのかなあ?

(参考作品)

恋する惑星
返還前の香港の若者


天使の涙
ウォン・カーウァイが描く夜の香港


深夜特急〈1〉香港・マカオ
重慶マンションといえばこの本


欲望の翼
ウォンカーワァイの出世作


いますぐ抱きしめたい
ウォンカーワァイのデビュー作品


日東紅茶 C&レモン スティック
香港のエネルギー源
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映画「ファイ 悪魔に育てられた少年」 

2014-10-05 08:38:45 | 映画(韓国映画)
映画「ファイ 悪魔に育てられた少年」は2013年日本公開の韓国映画だ。


子供のころに誘拐され、殺人強盗集団の男たちに育てられ、ワルの能力をもった少年の物語だ。
チェイサー」「哀しき獣で強烈な印象を残したキムユンソクが出ているとなると、みるしかない。強盗集団のリーダーを演じている。ここでも期待通りの活躍である。ロードショーで最近見た「悪魔は誰だ」は、韓国映画にしてはちょっと生ぬるい印象をもった。この映画は次から次へと人が死んでいく。ワイルドでいかにも韓国らしい。

17歳のファイ(ヨ・ジング)は幼少の頃、ソクテ(キムユンソク)ら極めて凶暴な5人組の強盗団に誘拐され、その後、親を知らずに17歳となった現在に至るまで、殺人強盗集団のカリスマリーダーであるソクテ、心優しい運転手ギテ、インテリのジンソン、スナイパーのボムス、攻撃的なドンボムこの5人を父と呼び育った。ファイは高い絵描きの才能を持ちながら、犯罪スキルを徹底的にたたき込まれた。

ある日立ち退きに応じないある夫婦の殺害を命じられた5人は、ファイを連れて夫婦の家にいく。ファイは忍び込んだ“獲物”の家で不思議な感情にとらわれるのであるが。。。


1.キムユンソク
チェイサーのホテトル経営者で強烈な印象を残して、哀しき獣で朝鮮族マフィアの親玉を演じた。映画「哀しき獣」での不死身ぶりにはドキドキしてしまった。2つの映画で共演したハ・ジョンウとともに韓国クライムサスペンスには欠かせない存在である。キムユンソクのイメージというのはひたすら強い!!と印象だ。ここでもその期待を裏切らない。ちょっと考えられないストーリー展開には彼のハチャメチャさが必要となる。


2.カーチェイス
ファイが車を運転する。当然無免許だろう。でも運転テクニックは父親の一人に徹底的に鍛えられているから、警察車両をまくなんて芸当はお手のものという設定だ。そのカーチェイスぶりが凄い。至る所に重機が置いてある工事中の道路を滑走する。ここまで障害物のあるカーチェイスも珍しい。ワアー!!ぶつかるなんてこちらに思わせながら、走りぬく。すげー


3.残虐なストーリー展開
男児誘拐事件を起こした犯人グループは、身代金受け取りに失敗して逃走する。その子供ファイを育てるのだ。そして彼が大きくなった時、侵入するのがファイの親の家だ。こういう設定自体がえげつない。途中でファイは気づく。でも彼はそれまでにその家で残虐な行為に携わっているのだ。5人の父親だけでなく、捜査に関わった警察など登場人物の関与がどんどん増えていく。この映画の設定はちょっときつい。
映画が終わった後に、ファイを演じたジングは精神鑑定をさせられたという。それはよくわかる。いくらなんでもここまでやるかというストーリー内容だ。そのえげつなさが韓国クライムサスペンスの凄味なのだろう。
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