映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「トラップ」 ジョジョハートネット

2024-10-26 17:40:08 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「トラップ」を映画館で観てきました。


映画「トランプ」「シックスセンス」から独特の作風のM.ナイト・シャマラン監督の新作で、ジョシュ ハートネットが主演だ。ハートネットの主演作を観るのは久々な気がする。人気アーティスト役でシャマラン監督の長女サレカ・ナイト・シャマランが主演している。サレカのパフォーマンスはよかった。

溺愛する娘ライリーのために、消防士のクーパー(ジョシュ ハートネット)は世界的アーティスト、レディ・レイブン(サレカ・ナイト・シャマラン)が出演するアリーナライブのプラチナチケットを手に入れた。クーパーは会場についた後で異変に気づく。大勢の警察や警備やFBIもいる。3 万人の観客が熱狂に包まれる中、ライブが幕を開ける。クーパーは口の軽いスタッフから「指名手配中の猟奇殺人犯についてタレコミがあり、警察がライブというトラップ(罠)を仕組んだ」ことを聞き出す。という。クーパーは会場で不審な行動を見せるようになる。クーパーは秘密を隠していた。


期待外れの映画だった。
事前情報なしでの鑑賞だった。巨大ライブ会場の熱気が伝わる中で、ジョシュ ハートネットの動きがおかしい。女性を階段から突き落としたり、内部で働く人のセキュリティカードを盗んだりしていく。女性を突き落とすあたりから何か変だな?と思うようになったけど、状況を理解するのに時間がかかる。途中で凶悪犯をコンサート会場で追いつめるというのがわかるけど、なんかしっくりこない流れだ。


実は意味不明な設定が多すぎるので戸惑ってしまった。普通ようやく手に入れたコンサートチケットなのに休憩時間でもなく会場の廊下にこんなにたくさん人がたむろっているかしら?色んなグッズってコンサートの前後に買うもんだけど、ここではコンサートの途中で行列になっている。しかも、やたらにトイレ行ったり、座席を外したりするものかしら?人気歌手のセキュリティもいい加減だ。普通はありえないよなあ。

話もわかりづらい。ちょっとガッカリだ。
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映画「まる」堂本剛&荻上直子

2024-10-23 06:36:53 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)
映画「まる」を映画館で観てきました。


映画「まる」荻上直子監督の新作、KinKi Kidsの堂本剛が現代美術のアーティストの役柄を演じる。綾野剛、吉岡里帆、柄本明に加えて荻上直子作品常連の小林聡美が脇を固める。意図せずに一気に有名人になってしまった絵描きの男が世間の大騒ぎに戸惑うストーリーだ。何気に興味をそそる。

荻上直子監督の近作「川っぺりムコリッタ」は監督らしいほんわかムードで、「波紋」新興宗教にハマる女性に失踪した夫が帰ってくる人間ドラマであった。いずれもそれなりのレベルだがパンチが弱い印象を受けた。それでも直近公開作のラインナップからいくと、荻上直子作品が優先順位で上になる。

美大を卒業したもののアートで成功できず、人気現代美術家のアシスタントとして働く沢田(堂本剛)。独立する気力さえも失い、言われたことを淡々とこなすだけの日々を過ごしていた。そんなある日、彼は通勤途中の雨の坂道で自転車事故に遭い、右腕にケガをしたために職を失ってしまう。

部屋に帰ると、床には1匹の蟻がいた。その蟻に導かれるように描いた◯(まる)が知らぬ間にSNSで拡散され、彼は正体不明のアーティスト「さわだ」として一躍有名人に。社会現象を巻き起こして誰もが知る存在となる「さわだ」だったが、徐々に◯にとらわれ始め……。(作品情報 引用)

自分の肌に合う心地よく観れる映画だった。
荻上直子監督の前2作よりはよく見えた。映画の中の堂本剛のキャラが好きだ。エンディングの歌が心を柔らかく包んでくれるのもいい感じだ。直近ではお気に入りの作品だ。

上昇志向のない主人公で、本来才能があるのに現代美術家のアシスタントに甘んじている。師事している美術家(吉田鋼太郎)にいいとこ取りされて、同僚の女性アシスタント(吉岡里帆)の方が上に搾取されていると言って腹を立てている。ところが、自転車事故で腕をケガして事務所をクビになってしまうのだ。


失意のまま、池のある公園で円周率3.14の桁下数字を唱える正体不明の老人(柄本明)からパンの真ん中をちぎってできた◯を見せられる。ボロい賃貸の部屋に帰って何気なく◯を描いてサワダの名前をサインしたものを古道具屋に持ち込む。しばらくして、それがいつの間にか世間で絶賛されていくのに気づくのだ。


堂本剛演じる沢田は特に自己主張しない男だ。アシスタントをクビになってから淡々とコンビニでバイトをする。有名になっても継続する。日本語がたどたどしく若者にからかわれるミャンマー出身の店員(森崎ウィン)といい掛け合いを見せる。隣の部屋には売れない漫画家(綾野剛)がいてやたらとちょっかいを出してくる。沢田はテンション高く一方的に話す漫画家の言葉を遮らず聞いている。イヤイヤながら外で付き合わされることもある。美術家の女性アシスタント(吉岡里帆)は口びるにピアスをして、搾取反対と町で集会を開く。沢田はただ見ているだけだ。


意味不明なキザな男が自宅に尋ねてきて◯の作品を書いてくれたら一枚につき100万支払うといい沢田は驚く。ある時、◯を描いた作品を画廊のギャラリーで発見する。声をかけると画廊の主人(小林聡美)が本人と知り驚いて、ギャラリーの個展のために描いてくれと依頼される。


黙々と作品を描いていく沢田(堂本剛)の傍に個性的な脇役を揃える。独特のキャラクターをもたせてこの映画をよりおもしろくさせる。荻上直子監督の俳優の使い方の上手さを感じる。彼女の作品にはいつも名優が集まる。

主人公の住処も含めて横浜がロケ地だとすぐわかる。宮川橋付近の福富町から宮川町あたりのディープゾーンが映る。画廊のロケ地は銀座のようだ。謎の老人がいる茶室の丸い障子や路地にチョークで書いた◯とかあらゆるところに◯を意識するところもいい。現代美術は比較的苦手なジャンルだけど、どの作品もよく見えた。


エンディングロールの堂本剛の歌はなかなかいい。カラオケではかなりKinKi Kidsの硝子の少年を女の子とデュエットで歌ったものだ。クレジットに片桐はいりの名前を見て、アレ?いたっけと思い作品情報を見たら、古道具屋のオヤジ役だったのだ。そうだったんだ。
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映画「消された男 DEADMAN」チョ・ジヌン

2024-10-21 20:17:51 | 韓国映画(2020年以降)
映画「消された男 DEADMAN」を映画館で観てきました。


映画「消された男 DEAD MAN」は韓国サスペンス映画で人気俳優のチョジヌンの主演だ。「お嬢さん」「毒戦」などの代表作ははあるが、日本でもリメイクされた「最後まで行く」悪役が不気味な恐ろしさで怖かった。チョジヌンはその時々で違った顔を見せる。彼の出演作なので今回マークする。単なる名前貸しのつもりが陰謀に巻き込まれ、死んだことにさせられてしまう男を演じる。

妻に離婚を迫られたり窮地に陥るイ・マンジェ(チョ・ジヌン)は「名義貸し」の雇われ社長としてスポーツ業界の会社に勤める。言われるままに身を隠すように言われてマカオに行くと、TVで自分に1000億ウォン横領の疑いがかけられてそのまま行方不明になっているニュースを見て驚く。

気がつくと、何者かに拉致されて中国の私設刑務所に閉じ込められてしまう。そこで苦役の生活をする間にすでに死亡していたことになっていた。2年半過ぎた時、謎の女性シム女史が現れ、彼を救い出す。彼女は大統領選に絡む政治コンサルタントだった。マンジェは刑務所を脱出できたがシム女史は彼を利用して政界工作を企てていた。

残念ながら期待外れだった。
定評のある韓国クライムサスペンスでここまでつまらないのはかなり珍しい。話自体が訳がわからず、展開も微妙で眠気を呼んでしまう。大金が絡んでもスリリングでない。韓国映画の詐欺がらみはおもしろい映画多いけどね。。。


仕事探しに廃車が大量に置いてあるところへ行き、「深く考えすぎると稼げない」名前を貸すと金になるよと言われる。韓国っぽい古い建物で印鑑を作ったりする場面の後普通に仕事をする。雇われ社長は日本のサラリーマン社会でもよくある話で、オーナー社長の代わりに実務をやる訳だが、今回は単に名前を貸すだけ。一応出社して個室を持って承認の印は押す。ただ、陰謀にハマってから後のストーリーがよく理解できない。刑務所を脱出後の大統領選に絡んでの両陣営の策略も映像を追ってもちんぷんかんだ。韓国の人ならわかるのかなあ?せっかくのチョ・ジヌンの登場だけど、見どころも少なく気がつくと終わってしまう。


楽そうに見える名義貸しだけど、ハマると怖いなあと言うことだけは教訓となる。確かに借金が絡むと個人財産まで持っていかれるもんね。それだけわからせてくれる映画にすぎなくて韓国クライムサスペンスにしては残念選択ミスもたまにはあるだろう。
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映画「ジョイランド わたしの願い」

2024-10-20 19:30:08 | 映画(アジア)
映画「ジョイランド わたしの願い」を映画館で観てきました。


映画「ジョイランド 私の願い」は初めて観るパキスタン映画カンヌ映画祭でもある視点部門で審査員賞を受賞している作品だ。監督は1991年生まれの新鋭サーイム・サーディク。ヒンズー教のインドと異なりイスラム教国家だとはわかっている。ビンラディンが暗殺された国とかの暗黒なイメージとしての知識しかない。人口1000万強の都市ラホールが舞台といってもピンとこないが、ムガール帝国の都とした王アクバルの名前を聞くと高校の世界史を思い出す。だいたい3時間の放映時間で腰がひいてしまいがちなインド映画と異なり、2時間ちょっとでまとめられているので助かる。

パキスタンの大都市ラホール、ラナ家は3世代で暮らす9人家族。次男で失業中のハイダル(アリ・ジュネージョー)は、子守や料理もする主夫のようだ。兄夫婦に赤ちゃんが生まれたが予想に反して女の子だった。父から「早く仕事を見つけて男の子を」というプレッシャーをかけられていた。妻のムムターズは結婚式のメイクアップの仕事をしている。

ある日ハイダルは、就職先として紹介された劇場でバックダンサーの職を得た。慣れないダンスに辞めるつもりだったが、トランスジェンダーの人気ダンサービバ(アリーナ・ハーン)と出会い一気に惹かれる。ハイダルは単なる下っ端だったが、突如急接近して行くうちに、夫婦関係に支障がでてくるようになる。


予想よりもよくできている映画だ。映像のレベルは高い。
後進国の映画という感じがしない。そもそも英国統治下から大戦後一国で独立するのが宗教問題に二国になったくらいなので、パキスタンとインドとは同じようなものだ。しかも、インド映画のレベルは直近であがっている。宗教的問題が理由かわからないが、パキスタンでは当初公開されていない。そんなにヤバイシーンがあるように見えないが、イスラム教とLGBTは相性が悪いのであろう。

パキスタンには当然行ったことがない。ラホールの街並みを観るのが楽しみだった。調べるとムガール帝国の痕跡を残す建物が観光地としてあるようである。残念ながら、そのシーンはなかった。煉瓦積み?のような建物が並んで建っている。列車の車窓から見る風景もそんな感じだ。

強度的に問題があるように思える建物だ。以前パキスタンでは大きな地震があったようで、地震がきたらまずいだろうなあと感じる。どの建物もほとんど手を入れていないようで、内壁ははがれている。それでもノーヘルメットでバイクが疾走する猥雑な町の映像がよく見える。


イスラム教国なので女性はベールをかぶる。ただ、主人公の家庭では母親を除いては普段はしていない。女優陣はいずれも美形である。加えてトランスジェンダーのダンサーを演じるアリーナ・ハーンも魅力的だ。主人公がグッと惹かれるのもわかる。主人公とのディープキスのシーンがあってもそれ以上はきわどくない。とは言うものの主人公の浮気はよく捉えられていない。悲劇につながっていく。


夜のシーンに見どころあるショットが数多く見られる。兄と弟の嫁同士が夜の遊園地で遊ぶシーンのネオンがきれいだし、トランスジェンダーのダンサーが携帯の灯りをバックに踊るシーン、赤外線系の灯りの中で主人公ハイダルとビバが部屋で過ごすシーンには監督とカメラマンの美的センスを感じた。その映像体験を味わえただけで、映画を観た甲斐がある。
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映画「国境ナイトクルージング」 チョウ・ドンユイ

2024-10-19 16:33:16 | 映画(中国映画)
映画「国境ナイトクルージング」を映画館で観てきました。


映画「国境ナイトクルージング」は中国映画、朝鮮族が多く居住する延吉の町を舞台に3人の若者を映し出す。予告編で観た雰囲気がよく早速映画館に向かう。「少年の君」チョウ・ドンユイが主演3人の1人だ。シンガポールのアンソニーチェン監督の作品だ。現題は「燃冬」

中国北部延吉の町、バスガイドのナナ(チョウ・ドンユイ)は、ツアー客を朝鮮族の観光施設に案内する。ツアーの中に上海のビジネスマン、ハオフォン(リウ・ハオラン)がいる。友人の結婚式に出るためにこの町に来た。時折スマホにメンタルクリニックから電話が入る。

気がつくとスマホをなくして困っているハオフォンを、ナナは食事に誘う。男友達シャオ(チュー・チューシアオ)が待つ店に連れてきて、3人で飲み明かす。3人はそのままナナのアパートで雑魚寝。翌朝、ハオフォンは上海行きの飛行機に乗り遅れそのまま居座る。3人はバイクに乗って国境の川に繰り出す。いずれも心に挫折感を感じていた。ナナもフィギュアスケートの選手だったがケガで断念したのだ。


若者の嘆きが自分には伝わらず正直のれない映画だった。
朝鮮族が多く住む延吉の町に行くことは一生ないだろう。いくつかの韓国映画で町は見たことはある。町を車で走らせると、漢字の看板の中にハングル文字が混じる。ハオフォンが出席する結婚式では朝鮮語と中国語が混ざってにぎやかだ。ナナはツアー客に朝鮮族の住居を案内して、朝鮮の衣装を着た女性たちの踊りを見せている。この曲って「トラジの歌」でなかろうか?そして、ツアー向けの食堂にもう1人のシャオがいる。

朝鮮民族モードが強い前半戦から、ぐうたらの若者がただふらつく姿が中盤にかけてずっと映し出される。書店で悪さを企んだり、クラブで踊りまくったり、まだ暗い早朝に動物園に行く。それぞれに悩みはあるんだろうけど、自分は感情移入できない。成り行き次第な感覚だ。食堂で働くシャオはナナに好意を持つが、ナナは交わす。そのナナは行きずりの恋のようにハオフォンとメイクラブする。ナナを演じるチョウドンユイの乳首は見えそうで見えない。


寒々しい雰囲気が伝わる映画だ。町の中心部を離れると水は凍りつく。本当に寒そうだ。最後3人は虎と熊が対決する伝説の地、長白山を目指す。雪が激しく降る山で目的地を目指すが、なかなか着かない。吹雪が強くなり山の管理人から戻れと言われる。そんな時そこで軽い見せ場をつくる。が本当に出てくるのだ。そして、「アリラン」の歌声を聞きながら映画は最終場面に向かう。
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映画「2度目のはなればなれ」マイケル・ケイン&グレンダ・ジャクソン

2024-10-14 18:05:43 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「2度目のはなればなれ」を映画館で観てきました。


映画「2度のはなればなれ」は大ベテランマイケルケインの引退作になる英国映画、オスカー主演女優賞を2度受賞しているグレンダジャクソンと90歳になる老夫婦役を演じる。この映画の公開前にグレンダジャクソンは亡くなっている。字幕翻訳はこれもベテラン戸田奈津子で、久々に名前を見た。もう88歳なんですね。

個人的に老人映画は敬遠しているが、Netflixでマイケルケイン主演の日本未公開作品「小説家の旅路」を観たが良かったので気になっていた。原題は「the Great Escaper 」、対岸のフランスで開催される退役軍人の会に参加するために英国ドーバーの老人施設を抜け出して船で向かう主人公の話だ。

2014年夏。イギリスの老人ホームで寄り添いながら人生最期の日々を過ごす老夫婦バーナード(マイケル・ケイン)とレネ(グレンダ・ジャクソン)のある行動が世界中の大ニュースとなった。ひとりバーナードはフランスのノルマンディへ旅立つ。彼が行方不明になったという警察のツイート(#The Great Escaper)をきっかけに、世界中で話題になったのだ。(作品情報 引用)


老人施設を脱出することで原題がつけられている。フランスで開催されるノルマンディ上陸作戦の70周年記念式典に出席するため、ひそかに老人施設をぬけ出すので職員が行方不明の捜査を依頼して大騒ぎになったのだ。「大脱走」と日本題は付けづらかったかもしれない。

大ベテランの枯れ切った掛け合いには敬服する。
色あいのセンスがいい映画だ。薄いブルーとベージュの補色に近い2色が服装やインテリアだけでなく、ドーバーや海上の船から望む海や青空の色となる。視覚的に心を落ち着かせてくれて、やさしいピアノの音色が包んでくれる。わかりやすい英語で心地よく映画を楽しめた。


2人のセリフはそれなりの量だ。俳優のキャリアを通したマイケルケインとは異なり、グレンダジャクソンは政治家になりいったん俳優を引退している。それでも、茶目っ気あふれるセリフはアフリカ系女性が演じる介護士と巧みにからまってコミカルな雰囲気をだす。一定のレベルに達すると、技量は落ちないのであろうか?


ロードムービー的な感覚でバーナード(マイケルケイン)はフランスに行ってから色んな人に出会う。つらい戦争経験の苦しみも分かち合う。行く途中で出会った英国空軍出身の老紳士にはツインだから一緒に泊まろうよと宿までお世話になる。その紳士が空軍にいた時、空から爆撃した街に弟がいて自分が殺したのではとのトラウマを持つ。ドイツ軍兵士だった老人にも会いお互い感極まる。大戦中の回想シーンでは最前線のシーンになり亡くなった戦友をしのぶ。戦争経験のある高齢の方が見たら思うところもあるだろう。若き日の2人を映すシーンはさわやかな恋愛映画のようだ。


The Great Escaperと新聞でも話題になったようだ。ドーバー海峡越えての英国へのご帰還で「You'd be so nice to come home to」とバックに曲が流れるのがいい感じだった。
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映画「若き見知らぬ者たち」 磯村勇斗&岸井ゆきの&福山翔大

2024-10-14 05:52:26 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)
映画「若き見知らぬ者たち」を映画館で観てきました。

映画「若き見知らぬ者たち」は「佐々木インマイン」の内山拓也の監督脚本作品である。直近の日本映画を引っ張る若手の磯村勇斗が主演で岸井ゆきの、福山翔大、染谷将太が脇を固める。磯村勇斗と岸井ゆきのの共演というだけでそれなりのレベルを期待して事前情報なく映画館に向かう。

資金がなく貧相な映画になってしまうことが多い日本映画としてはフランス、香港、韓国の資本が入っているというのは良いこと。それでも、テーマは貧困、脳に障がいをもった母親の介護といった直近の日本映画に多い貧乏くさい内容が中心だ。

映画が始まり、3人の若者と母親らしき4人が出てくるが、それぞれの関係がよくわからないまま映画は進む。どうも母親(霧島れいか)は障がいを持っているようだ。まともに食事もままならない。次男(福山翔大)はトレーニングに励んでいる。食卓で食事をだす女性(岸井ゆきの)が誰なのかと思ったら長男(磯村勇斗)とメイクラブする。女性は看護師のようだ。長男はどこからかの督促状を持っている。金銭的に楽でなさそうだ。結局、説明的な進み方をしないで、時間をかけて個人間の関係がわかっていくようになる。

ここで作品情報を引用する。

風間彩人(磯村勇斗)は、亡くなった父(豊原功補)の借金を返済し、難病を患う母・麻美(霧島れいか)の介護をしながら、昼は工事現場、夜は両親が開いたスナックで働いている。彩人の弟・壮平(福山翔大)も同居し、同じく借金返済と介護を担いながら、父の背を追って始めた総合格闘技の選手として、日々練習に明け暮れている。息の詰まるような生活に蝕まれながらも、彩人は恋人・日向(岸井ゆきの)との小さな幸せを掴みたいと考えていた。(作品情報 引用)


途中から意外な展開を見せた後で思わぬ見せ場をつくる。
最近の日本映画得意の貧困ストーリーに介護まで加わるだけの話かと思ったら、主人公を一気に奈落の底まで落とす。これには驚く。苦難の道に陥るだけでない。ネタバレなのであとで語る。

それと、総合格闘技の選手という設定の次男の金網ファイトシーンがある。「これって本気じゃない」と思ってしまうほどのマジファイトとは想像していなかった。殴っているのは本気に見えるので驚く。どうも福山翔大は格闘技の練習をしたらしい。


「ドライブマイカー」の浮気した妻役で好演した霧島れいかが母親役だと最初は気づかなかった。食事している時から調味料を異常に混ぜたり、スーパーで万引きしたり、ぐちゃぐちゃにしたり、畑を荒らしたりするまさに要介護の母親だ。せっかくスナックを始めたのに、浪費でカネを使い果たした元警察官の夫に呆れかえっているうちに心を病んだのであろうか?はっきりと映画内で語っていないけど、母親に存在感をもたせる。


(ネタバレありなのでここから注意)
それにしても、主役(磯村勇斗)が途中で亡くなってしまうのにはビックリする。親友の結婚パーティに行く予定で、店を閉めようとしたら酔っぱらい3人が入ってきて強引に店で飲んでしまい、暴行を受けたあとで外で引きづり回された上に、痛めつけられてしまう。警察が来てストップするけど結局やられた主人公を連行するなんて強引な設定だと感じる。

実はこのあとツッコミどころ満載だ。
⒈閉店と言っているのに酔客を断りきれないという設定がそもそもそんなことあるのかな?店で暴れてケガをしているのに外へ飲みに連れ回すなんてことあるかしら?

⒉外で暴行を受けていて、警察が見つけて尋問する。結局倒れている方が連行されるけど、普通は争っている全員の素性を確認するために、現場に来た警察は全員の免許証(身分証明書)を確認して警察署に問い合わせて前科も含めた素性を確認するはずだ。結局暴行した連中が誰かはわかる。警官2人が主人公の死でうやむやにしようとする設定としてもおかしいんじゃない。

⒊結局主人公が亡くなって、葬儀が終わった後に親友だった染谷将太がスナックに行って歌うシーンがある。そもそもスナックが死んだその日のままなのもおかしいし、スナックには主人公が殴られて血が出ている跡もある。いくら何でもこれに気づかないのは変じゃない?それで捜査を再開するように訴えてもおかしくないし、今は防犯カメラもあって暴行した人間を追跡もできる。これは神奈川県警をバカにしているシーンだ。

4.父親が亡くなっているのは主人公が子供の時だ。今主人公が経営しているけど、その間どうしていたの?誰かスナックやる人がいないとおかしいよね。妻がやるようには見えない。しかも、父親の借金こんな長い間飛ばないでできるのかしら?自宅も一戸建てに住んでいるし?督促状は何?不思議?

あんまり疑問点ばかり言っても仕方ない。監督がまだ若くて仕方ないだろう。
出演者それぞれの演技自体は悪くないし、霧島れいかと福山翔大には敢闘賞をあげたい。今回の岸井ゆきのは見せ場がなかった。
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映画「死の棘」 松阪慶子&岸部一徳&小栗康平

2024-10-13 05:23:20 | 映画(日本 1989年以降)
映画「死の棘」を映画館で観てきました。

映画「死の棘」島尾敏雄の原作を小栗康平監督が映画化した1990年(平成2年)の作品、名画座の偏愛映画特集で観た。評判はいいが、DVDに長らくなかったので観るチャンスがなかった。その年のキネマ旬報ベストテン3位で、主演の松阪慶子と岸部一徳はいずれもキネマ旬報と日本アカデミー賞の主演女優男優賞を受賞している。全く予備知識なしに映画を観に行くと、島尾敏雄の私小説の映画化であることがわかる。夫の浮気で妻が精神の安定を崩す家族の物語だ。

1954年(昭和29年)の東京小岩、妻のミホ(松阪慶子)が夫のトシオ(岸部一徳)を部屋の中で強く責めたて死んでしまおうとまで言っている。トシオの浮気が発覚したのだ。2人は奄美大島で出会い結婚して子どもが2人いた。トシオは改心を誓い、浮気相手(木内みどり)に会いもう会わないと縁を切る。家庭の平和が戻ったように見えたが、思い出したかのようにミホはトシオを強く叱責する。やがて、環境を変えるために2人は田舎に転居したが、ミホがたびたび発作のように精神を狂わせる


松阪慶子と岸部一徳がまだ若い。その2人の演技合戦が見ものだ。
話自体はどうってことない。こんな話くらいで文学になっちゃうのか?という印象。どこにでもある浮気話だ。私小説だけど、妻が健在なうちによくこんなこと書いたなという感じもする。

戦後昭和20年代に建てられたと思しき板の外壁の平屋の家と付近の光景は映画が撮られた平成の初めまでは東京にも残っていた。映画ではセットとロケの場面を組み合わせる。部屋の中の古い調度品は平成の初めまでは各家庭にあった。小岩駅前の電柱には力道山対木村政彦の試合の掲示があるので昭和29年だとわかる。映画では2人の諍いが中心で、松阪慶子の狂ったような叱責が強烈だ。あまりの妻の狂いに呆れて夫が線路に飛び込もうとするシーンもある。小栗康平監督は2人に体当たり演技を要求している。


ただ、こんな感じで妻が夫を責めたてる構図は古今東西どこの家庭でも変わらない気がする。普通の会話を交わしていたのに突然妻が変貌するシーンがいくつかあっても、精神病院に行くほどまで自分には見えない。精神が不安定なのはわかっても発狂はしていない。途中でミホが麻酔注射を打たれて無理やり入院させられるシーンがあった時に、そこまでひどいのかなあと感じる。

いちばんの見せ場は、浮気相手(木内みどり)が周囲が心配しているからと言って、お見舞いと言いつつ遠方はるばる訪れるシーンだ。妻が怒り狂うのがわかっていてくる相手もバカだなと観ていて思うが、ここからの妻(松阪慶子)の暴れ方がすごい。本気モードでの取っ組み合いを小栗監督に要求されているのだろう。やられる木内みどりもたまったもんじゃない。演技指導もここまでくるとやりすぎと思ってしまうが、韓国映画ではよく見るマジな暴力シーンだ。

小栗康平監督作品「泥の河」はよくできている傑作と思ったが、こちらはそれなりかな。
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映画「ジョーカー フォリ・ア・ドゥ」 ホアキンフェニックス&レディガガ

2024-10-12 07:51:54 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「ジョーカー フォリ・ア・ドゥ」を映画館で観てきました。


映画「ジョーカー フォリ・ア・ドゥ」は前作に引き続きトッド・フィリップス監督がメガホンを持ち、ホアキン・フェニックスがジョーカーを演じる。今回はレディガガがジョーカーと心を通じ合う女性として登場する。前作はホアキンフェニックスの狂気に迫る怪演もありすばらしい作品だった。あれから5年たつのでディテールを忘れていたが、自分の(ジョーカーブログ記事)を見ているうちに、地下鉄の中での緊迫した場面を思い起こした。最後まで気の抜けない映画だった。

かなり前からパート2の予告編が放映されていて、レディガガの存在が明らかになる。予告編でのジョーカーのパフォーマンスに関心が引き寄せられて、どんな話になるのか楽しみにしていた。でも、直前に賛否両論とのウワサ。週刊文春の映画評で敬愛する芝山幹郎が珍しく星2つで驚く。映画が始まりいきなりアメコミ風のアニメ画面にジョーカーが登場する。どうなっていくのかワクワクする。

5人もの殺人を犯したアーサー(ホアキンフェニックス)は刑務所の中にいた。殺人を法廷で裁くにあたり、担当弁護士は被告が多重人格障害だと主張する。犯行時にジョーカーとなり心神喪失状態で責任能力がないとして無罪を勝ちとろうとする。
模範囚だったアーサーは別棟の監獄にいるリー(レディー・ガガ)と知り合う。リーは実家に火をつけて収監されていた。リーはもともとジョーカーに好意をもっていて、アーサーも惹かれて2人は恋に陥る。


前作のように傑作だとうなることはなかった。でも、映画自体は見どころが多く最後まで飽きずに観れた。
予告編を見る限りでは前作と連続しているとは思っていなかった。5人を殺して刑務所に入り、裁判で無罪有罪になるのか瀬戸際にいるアーサー(ジョーカー)が女性と恋に陥る話がベースである。刑務所内と法廷内のシーンがほとんどだ。しかも、ミュージカル仕立てになってアーサーとリーが歌うシーンが多い。いずれも名曲ばかりで自分が知っている曲も多い。心に沁みる曲もある。リアルと妄想が入り混じるシーンも多い。


題名の「フォリ・ア・ドゥ」とはフランス語で「二人狂い」とのこと。もう1人でなくなったジョーカーはスティービーワンダー「for once in my life」をウキウキしながら歌い、リーと知り合った喜びを見せる。好きなシーンだ。ホアキンフェニックスの歌がここまで聴けるとは思わなかった。

でも、リー(レデイガガ)はやっぱり普通じゃない。ミュージカル映画を観るのに飽きて思わず放火癖が出てしまうのだ。火事になった刑務所から2人で脱出を図ろうとする。できるわけがない。犯行当時の心神喪失で無罪を勝ちとろうとする女性弁護士は精神科の医師の診断なども使い、犯行時に別人格のジョーカーだったことを訴えるのだ。街ではジョーカーの狂信的信者がいて応援する一方で、死刑が当たり前だとする人も多い。ところが、自分に対する侮辱と感じる発言で女性弁護士を解雇して、自ら1人で検察と対決するようになる。


2人が交わった結果愛の結晶が密かに育つことがわかって歌うカーペンターズの名曲「Close to you」も実に良かった。パリオリンピックにも登場したレディガガもさすがの存在感で良い曲は多い。予告編での期待度が大きく下がったわけでなく見どころはたくさんある。しかも、映像のレベルは高い。もっと刑務所以外の下界でのシーンが多いと良かったのでは?

でも、本来のジョーカーの世界とイメージが違うと感じる人が多いことで賛否両論となるのかもしれない。ウェイン家の匂いはない。最後は「え!そうなるの?」という感じで終わってしまう。色んな解釈がされているけど、ジャックニコルソンやヒースレジャーの名作のいくつかが存在しないようになると問題だ。
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映画「本を綴る」

2024-10-06 21:49:13 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)
映画「本を綴る」を映画館で観てきました。


映画「本を綴る」は本屋が日本から次々となくなっていることに寂しさを感じる作家が栃木、京都、香川と町の本屋をまわる話である。ロードムービー的に各地で新しい出会いがある。監督はベテラン篠原哲雄で、脇役での登場が多いメンバーで構成されるまさにインディーズ系の映画だ。

破壊的な場面が多そうな映画とか今週の新作はのれそうにない新作が揃い、この映画を選択する。ヤクザ映画の殿堂だった跡地にある映画館では、東京で一館のみの公開で満席だった。年間本200冊読了が個人目標で今年はすでに達成している自分には本屋の話は親しみがもてる。

小説が書けなくなった作家一ノ関(矢柴俊博)は、全国の本屋を巡りながら本の書評や本屋のコラムを書くことを生業にしている。一ノ関にはベストセラーがあるが現在新作が書けていない。

那須の図書館でのイベントで講師となった一ノ関は図書館司書の石野(宮本真希)とともに森の中にある小さな本屋を訪れる。古書を探している時に、本に挟まった恋文を発見する。宛先は京都だ。送付先に届けるために京都へ向かう。


京都には学生時代の友人が書店の店長をやっていた。人伝に恋文の送付先の消息をたどると、本人は亡くなっていた。それでも孫娘花(遠藤久美子)が錦市場の近くで小料理屋をやっていることがわかり立ち寄る。花には婚約者がいたが、香川で人助けで溺れて亡くなっていた。香川に一度行ってみたらどうかと花を誘い出す。書店訪問で向かった香川で再会して花とともに婚約者の墓参りに向かう。

本屋愛に満ち溢れる心温まる快作である。
人気俳優がいない配役だ。それが公開館が少ない理由だろう。主役の矢柴俊博の出演作は観たことある作品が多いけど記憶にない。傑作という映画ではない。末梢神経を刺激するようなシーンもない。でも、本と書店に対する愛情がにじみ出ていてムードがあたたかい。好感がもてる。

古本に挟まっていた恋文を持参する話、作家の主人公が以前本で書いた廃村にかかわる人物を探す話などを書店巡礼にあわせて混ぜ合わせてストーリーの基調とする。主人公一ノ関はダム建設のために廃村になった町のことを書いてベストセラーとなったが、その村の住人からクレームを受けて新しい小説が書けなくなった。そんな挫折自体は驚くような話ではないが、うまく絡めた印象をもつ。

主人公が巡る各地の風景は建物も含めて十分目の保養になる。ロードムービー特有の楽しみだ。那須塩原市図書館みるるは広がりのある空間と階段のあるフロアに特徴がある良くできている設計だ。京都では廃線跡と思しき線路を歩く。香川県観音寺では今まで見たことのない海を見渡す絶景の場所にある高屋神社や海岸線に沈む夕陽の美しさが堪能できる。高屋神社は特にすばらしい。


⒈町の本屋への思い入れ
いきなり閉店した本屋の前で立ち止まる主人公の姿が映る。町の本屋の経営がきびしいのも時代の流れだろう。ものすごい勢いで本屋がなくなっている。残念だ。ネット販売で購入することも多いけど、本屋で実際に立ち読みしないとムダな本を購入してしまう。そういった意味では本屋がないのは困る。自分の主戦場は神保町の東京堂書店、新宿のブックファーストと紀伊國屋、池袋のジュンク堂だ。本屋は書店員の目利きが重要で、平置き本でそのセンスがわかる。

那須の本屋はこんな場所に来る人がいるのかな?という場所にある。京都や高松でも本屋を紹介する。なくなった本屋の本を引き取りミニバンで運んで販売するのも映し出す。


⒉京都の小料理屋の女将
この主人公が世帯持ちなのかどうかの言及はない。栃木、京都、高松それぞれの場所で美女に遭遇する。主役の矢柴俊博も気分よく仕事ができただろう。那須の図書館司書は宮本真希で、25年前に深作欣二監督作品「おもちゃ」に出演した時に観ている。歳はとったがより魅力的になった。

京都で古本の中に挟まった手紙の持ち主に会おうとして、結局亡くなっていて孫娘に会う。遠藤久美子が演じる。以前は出番も多かった。それにしても長らく映画を観ていて、小料理屋の女将役でこんなに素敵な女性を見たことがない。センスの良い着物で接客する姿がいい。建物も素敵だ。こんな店近くにあったら多少高くても通うだろうなあ。


エンディングロールで歌声が聴こえる。聴いたことある声だ。アスカだなと思ったけど自信がない。その直後にクレジットにASKAとあり感動する。色々と問題も起こしたが、健在ぶりがわかってうれしい。
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映画「傲慢と善良」 奈緒&藤ヶ谷大輔

2024-10-04 10:08:30 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「傲慢と善良」を映画館で観てきました。


映画「傲慢と善良」辻村深月の原作を「ブルーピリオド」萩原健太郎が監督で映画化した作品である。原作がベストセラーだけど未読。本屋でこの表紙よく見かけたなあ。辻村深月原作の映画化では「朝が来る」「ハケンアニメ!」いずれも自分の好きな作品だ。直近のアニメ作品は観ていない。漫画原作の多い昨今の日本映画事情を考えると文学系では公開作品は多い方だ。

ビール会社を経営する青年実業家の架(藤ヶ谷大輔)マッチングアプリで婚活をはじめ、数多くの女性と会ってきた。いずれもピンとこなかった時に出会った真実(奈緒)に好感をもち付き合いをはじめる。1年経ち結婚に踏み切れなかった架に真実がストーカーの存在を告白する。保護するために架の家に移り住み婚約の流れとなったその時に、真実が突如失踪する。


手がかりを得るために群馬の実家に行くと、母親(宮崎美子)から東京に行ったのでこうなったと小言を言われる。お見合い相手がストーカーだったのではとお見合いをセットした県会議員夫人(前田美波里)に会い、2人のお見合い相手にも会った。でも疑うような気配はなかった。一方で架の女友達が以前紹介した真実と会った時の話を聞き、架は真実の真意を確認して呆然とする。

主演2人に好感がもてる現代版ラブストーリーである。ただ不自然さが残る。
会社の若手に結婚式のスピーチを頼まれ、なれそめを聞くと婚活系で結びついたケースが増えてきた。照れながら話す新郎によると、休日のホテルのラウンジで2人で待ち合わせをすると、周囲には同じような男女が大勢いるそうだ。娘の友人にもマッチングアプリで男女とも美男美女の幸せな結婚をしているカップルもいる。マッチングアプリの出会いは怖そうな感じもするが、決してレアケースではない。

この映画での奈緒が演じる真実は自分も引き寄せられる女の子だ。藤ヶ谷大輔が演じる架が数多くの女性に会ってきてピンと来なかったけど、彼女を選ぶ気持ちはよくわかる。小説の設定が未読なのでわからないが、映画を観るとそう思える。ところが、彼氏の方がなかなか結婚しようと言わないので、女性が口には出せずに心配しているのだ。そこでトラブルにつながることが発生する。よくあるような話に見えるけどどうなんだろう。女性が気を引くためにウソをつくことはよくあることだ。

ただ、映画を観ていて、強引な設定が多すぎる印象をもつ

1,男性側の昔の女友達との奇妙な偶然
映画の中ではキーポイントとなる部分だけど、偶然にしては出来過ぎの設定に感じる。架の友人にホームパーティに誘われて2人で参加した時にいた架の女性の友人がいる。その2人に奈緒が送別会が終わる時に偶然会うのだ。そこで誘われて3人で飲みに行き、架が2人に語った奈緒の評価に加えて、もしかしてあなたの行動が狂言ではないかと言われるのだ。

映画ではむちゃくちゃ女のいやらしさが露呈する場面に見えるけど、そもそも自分の送別会で職場の人に囲まれている中で、一度あったきりの女性たちと一緒に飲みに行くかしら?という設定が強引な気もする。しかも、いくらいじわるな女性でも平気でこんなこと言うのか?との疑問は残る。

2.宮崎美子にはめずらしい役
真実が失踪して、あわてて架は行方を探す。群馬前橋の実家で母親に会うとイヤミを言われる。この母親は宮崎美子には珍しい嫌な女の役だ。父親は県庁勤務で仕事を終え、周囲も県内で勤める人が多く母親は地元の女子大に行かせてお見合いで結婚させるつもりだった。姉は違った道を歩んで自立して生活しているので、なおのこと次女に期待する。東京に行ったのがそもそも間違いで、自営業の人と一緒になるのもどうかと架を前にして言う。自分の価値観に凝り固まっている。そんな感じの話し方をする宮崎美子をはじめて見た。こういう役もするんだ。

自分の大学の時の友人で県庁の上級職に合格して郷里に戻ったのが2人いた。片方の場所は北関東で自分が転勤でそこに住み付き合いがあり、片方は九州でよく遊びに行った。家族にこんなイメージの人はいない。2人とも局長クラスで県の職務を終えたが、周囲にこんな価値観をもつ家族のいる家があるのだろうか?県職員って良い人が多くその家族も違う気がするけどなあ。


⒊前田美波里
ストーカーに追われているのを真実が告白して、架は以前お見合いをした人と何かがあるのでは?と母親が信頼している県議会議員夫人に会うことになる。お見合いの斡旋をしている。演じているのは前田美波里だ。静かに話すのだが、ドスが効いていてものすごい迫力だ。誰もが驚かされるだろう。でも、若き日のボリューム感あふれる肢体を知っている若者は少ないだろう。

昭和40年代前半、前田美波里は当時としては異色の存在で加山雄三の若大将シリーズなどでそのエキゾティックな姿を観ることができる。自分は大学生の時に30代になったくらいの前田美波里のショーを六本木の今はなきクレイジーホースで見た。目の前で見る前田美波里の躍動感あるダンスにただただ圧倒された記憶が鮮明だ。


群馬でのシーンのいくつが印象深い。お見合い相手2人のキャラは対照的だけど、地方都市の人にありがちの雰囲気がよくでていた。佐賀でのシーンもロケ地の設定も含めて自分にはよく見えた。西田尚美がよかった。

4.奈緒は嫌われているのか?
自分のブログで奈緒主演の「先生の白い嘘」のアクセスが妙に多い。8月も9月も7番以内に入って、近作ではもっとも多いアクセスだ。なぜなんだろうといつも思っている。前作同様、奈緒は好演なのに映画.comの評価が悪い奈緒女に嫌われるタイプの女性なのだろうか?
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映画「黒蜥蜴」 丸山(美輪)明宏&三島由紀夫&深作欣二

2024-10-02 18:52:40 | 映画(日本 昭和35年~49年)
映画「黒蜥蜴」を名画座で観てきました。


映画「黒蜥蜴」江戸川乱歩の原作を三島由紀夫が戯曲化したもの1968年に映画化した。深作欣二監督、丸山(美輪)明宏主演で三島由紀夫も自ら特別出演している豪華な顔ぶれだ。直近の名画座作品ではもっとも見逃せない作品だ。DVDはなく名画座以外では観ることができない。京マチ子版の「黒蜥蜴」もあり、ブログにアップした。京マチ子の妖艶な姿もすばらしい。でも、この戯曲は三島由紀夫が丸山明宏のためにつくった戯曲だ。56年前だけに古さを感じる部分はあってもやはり役者の貫禄が違う。

富豪の宝石商岩瀬の元に高価なダイヤ「エジプトの星」を強奪して娘早苗(松岡きっこ)を誘拐するという脅迫状がくる。岩瀬は名探偵明智小五郎(木村功)に警護を依頼して大阪のホテルに滞在する。その隣には岩瀬の旧知の有閑マダム緑川夫人(丸山明宏)も滞在していた。早苗は緑川夫人から亡くなると見せかけて山川と名乗る雨宮(川津祐介)を紹介される。2人が部屋で歓談しようとする隙に早苗を拉致して雨宮は大阪駅から新幹線で東京へ向かう。緑川夫人が黒蜥蜴だったのだ。明智小五郎が手を回していたおかげで早苗は助かる。黒蜥蜴はその場を得意の変装で逃げ切る。

その後、岩瀬家の自宅に再度脅迫状が来て,用心棒を大勢雇って警察も厳戒体制をとっていた。それなのに黒蜥蜴は手段を選ばず、岩瀬家の家政婦が誘拐に加担して早苗を誘拐するのである。

若き日の丸山(美輪)明宏を観るための映画だ。
ここまで錚々たるメンバーが集まる事は滅多にない丸山明宏演じる黒蜥蜴は妖艶で,変装したときの男装の麗人ぶりは宝塚人気男役のような美的感覚だ。

もともと戦前に江戸川乱歩が書いた小説を昭和30年代に三島由紀夫が戯曲化したわけで、古くさいのは仕方ない。令和の世で考えると、高額のダイヤ泥棒とかもいそうもないし、誘拐の設定もこんな安易にできるわけがない。防犯カメラもあるし、たやすく黒蜥蜴が逃げれるわけがない。そこを突っ込むとキリがない。昭和40年代の子供向けキャラクターモノの実写版TVを見るような感じだ。

現代から見ると稚拙に見える映像も、俳優の貫禄でほぼカバーしてしまう。丸山明宏のナイトクラブのショーを観るような感覚だ。明智小五郎に対して見せる恋心がこの戯曲のポイントなのに明智小五郎役の木村功は適役だったかな?との疑問をもつし、川津祐介も普通。その中で特に良かったのが当時21歳の松岡きっこだ。これがとびきり美しい。大きな眼に眼力を感じる。夜の番組に登場して、その色気に圧倒されて子供心に魅力的な女性だと思っていた。


三島由紀夫自ら生人形役ででてくる。切腹する2年前だ。黒蜥蜴の手によって殺された死体を剥製化した人形となる。特にセリフはないが、肉体美をやたらと誇示したがる三島由紀夫だけに裸を見せつける。黒蜥蜴の棲家には以前写真で見た三島由紀夫の自宅を思わせる美術品や調度品が置いてある。三島自身に黒蜥蜴には思い入れがあるようだ。



音楽は冨田勲だ。後にシンセサイザーで有名になる富田勲がジャズやバロックや様々な音楽を混ぜたバックミュージックでサスペンスを盛り上げる、いきなりゴーゴー喫茶のような謎のクラブが出てくる。サイケデリックが流行の頃だ。緑川夫人がオーナーのクラブで黒蜥蜴こと丸山明宏も妖艶な姿を見せる。店の感じが自分が小学生だったときのサスペンスにつきもののクラブの雰囲気で、自分は小学生時代に戻ったような感覚を持つ。
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映画「Cloud クラウド」 菅田将暉&黒沢清

2024-10-01 06:42:58 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)
映画「Cloud クラウド」を映画館で観てきました。


映画「Cloud クラウド」黒沢清監督菅田将暉と組んだサスペンスタッチの新作である。菅田将暉だけでなく、共演者の窪田正孝、古川琴音、岡山天音、奥平大平など最近の映画でいずれも主演を張る豪華メンバーだ。正直言って、黒沢清監督の最近の「スパイの妻」「蛇の道」はいずれも自分にはイマイチな作品だった。本作は題材が転売ヤーというネット社会でやりやすくなった商売をクローズアップするので気になる。

吉井(菅田将暉)は町工場に勤めるかたわら「転売ヤー」として格安で仕入れた物品をネットでさばいて利ざやを得ている。工場主(荒川)から職場リーダーへの昇進を打診されたり、転売屋の先輩村岡(窪田正孝)からの共同事業の申出をいずれも断る。感情を押し殺すクールな男だ。転売に専念するために恋人の秋子(古川琴音)と田舎の湖の辺りにある家に移り住む。ただ、その頃から何かに追われる感覚に襲われるようになる。


移転先の事務所で従業員として佐野(奥平大兼)を雇い仕事を始めた矢先、寝ている時何者から家に物を投げつけられる嫌がらせを受ける。警察署に届けに行くと、逆にニセブランドを販売しているのではとのタレコミがあると聞き慌てる。ネット上SNSでは悪いコメントが増えてきていた。ニセブランド品を再転売したことで被害を受けたネットカフェ住民の三宅(岡山天音)などの被害者たちがお互いの素性がわからないままにネットで共闘する動きも出てくる。そして、実行犯が徒党を組んで吉井の棲家に乗り込んでいく。


これまでの黒沢清作品よりもおもしろく観れた。
恐怖の醸し出し方が巧みである。前半から中盤にかけて何度ものけぞった。


菅田将暉演じる主人公は現実にいそうな人物である。「安く仕入れて、高く売り、利ザヤを取る商行為」は何も悪いことではない。ただ、ニセブランド商品などを販売すると犯罪だ。そこにはコンプライアンス上の一線が引かれているのに、吉井は割と安易で買い側からクレームが出てくるわけだ。

吉井の身の回りで不審なことが起き始める。誰もが吉井を狙っている。そんな状況をスリラー的に見せてくれる。うらみからなる誹謗中傷がネットを通して増幅し、集団が狂気の状態だ。破壊集団へと姿を変え暴走するのだ。ネット社会の恐怖である。次第に吉井は追い詰められる。

窪田正孝や岡山天音は直近で演じている異常人物のテイストを取り入れてこの映画の役柄に没頭した。古川琴音もいつもながらのほんわかした雰囲気だが、サスペンスになると違う局面を見せる。今回、黒沢清の俳優の起用と使い方はうまいと感じる。


⒈安く仕入れた品物を売るのは別に違法行為ではない
映画が始まってすぐに,工場主がもともと1個あたり400,000円で作った電子治療器を1箱3000円で30箱主人公吉井に売るシーンがある。それを高く転売して主人公が儲けるわけだ。売らざるを得ない状況になった男女が買い取る吉井にクレームをつけるシーンがある。もともと原価は高かったんだよと。

なんで文句を言われなければいけないのかな?と見ていて思った。別に悪いことをしているわけではない。安くてイヤだったら他の人に売ればいい話だ。これを見て、いつもながら黒沢清は意味不明な場面を作るなあと感じる。巨匠になりすぎで周囲からおかしなことも指摘されないのかな?毎回常識ハズレのシーンがある。

例えば直近で大きく業績を伸ばしているドンキホーテも、普通の定番品とこういったバッタ品も含む安く仕入れて売るスポット商品を組み合わせて利益を上げてきたのだ。商売の道理に反していないのにこれをクレームの形にして,しかも最後の復讐場面でこの売り主を入れることが不思議だ。工場主も同様だ。

⒉ネット社会の狂気
転売屋吉井の評判はネット上で最悪になっていく。きっかけの1つは10,000円で仕入れた高級ブランドバックを100,000円で売ったのが偽ブランドだったこともある。安く買って高く売るのは通常の商行為と言ったが,さすがに偽ブランドになると違う。警察に今度調査しようかと言われて、慌てて損失覚悟で価格を大きく下げる。

この辺りから恨まれることが多くなっていく。ネットでこういった被害者たちが集結する状況になる。お互いに名前を知ることなく,一緒になって転売屋を攻撃するのだ。おそらくこんな事は世間でもあるだろう。それにしても、この暴挙に普通だったら関わらないような人間が加わってラストに向かう。かなり大げさだけど、現実の世界で絶対ないことではない。


(ここからネタバレに近い)
⒊助っ人佐野の謎の存在
湖のそばの一軒家に事務所を構えたときに,採用したのが奥平大兼が演じる佐野だ。学校を出てなかなか良い仕事に恵まれない男だったと言うが,この映画は最後に向かって急激にこの佐野の存在感が強くなっていく。

まず、吉井の事務所兼住処にものを投げつけた男を捕まえる。吉井に嫌な思いをさせられた男たちが徒党を組んで、集団で吉井を懲らしめようとする。そのときに、佐野が銃を持って吉井を守る「孤独のグルメ」松重豊が演じるいかにも謎の男から佐野が拳銃を引き取る場面がある。吉井を懲らしめようとした男たちを撃退する中で,転がっている死体を自分に任せれば全部処理すると言う。われわれに裏社会に通じた男と感じさせようとしている。


そんな佐野の正体が何か?、最後に向けて佐野の存在の真相がわかる場面が出てくるかと思っていたが,結局謎を残した。なんでこんなに吉井を助けるんだろう。

実は、自分のパソコンを覗かれたということで、吉井は佐野をクビにしている。縁がなくなったはずだ。それなのになんでこんなに身をもってかばうのか?普通ではあり得ないことが最後に続く。芥川龍之介「薮の中」では真犯人がわからないまま大きな謎として残った。同じような感覚で佐野の正体についても解釈できるのではないか。あえて深入りしない黒沢清のうまさをこの映画を見て感じる。
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