映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「世界にひとつのプレイブック」 ブラッドリークーパー&ジェニファーローレンス

2013-02-26 21:44:15 | 映画(洋画 2013年以降主演男性)
映画「世界にひとつのプレイブック」を劇場で見た。

ブログにまとめようとして、こっちまで支離滅裂になってしまいなかなかアップできなかった。
普通のラブコメとは訳が違う。予想以上に破滅的なスタートにビックリ、2人とも心の病気にかかっているとはいえあまりの激しさに驚く。それに加えて、途中で賭博的要素が強くなる。これはオヤジ役のロバート・デ・ニーロが絡んでくる話だ。今の日本からすると、かなり乖離している世界なので正直戸惑ってしまう映画であった。
ただそれを演じる2人はともに好演、デニーロも悪くないし、カラフルな脇役がなかなか面白い。

主人公の精神病院における姿が描かれていく。
パット(ブラッドリー・クーパー)が精神病院に収容されたのは、妻ニッキ(ブレア・ビー)の浮気現場を自分の目で見たことによって心のバランスを崩したためであった。パットは8カ月入院させられ、退院後も妻に接近することを禁じられた。高校の教師もクビになり、父(ロバート・デ・ニーロ)と母(ジャッキー・ウィーヴァー)が住む家で暮らすことになった。しかし、パットはやたら早口で怒鳴りまくる。夜中にわめき散らしたり、セラピーを受けるクリニックで想い出の曲スティヴィー・ワンダーの『マイ・シェリー・アモール』が流れるのを聴き、大暴れしたりハチャメチャだ。
そんなパットに気晴らしにと友人からディナーに招かれる。そこで招待先の妻の妹ティファニー(ジェニファー・ローレンス)に出会う。彼女は最近夫を亡くしていた。彼女も精神状態がおかしい。夫の死を忘れるために会社の男全員と寝たという驚くべき話まである。出会った後すぐ彼女はキレてしまい、パットに平手打ちを食らわせてしまう。身体を鍛えることにこだわるパットがジョギングをしていると、そこにまつわりつく。そんな2人だがお互い似たもの同士ときが付いたのか、付き合うようになる。パットはティファニーのパートナーに誘われ、いやいやダンス・コンテストに出場することになるが。。。。

普通であれば、仲のよくなった2人がダンス大会のためにレッスンを重ねるというのがよくあるパターンだ。でもここではそうはならない。努力の物語ではない。心に爆弾をもっている彼はちょっとした隙にまた大暴れ、彼女はイライラ。ティファニーの思うような練習ができないのだ。しかも、出場するダンスペアはプロを含む一流ばかりだ。でも上位はまったく狙っていない。2人のダンスペアが10点満点の採点で審査員から5点以上をとれるかどうかという賭けをオヤジが仕組むのだ。そこが笑えるところだ。
 
オヤジはギャンブル好き、フットボールのスポーツ賭博が大好きだ。それに加えてダンス大会のポイントまで賭けの対象になる。誰がどう見ても5点以上はムリだろうと思うが本番は??

日本でいえば、賭博というとすぐ大騒ぎになる。裏社会の話は当然だが、ちょっとした会社のトトカルチョでさえも警察騒ぎになる。そこがアメリカと日本の違いだろう。コンプライアンス好きの日本ではまずはつくられないタイプの映画だ。ここではギャンブル狂いも一つの病気として描くのがポイントになっていたのかもしれない。
それに加えての精神が錯乱した2人の振る舞いが凄い。そううつ病というが、むしろ躁病かもしれない。ラブコメに片方ならず2人とも躁鬱という過激さをもちこんだのは画期的だ。でもずっと破滅的な動きに圧倒されっぱなしだった。
ちょっと頭が錯乱してしまったかもしれない。


でもジェニファー、オスカーもらえてよかったね。
そうそうスティービーの歌も色々流れていたけど、レッドツェッぺリンⅡの2曲目「What Is and What Should Never Be」が絶妙なタイミングで流れていたのが印象的だった。
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85回アカデミー賞(2012年度)の感想

2013-02-25 18:51:59 | 映画 ベスト
いよいよ発表になった。

作品賞:「アルゴ

下馬評が徐々に高くなっていく感じだった。とうとう決まってしまった。
自分としては、「ゼロダークサーティ」の方がよく見えたが、ニセ映画で脱出というネタ自体がアカデミー賞にはピッタリなのかもしれない。
むしろ現地人(イラン?)の演技にリアリティがあったのに映画づくりのうまさを感じた。
ベンアフレックには心から拍手を送りたい。
グッドウィルハンティングから始めて長い付き合いになりそうだ。

監督賞:アン・リー(「ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日」

CGと実写とバランスがよく、色合い良くうまくまとめたアンリー監督の手腕には敬服した。
虎がCGと聞いて本当にビックリした。
これで監督賞2度目だ。次にどんな題材を選ぶかが見ものだ。
有名な俳優が出ているわけではないのにいい映画作ってもらった。

主演男優賞:ダニエル・デイ=ルイス(「リンカーン」)

この人が候補になったら、他の人は勝てないと思うであろう。
前作「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」には背筋がぞくぞくした。
今回まだ見ていないが想像がつく。現代映画界で最高峰の演技をする人だ。
「リンカーン」見るのが楽しみだ。

主演女優賞:ジェニファー・ローレンス(「世界にひとつのプレイブック」)

正直「ゼロダークサーティ」を見た時はこれで主演女優賞は決まりだと思った。
でも「世界にひとつのプレイブック」(まだブログアップしていない)を早速見てうーん互角だと思った。
それで結局ジェニファー・ローレンスに。
これってかなりの接戦だったんじゃないでしょうか?
主演男優賞に本命がそのまま選ばれたけど、共演のブラッドリークーパーはかなりいい。
いずれチャンスがくるでしょう。

助演男優賞:クリストフ・ワルツ(「ジャンゴ 繋がれざる者」)
彼のことはあまり知らない。2回目だね
黒澤映画にも常連の脇役がいたけど、彼もタランティーノ映画でそうなるのかな?
早く見てみないと。。。

助演女優賞:アン・ハサウェイ(「レ・ミゼラブル」)

これは本命どうりでしょう。これだけは予想を外した人いないんじゃないかな?
自分はずっと歌い続けの映画が少し苦手なのですが、アンハサウェイは大好きです。

脚本賞:クエンティン・タランティーノ(「ジャンゴ 繋がれざる者」)

彼の名を高めた「パルプフィクション」以来2回目だ。
もっともらってもおかしくないんだろうけどね。
先日大好きな梶芽衣子の手を握ってご満悦との話なのでよかったね。

脚色賞:「アルゴ」
視覚効果賞:「ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日」
美術賞:「リンカーン」
撮影賞:クラウディオ・ミランダ(「ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日」)
衣装デザイン賞:ジャクリーン・デュラン(「アンナ・カレーニナ」)
編集賞:ウィリアム・ゴールデンバーグ(「アルゴ」)

以上はすべて納得
大著「アンナ・カレーニナ」の映画化にも注目している。
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映画「ラブソング」 マギーチャン&レオンライ

2013-02-24 18:51:01 | 映画(自分好みベスト100)
映画「ラブソング」は96年の香港映画の名作だ。
ラブストーリーでは不朽の名作といえる。
香港好きの自分はすぐ飛びついて感動、その後ヴィデオレンタルでは見たがDVDレンタルされているのを見なかった。しかも、アマゾンで売られているDVDの価格は高かった。ところが、何の気なしにアマゾン検索をしたら900円台で売っているではないか。すぐさま注文して久々の感動に酔いしれた。

記憶を刻み込むため、細かくストーリーを追う。

1986年3月1日。天津から香港へ一人の青年シウクワン(レオン・ライ)が青雲の志をもってやってきた。故郷には恋人のシャオティン(クリスティ・ヤン)を残してきた。
当然広東語は話せない。身寄りは叔母しかいなかった。外国人娼婦も同居するいかがわしいアパートの隅っこで世話になりながら鳥屋で働く。
ある日初めてマクドナルドに行ったシウクワンはアルバイトのレイキウ(マギー・チャン)と出会う。彼は大陸出身でファーストフードで注文する要領がわからずにいた。色々からんでくる彼にレイキウは香港では英語も必要と英会話学校を紹介する。彼女はさまざまなアルバイトをしていて、英会話学校でも掃除をするだけでなく、紹介料を稼いでいたのだ。地道に働く彼女にはプラザ合意による円高も影響し預金残高も増えていった。

年末、貯めたお金に一部借金を加えてレイキウはテレサ・テンのポスターやカセットを売る露店を女人街に構える。しかしテレサの歌が大陸出身者に受けるであろうという思惑は外れる。逆に大陸出身のテレサ好きと知られたくないため誰もカセットを買わない。香港人を気取る彼女も実は広州出身で、香港に来たばかりだ。友情を深めていた2人は慰めが恋ごころに変換され、キスを交わす。その晩はじめて夜を共にする。やがて、2人で会い続けるうちに、故郷の恋人との間でシウクワンの心は揺れる。

87年秋、その後商売はうまくいかない。相場も失敗してレイキウは3万HK$あった貯金のほとんどを失う。そこでサウナのマッサージ嬢の仕事を始めた。彼女はお店でヤクザのボスであるパウ(エリック・ツァン)と知り合う。パウの背中の刺青を見ても全然ビビらない彼女をパウは気にいった。相変わらず2人の関係は続いていたが、故郷の恋人へのブレスレットと同じものをプレゼントするシウクワンの無神経さに傷つき、レイキウは彼のもとを去る。

90年冬シウクワンは、故郷から彼女シャオティンを呼び、香港で結婚式を挙げた。
披露宴の席にはレイキウも招待した。結局彼女はマッサージの客だったヤクザの愛人となり企業グループの社長となり、望み通り金持ちになっていた。普通の結婚生活をしていたが、ときおり新婚夫婦と彼女が会うようになっていた。
ある日、シウクワンとレイキウが乗る車からテレサ・テンの姿が見え、シウクワンは上着の背中にサインしてもらう。彼が去ってゆく背中を見つめるうち、レイキウは抑えていた思いを再燃させ、ふたりは再び愛を交わす。

シウクワンは妻に打ち明けると言い、レイキウもまたパウに別れを告げる決意を固める。そんなときにパウの身辺に事件が起きる。
パウは警察から秘密をもらせば見逃すと言われるが、船で香港を脱出して台湾へ行くしかない。パウに別れの言葉をかけようとしたが、もはや見捨てることができない。レイキウはシウクワンを波止場に残したまま、パウと共に香港を離れる。
レイキウと離れてしまったのにもかかわらず、シウクワンは妻に別れを告げ、単身ニューヨークへ向かった。
2人は離れてしまうのであるが。。。

そのあとニューヨークでは予想もつかないことがいくつか起きる。ああもうだめかとがっかりさせた観客に一つの希望と安ど感を与える。
初めてこの映画を見た時、ものすごく感動した。

自分が初めて香港に行った90年代前半では、アカぬけた香港人の中に大陸の人たちのちょっとダサい服装とテイストの違った顔立ちがものすごく目立った。中年以上はともかく今の若い人に関してはまったく見わけがつかないようになった。それだけ豊かになったのであろう。それはそれで素晴らしいことだ。
でもこの映画が描かれた時代に生きた人たちの悲哀物語を見ていた方が胸にジーンとくる。
大陸でもマクドナルドがかなり増えたので、主人公の店での慌てぶりはありえないような話だけど、80年代だったらありうるかもしれない。キャッシュカードに奇異の目を見せる姿も同様だ。

図形の双曲線の軌跡を思わせる2人の接近、双曲線は交わりそうで交わらないが、この2人は腐れ縁で何度も接触する。そしていくつかの愛の話を積み重ねていく。高峰秀子主演の不倫映画「浮雲」同様「究極の腐れ縁映画」といってもいいだろう。不思議な引力が2人の間に存在する。レオンの振る舞いに不自然と思しき部分もないわけではないが、80年代半ばに大陸から香港に渡ってきた連中はこんなものだろう。
マギーチャン、レオンライはともに好演、2人が演じる恋の綱渡りをとらえるカメラワークもいい。



でもこの映画久々見て、脇役の仕事が気になった。
一人は香港にロケで訪れたウィリアム・ホールデンと過ごしたひとときを語るシウクワンの叔母の話。今は重慶マンションあたりのやり手ババアになり下がっている身なのに、昔の写真は凄い美人、この彼女に不思議な魅力を残す。
あとはクリストファー・ドイル扮する英会話学校の怪しげな教師とタイ娘との恋物語。クリストファー・ドイルは「花様年華」をはじめウォン・カーウァイ作品の撮影を担当してきた名カメラマン。最近ではジェットリー主演のハートフルドラマ「海洋天堂」でもカメラを担当する。主人公の恋話と同時並行にいくつかの逸話を積み重ねていたことをすっかり忘れていた。

何度見ても新鮮な発見がある傑作だ。
加えて故テレサテンの歌の響きに魅せられた。

(参考作品)

ラヴソング
交わりそうで交わらない2人の恋


花様年華
マギーチャンの代表作


天使の涙
殺し屋を演じるレオンライ
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ムーンライズ・キングダム

2013-02-22 18:45:24 | 映画(洋画 2013年以降主演男性)
映画「ムーンライズ・キングダム」を見てきました。
ウェス・アンダーソン監督の新作、主役の少年少女の脇を固める俳優の豪華さは半端じゃない。
こういうタッチどうかな?と思いながら、他の作品の上映時間の兼ね合いで見た。
色合い鮮やかで、美術などには見るものが多いけど、正直こういうのは苦手

1965年アメリカのニューイングランド沖に浮かぶ小さな島、ニューペンザンス島が舞台だ。
12歳のスージー(カーラ・ヘイワード)は本が好きな孤独な女の子、父ウォルト(ビル・マーレイ)と母ローラ(フランシス・マクドーマンド)と3人の幼い弟たちと海沿いの素敵な家で暮らしていた。
自分だけの世界に浸るので家族ともなじんでいない。
趣味は双眼鏡での観察。ある日、スージーはその双眼鏡で母とシャープ警部(ブルース・ウィリス)の密会を目撃する。

一方、ボーイスカウトキャンプ中の同じく12歳サム(ジャレッド・ギルマン)も、仲間にうまく溶け込めない。ウォード隊長(エドワード・ノートン)率いるボーイスカウトのキャンプ地から隊員のサムが置き手紙を残して姿を消してしまう。

1年前、ボーイスカウトの活動で劇を観に行ったサムと出演していたスージーが惹かれ合い文通を開始。密かに駆け落ちの計画を練っていた。
二人は作戦通りに出発して、誰にも知られていない美しい入江“ムーンライズ・キングダム”で楽しい2人だけの時間を過ごす。

翌朝、二人がいなくなったことを知った島の大人たちは大騒ぎで、二人の捜索を始めます。娘を誘惑したとウォード隊長に食って掛かるビショップ夫妻だったが、ボーイスカウトの少年たちによって二人は見つかり、離ればなれにされてしまう。
だがサムの両親は里親で「サムはもう引き受けられない」と言い、福祉局(ティルダ・スウィントン)の説明によると、問題児のサムは少年院に行く可能性が高いという。

そんなうちに天候が怪しくなり、島を前代未聞の大嵐と大洪水が襲うが。。。

ロケの島はきれいだ。
紅白のストライプの灯台に遊び心がある色合いを感じ、二人が行く入江も素敵なロケーション。ビルマーレーとマクドーマンドが住む家もしゃれている。この色調や雰囲気にノスタルジーがあり、レコードプレーヤーにオープンリールのテープレコーダーとインテリアや美術には楽しめる要素がたくさんある。
でもボーイスカウト自体が自分の性に合わないし、本質的にウェス・アンダーソン作品とは合わないかもしれない。
別の映画見ればよかった。今一つ楽しめなかった。
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映画「ローマ法王の休日」

2013-02-20 17:01:19 | 映画(欧州映画含むアフリカ除くフランス )
映画「ローマ法王の休日」は昨年公開の作品
「息子の部屋」のナンニ・モレッティ監督が描くハートフルドラマだ。

前ローマ法王が亡くなり、次の法王を投票で選ぶことになった。選出されたのは予想外の人物だった。いざ民衆にバチカンで発表しようとしたら、新法王は失踪してしまう。その顛末を描く。



最近ニュースで現在のローマ教皇が高齢で勇退したい旨の話が伝えられた。亡くなって交代でなく、勇退というのは600年ぶりだそうだ。その昔世界史で「教皇のバビロン捕囚~教会大分裂」は習った。フランスのフィリップ4世が仕掛けて、教皇ボニファティウス8世は失意のまま亡くなった話はあまりに有名だ。アヴィニヨンにもう一つの教皇がいるようになった。教皇に皇帝が謝りに行ったという「カノッサの屈辱」のように教皇の権力が絶大というわけではなかったのだ。その時代、決着をつけたコンスタンツ公会議を前にグレゴリウス12世が退位させられた。それ以来だ。まさにそんな話がある時期に昨年公開の映画を見た。

前のローマ法王が亡くなった。新しい法王を選出するために各国からヴァチカンへ枢機卿たちが招集される。システィーナ礼拝堂で投票が行われるが、枢機卿たちは心の内では重責を担う法王に選ばれたくないと一様に思っていた。下馬評で誰がということでマスコミも騒いでいた。投票の結果、メルヴィル(ミシェル・ピッコリ)が選出される。まったく予想外であった。まわりに祝福されるが心が晴れない。
すでに聖ペドロ広場には新しい法王の就任を祝いにきた人々で溢れかえっていた。バルコニーから就任の演説が控えていたが、メルヴィルは重圧から拒否する。

そして車で移動する際、目を離したすきに新法王が側近から逃げ出してしまうのだ。事務局はそのことが公にならないよう画策した。懸命に街中を捜索する。一方ローマの街に逃げ込んだメルヴィルは、ローマの人々と触れ合う中今後のことを考えるという話だ。

誰でも重責を担うときは、ぶるってしまうものだ。ローマ教皇の場合は世界中で12億人ものカトリック信者のトップである。その重圧はつらいものであろう。現教皇ベネディクトゥス16世が退位したいという気持ちもわかる。
この映画では選出されたメルヴィルはビビって逃げだした。しかし、周りはそうは言えない。
すぐ出てこれないと側近がうそを言う。しかし、それもずっとというわけにはいかない。困ったものだ。
コメディの一種、短編小説タッチでまあ普通の小品でした。

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映画「ゼロ・ダーク・サーティ」 キャスリン・ビグロー&ジェシカ・チャステイン

2013-02-20 06:34:57 | 映画(自分好みベスト100)
映画「ゼロダークサーティ」を劇場で見た。
アッパレ!という感じ、傑作だ。
自分にとって昨年から今年にかけての№1だ。

2時間30分を超える長時間が全く長く感じられなかった。緊張の場面が次から次へと続く。
オスカー作品賞候補「ライフオブパイ」や「アルゴ」と比べれば明らかにこの映画のほうが上
「アルゴ」のラストはドキドキ物だと言うけれど、この映画のクライマックスには全く及ばない。
この緊迫感は凄い。作品賞の本命ではないだろうか?(「リンカーン」見ていないけど)


2001年9月11日のテロ事件については映像はない。その日に交わされる会話だけが流れる。
2003年に時間が移る。
CIAは情報分析官マヤをパキスタンに送り込む。ビンラディンに繋がりがありそうな人物を拷問にかけて、関係者の名前を吐き出させようとする。最初は目をそむける彼女だったが、次第に慣れてくる。
サウジアラビアのテロ後、捕虜はビンラティンの関係者の名前をマヤに告げる。

そのあともマリオットホテルやタイムズスクウェアでのテロが続く。米国内のイライラは募るばかりだ。
捜査は行き詰まっていく中、大金を引換にビンラディンの情報を売るというヨルダン人が現れる。同僚のCIA分析官ジェシカが担当としてアフガニスタンの基地へ赴いた。砂漠の中一台の自動車が来る。いよいよかと期待したCIA職員に対して意外な展開が。。
自爆テロが仕掛けられていたのだ。ジェシカ含め、CIA局員7名が犠牲になってしまう。

捕虜への虐待が問題視され、CIAの拷問が批判されている場面もある。オバマが拷問をしないと選挙の政見放送で話すシーンも出てくる。内部告発で直属の上司が首になったりする場面もある。
そんな中ずいぶん前に得た情報をもとに一つの推理がされる。

そして最終に向かう。
実行部隊は喧嘩が大好きに見えるゴツイ男たちだ。主人公も会う。
男たちも本当にビンラディンか疑いを持っている。
ましてや女分析官のいうこと本当かな?と疑っている。
それでも決行された。緊迫感のあるシーンが始まる。


2001年の911の時は翌日香港に行くので、家にいた。テレビを付けたら世界貿易センタービルが火事になっているという映像だった。高層ビルでも火事になるのかな?と思っていたら二機目の飛行機がビルに突入したのだ。「何それ?!」と驚き、翌朝早いのにずっと映像にくぎ付けになっていた。
ビルが崩壊した時はあまりのショックに呆然とした。今も鮮烈に記憶に残る。

ビンラディンが住んでいた住居が捕獲後映し出されて、かなり大きい家のなのにどうしてわからなかったんだろうと思っていた。でもこの映画を見て、パキスタンというところがかなり特殊な場所だということがわかった。
白人がウロウロしているだけで目立つのである。しかも現地の人たちは露骨に外国人が歩くのを嫌がる。特にアメリカ嫌いは極端だ。
それでも現地職員が情報を見つけ出そうと、手を変え品を変えあらゆることをやる。
発見までの軌跡を見ているのも面白いし、いったん発見したあとのCIA内部の決断に向けての動き、ホワイトハウスの説得についての動きもなかなか興味深いものであった。


この主人公の存在は知らなかった。高卒でCIAに入り
2010年段階で勤めて12年と言っていたから2003年に分析官になったときは23歳くらいか?
そしてCIAでビンラディン及びアルカイダについて一番詳しい分析官になる。
恋人はもとより、友人もいない。慕ってくる後輩が食事に誘っても、外は危ないと断る。
当然アルカイダ側からマークされているので、外出しただけで銃撃を受けたりする。
こんな危険な業務なのに、情熱的に仕事に取り組んでいる。
まあ凄い人だ。
それを演じるジェシカ・チャステインもお見事だ。
ビンラディンが住んでいるという明らかな証拠がないと作戦決行に踏み切らない上司たちに絡むシーンは
迫力がある。ゴールデングローブ賞を受賞したが、オスカー主演女優賞についてもライバルの顔ぶれから見て最有力と言って良いんじゃないだろうか

キャスリン・ビグロー監督は「ハートロッカー」でオスカー監督賞を受賞した。元夫ジェームス・キャメロン「アバター」を抑えての快挙だった。
あの映画も現代的戦争映画だ。ただ、自分としてはそんなに良いとは思えなかった。
爆弾処理の重要性が理解できたが、途中退屈だった気がする。
その一方でこの映画はずっと緊張感を保っていられた。映画づくりには膨大な資料収集が必要で、本作を完成させるためものすごい取材活動をしたのが見ていてよくわかる。ましてや国家機密にかかわるCIAへの取材も難しかったろう。CIAに関する映画というと、とても人間業とは思えない仕事をするエージェントを対象にした物が多い。ここでは地味に活動する分析官を対象とした。よりリアルな感覚がある。
それでも、爆弾の爆発する場面が次から次へと出てくる。虐待場面もむごいが、とても女流監督と思えぬ演出だ。

(気になったクウェートのシーン)
ビンラディンの腹心の居場所を探るのにクウェートに行くシーンがある。
そのシーンのときクウェートの高級クラブが映し出される。
女性が接待するような店だ。そこにつく女性の美人度にビックリした。
そこで重要人物から腹心の連絡先を知るために、ランボルギーニをプレゼントしてしまう。
すごい報酬だ。
日本は裏金にうるさい。でも凄い情報を手に入れるにはこのくらいのことが必要なのであろう。

早くも今年の№1が決まってしまったような心境だ。
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映画「エージェント・マロニー」 スティーヴン・ソダーバーグ

2013-02-18 05:20:02 | 映画(洋画:2006年以降主演女性)
映画「エージェントマロリー」は昨年公開のアクション映画だ。

巨匠スティーヴン・ソダーバーグ監督が楽しみながら作ったような女性スパイが主人公だ。
主人公を演じたのは、女子総合格闘技界のスターとして知られるジーナ・カラーノ。激しい格闘シーンは、まさにリアルな迫力がある。彼女の脇を固めるのは一流どころだ。ユアン・マクレガー、マイケル・ダグラス、アントニオ・バンデラスといった名優が脇を固める豪華キャストだ。まあよくも集めたものだ。



マロリー(ジーナ・カラーノ)は世界を股にかけたフリーランスのエージェントである。
ダブリンからニューヨークに渡った彼女は訪れた田舎町のダイナーで元の仲間アーロン(チャニング・テイタム)と格闘になり、居合わせたスコットの車で逃走する。途中、マロニーが直近の出来事をスコットに伝える回想するシーンが続く。

時間軸はいったん戻る。
民間軍事企業のケネス(ユアン・マクレガー)は、米国政府の実力者コブレンツ(マイケル・ダグラス)とスペイン政府関係者のロドリゴ(アントニオ・バンデラス)から、凄腕の女性スパイ、マロリーを指名した人質救出作戦の依頼を受ける。

バルセロナに乗り込んだマロリーは、アーロンを含む3人の工作員と合流。監禁されていた東洋人ジャーナリストのヤンを無事に救出し、身柄をロドリゴに引き渡す。サンディエゴの自宅に戻ったマロリーの前に、再びケネスが現れ、英国諜報機関MI-6から請け負った新たな任務を指示。

ダブリンでは、同業者のポール(マイケル・ファスベンダー)と新婚夫婦になりすまし、スチューダー(マチュー・カソヴィッツ)というフランス人男性に接触するというもの。だが、この任務に不信を抱いたマロリーが周辺を探索すると、バルセロナで救出したヤンの死体を発見。しかも、その手には彼女が身に着けていたブローチが握られていた。

さらに、ホテルに戻った彼女を、突如ポールが後ろから襲撃してくる。何とかポールを倒したマロリーが彼の携帯を確認すると、そこにはケネスからの着信がある。ケネスはポールと話しているつもりでいるが。。。

裏切りに次ぐ裏切りはヤクザ映画の専売特許と思ったが、スパイ映画も同じようなものだ。
ここでは銃でドンパチやるのではなく、肉体での格闘を映し出す。あえて起用したジーナ・カラーノの格闘技の腕前を披露するのが趣旨だからだ。確かに他の女性が演じるアクションと違い、プロレスのような投げで彼女を投げ飛ばしたり、本気で彼女をテレビにぶつけたり、不意打ちのように後ろから殴られたり、彼女もずいぶんときつい仕事を受けたものだ。ここまでできる女性もそうはいまい。
でもケンカのような本格格闘技で活躍した彼女にはワケないのかもしれない。最強のアクション俳優だ。
正直彼女の存在は知らなかったが、かなり活躍していたみたいだ。

あまり余分な説明が入らないので、ユアンマクレガーにしろ、マイケルダグラスにしろいったい何者かということがわかりにくい。他についてもそうだ。あえてそうしているのかもしれないけど理解度の弱い自分には苦手な部類だ。格闘以外はちょっとどうかな?普通という感じだ。
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「火車」 宮部みゆき原作韓国映画

2013-02-17 08:23:35 | 映画(韓国映画)
映画「火車」は宮部みゆきのベストセラーを韓国で映画化した作品だ。

カード破産がテーマになっている原著を読了した時の不思議な感触は忘れない。行方不明の女性はいったんどうなったのか?先がどうなるのかミステリーの醍醐味を味わった。

それが何と韓国で映画化である。ビックリした。ヒットしたらしい。
しかも、宮部みゆき はこの韓国の作品を絶賛している。映画「模倣犯」のときは酷評した彼女がだ。
。。であるならばDVD化早々に見るしかない。


獣医のムンホ(イ・ソンギュン)とソニョン(キム・ミニ)は結婚を1ヵ月後に控え、ムンホの実家に向う途中で高速道路のサービスエリアに立ち寄った。ムンホがコーヒーを買いに行っているあいだに、ソニョンは一通の電話を受けて急に出て行き、帰ってきたムンホを待っていたのはドアが開きエンジンがかかったままの車だけだった。何回かけても切れている携帯電話、雨の降る中でフィアンセが消え主人公は呆然とする。

実はソニョンには両親も友人もいない。帰った彼女の家は急いで片付けた跡があった。携帯電話で話していたのはムンホの友人で、ソニョンは個人破産者でカードの新規申し込みができなかったということがわかる。ムンホは手がかりを掴むために彼女が勤めている会社へ赴き、履歴書を見せてもらう。しかし、履歴書に書かれていた経歴はすべてでたらめだった。そして、破産宣告に関わった弁護士のところへ向かったら免責書類に残っている彼女の筆跡と写真は、他人のものだという事実が明らかになる。

彼女を探すためムンホは、元刑事である従兄弟チョングン(チョ・ソンハ)に助けを乞う。面倒な話と思いながら調べはじめたチョングンは、出ていった自宅から指紋が亡くなっていることに気づく。そこで元刑事として秘密を暴きたい衝動に駆られるチョングンは、ソニョンの消された足跡を追って行くのだが。。。


その後、元刑事は現役の刑事である友人の名刺を借りて、警察が調べているというふりをしながら彼女に関わる所をしらみつぶしに調べていく。ムンホもソニョンの実家があった所などを調べていくのだ。そうしていくうちに少しづついろんなことがわかってくる。別人を装うというのがどうしてそうなったのかがわかって行く。
そんな謎解きは見ていて、面白い。
いかにも韓国映画らしく、ケンカ腰に相手に接するやり方は日本との大きな違いを感じる。
主人公ムンホのパフォーマンスがいかにも韓国人ぽい色彩が強かった。同時にニセ刑事が取り調べをする姿も日本ではありえないんじゃないかな?

この映画がそれなりに韓国で受けたという事実は、カード破綻が向こうでも社会問題の一つになっているからであろう。他人を装うというのは凄い話だ。でもこういうことって韓国の方が日本よりもありうる気がする。それは南北の対立の中、スパイ的な存在がいるような気がする。
以前「哀しき獣」を見た。この映画では中国東北部に住む朝鮮族が黄海を密航してソウルに忍び込む話であった。こんな話が現実にあるとすると、黒社会を通じて、他人を装う話がある気もする。

さまざまな調査が収束してラストに向かう。
ただ、韓国映画らしからぬのはラスト直前で予測ができやすくなってしまうこと。
これだけは少し残念

(参考作品)

火車
宮部みゆき原作を巧みにアレンジ
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映画「コロンビアーナ」 ゾーイ・サルダナ

2013-02-14 21:32:52 | 映画(洋画:2006年以降主演女性)
映画「コロンビアーナ」は2012年公開のアクション映画だ。

家族を殺され復讐に燃える女殺し屋の姿を描いている。同じリュックベッソン作品である「ニキータ」に若干色彩が似ている。「アバター」で存在感を示したゾーイ・サルダナが、スレンダーな身体を生かして冷徹な女殺し屋を見事に演じている。

リュックベッソン製作というと、映画時間を簡潔にまとめるのが巧妙だ。アクションが多彩で品数が多く素晴らしい。大好きな映画人だ。ここでは「トランスポーター3」「96時間リベンジ」とリュックベッソンのプロデュース作品に連続参加のオリヴィエ・メガトンがメガホンをとる。

南米コロンビアが舞台だ。
マフィア同士の会話シーンからスタート。親分は別れたばかりの男を始末せよという。9歳の少女カトレア(アマンドラ・スティンバーグ)の父親はマフィアの親分ドンルイスからにらまれたのだ。万一のことがあったら、シカゴの叔父を訪ねろというと父親に言われメモをもらう。自宅に侵入したマフィアの舎弟たちは両親を惨殺する。カトレアがたった一人で椅子にたたずむところに舎弟頭がくる。「パパが隠しているこれぐらいの小さなもの知らない?」危機一髪のところでナイフを手に舎弟頭に叩きつけ逃げる。たったひとりでコロンビアの町を家から家へとマフィアの一味から逃走する。
父から教えられたとおりに叔父エミリオを頼って米国シカゴへ向かう。叔父も同じようなマフィアの生活をしていた。殺し屋になりたいとのたまう彼女は叔父の元で殺人機械のように育てられていく。



15年後に映像が移る。カトレアの腕前を見せるシーンだ。
美しく成長したカトレア(ゾーイ・サルダナ)は酔っぱらいのふりをして、警察にわざと検挙されて留置所に入る。夜になりみんなが寝静まるころ、おもむろに起きて空調のダクトを通じて忍者のように天井裏を這いまわり、狙い定めた留置所にいる男を抹殺する。そして何もなかったように自室に戻るシーンを映す。



カトレアは腕利きの殺し屋として叔父が手配した仕事を次々とこなしていた。同じような殺人が次から次へとおきるが、殺されるのはみんな凶悪犯たちであった。FBIの捜査官も注目する。CIAも情報を追っているが同業FBIには公開しない。その隙をぬってカトレアはマフィアの親分を狙い撃ちする。犯人の痕跡を見つけるきっかけを少しづつFBIが探し出そうとするのであるが。。。。

(家から家へと駆け抜ける少女)
冒頭で印象づけるのがアクション映画を盛り上げる基本定石。まずはいきなり主人公の子供時代の逃亡シーンを観客に鮮烈に見せつける。スピーディで見惚れる。まさにアルジェリアのカスバを思わせる重なり合う家の屋根や他人の家の中を駆け抜け、飛び降りて追うマフィアを振り切る。スリリングなスタートにビックリ。子供が演じるだけにヒヤヒヤもの。アマンドラ・スティンバーグという少女は大したものだ。これぞリュックベッソンの真髄だ。

留置場内での殺人劇やマフィアの豪邸に忍び込んでの殺人劇などなかなか面白い。
自ら手を下すのではなく、サメや猛犬に標的を食べさせたりするところがいい発想
そもそもスーパーレディなんだから多少オーバーになるのは仕方ないのでは。。
しなやかな主人公の動きに魅せられてしまう。それを見る映画なんだから

そして終盤でもみせる。
カトリアとマフィアの舎弟頭との対決シーンは殺しのプロ同士の決闘という感じで悪くない。
いくつかのパターンに別れたアクションシーンが続きいつもながらリュックベッソン作品として楽しまさせてもらいました。

なかなかいいです。

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映画「アウトロー」 トムクルーズ

2013-02-13 20:48:19 | 映画(洋画 2013年以降主演男性)
映画「アウトロー」を劇場で見てきました。

今までのトムクルーズのアクション物と若干違い、サスペンスタッチの色彩が強い映画だ。
昨年の「ミッションインポッシブル」にはトムクルーズのパフォーマンスにアッと驚いた。それを期待していると、少し違うかもしれない。頭脳明晰な鍛え抜かれた元軍人という設定だ。
この映画見ようか、dvdスルーか少し迷っていた。つい先日「フェノミナン」見たばかりで、ロバートデュヴァルが80すぎた高齢にもかかわらず出演ということで引き寄せられるように映画館に寄ってしまった。
賛否両論でむしろ評価は今一の印象だけど、自分は悪くないと思うんだけどなあ



歴史あるピッツバーグの街が映し出される。ビルには一人のスナイパーがいる。
川の反対側でたたずむ人たちに狙いを定めている。
無作為に6発の銃弾が発射され、5人が殺害される事件がおこる。警察の捜査が進み容疑者として元軍人のスナイパー、ジェームズ・バー(ジョセフ・シコラ)が逮捕された。警部がここにサインしないと死刑になるぞと容疑者を脅しながら書面にサインを求める。だがバーは殺人容疑を否認し、書面に書いたのは「ジャック・リーチャー(トム・クルーズ)を呼べ」という連絡の要求であった。

検事(リチャードジェンキンス)と警部がリーチャーを調べる。現状住所不定、運転免許、携帯電話、クレジットカードその他の記録もない。逮捕歴も皆無だ。元米軍の秘密捜査官でイラク戦でも活躍したが、今は街から街へと放浪を続ける一匹狼なのだ。ところがバーは刑務所への護送中、他の囚人たちに襲われ意識不明の状態となってしまう。彼を探すにはどうしたらよいかと2人が思案しているところに突然警察にジャック・リーチャーが現れる。何かがおかしいと感じたリーチャーは、この事件の裏にある隠された真相を暴こうとする。バーの弁護人(ロザムンド・パイク)も一緒に行動を始める。リーチャーは弁護人に被害者の素性をまず調査するように依頼するが。。。

このあとリーチャーを罠にはめようとする動きが頻繁にでてくる。バーに飲みに行けば、あばずれ女にからまれる。その取り巻きの街のチンピラと格闘して留置所にぶち込まれたり、罠にはめた女のところに行って、依頼主を聞き出していくとハマったように襲撃を受けたりさまざまな障害が立ちふさがる。


(主人公と女弁護士で謎解き)
主人公は頭脳明晰だ。女弁護士にも真相をつかむためのヒントを与える。トムは先を読む。何をどう調べればいいのかを弁護士に教える。的を得た指示だ。この映画における主人公はある意味私設探偵のようなものだ。特殊な訓練を受けた元軍人らしく不死身の強さを発揮するが、完ぺきではない。後ろから暴漢に殴られたり、カーチェイスでも完ぺきな動きではない。そこは狙ったところなんだろう。探偵と考えればいいのだ。人間離れしすぎると現実から乖離してしまうかもしれない。ミステリーの基本は、主人公を窮地に追い込むこと、途中でいくつもの謎をつくることだが、その定石には外れていない気がした。トムクルーズと組む女弁護士ロザムンド・パイクはなかなか素敵な女性だ。



(ダレる中盤にカーチェイス)
映画は中盤がだれる。そこで激しいカーチェイスが始まる。古めの車を懸命に走らせる。追うのは警察だ。主人公を絶体絶命に追い込む部分である。お尻を振りながら、走りきる姿は他の凄いアクション映画に比べたら見劣りするかもしれないけど悪くない。カーチェイスの終え方がなんか笑える。



そして最後に向けてロバートデュヴァルの登場だ。
ニコールキッドマンとの縁結び映画「デイズオブサンダー」でもロバートデュヴァルと組んだ。コーチ役というのは彼のはまり役である。ロバートレッドフォードの野球映画「ナチュラル」でもいい味を出していた。年をとったなあと感じるが、犯人探しのポイントになるこの役いい感じだ。最初は敵になるか味方になるかわからないような存在だったのでどうなると思ったけど。。。

主人公は自分の名前を名乗る時、歴代のヤンキースの二塁手の名前を出していた。それが御愛嬌、いろんな名前を出していたが、劇中見抜いたのはロバートデュバルだけだった。
名探偵に見立てたようなトムのミステリー仕立てはなかなかいい感じだ。
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映画「フライド・グリーン・トマト」 キャシーベイツ&ジェシカタンディ

2013-02-13 14:38:40 | 映画(洋画 99年以前)
映画「フライド・グリーン・トマト」は1992年の作品

89年にジェシカ・タンディが「ドライビング・ミス・デイジー」で、90年にキャシー・ベイツ「ミザリー」でオスカー主演女優賞をそれぞれ受賞している。その直後の共演作品だ。いい映画だと聞いていたが、長い間見れていなかった。当時のキネマ旬報ベスト10にも入っている。大先輩の双葉十三郎氏がその年のベスト1に選出していた作品。DVD化されていなかったが、ツタヤの復刻版に入ってきた。

エヴリン(キャシー・ベイツ)は夫のエド(ゲイラード・サーティン)と2人暮らしだ。中年夫婦の仲は倦怠期にはいって、エヴリンは夫婦仲を取り戻そうと自己啓発セミナーに通ったりしていたが効果がない。チョコレートの食べすぎで太り気味だ。
ある日エヴリンは夫と叔母さんの様子を見に老人ホームをおとづれる。ボケ気味の叔母の面倒を夫が見る間に、ホームの住人ニニー・スレッドグッド(ジェシカ・タンディ)に話しかけられる。そこで彼女の昔話が始まるが非常に面白い。それをきっかけにエヴリンはニニーの話を聞きに頻繁にホームを訪れるようになる。

その物語は今から50年も前のアラバマ州。
第一次世界大戦が終わるくらいの頃だ。イジー・スレッドグッド(メアリー・スチュアート・マスターソン)は、やんちゃ大好きなボーイッシュな少女だ。兄が結婚するのにも、教会で神父に悪ふざけたりする。家族の言うことも聞かない。そんな彼女はすぐ上の兄バディを慕っていた。ハンサムなバディは妹のことをかわいがっていた。
兄には恋人がいた。ところが3人で遊んでいるときに、線路に飛んでいった帽子を兄がピックアップしようとしたとき前から蒸気機関車が走ってくる。兄はその時線路のレールに足を挟まれてしまった。機関車に惹かれてしまう。イジーは兄の事故死によって大きな衝撃を受けた。。そのイジーに近づき心を開いてくれたのはバディの恋人だったルース(メアリー・ルイーズ・パーカー)だった。2人は親友になった。
時がすぎルースは結婚する。いったん、2人の付き合いは中断した。

3年たった時イジーはルースの家を訪れた。顔にあざがあるではないか。事情を聞き、ようやく教えてくれたが夫の暴力のようだった。イジーは家人を連れてきて、身重のルースをむりやり連れ帰る。
2人は大衆食堂ホイッスル・ストップ・カフェを開店した。イジーとルースの人柄で、店は繁盛する。
そこへフランクが「子供に会わせろ」と押しかけてくる。だが村祭りの夜、フランクは車ごと姿を消し、イジーと黒人の使用人が殺人犯として裁判にかけられるが。。。

キャシーベイツ含めて4人がジャケットに映っている。全く違う時代の話が平行して語られるとは思っていなかった。アメリカの南部を映しだす映像は美しく、ユーモアを含んでいながら、適度な緊張感もあり緩急自在によくできている映画だと思う。90年代のアメリカ映画らしい独特の余韻を持つ映画だ。テイストは自分に合う。

アラバマというと、グレゴリーペックがオスカー主演男優賞を受賞した「アラバマ物語」だ。人種差別によるある黒人の冤罪が語られている。この映画も黒人の使用人が重要な役割を果たす。だからといって、人種差別に主眼が置かれているわけではない。
いくつかのシーンを通じて当時の南部の実情を少しづつ入り混ぜる。

映画の中盤で一つの謎が投げかけられる。軽いミステリーの色彩をつくる。
子供に会わせろとルースの元夫がくるのだが、彼が姿を消す。そこで主人公と黒人使用人が犯人扱いにされるのだ。ある意味「アラバマ物語」と似ている部分である。セリフを聞いていると、黒人に対する扱いのひどさに驚いてしまう。

3つほど印象に残るシーンがあった。
イジーがハチの巣から蜜の固まりを取り出すシーン。今だったら画像の加工でつくってしまうかもしれない。ハチがブンブンとイジーのまわりに飛んでくる。怖い!でも全然怖がらずに演じる。これは凄い。

イジーとルースが開店したばかりのお店でケンカをするシーン。最初水のかけあいだったのが、次から次へと食べ物をぶっつけあう。まわりもあきれ顔、何か楽しい。ケンカするほど仲がいいというわけか。
キャシーベイツがスーパーで駐車しようとする際に、車庫入れしようとしたら若い女性2人が運転する車がさっと入ってしまう。笑って立ち去る女2人。むかつくキャシー、なんと自分の車を彼女たちの車に次から次へとぶつける。あわてる2人、キャシーは「保険が支払うからいいでしょ」なんかおかしい。
こんなシーンがストーリーのところどころにちりばめられている。そういうユーモアとシリアスな部分の噛みあいが絶妙だ。

(参考作品)
フライド・グリーン・トマト
女の友情



ドライビングMissデイジー
ジェシカダンディのオスカー作品、運転手との友情


ミザリー
キャリーベイツのオスカー作品:恐怖のストーカー
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映画「縞模様のパジャマの少年」

2013-02-11 20:44:41 | 映画(洋画 2006年以降主演男性)
映画「縞模様のパジャマの少年」は第二次大戦中のドイツ軍将校の8歳の息子と同じ年のユダヤ人の少年との友情を描いたドラマだ。

ユダヤ人強制収容所を監督する将校の息子が、有刺鉄線の先にいる収容所内の少年と仲良くなるという設定だ。こんなことありえるのかな?と思いながら、映像を追った。縞模様のパジャマとは、収容所内でユダヤ人たちが着る囚人服のことだ。
無邪気な少年2人は好演だけど、ドイツ軍将校が英語をしゃべるというのはちょっと違和感がある。
そののち「ヒューゴの不思議な発明」で主演を務めるエイサ・バターフィールドの出世作だ。

第二次大戦下のドイツ。
ナチス将校である主人公の父が昇進すると同時に、家族4人はベルリンを離れ郊外へむかった。引越した先は人里離れた大きな屋敷である。その屋敷には軍の関係者が大勢出入りをしており、多くのメイドがいる中にはユダヤ人の使用人もいた。

8歳のブルーノは、縞模様のパジャマを着ている人たちが窓から遠くに見える農場で働いているのに気づいた。昼間に何でパジャマを着るのか不思議に思っていた。裏庭へ出るのを禁じられ、遊び相手もなく退屈していた。学校もないので家庭教師のおじさんがきて姉とともに教えてくれた。そこではドイツ民族の優位性とユダヤ差別も語られていた。
探検好きの少年は裏庭を探索していくと“農場”にたどり着いた。そこは向こう側と有刺鉄線で遮られていた。鉄線の向こうにはパジャマ姿の同い年の少年シュム-ルがいた。話を聞くと自分と同じ8歳だ。引越してから友人のいない主人公はうれしくなった。しかし、彼はお腹がすいているようだ。パンをこっそり家から持ってきて、彼に食べさせた。おいしそうに食べるシュムールを見て何度も寄るようになる。

ある日、主人公がダイニングに行くとシュムールがいるではないか。どうしたのかと聞くと、軍の人間からグラスを磨くように指示されきたのであった。いつものようにお腹をすかしているシュムールに主人公が食べ物を与えていたら、軍人が突然入ってきた。

ユダヤ人の分際でこの家の食べ物に手を出すとは何事かと烈火のごとく怒られた。その時軍人から「何でか」と聞かれ、シュムールは黙っていた。軍人にこの子を知っているかと聞かれ、横にいた主人公は怖くなって「この子のことは知らない」と思わず言ってしまった。少年は連れだされた。

その後主人公は有刺鉄線の前に何度もいったけど、彼は来なかった。どうしたのかと心配していた。しばらくたった後、シュム-ルがいた。シュム-ルの顔はひどく痛めつけられた跡があったが。。。

(加害者の立場から描いた作品)
ホロコーストのことを描いている映画はいくつかある。それぞれが収容所内で被害者が残虐行為を受けることだけが語られるのに対して、最後に近づくまで収容所の外で動いている話だ。被害者でなく加害者の視点から見た映画と言ってもいい。主人公の父母は絵にかいたような模範的なドイツ人夫婦である。母親も収容所で何が行われているのかを具体的には知らない。夫も良いパパを演じている。それが収容所の中ではむごいことをする。恐ろしい話だ。

(ホロコーストの「責任の分散」)
経営学の本で読んだ話だけど、ナチスのホロコーストに関しては、誰かが責任者だったらとてもうまくいかなかった。いわゆる「責任の分散」が最もうまくいった例として取り上げられていたのだ。何百万人というユダヤ人を殺したあの仕組みは、誰かが責任者だったというわけでなく「名簿をつくるだけ」「部屋に連れて行っただけ」「ボタンを押しただけ」のように担当を分散し、誰もが「自分の責任じゃない」状態をつくりだしたから、あれほどの大虐殺ができたと言われている。
あまりに凄い話で驚いたものだ。

この映画は当然フィクションなんだけど、この主人公の父親は実際どうなんだろうか?



(映画に対する疑問)
主人公は8歳である。少しだけ疑問なのは、子供は無邪気と言っても、ここまでまわりで起こることに対して無知かな?ということ。それと、ユダヤ人の子供も一度裏切られた少年ともう一度会おうとするのかな?ということ。有刺鉄線の境のところに監視の人がいないのかな?こんなに容易に話ができるはずはないと思うんだけどなあ。この映画ちょっと不自然に思うことは多かった。

そんなこと思っていて、アレどうなっちゃうんだろうなあ?と思いつつ進んでいく方向は。。。。
少しだけビックリだ。

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映画「フェノミナン」 ジョン・トラボルタ

2013-02-11 20:44:22 | 映画(洋画 99年以前)
映画「フェノミナン」はジョントラボルタ主演の1996年の作品だ。
一度見たことがあった。
頭が急によくなり超能力者のようになるトラボルタの話と覚えていた。ファンタジー映画のような要素をもつが基本はラブストーリー、近い路線でいえば「グリーンマイル」のような余韻を残す素敵な映画だ。カイラ・セジウィック崖っぷちの男で出ているのを見てふと思い出して見てみた。

カリフォルニア州の美しい田舎町
自動車整備の仕事をするジョージ(ジョン・トラボルタ)は、気さくな人気者だ。独身の彼の意中の女性は、家具アーティストのレイス(カイラ・セジウィック)だ。子持ちの彼女は相手にしてくれない。
行きつけのバーで37歳の誕生パーティが開かれた夜。不思議な光を見たジョージは、急に頭が冴え出す。突如天才に生まれ変わるのだ。毎日何冊もの本を読み、すべて理解する。
そして次々に画期的なアイディアを披露する。

ある日地震を見事予知したという情報が伝わり、翌日地震学の権威リンゴールド博士が彼を訪ねてきた。ちょうどその時医師ドク(ロバート・デュヴァル)から呼び出しがある。急病人がポルトガル語しか話せないので、通訳をしてほしいと。主人公はポルトガル語ができるわけでない。移動の車中、教則本を見てわずか20分でポルトガル語をマスターしたジョージは、食中毒で苦しむポルトガル人の老人と会話をして病状をきく。横にいた地震の博士は主人公の能力に唖然とする。老人から同じ症状で苦しむ行方不明の孫を捜してほしいと頼まれる。まわりが懸命に探すなかでジョージは念力で居所を突き止め、少年は無事に保護された。

少年の母ミカエラがメイドの仕事を探していると聞いたジョージは、独身の親友ネイト(フォレスト・ウィテカー)に彼女を紹介すると、2人はたちまち恋に落ちた。
ジョージの不思議な能力を知った町の人々は彼を恐れ始める。アマチュア無線好きの親友ネイトが聴いているのを見て軍の暗号を解読したのが元でFBIに拘束されてしまう。監視を付けられたジョージは、孤独と不安から家に閉じこもる。そんな時、レイスが彼を訪ね、伸び放題の髪を切り、髭を剃ってくれた。彼女の愛で勇気を取り戻した。そして間もなく、再びあの光を見て倒れたが。。。

ジョントラボルタは矢沢永吉と並んで、自分にとって永遠のヒーローだ。
78年のサタデイナイトフィーバーは何より衝撃だった。そこでの彼はニューヨークでもブルックリンに住むペンキ職人だ。週末になるとさっそうとディスコのフロアに登場するけれど、いつもは同じブルックリンの仲間と遊び呆けるだけ。その彼がマンハッタンで働く女性に憧れ、彼女にパートナーになるように申し出して、ダンス大会に出る話だった。

この映画「フェノミナン」でのプロフィルも基本は一緒である。アッパー層というより労働者や田舎の男を演じる方が、トラボルタの味が出てくると思う。ここでは最初にトラボルタの起用が決まって、逆にカリフォルニア州の美しい田舎町がロケ地に選ばれたのではないだろうか。良い街で、人もよさそうだ。
その街がトラボルタに人知を超えた能力が備わり一変してしまう。
このところ天才が出てくる映画をずいぶんと見ている。
「脳男」もある意味そうだ。
でもここでのトラボルタはやさしい。天才になっても鋭角的な態度を示さない。好感が持てる。
それなので、最終に向かってせつない思いを感じた。

そういう映画の雰囲気を支えていたのが、トーマス・ニューマンによるバックミュージックだ。代表作として「ショーシャンクの空」「グリーンマイル」というと想像がつくだろう。やさしいピアノが静かに弾かれる中で、ソフトで胸にジーンとする音楽が鳴り響く。その途中街の様子を描くとき、アメリカンポップスが流れる。初期のシュープリームスが数曲ながれ、「ベイビーラブ」と歌うダイアナロスの声が実に映像にピッタリする。そして最後にエリッククラプトンの「チェンジ・ザ・ワールド」が流れる。あまりに有名な曲だが、この映画のテーマソングと知っている人は少ない。もっと早く出てきても。。とも思うけど、あの情景で流れるのがより美しいのであろう。


あとはオスカー俳優の2人がいい。ロバート・デュヴァル「アウトロー」にも出ていて今だ現役だけど、80~90年代の活躍が一番いい感じに思える。「デイズオブサンダー」「ナチュラル」での彼が好きだ。町の人がトラボルタの変身に畏怖の念を抱くときに、ロバート・デュヴァルが強い口調でかばう。これは胸にしみるいいシーンだ。



一方フォレスト・ウィテカーはそののちオスカーを受賞した「ラストキングオブスコットランド」でウガンダの暴君を演じた時と違い、表情がやさしい。無邪気だ。アマチュア無線好きの独身男性が恵まれない子持ち女性をすきになる場面がハートにしっくりくる。このカップル誕生は応援してあげたくなる心境になった。


そういった名優の演技と流れるムードのやさしさに心がやすらぐ

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映画「脳男」 二階堂ふみ&生田斗真

2013-02-10 06:36:15 | 映画(日本 2013年以降主演男性)
映画「脳男」早速劇場で見てきました。

ヒミズ」で衝撃的な印象を残した二階堂ふみの存在感が高いという噂を聞いていってきました。確かに彼女のパフォーマンスに他の出演者はみんな圧倒されている感じだ。クールな脳男生田斗真も悪くはないけど、二階堂ふみ に脱帽です。



いきなり映像で一人の女性が舌を切られる残忍な場面がでてくる。
その女性はそのままバスに乗り込もうとする。そして精神科医の鷲谷真梨子(松雪泰子)が映し出される。彼女は帰宅中、そのバスに乗ろうとしていたが乗りそこなう。走り出したバスが突如爆発する。
都内近郊で無差別連続爆破事件が頻発していた。そこで亡くなったのは一連の事件を報道するレポーターなどで、舌を切られたのは次の爆破事件を占っていた「祈祷師」だ。このバスも彼女に装備された「人間爆弾」が爆発したのだ。

刑事・茶屋(江口洋介)は遺留品からタングステンの爆弾破片を見つける。販売先を割り出し、犯人のアジトを見つけ出す。古ぼけた工場だ。相棒と踏み込むと同時にアジトは爆発し犯人は逃走。代わりに傷を負って現場にいた男(生田斗真)を逮捕する。

男は「鈴木一郎」と名乗るが、肝心な事は何も話さない。一切身元不明だ。一郎の精神鑑定を担当した真梨子は、「彼には生まれつき感情がないのではないか」と感じた。

彼女は一郎の過去を調べ始めると、その昔無感情な子供に関する考察を書いた精神科医の論文をみつける。その医師(石橋蓮司)に会いに行った。医師によれば、一郎の本名は入陶大威(=いりすたけきみ)。幼い頃に轢き逃げ事故で両親を亡くした彼は、大富豪の祖父・入陶倫行(夏八木勲)に引き取られる。入陶大威はとてつもない頭脳をもっていた。膨大なピースがある難解なパズルもあっという間に完成させるし、一度読んだものはすぐに頭に入り理解するのだ。


祖父は英才教育をした。同時に祖父は息子夫婦を失った怒りから、頭脳明晰の孫に殺人を教える。孫は犯罪者を抹殺する殺人ロボットに鍛え上げられたのだ。そんな彼は「脳男」と呼ばれるようになった。茶屋は犯人を殺そうとしたのではと思いだす。
そんな中、一郎を移送していた護送車が、緑川紀子(二階堂ふみ)と水沢ゆりあ(太田莉菜)の2人組に襲われるが。。。


爆弾が次から次へと爆破される場面が出てくる。今の日本映画では多いほうだ。リアルな場面も多いが、一部はCGでないとできない場面もあるだろう。正義が勝つといった正統派の展開ではない。普通であれば何の被害もないと思われる人物も死んでいく。なかなかグロテスクである。その異常性を増長するのが生田斗真演じる主人公一郎と二階堂ふみ演じる緑川紀子だ。

生田斗真が演じた「人間失格」はよくできていると思っていた。今回はあの時以上に役に没頭する。不死身な殺人兵器のような役だ。しかもクールで感情がない。漫画「ゴルゴ31」の初期の作品に「芹沢家殺人事件」というのがある。ゴルゴ31のルーツをたどるものだ。あのストーリーを連想した。あの子供も親族を殺して無表情だった。ベラベラしゃべらないだけに、表情が重要となる。実にうまかった。

それ以上に凄いのが二階堂ふみ 。「ヒミズ」のときに主人公に憧れる少女を演じた。あのパフォーマンスにも驚いたが、今回は仰天した。眉毛をそって登場だ。生田と対照的な殺人鬼だ。彼女も頭脳明晰の設定で爆弾をシコシコつくり、警察無線を傍受して相手側の行動を事前に読む。
最後に向けてのクライマックスでは完全にその他の俳優を圧倒していた。松雪泰子が鏡の前にいる時に突如現れ「そんなに鏡見なくても十分きれいよ」なんて言いながら拉致する場面が印象的だ。
彼女はまだ18歳、出演オーダーは続くであろうし、末長い活躍が期待される。

今回は松雪と江口はセリフが多いけど普通、でもサブにまわったから仕方ないだろう。二階堂と組んだ太田莉菜は殺人鬼らしい狂気の表情を出していた。「ヒミズ」の染谷将大がでていた。あの時ほど重要な役ではないが、最後に向けて思わぬ絡み方をしていた。

エンディングロールにキングキリムゾンのデビューアルバム「クリムゾンキングの宮殿」からスタートの曲が流れていた。学生のころレコードがすり減るくらい聴いていたアルバムだ。テーマ曲や「エピタフ」などメロディアスな曲の方が好きだった。「21世紀のスキッツォイド・マン」はむしろ気色悪いと思っていた。でもこの映画のこのムードには恐ろしいくらいぴったりした曲だ。


主役2人のパフォーマンスにひたすら圧倒された映画でした。
これは見てよかった。

(参考作品)
脳男
眉毛をそった二階堂ふみの狂気の演技


ヒミズ
二階堂ふみの女子高校生が強烈


クリムゾン・キングの宮殿
ビートルズのアビーロードを圧倒した世紀の名作
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映画「奪命金」 ジョニー・トー

2013-02-09 21:12:04 | 映画(アジア)
映画「奪命金」楽しみにしていた作品早速劇場で見てきました。
ジョニー・トー(杜 峰)監督の映画は大好きだ。前作「冷たい雨に撃て約束の銃弾を」も「スリ」も「エグザイル(絆)」もよかった。この映画若干テイストが違うけど、リアル感に魅せられる。中国暴動にビビって香港行っていないけど、また行きたくなる。

金融株式に関わる映画って今まで「ウォール街」などずいぶんあった。
でもここまで一般顧客、金融機関との関係をリアルに描いた映画ってなかったんじゃなかろうか?
完全に日本の金融機関の顧客勧誘の実情とダブる。
金融関係者、特にカウンターで投資信託を売っているBKレディには必見だろう。
もの凄く面白かった。

香港九龍が舞台だ。3つの話が同時並行でスタートする。話をABCとしよう。
A:アパートで殺人事件がおき呼び出される香港警察のチョン警部補(リッチー・レン)が映し出される。彼は妻から新しいマンションの購入しようとしつこくいわれている。仕事を口実に話をそらしていた。

B:銀行の投資信託の販売担当のテレサ(デニス・ホー)は、チーム内で手数料収入が伸びない。成績下位で顧客に電話打ちをするもうまくいかない。ノルマ達成のために、銀行に来た中年女性のチェン(ソン・ハンシェン)が預金で100万HK$持っているのを見てリスクの高いBRICS対象の投資信託商品を売り込む。そしてテレサの元へは客の高利貸しのチャンも来ている。財産を相当持っているが手数料も高いので投資信託は買ってくれない。警官チョンの奥さんもお金を借りにやってくる。



C:気がいいヤクザのパンサー(ラウ・チンワン)は黒社会のまとめ役だ。組長のパーティー中に兄貴分が逮捕される。そのため保釈金を作ろうと、知っている先にたかりに行き金を集め保釈になる。ところが、別のエリアの警察が別の容疑で兄貴をつかまえる。パンサーは同郷の投資会社の社長ドラゴンに相談する。羽振りのいい社長は警察に電話してすぐに兄貴は保釈となる。


そんな中、世界はギリシャ債務危機で相場は大混乱、香港の株式指数であるハンセン指数も大幅下落となり投資家たちは大騒ぎとなった。

B2:投資信託販売のテレサの元にはクレームが殺到、そんな彼女に高利貸しのチャンが1000万HK$を下ろしにくる。チャンは貸主と電話で何度もやり取りをしていた。相手の不動産担保が足りないために半分の500万HK$は置いておいて後でとりに来ると言い帰ってしまう。彼女はデスクに残された500万HK$をとっさにキャビネットに隠してしまう。携帯を忘れたチャンを追っかけたテレサは、駐車場の車の中で血まみれになっているチャンの姿を発見する。残りの500万HK$が自分の手元にあることは誰も知らない。思わずドッキリするテレサだ。。。


C2:パンサーは同郷の社長からお前も投資を勉強しろと言われる。上昇下落の順番の流れはバカラ賭博の出目表に似ているなあと思いながら勉強していたところ、社長が飛び込んでくる。ギリシャ危機で相場急落となりヤバイというのだ。ハンセン指数は10%にのぼる急落だ。焦る社長は高利貸しのチャンに追い証のための融資を申し込む。(金利30%だ)しかし不動産担保が足りない。このままだとまずいとパンサーに高利貸しを襲うように指示するが。。。。

A2:チョン警部補には異母妹がいた。父親は危篤だ。大陸の母親の元へ返そうとする夫を見て、いくらなんでもそれはかわいそうだと義妹と同居すると妻がいいだす。そして夫に内緒でマンションの仮契約をしてしまう。そのための融資(金利7%)をテレサに申し込んでいたが、株式担保のため相場下落で思うような金が借りられない。そんな時テレビニュースでチョン警部補がエレベーターに犯人と閉じ込められていることを知る。


この後も第3の展開が続く。そして大きく分けて3つの話が急接近する。
ぞくぞくしてくる。
このあたりは実にうまいと思う。

一番リアルなのはテレサが投資信託をすすめるあたりである。
表面だけの話でなく、購入者の反論をどう商談でさばいていくのかを丹念に描いていく。ドキュメンタリーみたいだ。ここまでの話はめずらしい。見ていて日本の若い銀行員や証券レディは苦笑いするのではないだろうか。

テレサは高利貸しに投資信託を勧める。投資信託は加入時に2%手数料をとられる。これは日本も同じだ。高利貸しはこんなに手数料を取られたら、ネット証券での自己売買と比較して大損だという。もっともだ。さすがのテレサもそれ以上は言わない。おそらくは日本で投資信託をやっているようなおばさんたちはこの映画見ないだろうから気がつかないであろう。いかに手数料で銀行を儲けさせているかを。。。
最近は銀行の部長と話しても、同一支店にいる期間が短いので短期勝負の投信手数料にかけているのがよくわかる。今は相場がいいからいいけれど、購入したおばさんたちはたぶん売り時に失敗するだろうからまあ銀行だけが儲けで終了の可能性は高い。

香港の街中が出てくるのは映画「スリ」と同じだ。でもあの映画ほどスタイリッシュではない。わりと泥臭い。そこがいい。ヤクザがみかじめ料をとりに行く場面、相場をカジノと同じように出目で勝負するヤクザ、投信営業の厳しさなど万国共通の話題が盛りだくさんだ。殺し合いばかりになりすぎる香港マフィア映画のような残酷さもない。実態がよくわかるだけに非常に好感が持てる。

いずれにせよ重層構造を一つにまとめ上げるという脚本のうまさに脱帽だ!
実によくできている。あと日本の金利の安さを実感するであろう。
コメント (4)
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