映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「クリーデンスクリアウォーターリヴァイバル トラヴェリンバンド」

2023-09-24 18:10:25 | 映画(洋画 89年以前)
映画「クリーデンスクリアウォーターリヴァイバル トラヴェリンバンド」を映画館で観てきました。


映画「クリーデンスクリアウォーターリヴァイバル トラヴェリンバンド」は1970年前後にヒットチャートをにぎわせ世界的人気を誇っていたクリーデンスクリアウォーターリヴァイバル(以下CCRで表記)の1970年4月のロンドンのロイヤルアルバートホールでのコンサートを中心に描いたドキュメンタリー映画である。

これを楽しみにしていた。今でも個人的にCCRは大好きで、今でもクルマのCDでCCRを聴く。全米ヒットチャートでは万年2位としての異名もあるが、アルバムは米英いずれもトップになっている。1970年当時ビートルズに次ぐレコード売上をあげていたというコメントは確かに正しい。

ヒット曲としては「プラウドメアリー」エルビスプレスリーをはじめとして色んなアーチストに歌われて有名だけど、「雨をみたかい」など聴くと誰もが聴いたことあるメロディのヒット曲が多い。映画館には観客がそれなりに埋まっていたけど、白髪か髪の毛が薄い男性陣ばかりである。一部の老年カップルを除き女性はいない。ロック映画とはいえここまで女性がいないのも珍しい。

貴重なフィルムを公開してくれて感謝したい。
ジョンフォガティのシャウトする歌声と味のあるリードギターを大画面で観れて本当にうれしい。

いきなり題名にある「トラヴェリンバンド」から始める。これも全米2位のヒット曲だ。リトルリチャードを意識したような典型的なロックンロールで、この短い曲を針が擦り切れるくらい聴いた。アルバム「コスモズファクトリー」にも収められている。全米1位のアルバムだ。「ケントス」のようなロックンロールダンスが踊れる店で流れたらいちばんのれるんじゃないだろうか?ただ、ジョンフォガティがかなりの早口でシャウトするので日本の歌手ではむずかしいのかもしれない。


ロンドンでのコンサートの前に欧州をコンサートツアーでまわった映像が続き、デビュー前からのバンドのルーツに迫る。スージーQで脚光を浴びてプラウドメアリーで全米ヒットチャート2位になるスターティングアップを簡潔にまとめる。ジョンとトムが兄弟なのは当然知っていたが、ベースとドラムがジョンフォガティの同級生だったのを初めて知った。恥ずかしながらファンなのにこの映画を観て初めて知ることが多い。歌詞にも南部の町の名前が出てくることが多いので、ウェストコースト出身と聞いて驚く。今だったらネットで情報得られるが、ライナーノーツと雑誌だけではキツイ。

1972年に来日した時はまだ少年になりきれない頃で、当然コンサートに行ける訳がない。ただ、その前年1971年から雑誌「ミュージックライフ」を購読するようになり、来日した時にCCRのメンバーを食事に招待して星加ルミ子編集長(たぶん?)がインタビューしている記事を見た。しばらく雑誌を持っていたが現在はないのは残念。ジョンフォガティのチェックのシャツに憧れて、親に買ってもらったなあ。

ロンドンでのコンサートもトラベリンバンドから始まる。大画面いっぱいに映るわけではない。それでも圧倒的な迫力だ。CCRの曲は2〜3分で終わる曲が多く、シングルカットも意識している。ロックンロール、ブルース、カントリーそれぞれにテイストをもつ曲を散りばめる。「グリーンリバー」「プラウドメアリー」「ダウンオンザコーナー」の一連の全米2位ソングはシンプルなロックンロールで普通のポップス調といってもいい。


字幕で日本語訳の歌詞がでる。中学校時代の英語力ではCCRの歌詞は訳せなかった。こうやって字幕を読むと、世間を皮肉ったセリフも目立つ。「フォーチュネイトサン」は映画の挿入歌でよく使われる。「フォレストガンプ」など戦争が絡む場合も多く、「君のいないサマーデイズ」ではバカンスに出かける時にも使われる。ジョンフォガティのヴォーカルに高揚感がある曲だ。でも、これって戦場の最前線では戦わないお偉いさんの「息子」を皮肉っている歌詞だよね。ジョンフォガティは徴兵制に従っているだけにムカつくんだろう。「コモーション」とメドレー的に演奏する流れがいい。


今回「グッド・ゴリー・ミス・モリー」はセットリストでいちばん楽しみにしていた。もともとリトルリチャードの曲だけど、ジョンフォガティがニューロック風にアレンジしたリードギターが冴えるロックンロールだ。この曲からジョンフォガティがハーモニカを鳴らす「キープオンチューグリン」につなぐ。ギタープレイはジャズのチャーリークリスチャンを意識しているという。同じ「バイユーカントリー」に入っている名曲だ。CCRのアルバムでは、ヒット曲に加えて古典的ロックンロールブルース調のロングバージョンが組み込まれている。そんな組合せでコンサートを終える。


コンサートは淡々と次から次へと演奏する。余計なMCはない。それはそれでいいかも。ジョンフォガティは期待通りだが、ベースとドラムが予想以上にエネルギッシュな演奏を見せてくれて十分に堪能できた。CCRの最後のシングルカットは「サムデイネバーカムズ」という曲だ。「またいつかはもう来ない」ということだったが、こんなコンサートが観れる日が来た。うれしい。
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映画「ベニスに死す」ルキノ・ヴィスコンティ

2023-05-15 18:20:54 | 映画(洋画 89年以前)
映画「ベニスに死す」は1971年日本公開のイタリアフランスの合作映画だ。


映画「ベニスに死す」はルキノヴィスコンティ監督の1971年日本公開の名作だ。ここしばらく観ていないが、何度も観ている。「TAR」マーラー交響曲5番が取り上げられていることで、ふと観てみたくなった。気がつくと、ブログ記事も書いていない。公開当時ビョルン・アンドレセンの美少年ぶりは日本でも雑誌を中心に大騒ぎになった記憶がある。まだ中学生だった自分にはピンとこなかった。確かに現代感覚でみても飛び抜けている。

静養でベニスの街を訪れたグスタフ・フォン・アッシェンバッハ教授(ダークボガード)は作曲家である。滞在するホテルで、上品で気品あふれる母親(シルヴァーナ・マンガーノ)とその子どもたちの中にいる美少年タッジオ(ビョルン・アンドレセン)に目が止まる。その後、ホテルのレストランでも、海岸でも何も言わずにタッジオの一挙一動に目を奪われる日々が続いていく。


絵画のような映画だ。
計算つくした映像コンテで、上質な絵画を思わせるショットが次々と続く。風景がいいというわけでない。教授と美少年と取り巻く人物とバックの風景や建物、インテリアがバランスよく配置されている。美的意識に優れる。この時代の映画は、ズームレンズの遠近を調整するようなカメラワークが多い。最近はあまりない不自然な捉え方だが、それを除いては構図は完璧だ。

セリフは少ない。ひたすら、美少年タッジオを目で追うグスタフに注目する。ホテルの従業員たちとの会話を除いて、グスタフに不必要な会話はない。タッジオはグスタフの視線を気にするが、会話はない。静かに時間が流れる。映像のバックにはマーラーが流れる。久々に観て、マーラーの交響曲5番が重要場面で繰り返し長めに使われていることに気づく。この曲が美しい映像に溶け込んでいる。しかも、主人公の名前はあえてグスタフマーラーから名前を拝借する。いかにもマーラー本人がモデルのように錯覚させる。

ベニス(ヴェネツィア)の街は古今東西いろんな映画でロケ地となる。見どころが数多い場所だ。キャサリンヘップバーン主演の「旅情」のように観光案内的に街をめぐるわけではない。ビーチサイドのシーンも多く、別にベニスでなくても撮れてしまうシーンも多い。それでも、絶えず絵になるショットルキノヴィスコンティは狙っている。そして、美少年ビョルン・アンドレセンにフォーカスをあてるだけでなく、イタリアのセクシー女優シルヴァーナ・マンガーノを美少年の母親に配役してわれわれの目を奪う。ヴィスコンティ作品の常連だが、以前観た時にはあの「にがい米」セクシー女優と結びつかなかった。


途中から、ベニスの街に感染症の波が来ているのではないかとグスタフはさかんに気にする。街に白い消毒薬がまかれている。インドが感染源のコレラ菌の波が欧州に来ていることもわかる頃には、グスタフは少しづつ体調を崩していくのだ。今まで観た時にはグスタフが病気で衰えることがわかっても、感染症の影響とは気にしていなかった。このコロナ禍で映画の見方が変わった。大きなユーラシア大陸は東西につながっていて、感染症の影響に常にさらされているのだ。時代により映画の見方は変わっていく。


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映画「サタデー・ナイト・フィーバー」ジョン・トラボルタ

2021-07-10 10:49:47 | 映画(洋画 89年以前)
映画「サタデーナイト・フィーバー」は1977年のアメリカ映画、日本では1978年(昭和53年)公開

Netflixにサタデーナイトフィーバーが見れることに気づく。ロードショーしてすぐに観てからはや43年、あの衝撃をいまだ引きずっている。丸13 年ブログをやって、どこかで紹介した気もしたが、記事が見当たらない。ここで一旦振り返ってみる。ストーリーの大枠は頭に入っている。まあ、誰もが知っているストーリーなので、ネタバレも構わないであろう。


ステインアライブの曲に乗せてさっそうとジョントラボルタが登場する。おなじみのシーンだ。このシーンを見ているだけで気分は高揚する。ベトナム戦争も終戦に至った後の、能天気なアメリカの雰囲気がお気楽な感じで良い。

⒈ブルックリンのイタリアン移民とトラボルタ
家族の中での会話がどうだったかは覚えていなかった。久々見ると、へーそうだっけという感じだ。家族の仲は良いが、いくつも問題を抱えている。父親は失業中、兄貴は教会の神父だったが、やめてしまう。それを聞いて父母ともにがっかりだ。19才のトラボルタは塗装店で勤めている。ペンキ職人ではない。気楽な職場のようだ。すべては週末のディスコで踊ることにかけている生活だ。アルパチーノとブルースリーのポスターが貼ってある部屋でビシッと髪を決めていざ週末のディスコに出発だ。


⒉アネット(トラボルタにすり寄る女)
トラボルタとその不良グループにつきまとう女の子だ。コンテストもトラボルタと一緒に出ようと望んでいる。映画がはじまりすぐ「ディスコインフェルノ」でペアで踊る。常にトラボルタに抱いてもらいたくて仕方がない。トラボルタにその気はないが、無理やり車の中でやってくれアネットがと誘う。その時にトラボルタに聞かれる。避妊具あるのって?

仲間の1人がはらませちゃってということもあるが、トラボルタも妙に慎重だ。ないという言葉に興ざめする。それでも、アネットの方はあきらめない。別の機会にきっちりコンドームを用意する。その時は別のダンスパートナーに気持ちが向かっているので、トラボルタはその気にならない。


何気ないそのシーンだけど、今から40年以上前、この女の子の気持ちってよくわかるわよ。と当時20代になる寸前の数人の女の子に言われた。好きな男のためになんとかしてあげようという気持ちって当時青二才の自分には意味不明だったが、歳をとるうちにわかるのかな?

⒊ステファニー(トラボルタとコンテストにでる女)
トラボルタとその仲間が常連のディスコに突如現れた周囲と違うタッチのダンスを踊る女である。トラボルタも一気に惹かれる。でも、この男格下だわという蔑んだ目をトラボルタに浴びせる。ところが、ディスコのDJがやっているダンス教室で偶然出会うのだ。いったんはふられても猛烈アタック。結局パートナーになる。


マンハッタンで働いているらしい。やれキャットスチーブンスにあったとか、ローレンスオリビエにあって話したとか見栄っ張りである。近々マンハッタンに住むんだと自慢げに話す。トラボルタも「気取り屋」だと思っているが、まずはパートナーになってもらうのが先決と聞き流す。

こういう女のキャラを映画を見た大学生時代はよく理解できなかった。今となってみれば、なんじゃこの女偉そうにという感じである。そういう女を対比に登場させるというシナリオに深みを感じる。実は、トラボルタは突っ張ってそうで自分の立場を理解して意外に謙虚である。大学へ行って立身出世しようなんて気持ちも偉ぶっているところはまったくない。

この辺りのギャップも1つの見所にも思えてくる


⒋歴史的なダンス①:ナイトフィーバー
映画のポスターで右手を大きく上に上げるトラボルタに惹かれてどれだけの数の若者がディスコに向かったであろう。この時代にコンテンポラリーだった自分はなんて幸運だったのであろう。トラボルタが戦場たるダンスフロアに入り込むと、いきなりステップダンスでみんなと歩調を合わせる。

自分が高校生だった昭和50年代初頭、東京のディスコはまだ不良の溜まり場の域を超えてはいない。その頃のディスコは赤坂のビブロス、ムゲンという別格を除くと、みんなが曲に合わせて同じ踊りを踊るステップダンスが中心である。でも、映画が公開された1978年(昭和53年)はそうではなかった。割と自由に踊っていた。でも、みんな同じようにステップを踏む曲がいくつかある。その一つが邦題「恋のナイトフィーバー」である。要は映画のステップの再現だ。

軟派大学生や就職が決まりそうなませた女子高校生がナンパ島とも言われる伊豆七島に向かう。新島や神津島や式根島でみんな民宿に泊まるわけである。どこの島にも臨時に設営したディスコがある。そこで東京と同じように踊るわけである。まあ、誰にとっても青春の素敵な1ページであろう。ナイトフィーバーを聞いた回数は何百万回といっても大げさではない。1978年3月から5月にかけて8週にわたって全米ヒットチャート1位だ。

⒌歴史的なダンス②:ユーシュッドビーダンシングとビージーズ
この映画でトラボルタがもっとも躍動的なソロダンスを踊る時に、you should be dancing が流れる。ビージーズがディスコタッチの曲で見事不死鳥のように蘇る曲だ。

自分が小学生の頃、1968年日本でも「マサチューセッツ」が流行った。洋楽が好きな兄貴のいる友人に教えてもらい好きになる。TVで洋楽を流す番組で随分とかかっていた。その後1971年映画「小さな恋のメロディ」が日本で大ヒットした。同時期に「ある愛の詩」が流行っていたニクソンドルショックの年である。その中で流れる「メロディフェア」も日本だけで大ヒットする。でも、アメリカでは同時期に「傷心の日々」が全米ナンバーワンになるのに、日本ではシングルカットされていない奇妙な現象になった。

その後ビージーズの存在すら頭にない高校生時分に、突如ディスコのリズムで流れるビージーズの甲高い声に気づく。これは衝撃だった。実はJive Talkinという曲がディスコタッチでヒットしたのであるが、印象が薄い。you should be dancingを聞いてまだ頑張っているなとうれしくなった。1976年9月の全米ヒットチャート1位だ。でも、それは本当の意味でのフィーバーの序奏曲にすぎなかった。


ダンスフロアにいるみんなも後ろに下がって、トラボルタのダンスに見入る。これも歴史的なダンスだ。ものすごい超絶技巧を使っているわけでない。ノリのいいロックのリードギターの響きに魅せられるような気分なのかもしれない。
ポスターのトラボルタの姿に合わせて、フィーバーのポーズをディスコでみんなとるようになる。あと5年以上早く生まれていたら学園紛争の洗礼を受けたのであろうか?こればかりはわからない。

⒍歴史的なダンス③:モア・ザン・ア・ウーマン
トラボルタとステファニーがコンテストで踊る曲である。サタデーナイトフィーバーLPレコード1枚目黄金のA面の4曲目だ。ある意味映画の中で見どころと言える場面であろう。ディスコのダンスフロアで見つけたマンハッタンで働く女性に惹かれる。これまで見たことないタイプの女性だ。ダンス教室で偶然再会してトラボルタが猛アタック!いやいやステファニーが受け入れた後で、一緒にレッスンし、コンテストに登場する。

タバレスがもう少しアップテンポな同じ曲を歌っているのはダンス教室でかかる。ここではしっとりとビージーズが歌う曲に合わせる。名曲である。鮮やかに2人でステップを踏んだ後、ダンスのクライマックスでトラボルタとステファニーがディープキスをする。キスのあとでうっとりした目をしたステファニーがイキイキとみえる。見所のひとつだ。ただ、この後で踊るプエルトリコの2人がラテンミュージックに合わせて華麗なダンスをするのだ。でも、トラボルタはそっちの方が上手いとトップ賞を譲ってしまう。

そんなストーリーはいつ見ても楽しい。


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映画「タッカー」 ジェフ・ブリッジス&フランシス・コッポラ

2020-05-23 23:00:13 | 映画(洋画 89年以前)
映画「タッカー」は1988年のアメリカ映画


え!こんな映画あったの?このブログでもいくつも取りあげているジェフ・ブリッジスフランシス・コッポラが組んだ映画があるなんて知らなかった。これまでDVDで観たことなかったと思ったら、どうも久々に4K化で復活ということらしい。戦争が終わる頃、斬新なデザインの車を作ろうとするお調子者の自動車デザイナーであるタッカーが、自動車のビッグ3に目をつけられ詐欺者扱いされるという映画である。実話に基づいている。

斬新なデザインの車を生み出そうとするとする実在した男の物語というと先日観たジョン・デロリアンに似た話である。巨匠フランシス・コッポラがこんな映画つくったの?というのは驚くが、コットンクラブの失敗のあとのスランプが続いている時期の作品である。興行収入もイマイチだ。それでも、コッポラらしく金に糸目をつけない良き日のアメリカを再現した見事な美術とそれを映し出すオスカー三度受賞のカメラマンヴィットリオ・ストラーロの腕前に感心する。

1945年、デトロイト郊外で、プレストン・タッカー(ジェフ・ブリッジス)は自動車業界に身を置き、戦争中は装甲車をつくっていた。妻ヴェラ(ジョアン・アレン)と4人の子供達と幸せな日々を過ごしていた。タッカーはあっと驚くデザインの車を自社で作る決意をかためて、そのデザインをマスコミに公表した。完成予定の斬新なカーデザインに世間は驚き、一緒に車を作りたいという仲間も集まってきた。


元銀行家のエイヴ(マーティン・ランドー)からは投資家から資金を集めるためにもまずは試作車をつくることが先決と、技術者のエディ(フレデリック・フォレスト)たちとタッカー宅の隣にある倉庫で車の製作に入った。しかし、なかなかうまくいかない。それでも、ようやく「タッカー・トーピード」を作り上げて大々的な披露会を開催する。


その一方で、新車開発を密かに探っている連中がいた。自動車産業のビッグ3や、ファーガソン上院議員(ロイド・ブリッジス)ら保守的な政・財界は、ライバル出現にいい顔をしていない。トーピードはスピードが出るだけではなく、安全性や耐久性にもすぐれている車になりつつあった。

ところが、タッカーは寄せ集めのガラクタで車をつくっているというデマが流れる。しかも、本気で車を生産するつもりはなく、投資家から金をふんだくっていると詐欺者扱いをされ、マスコミから騒がれた。そして、裁判にかけられる。全ての疑惑を晴らすためにタッカーたちは50台の新車を期日までに完成させようとするのであるが。。。

1.色彩設計と美術の見事さ
1945年といえば、終戦の年、日本は空襲で廃墟のようになりつつあった。そんな時にアメリカではこんな素敵な家に住んで、豊かな暮らしをしているのかと思うと改めて国力の違いを感じる。まずはこのタッカー車がかっこいい。流線型のしなやかなデザインで、現代にも通じる色合いは上品である。当時としては衝撃的な車だったろう。今でも47台現存しているのがすごい。

後年オスカー主演女優賞を受賞するジョアン・アレンが着飾る姿が、その衣装も含めていい感じだ。古き良き時代のアメリカの豊かさを象徴する。ちょうど30代前半で美貌も絶頂のころで視覚面にもたのしめる。


2.お調子者のタッカー
ジョン・デロリアンと時代はちがうが、車のデザイナーっていうのはみんな遊び人でお調子者だなという感を強くした。2人とも斬新なデザインの自動車を設計して自社で生産をするという夢を実現しようとしてうまくいかない。デザインはできても詳細設計に入ると、車の乗り降りに問題が出る。ビッグ3に邪魔されて鋼材が調達できないなど問題が山積みだ。それでも、常に楽観的、そんなタッカーの調子の良さをジェフ・ブリッジスが巧みに演じる。

ラストに向けての「いつか我々は世界のナンバーワンから落ち、敗戦国から工業製品を買うことになる」という言葉が印象的だ。


彼の長いキャリアでは、自分が好きな「カリブの熱い夜」の4年あとで、ちょうどジャズピアニストを演じた「恋のゆくえ ファビュラス・ベイカー・ボーイズ」の前年につくられている。役柄はちがうけど、どちらも似たようなものだ。

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映画「スーパーフライ」 カーティスメイフィールド&ロン・オニール

2020-05-13 17:23:48 | 映画(洋画 89年以前)
映画「スーパーフライ」は1972年のアメリカ映画


70年代前半のニューヨークハーレムのソウルフルな世界を描く代表的映画といえば「黒いジャガー」「スーパーフライ」であろう。「スーパーフライ」カーティスメイフィールドによる音楽がご機嫌だ。日本公開された時、当時中学生だった自分も有楽町の映画館に1人で観に行った。ヒットチャートマニアだった自分は、FMで知ってこのテーマソングに魅せられた。しかも、夕刊のテレビ欄の下部に掲載されている映画広告に「スーパーフライ」がいかにも刺激的な映画であるように宣伝されていた。これはいくしかないと。


でも、観に行って拍子抜けした覚えがある。気がつくとあっさり映画が終わってしまった。麻薬の売人という存在に馴染みもないし、ドラッグに関わる劇中のセリフがわかるほど自分自身が大人になっていなかったのであろう。その後、大人になってから一回みたが、その時もいいとも思わなかった。リメイク作品も観ていない。

それでも、初老の域に達して、今回再見。映画ルディ・レイ・ムーアをみたのがきっかけだ。ドラッグを捌いて大儲けしようとするストーリーはどうってことない。黒幕に警察も絡んでいたというのには気づいていなかったなあ。当時の東映や日活のB級映画と似たようなレベルと思いながら、若き日より楽しめたのかもしれない。

ニューヨークのハーレム、コカインの売人プリースト(ロン・オニール)は、金にも女にも不自由せずキャデラックの特注車に乗って羽振りがいい。

仲間のエディ(カール・リー)と2人でコカイン売買でこれまで30万ドル稼いできた。そろそろこの道から足を洗おうと、稼いだ30万ドルを資本にヤクを買い、100万ドルで売り捌こうとする。2人は、今は廃業してレストランの主人におさまっているハーレムの顔役スキャター(ジュリアス・W・ハリス)にコカインを頼んだ。スキャターはもう足を洗ったと断るが、むりやり頼み込む。


ところが、仲間のフレディ(チャールズ・マグレガー)が、警察に捕まり取引のことをしゃべってしまった。その夜、プリーストとエディは警察に捕まってしまった。ところが、警部は意外にも麻薬取引をもちかける。ただ、スキャターは自分の身が危ないというが。。。

⒈エロチックサスペンス
70年代前半の東映がエロチックサスペンス路線で池玲子杉本美樹を脱がせまくっていた。TVでは東京12CHで「プレイガール」をやっていて中学生の自分は親に隠れてこっそりと見ていた。主人公はコカインの売人で金もあるし、モテまくる。いきなり登場するのは白人女との戯れの後にベッドで胸毛モジャモジャの姿を見せるシーンだ。次はいつ逢えるの?とモテモテだ。


その後で、美人の黒人女ジョージア(シェイラ・フレイザー)とのバスルームでの裸で抱き合っているシーンだ。この女が魅力的だ。でも、中学生の自分にはいい女というのはわからなかったんじゃないかな?いかにも、この当時の映像らしく、ポルノ映画の如く2人の絡みをぼかす。こういうエロな場面がないとアメリカでも観ないんだろうなあ。似たような時期のパム・グリア主演「コフィー」も似たようなものだ。


⒉カーティスメイフィールド
かすれ声が魅力的だ。映画を観ていてテーマソング「スーパーフライ」がなかなか出てこなかった記憶がある。ラスト15 分で初めて流れる。オープニングで流れる曲の歌詞を読んでいると、いかにも堕落しきった男だというのを象徴するようだ。途中でカーティスメイフィールドがステージに立つライブハウスに主人公が入ってくる。このファッションも刺激的だが、ステージを観ている周囲も70年代前半の匂いを醸し出す。いいねえ。

主題歌以外でも魅力的な2曲がある。ベッドシーンのバックが似合うgive me your love. とテーマソングと似たようなタッチのpusher man だ。たった2年くらいだが、ディスコミュージックが流行るその2年後くらいと曲のタッチが違う。ソウルミュージックというのはこの辺りのことを言うべきであろう。


主人公が麻薬の売人として闇夜するシーンにはホーンセクションにギターが絡む。このタッチは井上バンドあたりが演奏する昭和のアクションTVと大差はない。この映画白人を悪者にしている完全な黒人映画なんだけど、尾崎紀世彦ばりの強烈なもみあげが印象的なロン・オニールって黒人?、白人にしか見えないんだけど。
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映画「モナリザ」ボブ・ホスキンス&キャシー・タイソン

2019-07-17 17:58:32 | 映画(洋画 89年以前)


映画「モナリザ」は1987年日本公開の英国映画
モナリザ
ボブ・ホスキンス


いきなりナットキングコールの「モナリサ」が渋めに流れる。この曲はもともと映画の主題歌だったし彼の歌声を聞くと映画「花様年華」を連想する。刑務所出所まもない男が、黒人高級娼婦の運転手になり、彼女の女友達の行方を一緒に探すというストーリーだ。最初は川を渡る鉄橋やチャイナタウンを見てニューヨークロケかと思ったが、ボブ・ホスキンスが乗る車が一時代前のジャガーだしマイケルケインの登場で英国だということがわかる。いかにもチビデブハゲの典型のようなボブホスキンスが主演を張っている。カンヌ映画祭主演男優賞も受賞したというがそれもうなづける。

ボスの身代わりで刑務所にいたジョージ(ボブ・ホスキンス)は出所早々娘ジェニー(ゾーイ・ナゼンソン)に会おうと訪ねたところが、前妻ドーン(ポーリーヌ・メルヴィル)に門前払いされ大げんか。すぐさま自分のジャガーを預ってくれていた相棒のトーマス(ロビー・コルトレーン)のところへ行き、身代わりをしたボス、モートウェル(マイケル・ケイン)の所に向かう。


元ボスは不在だったが、黒人の高級娼婦シモーヌ(キャシー・タイソン)を金持ちの客たちに送り届ける運転手の仕事をもらう。彼女はホテルの従業員に睨まれながらも高級ホテルで客をとっていた。初めは2人のソリが合わず、シモーヌを道路に立ち往生させたりした。しかし仲直りした2人は徐々に親近感を覚える。シモーヌは仕事帰りにジョージに橋の上で女がたむろう街娼窟に車を走らせるように頼む。ヘロイン中毒で失踪していた親友キャシー(ケイト・ハーディー)を探すためだ。調べていくうちに、かつてシモーヌのヒモだったアンダーソン(クラーク・ピータース)が失踪のカギだとわかる。どうも彼がキャシーを薬づけにしたようで、その黒幕がモートウェルだった。ジョージはキャシーを救出するために懸命に探すのであるが。。。

⒈グリーンブックとの対比
昨年のアカデミー賞作品「グリーンブック」は黒人ピアニストの南部エリアコンサートツアーに際して、白人運転手が帯同する話であった。ここでは、ムショ帰りのチンピラが黒人高級娼婦の運転手をするという。人種の組み合わせは同じである。いずれの運転手も腕っぷしは強い。グリーンブックの主人公はクラブコパカバーナの用心棒で酔客をボコボコにする場面があるし、この映画のジョージは娼婦がたむろうエリアで女絡みでヤクザまがいの男に因縁をつけられた後で、その男をボコボコにする。コンビを組んですぐさま運転手が腹を立てて、車の外に放り出すにも同じである。


次第にお互いの情が移っていくのも同様であるが、ここでは40~50年代のフィルムノワールのように、ある人物を探すという目的がある。そこが違う。探偵のタイプとは似ても似つかない男だが、美女の依頼主が来て、それに翻弄されるというフィルムノワールの定石に従っている感がある。

⒉チビ、デブ、ハゲ
正統派主演男優とは真逆の存在で、ジョーペシ、ダニーデヴィートなどと同類項の存在感を持つ。チビ、デブ、ハゲというと映画「シャル・ウィ・ダンス」の3人のダンスの練習生みたいだ。3つまとめての要素をもつこういう俳優がいないと映画は成り立たないから面白い。


今回はジョージの可愛い娘の存在が1つのポイントになる。映画「ブロウ」では刑務所行きのジョニーデップ演じる主人公が娘に会いたいのに最後まで会ってくれない。ここでは奥さんからメチャクチャ嫌われるが、娘は仲良くしてくれる。そういう姿を見ると、落ち着くし、ホッとしてしまう。

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映画「セックスと嘘とビデオテープ」スティーブン・ソダ―バーグ 

2019-07-01 05:41:33 | 映画(洋画 89年以前)


映画「セックスと嘘とビデオテープ」は1989年のアメリカ映画
セックスと嘘とビデオテープ


スティーヴン・ソダーバーグの出世作である。1989年カンヌ映画祭パルムドールの作品、主演男優賞も受賞している。4人の心理戦といった展開である。
倦怠期に入っている夫婦がいる。夫婦関係はめったにない。夫は妻の妹と不倫をしている。ダンナの大学時代の友人が来て、近所に住む。それまでの3人の関係に1人が介在することで、大きく揺らぐという展開である。


弁護士という設定だが、慎重という感じではない。マリッジリングを持ち出して、所帯持ちってこんなにもてるとは思わなかった。18くらいから指輪をしておけばよかったよと話す。妻の妹と浮気をしている。短い時間でも用を足すといった感じで情交を重ねる。そしてすぐさま仕事に戻る。妻とはめったに関係はない。でも仲が悪いわけではない。
ピーター・ギャラガー


妻は弁護士夫人で普段の暮らしに問題はない。ただ、若干うつな状況でカウンセリングを受診している。自分から求めようともしていないので夫婦生活はご無沙汰気味。夫の浮気は疑っていない。そんな時に夫の大学友人が現れる。2人で話を重ねていくうちに少しづつひかれていく。
アンディ・マクダウェル



夫の大学の友人が遊びに来る。しばらくはこの町にいたいらしい。短期で部屋を借りる。独身だ。妻が関心を示して、いろんな話を聞き出そうとしている。あっちのほうは不能だと自ら告白する。でも、女性から自分の性遍歴を聞き出すことが趣味である。聞き出す一部始終はヴィデオに撮っており、そのテープをたくさん保有して、ときおり一人で見るのだ。
ジェームズ・スペイダー


妻の妹はカフェバーで働いている色っぽい女。割り切って姉の夫とすき間時間を使って、体を重ねている。でも姉の夫の友人が来て、姉と仲良く話しているのが気になる。好奇心からその友人の家に押し掛ける。女性から性遍歴を聞き出し、ビデオを撮っていることがわかると、自分も体験を話し出す。自ら興奮してしまった彼女は姉の夫を呼び出し、いつも以上に燃えてしまうのであった。
ローラ・サン・ジャコモ


そういう状況から4人が変化を遂げる。
将棋で序盤戦から中盤戦になり駒がぶち当たる時のように、少しづつ4人の関係に変化が起きるのだ。いろんなことが暴かれることもある。嘘が嘘でなくなる。そんな時それぞれがどういう態度をとるのかを見ていく映画である。


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映画「さらば青春の光」フィル・ダニエルス

2019-06-27 18:50:35 | 映画(洋画 89年以前)

映画「さらば青春の光」は1979年公開の英国映画だ。
さらば青春の光
フィル・ダニエルズ


60年代中盤の英国南部の町ブライトンが舞台である。その時代に英国で流行したモッズと言われる音楽、ファッションのライフスタイルがある。初期のビートルズが3ツボタンの細身のスーツを着ていたのを思い出すと良い。ここではモッズに傾倒している1人の労働者階級の若者とその仲間たちがスクーターで遊びまわり、ライバルのロッカーズとブライトンの町で競い合う姿を描く。原題は「四重人格 Quadrophenia」、ザフーのロックオペラの名前である。


ライバルの暴走グループとの抗争では街中の人たちを巻き込む。交通違反という次元を超えるハチャメチャぶりだ。ケンカするだけでなく一般のお店のショーウインドウを破壊したり、メチャクチャだ。この映画の出演者はあまり行儀のよくない連中で、自分も歳をとったせいかなかなか感情流入しずらい連中である。

派手なデコレーションをしたスクーターに乗った若者たちが細身のスーツにネクタイを締め、米軍放出のロング・コートを無造作に着こなす。彼らは「モッズ」と呼んでいた。ジミー(フィル・ダニエルス)は、広告代理店のメイル・ボーイをしている。会社がひけるとジミーは、モッズの溜り場のクラブに行き、夜中をそこで過ごす。ロックンロールが流れるクラブにはデイヴ(マーク・ウィンゲット)、チョーキー(フィリップ・デイヴィス)らが集まっていた。ジミーはその店で見つけた娘ステフ(レスリー・アッシュ)に関心を寄せていた。


リーゼントの髪を固め、汚ない皮の上下でオートバイを乗り回しているこのロッカーズとはモッズはことあるごとに衝突していたのだ。次の週末には、ブライトン・ビーチで勝負をつけることになっておりジミーはスーツを新調し、クスリを大量に手に入れ、その日の来るのを待った。いよいよ、決闘の日が近づき、ブライトン・ビーチに集まるモッズとロッカーズ。ステフも来ている。しかし、彼女はクロームの銀ピカのスクーターでキメているエース(スティング)に夢中のようだ。翌朝海岸通りをシュプレヒコールで歩くモッズとロッカーズの乱闘がはじまった。しかし、その決着がつかぬうちに、警官隊が出動した。


⒈劇中の音楽
これはご機嫌だ。いきなり主人公とその仲間が街中をスクーターで疾走する場面が出る。そのバックの軽快な音楽がいい。ライブハウスに行くと、ゴーゴーダンスと思しき感じでみんな踊りまくる。バックに流れるのは60年代前半のポップスが多い。ロカビリータッチだ。主人公は広告会社の雑用係というべき社内郵便集配係である。そんなプロレタリア少年は仲間と大騒ぎ、スクーターでさっそうと現れるときはかっこいい。でも普段の服装はダサい。ジジババ洋品店で売っているようなポロシャツを着ている。途中でフレッドペリーのポロシャツに変わるが、それでも基調が垢抜けない。


⒉青春映画
原題の「四重人格」をよくも、清々しい日本題の「さらば青春の光」に変えたものだ。ロック好きとしてザ・フーやピート・タウンゼントの名前は知っていても、なかなか好きになることはなかった。60年代に英国で若者であった人たちには受けるだろう。仲間どうしで、どこかの居宅でパーティをやる。酒の勢いも借りてかいつのまにか男女カップルができてくっつき始める。気がつくと朝になると、各部屋ごとに男女絡みあって寝ている。この同じ時代の日本ではこういうのはあまりなかったんじゃないかな?


「エブリバディウォンツサム」という映画がある。80年前後のアメリカの青春物語もこの映画で若者がいたしている姿に大差はない。育った国は違うが、同世代で青春時代を過ごした自分にとってはディスコミュージック主体の音楽も黄色いラコステを愛用するファッションも共通項があるので「エブリバディウォンツサム」にムチャクチャ惹かれる。要は自分にとっての共通点があるかないかだな。
エブリバディ・ウォンツ・サム!!
ブレイク・ジェナー

最後に向けての断崖絶壁には驚く。白い崖が美しい。ネットを見るとビーチーヘッドというようだが、こんな場所知らなかった。


疾走する主人公が気分良さそう。最後に向けての主人公のパフォーマンスはなるようになれという感じだが、この映画のあとしばらく経って公開されたテルマ&ルイーズを連想した。
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映画「フェリスはある朝突然に」 ジョンヒューズ&マシュー・ブロデリック

2017-08-05 10:47:31 | 映画(洋画 89年以前)
映画「フェリスはある朝突然に」は1987年のアメリカのコメディ映画だ。


80年代のムードが映画全体に漂うジョン・ヒューズ監督による青春コメディ映画だ。いたずら好きの少年が親と学校をだまして遊びまわる一日を描いた作品で、インターネットも携帯電話もない時代になりすまし電話や音響機器を駆使して学校や親を騙す姿を面白おかしく映し出す。ある意味シカゴ観光案内的な要素もあり、むちゃくちゃ面白い映画である。

シカゴに住むフェリス(マシュー・ブロデリック)は今日も仮病をつかって両親をだましてズル休み。これで合計9回目のズル休みだ。両親と妹ジニー(ジェニファー・グレイ)も外出したあと、フェリスは本当に病気で休んでいる金持ちの息子キャメロン(アラン・ラック)の家からフェラーリを引っ張り出させる。ルーニー校長(ジェフリー・ジョーンズ)はフェリスはズル休みに違いないと感づき、フェリスのズルの証拠を何とか入手しようとイライラし出した。一方でフェリスは学校のデータにある累積欠席日数を、パソコンを使って減らす。それなのに校長はフェリスの偽電話にだまされて、フェリスのガールフレンドのスローアン(ミア・サーラ)をフェラーリで乗り付けたフェリスが変装した偽の父親に引き渡してしまう。3人はシカゴ市内をフェラーリで遊びまわる一方で、校長はフェリスの仮病を見破ろうとフェリスの自宅まで押しかけるのであるが。。。。


1.マシュー・ブロデリック
映画の観客に向かって話しかける手法を使う。「こんないい日に誰が学校へなど」自分のずるを次々解説しながら映画が進む。フェリスは東宝全盛時代の植木等を彷彿させる要領のいい男である。マシュー・ブロデリックはその後30代、40代と名脇役として活躍する。アレクサンダーペイン監督「ハイスクール白書 優等生ギャルに気をつけろ!」で、ここでのフェリスと似たような役柄のリース・ウィザースプーンが演じる女子高校生と全面対決する高校教師を演じたのが皮肉のようだ。今の奥さんは「セックス アンド シティ」のサラ・ジェシカ・パーカーである。ずいぶんと稼ぎのいい嫁さん見つけたものだ。


2.シカゴロケで回遊する3人
シカゴは大都市であるが、日本人にはなじみは薄いのではないか?以前シカゴのオへア空港に到着したとき、全米を代表する広い大空港を出るまで一人の日本人にも会わなかった。これはニューヨークなどでは考えられないことである。いわゆる昔ながらに白人と黒人がいてという構成で、東洋系やイスパニック系は少ない。

海にしか見えない五大湖の一つミシガン湖を背にして、個性のある外観の高層ビル群が立ち並ぶ。夜はブルースの町である。そんな街を観光するかの如く、フェリスをはじめとした3人がシアーズタワーや商品取引の殿堂シカゴマーカンタイル取引所、シカゴ美術館をまわる。

自分も行ったがシカゴ美術館で展示されている作品はレベルが高い。ゴッホ、モネの印象派の代表作をはじめとしてエドワード・ホッパー「ナイトホークス」、カイユボット「パリ通り、雨」、スーラの「グランドジャット島」とかメトロポリタン美術館に匹敵する素晴らしい作品がそろう美術館である。本当に感動した。そんな美術館で映画撮影できてしまうこと自体がありえない感じがする。アメリカ人は実に懐が深い。この映像は貴重である。


3.シカゴを舞台にした映画
これが粒ぞろいの映画ばかりだ。何といってもコメデイ映画の最高峰「ブルース・ブラザーズ」、架空の設定だが実はシカゴとわかる青春映画の最高峰「ストリート・オブ・ザ・ファイア」、暗黒街の帝王アル・カポネを主人公とするマフィア映画「アンタッチャブル」など名作ぞろいだ。ループ鉄道を走る列車や高架の下のを走る車が絵になりやすく、高層ビルが立ち並ぶ一方で黒人労働者たちがたむろうダウンタウンも絵になる。


それにしてもフェリスのいい加減な高校生ぶりが笑える。シカゴで有名なパレードの台車に乗り、ズル休みにもかかわらずビートルズの「ツイストアンドシャウト」を歌う場面は実に痛快だし、いかにも80年代という眉毛メイクで登場するフェリスの恋人役のミア・サーラがかわいい。




フェリスはある朝突然に
シカゴの高校生のズル休みの一日
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映画「コフィー」 パム・グリア

2015-02-04 17:23:21 | 映画(洋画 89年以前)
映画「コフィー」は1973年のエロティックブラックムービーだ。


クエンティン・タランティーノが映画「ジャッキーブラウン」に、たってのお願いで主演をやってもらった女優がいる。パム・グリアだ。彼女を起用したのはタランティーノがパムグリア主演の映画「コフィー」の大ファンだからである。タランティーノは彼自身のオールタイムベスト10の中にも「続夕陽のガンマン」や「タクシードライバー」と並んで「コフィー」を入れている。「コフィー」は「黒いジャガー」「スーパーフライ」といったブラックムービーの中でもカルト映画として名高い。いかにも70年代初頭のエロティックB級映画の匂いがなんとも言えずしびれる。


妹を麻薬漬けにしたマフィアたちにエロ仕掛けで迫って復讐するといったストーリーだけど、そんなことはどうでもいい。「ジャッキーブラウン」で主役を張った時はさすがに48歳でヌード全開というわけにはいかなかったが、相応の色気を振りまいていた。この映画の公開の時はまだ24歳、乳輪が大きいスーパーボディを惜しげもなく披露している。映画人にはタランティーノだけでなくジョンカーペンターやティムバートンなどパムグリアのファンが多い。その昔さんざん「お世話」になったからであろう。


主人公コフィー(パムグリア)は看護婦、麻薬中毒で廃人同様になっている妹の復讐をするために、元恋人の警官カーターにも相談するが、うまくいかない。そこでジャマイカ出身の高級娼婦ミスティークと称して、麻薬組織へ色仕掛けで侵入しようとする。売春組織の親玉で麻薬ディーラーでもあるキングジョージやイタリア系マフィアのところへも近づいていく。

70年代前半というのはエロ路線への解放のような時代だった。アメリカにならって、日本でも、にっかつポルノがはじまり、東映もお色気路線の映画を撮るようになった。東京12chの「プレイガール」という番組では、女性にお色気アクションをさせていた。テレビを見ている少年時代の自分は親の手前目のやり場に困った。家の中が沈黙になる瞬間だった。

だいたい悪に立ち向かう女性がお色気じみた接近をして、最終始末するというパターンはどれも同じだ。



1.ブラックムービーとソウルファンク
マイルスデイヴィス「インナ・サイレントウェイ」「ビッチャズブリュー」とロックとの融合路線をとったのが70年代になろうとした頃で、このころマイルスはジミーヘンドリックスやスライ・ストーンとの共演を真剣に考えていた。結局実現せずに、72年に「オン・ザ・コーナー」というソウルファンクともいえるアルバムを出している。このアルバムは明らかにスライの匂いがする。ジャズとロックの境界線が急激に緩んだときに、マイルスの子分ハービーハンコックが「ヘッドハンターズ」というアルバムを出したのは、この映画が公開した73年である。ジャズとロックの融合音楽はまだ「クロスオーバー」とか「フュージョン」と呼ばれるようにはなってはいない。この映画の基調のリズムはエレクトリックピアノ主導の当時でいう「ジャズロック」だ。

ここではロイ・エアーズというヴァイブ奏者が音楽を担当している。71年のアイザックヘイズの全米ヒットチャート1位「黒いジャガーのテーマ」や翌年のカーティス・メインフィールド「スーパーフライ」のようなソウルフルな匂いもさせる曲も流れる。エレクトリックピアノのテンポもよく、いずれもごきげんになる。70年代前半は週ごとの全米ヒットチャート1位には白人、黒人交互になるケースが多かった。この映画でもコフィーが白人の娼婦たち数人と裸になって喧嘩する場面がある。今と比べれば、まだまだ人種の垣根が高い時期だったのだろう。

2.パムグリアのスーパーボディ
これはビックリだ!こんなにすごいものが隠されているとは思わなかった。最初麻薬組織の男を誘惑した時に、ほんの少しだけ見せるだけなのが、徐々にエスカレートしていく。見ている男性の興奮度を徐々に上げようとする。銀幕の前で彼女のボディを全部見せた時の衝撃はアメリカの映画館でもすごかったであろう。
映画人に愛される存在といわれるが、あくまでこのセクシーボディのおかげでしょう。演技はドタバタなんだけど、女同士喧嘩をする場面では割とマジに、相手の顔面にサラダをぶつけたり、投げ飛ばしたりして大活躍だ。そういえば、東映のお色気路線でも池玲子に同じようなことさせていたっけ。彼女もパムグリアと同じようなバストトップだったなあ。


評価はまちまちだけど、ロバートデニーロ、サミュエルジャクソン、マイケルキートンを相手に「ジャッキーブラウン」で主役を張っている。この映画でのお色気もなかなかいい。これが↓その時の姿だ。


男性陣は完全におまけのようなものだけど、懐かしい襟がバカでかいソウルフルなスーツ姿の連中がおおい。映画のテンポは現在のものと比べれば、古さを感じさせるけど、ファンクミュージックの軽快な音楽とパムグリアのセクシーぶりにノリノリになれた一作だった。

(参考作品)
ジャッキー・ブラウン


コフィ
パムグリアの爆乳に真青
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映画「メカニック」 チャールズ・ブロンソン

2014-10-27 05:32:31 | 映画(洋画 89年以前)
映画「メカニック」はチャールズブロンソンが主演する1972年の犯罪サスペンスだ。


全盛時のチャールズブロンソン演じる殺人請負人の物語である。
まずは主人公の実力を示すための映像を映す。気がつくと、セリフがない。寡黙な殺し屋が、周到に準備する場面を映し、いっきに引き込んでいく。途中で、若者がブロンソンの仲間に入っていく。その後はアクションシーンが続いていく。CGなき時代のスタントマンたちの奮闘ぶりは見ごたえある。それでも、高級車と思しき車が次から次へと大破する場面を見ながらもったいないなと、美しいイタリアの海岸べりの風景を見ながら思う。

アーサー・ビショップ(チャールズ・ブロンソン)は完璧な仕事振りから“メカニック”と呼ばれる殺し屋だ。彼はある組織からの指令に従って用意周到に仕事をこなす一匹狼だった。そんな彼に組織の幹部で古くからの友人の暗殺命令が下り、いつもの如く的確に仕事をこなす。標的がいるアパートを大爆発を起こし、始末した。

翌日、家には次の指令が届いていた。分厚い封筒の中には犠牲者の完全な資料が入っていた。その犠牲者は、死んだ父の友人で、組織の1員でもあるハリー・マッケンナ(キーナン・ウィン)だった。ハリーは事故死と処理され、その葬式でアーサーは彼の息子スティーヴ(ジャン=マイケル・ヴィンセント)と会った。


その友人の息子スティーブとひょんな事から知り合う。スティーブと妙に気が合ったビショップは彼を助手として仕事を手伝わせ始め、次第にプロの殺し屋に仕立てていくのだったが、そんな時、イタリアでの大きな仕事が決まる。支度をしていたビショップが目にしたものは“彼を殺せ”と言う組織からスティーブへの指示書だったが。。。

1.ゴルゴ31
無口で用意周到に仕事を遂行するというと、「ゴルゴ31」をすぐさま連想する。最初15分以上、ブロンソンはセリフなしでその仕事ぶりを見せる。相手の行動パターンを写真でとらえて、仕事する場所での細工もこっそり忍びこみ丹念に入れる。じっと見ていると面白い。「ゴルゴ31」はその正体、私生活を絶対に見せないが、ここではクラッシック音楽を愛する男として描かれる。若干の人間臭さがあるところが、完ぺきな仕事師ではないあかしかもしれない。



2.ジル・アイアランド
チャールズブロンソンについては、かなりここで取り上げている。小学校から中学にかけて「マンダム」の宣伝のイメージが自分たちにとってはあまりに強烈だった。実際に映画も見に行った。「雨の訪問者」なんて映画はフランシスレイ作曲の主題歌も好きだったし、ジル・アイアランドが印象的で、こういう人が奥さんなんだと妙なワクワク感を感じていた。今回はコールガール役だ。ストーリーの流れからすると、中途半端に入ってくるだけの役だが、共演しないとブロンソンに変な虫がついてしまうのでは?と疑心暗鬼になっていたのであろう。


ジャン=マイケル・ヴィンセントと言ってもピンとこないが、顔を見てどこかで見たことあると必死に考えた。そうだ。ジョンミリアスの名作「ビッグウェンズデイ」のサーファーだ。うーん懐かしい!

ホテルを引き払う時スティーヴが陽気に声をかけアーサーの愛飲するワインで2人は乾杯した。グラスをあけながらアーサーがぶっ倒れる。おいおいそうかと思いながら、ラストでの逆転がお見事だ。これってどういうこと?
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映画「レニングラード・カウボーイズ ゴーアメリカ」 アキ・カウリスマキ

2014-05-16 22:32:27 | 映画(洋画 89年以前)
映画「レニングラード・カウボーイズ ゴーアメリカ」は89年のアキ・カウリスマキ監督の作品
フィンランドの巨匠だが、ここでの舞台はアメリカだ。
「ブルーズブラザース」を意識したようなシベリアの地からアメリカ大陸を横断してメキシコまで旅をするロードムービーである。コメディタッチである。

ツンドラ地方を拠点に活動するレニングラード・カーボーイのマネージャー(マッティ・ペロンパー)は、彼らの演奏があまりにもひどいことを理由に、プロモーターからアメリカに行くことが唯一の希望であると助言され、ニューヨークのプロモーターを紹介してもらう。

そして彼らは、ニューヨークでそのプロモーターに会うが、与えられた仕事は、メキシコに住む彼のいとこの結婚披露宴での演奏だった。そのプロモーターから、今はやっているのはロックンロールという音楽である、と教えられた彼らは、本を買って勉強を始める。

メキシコへ向うために、巨大なキャデラックを購入した彼らは、道中田舎の農夫たちがたむろするバーで演奏をし、日銭を稼いだりする。途中、彼らは行方不明だったバンドのメンバーのいとこに偶然出合い、彼の加入で次第にアメリカ受けするバンドになってゆく。

日本でいえば氣志團のようなヘンチョコリンなリーゼント頭である。
無言で無愛想なのはブルースブラザースバンドと同じだ。
90年代半ば以降のアキ・カウリスマキ監督作品を想像するとちょっと違う。
中期まで常連のマッティ・ペロンパーがプロデューサーを演じている。彼とメンバーとの絡みが実におもしろい!



これは有名なプレスリーのデビュー曲
下手くそと作品内ではいわれるが、割とうまいと思うんだけど



受けが悪い時に、「イージーライダー」のテーマ曲でライブハウスを盛り上げる。

このアホなパフォーマンスには笑うしかない。
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映画「存在の耐えられない軽さ」 ダニエル・デイ・ルイス

2014-01-12 13:11:21 | 映画(洋画 89年以前)
映画「存在の耐えられない軽さ」は88年の作品

傑作である。2時間50分に及ぶ上映時間の長い映画だ。
1968年のプラハが舞台である。チェコへソビエトが出兵した激動の情勢を背景に、若き医師が彷徨う姿を描いている。ベストセラー小説の映画化である。
オスカー俳優ダニエル・デイ・ルイスがまだ30になる頃出演していた作品で、2人の大物女優ジュリエット・ビノシュ、レナオリンが主演にからむ。3人は激動の情勢の中で困難に遭遇して彷徨う。単なる遊び人の主人公も少しづつ変わっていく。若き日の2人が大胆に脱いでいる。特にレナオリンのセクシーショットは当時話題になったであろう。


時は1968年、チェコスロバキアの首都プラハが舞台だ
主人公トマシュ(ダニエル・デイ・ルイス)は独身の有能な脳外科医だ。身近にいる看護婦に手を出したり、自由奔放に女性とつき合っている。そのうちの一人が画家のサビーナ(レナ・オリン)だ。2人が逢う時は、必ず、サビーナの黒い帽子と楕円形の鏡がそばに置かれていた。ある日トマシュは郊外に出張手術に行く。その先でカフェのウェートレスであるテレーザ(ジュリエット・ビノシュ)と知り合い、お互い惹かれる。トマシュがプラハに戻った後、テレーザはトマシュのアパートに押しかけ、2人は同棲生活を始める。

トマシュはテレーザをサビーナに紹介した。テレーザは彼女の計らいで写真家としての仕事を始める。そのころチェコは「プラハの春」と言われる改革運動が進んでいた。トマシュはロシアから共産主義の指導に来ている役人たちを皮肉たり、オイディプス論を論じていた。同棲しているにもかかわらず、トマシュはサビーナとの逢引きを続ける。女の影が常に付きまとうテレーザは憤慨して家を飛び出そうとする。外へ飛び出したら、プラハの町にソ連が軍事介入を始めて、戦車が多数乱入して来た。サビーナは、プラハを去り、ジュネーブへと旅立つ。テレーザはソ連の軍事介入の証拠写真を現場で取りまくっていた。そして一部のネガを外国へ移る人たちに渡して、チェコの現状を知らせようとした。テレーザは当局のおとがめを受ける。こうして、トマシュとテレーザは状況把握をした後でジュネーブヘ向かった。

3人はまた再会する。サビーナは大学教授フランツ(デリック・デ・リント)と知り合い、交際をはじめていた。フランツは妻帯者だったが、ザビーナの魅力に圧倒される。テレーザはジュネーブでも写真の仕事を探した。ヌード写真を撮る仕事をもらう。ジュネーブでもトマシュの浮気癖は直らない。相変わらず女性と遊んでいるトマシュにイヤ気がさしてきたテレーザは、衝動的にプラハへと戻ってしまうのであるが。。。。

(チェコへの出兵)
この映画では、プラハへの軍事介入が映像で出てくる。それ以前は「プラハの春」と言われる民主化運動が盛んになりつつあった。若者は反ソ連を強めていた。
当時まだ小学生だったが、テレビで再三報道されていた記憶が強く残る。プラハに戦車が乱入するシーンがテレビに映し出されて、ソビエトの軍事行動に恐怖を覚えた記憶がある。


1968年はメキシコオリンピックが開催されていた。チェコスロバキアの美人女子体操選手チャスラフスカは大会の華である。ライバルソ連にも可憐なクチンスカヤという体操選手がいた。
金メダルを争う2人の戦いでは、日本人の多くがチャスラフスカを応援していたと思う。西側陣営の末席にいた日本人としては、当然ソ連には強い嫌悪感がある。彼女は個人総合で見事優勝した。その際には、必ず祖国のことが話題になったものだ。

この映画の見事さは編集にある。実際に編集者が取得したニュースフィルムに、ダニエル・デイ・ルイスとジュリエット・ビノシュの2人をかぶせる。これがなかなかうまい。
94年のフォレストガンプでは主人公がホワイトハウスにまねかりたりする合成映像が出ている。これには感心したものだったが、88年当時の映画技術はどうだったのであろうか?


(レナオリン)
さすがのオスカー俳優ダニエル・デイ・ルイスもここではまだ若いアンちゃんである。「ゼアウィルビーブラッド」や「リンカーン」のような卓越した演技をするわけではない。その一方で強い存在感を示すのがレナ・オリンだ。その後「蜘蛛女」で世紀の悪女を演じるが、ここでもその片鱗を示す。黒い下着姿がセクシーだ。しかも、男に纏わりつく強い性の匂いをプンプンさせる大人の女性だ。これは凄い。

アメリカ映画への出演はこれが始めてだったらしい。自由奔放で一流の美術家だが、1人の男から束縛されるのを嫌がる。自分の好きなスタイルで男を愛するタイプだ。影響を受けた女性も多いであろう。彼女がジュネーブに行ったときのシーンで、チェコの愛国者がソ連に反発する発言をするシーンがある。その際それを聞いて、レナオリンが「それだったらチェコに戻って戦争したらいいじゃないの」と愛国者を罵倒する場面がある。これが実にかっこいい。年寄りが愛国主義で過激な発言をするのは、今も日本も同じだ。でもいざ戦争になったら戦うのは若い人なのだ。ある意味無責任じゃないかな


(ジュリエット・ビノシュ)
大女優になった彼女もまだ20代だ。主人公が郊外へ出張手術にいきに知り合ったときには、なぜかトルストイ「アンナカレーニナ」を読んでいた。そのときの彼女の表情は素朴で、いかにも田舎娘といった純朴な雰囲気だ。この映画の前にレオンカラックス監督の「汚れた血」にでている。同様なタッチである。純朴な姿が映画が進むにつれ、少しづつ垢抜けていくようになる。少しづつ変わっていく姿を見るのは悪くない。

(参考作品)
存在の耐えられない軽さ
レナオリンのセクシーさが際立つ


存在の耐えられない軽さ
プラハの春の若者


蜘蛛女
映画史上空前の悪女
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映画「エアポート75」 カレン・ブラック

2013-08-16 09:08:31 | 映画(洋画 89年以前)
映画「エアポート75」は1974年公開のパニック映画だ。

カレンブラックという俳優が亡くなった。「イージーライダー」の売春婦役で名を売り、「華麗なるギャツビー」ではヒロイン、デイジーの夫と不倫を重ね不慮の死を遂げるウィルソン夫人を演じた。「エアポート75」ではメジャーな俳優が大勢出演している中で実質的な主演を演じている。彼女にとっても一番いい時代だったのかもしれない。彼女が好きかどうかを別として、全盛時の彼女を映す航空パニック映画を見てみたくなった。娯楽としてみる分には十分楽しめるスリルあふれる映画と言える。

コロムビア航空の409便が、定刻通りにワシントンのダレス国際空港を飛び立ち、ロサンゼルスに向かった。
飛行機に乗り合わせている乗客には、有名な映画スター、グロリア・スワンソン(本人)とその秘書ウィニー・グリフィス(O・サマーランド)、ロスへ難しい腎臓の手術を受けにゆくジャニス・アボット(リンダ・ブレア)とその母、アル中気味の中年婦人デバニー(マーナ・ローイ)、コロムビア航空副社長婦人のパトローニ(スーザン・クラーク)と息子、カトリックの尼僧、ルース尼(ヘレン・レディ)とベアトレス尼、かつては有名な喜劇俳優だったバーニーなどがいた。
ジャンボ機の2階にある操縦席にはステイシー機長(エフレム・ジンバリスト・ジュニア)、彼を補佐する副操縦士、航空機関士のがいた。そしてナンシー・プライア(カレン・ブラック)が多勢のスチュワーデスを指揮していた。
ロス上空に濃霧が発生。やむなくソルト・レイク・シティに急拠着陸することになり、下降を開始していた。同じ時刻、ジャンボ機のすぐそばを自家用の小型ジェット機が同じ空港をめざして飛んでいた。ところが、操縦者は、操縦桿を握りしめめたまま、心臓発作で胸に激しい痛みを感じていた。操作不能になり小型ジェット機は急カーブを描いてジャンボ機に接近、激突した。前面ガラスが破壊され、副操縦士は機外に放り出された。機関士も即死、機長は重傷を負って操縦不能となった。巨大なジャンボ機と乗客の命はナンシーの手に委ねられた。彼女は地上の管制塔から送られてくる指示で操縦桿を握りしめた。

一方、地上ではこの緊急事態のために関係者が急拠空港に駆けつけた。コロムビア航空の副社長ジョセフ・パトローニ(ジョージ・ケネディ)、パイロットでナンシーの彼氏アラン・マードック(チャールトン・ヘストン)。そして空軍の軍人たち。ジャンボ機を救う方法は激突の際にあいた穴からパイロットを乗り込ませることことだった。直ちにジェット・ヘリコプターの準備が整えられ飛び立った。数千フィートの上空でヘリコプターをジャンボと等速にしてからロープを渡し、ジャンボの破壊した穴へ降下しようとしたのであるが。。。

この映画のそれぞれの場面がありうることなのか?なんてことはあまり考えない方がいいだろう。
一言で言うと、小型ジェットがジャンボ機の操縦席に激突して、操縦者が死亡または負傷し、スチュワーデスが操縦桿を握るということなのだ。そして、救助隊が突入して助けるという構図である。それなのでスチュワーデスが実質主演ということになるのだ。


この航空機が衝突からずっと危険にさらされている。脚本家は次から次へとピンチに陥らせる。
観客を次から次へとハラハラさせる。このタイミングがいい。飽きがこない100分であった。

そういうパニック映画にまさにあっている女優が2人出ている。
まずはグロリア・スワンソンだ。トーキー映画時代に人気俳優だった彼女のキャリアはあまりよくはしらない。ただ、凄い活躍だったそうだ。しばらく沈黙があった後、映画史上に残る名作「サンセット大通り」に出演する。この映画はある意味スリラーだ。そこで演じる不気味な女優役は凄い。

この映画で割と小柄なことに気づいた。アメリカ人みんな背が高いからそう感じるのかと思っていたら、実際彼女は150cmだったそうだ。意外だった。「サンセット大通り」の彼女はどうみてもウィリアムホールデンと背の高さが変わらないように見えたからだ。

そしてこの映画の数年前に大ヒットになった「エクソシスト」で主演を演じたリンダブレアが出演している。この映画はリアルに公開の時友人と見に行った。映画を見ている間ずっと圧倒されっぱなしであった。気触悪くてしばらくこの映画の余韻が残った。

ここではおとなしい。難病の患者を演じているからだ。

それでもこの2人が出ていると何かが起きるかもしれないと当時の観客は妙な期待をしてしまうのではないだろうか?

あとはヘレンレディが尼さん役を演じてギターで弾き語りをする。これがなかなかいい。
自分秘蔵のヒットチャートノートによれば、彼女は72年12月に「アイアムウーマン」73年9月「デルタの夜明け」で2曲全米ヒットチャート№1に輝いている。そのあとの出演だ。

一発屋はいくらでもいるが、2曲№1になる人は少ない。ここで歌われる声は懐かしい。
チャールトンヘストン、ジョージケネディという名優も加わり楽しく見れる娯楽作品に仕上がった。

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映画「フォローミー」 ミア・ファロー

2013-08-05 18:48:41 | 映画(洋画 89年以前)
映画「フォローミー」は1972年のイギリス映画だ。

「第三の男」のキャロルリード監督の遺作にあたる。人気俳優ミアファローが主演で、割と人気あるのにdvd化されていなかった。いつものようにツタヤ復刻版はありがたい。この映画は「先入観なしに見るといいよ」と聞いていた。確かにその通り。
コメデイタッチの展開が軽快な映画だ。

英国の上流階級に属する会計士チャールズ(マイケル・ジェイスント)には深刻な悩みが1つあった。
新妻ベリンダ(ミア・ファロー)が動きがおかしいのだ。いったん外出すると帰ってこないことが多い。夫は「浮気しているのではないか。」と心配してしまう。チャールズは私立探偵のクリストフォルー(トポル)に妻の調査を依頼した。
結婚のいきさつを語った。ある日チャールズが街で小さなレストランを見つけた。出来たばかりの店で客がいない。覗いてみると、かわいいウェイトレスがいた。アメリカ訛りのイングリッシュで愛想がいい。話し込んでみると惹かれるものがある。彼女はうぶだった。チャールズはいろんなことを教えてあげた。そのあどけなさに魅かれて結婚する。

彼は仕事一辺倒の生活だった。仕事を終えたアフターは上流の人たちとの付き合いがある。べリンダも付き合わせられる。でも慣れない。最近は一度外出したっきりなかなか帰ってこないことが多かった。公園でボーとしたら時間がたっていたといって、チャールズと同伴するパーティに遅れてきたりすることが多かったのだ。義母も憤慨している。
本当は何だろうか?依頼を受けた探偵のクリストフォルーはベリンダの追跡を開始した。


しばらくしてクリストフォルーはチャールズに報告をした。「恋人」はいるようだと。。。
外交官風の紳士らしい。チャールズは落胆した。
報告を受けたチャールズは、ベリンダを怒鳴った。
彼女は自分の潔白を語った。そのあとで最近ちょっとおかしな人に付きまとわれることがあるというのだが。。。。

ここで一つのサプライズがある。
一瞬笑ってしまう。起承転結の「転」の場面に入りかかったところだ。
ここが一番のヤマ場だ。キャロルリード監督の名作「第三の男」でオーソンウェルズが現れる場面と同じようなときめきを感じる。

旦那の様子がおかしいと浮気を疑うのは「シャルウィーダンス」で、逆はヒッチコックの「めまい」だ。
基本的には「めまい」と同類だが、ストーリーの流れは違う。
探偵が追う風景が出てくるのはもう少し後だ。しかも、それがコメディチックだ。


ミアファローの長いキャリアでも、抜群にキュートな役である。かわいい。
この映画はセレブな英国上流社会になじめない女の子を演じる。
アンバランスな感じで、ホラー好きな若妻だ。
2人が結婚前につきあっているところを映す場面がいい。芸術や音楽に関心のなかった彼女を一生懸命教育しようとしている夫の姿もいいし、それに素直に従っているミアファローも可愛い。
モンキーダンスのようなダンスをロックもどきの曲で踊っている姿には時代を感じる。でもこれがいいんだよね。
「華麗なるギャツビー」のデイジー役がこの2年後だ。一転ずるいセレブ女になる。
ウディアレンの映画に出るようになるのは10年近く先である。

ウキウキさせられるいい作品だ。
コメント
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