映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「龍三と七人の子分たち」 ビートたけし&藤竜也

2015-04-26 21:08:14 | 映画(日本 2015年以降主演男性)
映画「龍三と七人の子分たち」を映画館で見てきました。

イヤー!おもしろい
北野武監督の一連の映画はちょっとクールな作風だ。近作の「アウトレイジ」は実に面白かったが、それまでの作品では、ちょっと合わないなあというのも多かった。ただ、これは違う。ビートたけしのテレビでのアップテンポなコミカルなタッチがそのまま出ているのだ。


これはたけしの脚本の勝利だ。ヤクザ仲間のキャラクターも個性的で面白い。基本的筋はヤクザ対ヤクザでも、ヤクザ対警察でもなく、関○連合を意識したような暴走族上がりの若い愚連隊との対決にしている。現存する極悪集団を意識したライバルとのワル同士の葛藤をコミカルなセリフで楽しく見せている。劇場はまさしく笑いの渦、自分も腹を抱えて笑いまくった。見てよかった。

今回は一転マル暴の刑事役↓


70歳の高橋龍三(藤竜也)は、元ヤクザの組長だが“鬼の龍三”と畏れ慕われた時代はもはや過去のもの。現在は家族にも相手にされず、社会にも居場所がなく、大企業で働く息子・龍平(勝村政信)の家に肩身の狭い思いで身を寄せながら「義理も人情もありゃしねぇ」と世知辛い世の中を嘆いている。


そんなある日、オレオレ詐欺に引っかかったことをきっかけに、元暴走族の京浜連合と因縁めいた関係になった龍三は「若いヤツらに勝手な真似はさせられねぇ」と、昔の仲間に召集をかける。集まったのは、若頭のマサ(近藤正臣)、はばかりのモキチ(中尾彬)、早撃ちのマック(品川徹)、ステッキのイチゾウ(樋浦勉)、五寸釘のヒデ(伊藤幸純)、カミソリのタカ(吉澤健)、神風のヤス(小野寺昭)の7人。どうせ先は長くないのだからと盛り上がった龍三たちは勢いで“一龍会”を結成、京浜連合をことごとく邪魔しまくるのだった。やがて京浜連合のチンピラたちは、調子に乗り始めたジジイたちを疎ましく思うようになり、一龍会vs.京浜連合の対立は龍三や子分の家族を巻き込み一大騒動へと発展していく……。(作品情報より)


個性豊かなキャラクターをそろえたものだ。
それぞれに一芸をもつ元やくざたちはみんな度胸が据わっている。修羅場をくぐって生き抜いていた老人たちというのをうまく演じている。
そういう名脇役をひきいるのが藤竜也と近藤正臣だ。中尾彬はその強面のおかげでよく暴力団の幹部役が多いが、ここでは詐欺師なのでいつもとちょっと違う役柄である。「太陽にほえろ」の刑事役で名高い小野寺昭が久々にうまい芝居を見せるのがいい感じだ。

1.藤竜也
この俳優とは相性がいい。初めてみたのはテレビドラマ「時間ですよ」篠ひろ子の小料理屋で一人飲む影のある男を演じた時であった。その後大島渚監督「愛のコリーダ」の無修正版をパリでみている。彼のアソコもばっちり映っていたし、激しい絡みは30年以上たっても忘れられない。その後の「スープオペラ」もよかったし、二階堂ふみに流氷の氷の上に取り残される「私の男」もよかった。今回見に行く気になったのも藤竜也との相性の良さがあるからだ。
昔ヤクザというとクールなイメージだし、元来の彼のキャラはそうだけど、ここではコミカルな味を出している。なかなかいい。美人妻の芦川いずみはどんな感じでこの作品をとらえているのかなあ??

2.近藤正臣
昭和40年代半ばの彼の活躍はめざましかった。当時小学生の自分には「柔道一直線」での桜木健一のライバルの姿が目に浮かぶ。劇中足でピアノを弾く姿を披露したことはあまりにも有名だ。


この直後は二枚目役でもてはやされたものだった。その彼の顔つきがすっかり変わった。それにしても変わりすぎてすこし驚く。元やくざでギャンブル好きというキャラを実にうまく演じる。その昔は笑いすら見せないキャラだったが、おかしな言葉も連発する。すごいギャップだ。

これからネタばれあり注意

3.おかしかったシーンいくつか
(ポイント制)
ヤクザの組を再結成しようとしたあと、組長を決めようとする。そこで出た提案は、一番悪さをしてきた男を組長、二番目を若頭にしようとするわけだ。殺しと恐喝傷害、詐欺それぞれにポイントをつけて、それに刑務所勤めの通算年数を足し算して、一番数の多いのが組長だ。結局それで一番ポイントの多いのが龍三というわけだ。

(競馬の買い目の指示)
街宣車を追っ払うことで、企業から裏金をもらう。ギャンブル好きなメンバーはすぐさま競馬場に向かうが、なかなか当たらない。ここぞとばかり最後の勝負に出る。龍三組長は「55」の買い目を指で指示する。レースは買い目通りになり大当たり。1200万円の配当ということで大はしゃぎするが、買いに行った男は残念でしたねという。「うそだろ!」と怒る龍三。確かに「55」と指で指示したが、龍三の指は2本詰めているので、遠目には「35」しか見えないという話もえらくおかしい。


(路線バスとのカーチェイス)
殴りこみに行った先の愚連隊の事務所にいくが、幹部たちはあわてて逃げていく。龍三たちはなんとかつかまえて落とし前をつけなければ気が済まない。そこで路線バスをハイジャックして愚連隊の幹部たちを懸命に追う。道が狭い所に車が逃げ込んでも、バスが必死に追う。そうすると、商店街にある露店の店構えがぐしゃぐしゃになる。それでも追いまくった行く末は???。。。これも結構笑える。

こんな小話が盛りだくさんの映画である。
ここまで笑うってことしばらくなかったので気分がすっきりした。

(参考作品)
アウトレイジ
奇想天外な男たちの生きざま


アウトレイジ ビヨンド
前作をさらにスケールアップ


愛のコリーダ
阿部定にアソコを切られる男を演じる藤竜也
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映画「イコライザー」 デンゼルワシントン

2015-04-17 05:53:02 | 映画(洋画 2013年以降主演男性)
映画「イコライザー」は2014年公開のデンゼルワシントン主演映画だ。


元CIAのエージェントが寝た子を起こされて、派手に暴れまわるというパターンは実に多い。今回もその一つである。でも数多いそのパターンの中でも少し色合いが違うかもしれない。デンゼルワシントンが強すぎるのである。殺人機械と言ってもいいくらいだ。しかも、やる時はやるとばかりにコテンパンに相手をぶっ潰す。手加減が一切ない。これはすげえや。

昼はホームセンターで真面目に働くマッコール(デンゼル・ワシントン)。元CIAのトップエージェントであったが、現在は静かに暮らしている。眠ることができない彼は深夜、近所のカフェで読書をするのを日課としていた。ある夜、そこで娼婦のテリー(クロエ・グレース・モレッツ)と出逢う。


そして本に関する他愛のない会話を交わす内に、彼女がロシアン・マフィアに酷い仕打ちを受けていることを知る。人生に夢さえ抱けず、傷つけられるテリーを助けるため、夜、マッコールはもう一つの「仕事」を遂行する。それは人々を苦しめる悪人を葬り、どんなトラブルも完全抹消すること。しかし、この「仕事」がきっかけとなり、ロシアン・マフィアがマッコールを追い詰めて行くが……(作品情報引用)

ホームセンターで仕事をしながら、夜の読書を楽しむ姿からはいっさい変化は想像できない。


でもデンゼルワシントンの顔を見ると何かやりそうな気がしてくるんだよね。赤マル急上昇中のモレッツちゃんは「タクシードライバー」の娼婦役を連想させるような雰囲気、同情心なのかひかれていくデンゼルが相手に話をつけに行くと、そこで一気に必殺仕事人のような雰囲気になってしまうのだ。


ホームセンターで働くということがデンゼルワシントンの悪いものつぶしに関係あるとは思っていなかったが、途中から大ありとなる。
ドリルにハンマー、はたまたくぎ打ち機など工具を使いまくるのだ。これが凄い。より残酷に見えてしまう。ライバルのロシアンマフィアもまあ強い、強い!!顔も怖い。2人の接近を見ているとなんかぞくぞくする映画だった。



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映画「バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」マイケルキートン

2015-04-15 18:02:44 | 映画(洋画 2013年以降主演男性)
映画「バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」を映画館で見てきました。


何と言っても本年のアカデミー賞作品賞の映画を見逃すわけにはいかない。4月になって毎日のように宴席でくたくたになって映画どころではなかったけれど、体調整えてじっくり鑑賞した。初期の「バットマン」におけるマイケルキートンは好きで、迫真の演技が見れるという噂で今回は楽しみにしていた。脇を固めるエドワード・ノートンとエマストーンが期待通りに活躍し、監督とは何度もコンビを組んでいるナオミワッツもそれなりの存在感を見せる。

監督のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ「21グラム」「バベル」では時間軸を前後に揺さぶる手法をとっていたので、この映画もそうかと思っていたらちがっていた。黒澤明監督「生きる」の外国版の色彩をもつ「BIUTIFUL ビューティフル」もよかった。彼の映画には確かにハズレはない。ただ、この映画でひたすら感心したのが撮影である。当代きっての撮影監督エマニュエル・ルベツキの連続アカデミー賞受賞は当然というべき映像にうなってしまう。


かつて、ヒーロー映画「バードマン」で、大スターとなったリーガン(マイケル・キートン)は、いまや落ちぶれていた。ヒットした「バードマン」シリーズの第4作目の出演を断って以来、すでに20年が経過している。結婚はしたもののうまくいかず、離婚。一人娘のサム(エマ・ストーン)とは、うまくいっていない。サムは、薬物に手を出している様子である。


なんとか起死回生のカムバックをと、リーガンはブロードウェイの舞台に立とうと決心する。リーガンが愛読するレイモンド・カーヴァーの短編小説『愛について語るときに我々の語ること』を、リーガン自身が脚色、演出、主役までこなそうとする。

父娘の関係を修復しようと、リーガンは、サムを付け人にする。稽古をはじめて、すぐ問題が起こる。プレビュー公演を控えているのに、共演者の男性が大けがを負う。すぐに、代役を見つけなければならない。
舞台の共演者は、リーガンの現在の恋人ローラ(アンドレア・ライズブロー)、下積みが長く、やっとブロードウェイで初舞台となるレズリー(ナオミ・ワッツ)である。レズリーは代役としてレズリーの恋人である実力派舞台俳優のマイク(エドワード・ノートン)を連れてきた。芝居はうまく客の呼べる俳優だが、マイクはなにかと問題のある。それでも、舞台のプロデューサー、ジェイク(ザック・ガリフィナーキス)は、「マイクなら客は入る」と大賛成だ。


マイクは、リーガンの書いたセリフに、いちゃもんを付ける。リーガンはとりあえずマイクの提案を受け入れる。マイクは、サムにちょっかいを出す。さらに、ギャラをふっかけてくるので葛藤がうまれる。プレビュー公演にこぎつけたのに、とんでもない失態で、芝居を壊してしまう。
しかも、リーガンたちにタイムズの取材がくる。マイクは、リーガンが話したことを、さも自分が話したように、でっちあげる。リーガンは怒る。そのたびごとに、リーガンの前に「バードマン」が現れ、責め立てる幻聴に悩まされるのであるが。。。

マイケルキートン自らの人生に照らし合わせるかの如くのストーリー展開だ。まさにキャラクター「バードマン」が現れるし、影の声が聞こえまくる。でもしつこさは感じなかった。前半は緩慢な部分もあったが、エマストーンの長まわしセリフで目がパッチリしてあとはひたすら行け行けドンドンだ。

少しネタばれありで語る。

1.長まわしの映像
この映画の長まわしには驚く。ビートルズのアルバム「アビーロード」はB面の独立した数々の曲が連続して、切れまなく流れるかのようにつながっていく。見ながら連想したのはその鮮やかな流れだ。連続するだけでなく、1つ1つの場面カットにも時間をとる。セリフも長めだ。これをこなした主たる3人マイケル・キートンとエドワード・ノートンそしてエマストーンはお見事である。


印象的なシーンが2つある。まずはマイケルキートンとエドワードノートンの取っ組み合いのけんかのシーン。これはカットを挟まずに長めに続く。これってかなり難易度が高い。取っ組み合いをするだけでなく、セリフも続く。1テイクじゃできないでしょう。どのくらいの練習を積んだのか?は知りたい。

もう一つは舞台の切れ間にタバコを一服吸おうと外に出たマイケルキートンが扉がしまって中に入れなくなり、外を彷徨うシーン。これも凄い。ふと気がつくとブロードウェイの街並みを歩いていて、タイムズスクウェア前のメイン通りに出てしまう。その時はパンツ一丁の裸だ。しばらく外を彷徨い、リーガンじゃないかとみんなに騒がれながら、再度劇場に戻り、客席側からはいって演技を続けるシーンが実におもしろい!!

2.ドラムスの響き
バックでジャズ調のドラムスがずっと流れている。これが効果的に響く。ある意味精神が錯乱している状態が続く主人公リーガンの心の不安定さを示している。メキシコのドラマーであるアントニオ・サンチェスによるドラムスが抜群にいい。でもそれだけではない。途中、マーラーやチャイコフスキーの交響曲や自分が好きなラフマニノフの曲もかかる。音楽は映像のイメージを強化させる役割をもつ。常に不安に付きまとわれているリーガンの心の動きを増長させる。これもお見事だ。


3.撮影のすばらしさ
撮影監督のエマニュエル・ルベツキはこれまでも自分のブログで絶賛してきた。「ゼログラビティ」もいいけど、ビックリしたのはベンアフレック主演「トゥザワンダー」の構図の美しさだ。そこでは今回とは真逆のカット割りの多い映像であった。今回は手持ちカメラなのであろうか?ひたすら登場人物を追いかける。全編ワンカットという宣伝文句は多少言いすぎの気もするが、この映像どうやって撮ったんだろうという場面が数多くあった。やっぱり一流の人というのは何でもできるんだなあと改めて感じる。

(参考作品)
バットマン/バットマン リターンズ
マイケルキートン&ティムバートンの名コンビ


21グラム
アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥの出世作、ナオミワッツのしなやかなボディが印象的


トゥ・ザ・ワンダー
エマニュエル・ルベツキ撮影の映像美を楽しむ


愛について語るときに我々の語ること
村上春樹のこなれた訳を楽しむ
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