映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「淵に立つ」 深田晃司&浅野忠信

2017-06-18 20:55:17 | 映画(日本 2015年以降主演男性)
映画「淵に立つ」は2016年公開の日本映画


カンヌ映画祭「ある視点」部門審査員賞受賞作品である。深田晃司監督作品は「ほとりの朔子」を見ている。二階堂ふみ演じる福島の田舎町を旅する浪人生が主人公の作品で、非常に感受性の強い少女が大人になるときの微妙な時期を描くみずみずしい映画という印象を受けた。今回は町工場が舞台だが、場所を特定していない。平凡な親子三人家族に浅野忠信演じる夫の旧友が突然住み込みで働くことになる。それにより変貌する家族の姿を描いていく。

深田晃司監督自らの脚本で、予想のつかない展開に持ち込まれるストーリー作りは巧みである。

町の平凡な町工場に夫鈴岡敏雄(古舘寛治)、妻章恵(筒井真理子)と10歳の娘が暮らしている。そこにある日突然1人の男が姿を現す。男は八坂(浅野忠信)といい夫の旧友である。八坂はここで働かせてほしいといい、10年ぶりに出会ったという夫は素直に受け入れる。突然住み込みの男性が働くことは当然妻は聞いていない。驚くが、丁重にふるまう八坂は一緒に住みだす。


その後、娘が八坂になつき、八坂が幼いころに習ったというオルガンの練習曲を娘に教えてあげると、母親も八坂に好感を持つようになる。そして、4人で川のほとりに遊びに出かけたとき、八坂と母親は急接近する。しかし、ここである事件が起きてしまう。

8年後娘は身障者になってしまっていた。新しい住み込みの青年山上(太賀)が夫と一緒に仕事をしていた。絵心がある山上は娘のスケッチを描いている。その山上があるとき八坂という人が以前働いていましたよねと夫に告げる。そして、自分は会ったことはないけれど、山上の実子だと告白するのであるが。。。


小さな零細企業の中で、妻が住み込みの従業員とできてしまいねちっこい愛を重ねるというようないかにも日活ポルノみたいな流れを途中まで連想したら、ここで急激な転換点をつくる。実にショッキングだ。転換点の前に八坂が妻の身体を手籠めにしようとして妻に猛烈な抵抗を受けるシーンが映し出される。そのあとはそれ自体のむごいシーンは映さないが、とんでもないことが起こる。

浅野忠信演じる八坂は、住み込み始めるときはバカ丁寧な態度で通す。しかし、映像は八坂が夫に対して急に言葉遣いを変えて責め立てるシーンを映し出す。この不気味な姿が見どころだ。


あとは妻役の筒井真理子の感情の起伏を丹念に追っていく。陰のある同居人になぜか衝動的に魅かれ、女の欲望をよみがえさせる。しかし、彼女が思っていた以上の意外な展開に驚くと同時に、夫が何でこの男を受け入れたのかということに絶望する。何から何まで悪い方向におちていくことにうろたえる女心をうまく演じている。これはなかなかうまい。

この2人と人生を達観しながらもときどき感情の起伏の激しさを見せる工場主を演じる古舘寛治がいい感じだ。


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映画「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」

2017-06-17 06:56:40 | 映画(洋画:2016年以降主演男性)
映画「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」は2016年日本公開のアメリカ映画

自分はDVDスルーとなってしまったが、評価が高い映画である。ハリウッド映画全盛の40年代から活躍していた脚本家ダルトン・トランボは、反体制のスタイルで偉そうにしており、まだ米ソが対ドイツで協調路線を取っていたので共産党員にもなってしまう。ところが、二次世界大戦が終了すると一転、米ソの冷戦が始める。その際映画界にマッカーシズムが蔓延するのだ。最初はタカをくくっていたが、逮捕拘束もされてしまう。保守層から白い目で見られていた。

しかし、それでもトランボはへこたれない。「ローマの休日」など隠れて名作を生み出す。ここのあたりがすごい。それをこの映画で描いている。芸達者ヘレンミレンジョン・グッドマンを従えて、主役のブライアン・クランストンの緩急自在の演技がすばらしい。個人的にはあまり記憶に残っていない俳優である。でもうまい!妻役のダイアンレインは久々にみる。「ストリートオブファイア」のころとは違う円熟の演技である。


戦後のアメリカ映画界の弾圧ではいろんなドラマが生み出されている。もともとアカ派のエリアカザンは仲間をちくったということで評判が悪い。冷戦時代では保守政治家筋からの弾圧が起きても当然の流れといえる。保守派であるジョンウェインが悪役になってしまうのを映すのは珍しい。トランボはゴーストライターのごとく、陰に隠れて活躍している。名前公表に向けての流れが映画で取り上げられる。そしてケネディ政権誕生時にJFケネディ大統領自ら「スパルタクス」を鑑賞して、ようやく禊が取れたということになる。


このトランボが生き延びたのも資本主義の世界ならではのことである。ミルトン・フリードマンが名著「資本主義の自由」でとりあげているように、スターリンやヒトラーのような全体主義の世界では個人を雇うのは国家である。それ故トランボたちも職にありつけることするなく粛清されてしまうはずである。


久々のアップになる。アウトプットの調子が悪いが、少しづつ書き始めて行こう。
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