映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

カンボジア映画「シアタープノンペン」 マー・リネット

2016-07-29 18:02:53 | 映画(アジア)
カンボジア映画「シアタープノンペン」を知性の殿堂岩波ホールで見てきました。


カンボジア映画は初めてである。蓮池の水の中で優雅にたたずむアジアンビューティの主人公マー・リネットが美しい。この写真をみて、思わず見てみたくなった。細身でスタイル抜群の主人公はその体型にジャストフィットする服を見事に着こなす。あでやかである。

映画自体は主人公ソポンが夜を彷徨い偶然入った廃墟のような映画館で見た映像に何と自分にそっくりな母親の姿を見つけ驚き、その映画館主が以前撮ったという映画のエンディングが失われていることを知り、主人公が演じるという話だ。


クメールルージュによるカンボジアの圧政という歴史上の悲劇のために、自分の母親や映画館館主が苦労したという話が絡んでいく。物語自体はあっけないが、アジアンビューティの主人公を追いかけて見るだけで良い心地になる。

プノンペンに暮らす女子大生のソポン(マー・リネット)は、病を患う母(ディ・サヴェット)と厳しい軍人の父(トゥン・ソーピー)、そして口うるさい弟との息苦しい生活にうんざりしていた。授業をサボってはボーイフレンドのベスナと遊び歩き、父が決めた将軍の息子とのお見合い話から逃げ回る日々。そんなある晩、ソポンは街中でベスナとはぐれてしまう。ひとり街をさまよううちに、バイクの駐輪場として使われている廃墟のような映画館へとたどり着く。


すると、古ぼけたスクリーンには自分とそっくりの少女が映し出されていた。驚きに目を見はるソポン。主演女優“ソテア”はソポンの母だった。だが、そこにいる“ソテア”は、現在の母からは想像もできないほど美しく輝いていた…。(作品情報より引用)

猥雑なプノンペン市内の映像を見ると、昨年ベトナムのホーチミン市に寄ったときと似たような印象を持つ。戦争に巻き込まれたことが共通した点である。1975年からカンボジアを呑み込んだ暗黒のクメール・ルージュの圧政は3年以上続き、多くの人が惨殺された。ベトナム戦争と比較するのもどうかと思うが、ポルポトによる悲劇は遥かにむごい。


軍人の父、かつて母と愛し合った映画監督など、クメール・ルージュの時代を再現する場面が出てくると気分が落ち込む。それでもアジア映画らしい映像美には思わずうなった。



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ドキュメンタリー映画「AMY」 エイミー・ワインハウス

2016-07-27 21:14:02 | 映画(洋画:2013年以降主演女性)
ドキュメンタリー映画「AMY」を映画館で見てきました。


2011年7月に27歳で急逝した英国人シンガー、エイミー・ワインハウスの人生を追ったドキュメンタリーだ。これはなかなか良くできている。あくまで現存するフィルムを中心に彼女の人生を追っていく。第88回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞他、世界で40以上の賞を受賞している。

少女のころからハスキーな美声に恵まれジャズ好きの少女が歌手となり、シングル「Rehab」を大ヒットさせ、2008年のグラミー賞で5部門を受賞する。それだけでいえば、サクセスストーリーのようだが、似たような堕落しきった若者とつき合い、結婚しドラッグとアルコールにはまっていく。その姿を別の俳優が演じる再現フィルムでなく、実際のエイミーが歌う姿をすでに撮ってあるオフィシャルな映像に加えて、プライベート映像を構成し、ドキュメンタリーにまとめる。この編集能力は凄い。

若くして亡くなった名ロックシンガーといえば、ジャニス・ジョプリンだ。ハスキーボイスでヒット曲を連発したあと、あっけなく亡くなってしまう。ドラッグにはまったという意味では経路は同じだが、エイミー・ワインハウスのほうが歌はうまい。

それだけに惜しまれるが、このドキュメンタリーを見ると、到底長生きなんてできない生活をしていたことが身にしみてよくわかる。

「Rehab」は日本の街でも随分と流れていた大ヒット曲
you tubeの再生回数が1兆をこえて凄すぎる。



グラミー賞の受賞者発表のプレゼンテイタ―がトニーベネットとナタリーコールだ。エイミーの父親がトニーベネットの大ファンで、彼から自分の名前を呼ばれることに感激する。そして、トニーベネットがさまざまな歌手とのデュエットアルバムをつくった時にエイミーとジャズのスタンダード「BODY&SOUL」を歌う。このメイキングのシーンが一番印象に残る。エイミーのこの歌声は本当にしびれる。
そしてこの年2011年彼女はこの世を去る。




(参考作品)
AMY エイミー
サウンドトラックで聞くエイミーの歌声


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映画「ブルックリン」 シアーシャ・ローナン

2016-07-06 18:19:48 | 映画(洋画:2013年以降主演女性)
映画「ブルックリン」を映画館で見てきました。


1950年代の匂いがする映画って好きだ。ケイト・ブランシェット「キャロル」のもつしっとりしたムードに酔わされた自分は映画「ブルックリン」を見てみたいと感じる。

この映画も見て良かった。田舎娘が都会に出てきて、都会の荒波にもまれながら成長していくという類の話は古今東西たくさんの映画が作られてきた。ここではアイルランドからニューヨークブルックリンへの移民女性の物語だ。イタリア移民の青年との恋物語が語られたあとで、悲報が入って故郷に戻る。そこでまた恋物語が生まれる。さあどうなる?という展開だが、優しいムードの中で焦らずゆっくりと語られるので心地よく見ている時間を過ごせた。

1950年代アイルランドの町に住むエイリシュ(シアーシャ・ローナン)は、意地の悪い店主のいるドラッグストアで働いていた。彼女の将来を案じた姉の勧めでエイリシュはニューヨークへ渡米し、アイルランドからの移民が多いブルックリンの女子寮に住むことになる。しかし、高級デパートでの接客には慣れず、激しいホームシックに陥いる。


アイルランドから届く姉の手紙を読み返し涙に暮れるエイリシュの様子を見かねて、同郷の神父(ジム・ブロードベント)はブルックリン大学の会計士コースを受講するよう勧める。エイリシュは夜学に通い簿記を学ぶうちに少しずつ前向きになっていく。
そんな中、あるダンスパーティーでイタリア系移民のトニー(エモリー・コーエン)と出会う。


彼女は、水道工のトニーの誠実さに少しずつ心を開いていく。ところがある日、故郷から突然の悲報が届き、エイリシュはアイルランドへ帰郷する。そんな彼女を待ち受けていたのは、富豪の息子ジム(ドーナル・グリーソン)との再会であったが。。。

1.シアーシャローナン
映画「ハンナ」ではケイトブランシェット共演で小さい頃から暗殺者に育てられた少女を演じた。ラブリーボーンなどと比べてこの激しい映画での印象が強い。彼女自身アイルランド移民の家系に生まれ、ニューヨークで育つ。主演にこれ以上の適役はいないであろう。


田舎育ちでニューヨークに移住する時のドギマギする様子がらしくていいし、服装出で立ちが徐々に洗練されていく姿を見ると、ぐっと映像に引き寄せられる。かわいい。

2.50年代のムード
映画「キャロル」とほぼ同じ時代設定だ。しかも、シアーシャローナンが演じるのはルーニーマーラと同じデパートガールである。美人の職場主任に指導されながら少しづつ成長していく姿が健気だ。


映画キャロルもポストプロダクションのうまさが際立ち、色彩設計が豊かだったが、この映画も色合いがきれいな映画だ。タクシーのイエローでキリッと引き締めて、主人公が着る薄いイエローや水色の服装が明るい。恋人といくニューヨークの海水浴場での風景の全体的色彩設計がカラフルで、アイルランドの緩やかな海岸線での映像と対照的なのもいい。見ている間、ずっと快適な心地良さを感じることができた。

3.予測不能な動き
ブルックリンで1人のイタリア移民系の青年と知り合う。典型的なプロレタリア階級で優しい彼にグイッと引き寄せられる。ところが、故郷アイルランドから悲しい訃報が届き、帰国する。飛行機で気軽に移動できる現代とはまだ違う。青年は帰国して会えなくなるのかと思い、求婚する。合意して帰国するが、戻って富豪の家系に育った青年と接近する。家族も彼女がアイルランドにとどまることを望み、この恋愛を後押しする。


これってどうなるんだろうと思わせる予測不能な雰囲気が良い。ミステリーではないが、謎めいたものを感じる。この結末ってどうなんだろう。違う展開を予測しながらラストを見届けた人も多いかもしれない。自分はホッとした。

(参考作品)
ハンナ
シアーシャ・ローナンが演じる傑作アクション映画
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