映画「イン・ザ・ハイツ」を映画館で観てきました。
これはすばらしい!
躍動感のあるミュージカル映画である。
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「イン・ザ・ハイツ」はトニー賞を受賞したミュージカルを台湾系アメリカ人ジョンチャウ監督が映画化した作品である。ラテンの色彩が強いという解説に、なんか楽しそうと思って足を運んだがムチャクチャ良かった。
ともかく明るい。ワシントンハイツにいる住人の生活は必ずしも楽ではなく、気分が暗くなりそうな場面はいくらでもあるが、曲のノリでダークな部分を消す。それなので、後味がいい。
ニューヨークマンハッタンの北部、移民が多く住むワシントンハイツで、ドミニカ系二世のウスナビ(アンソニーラモス)は食品店を営んでいて、地元のみんなが買い物に立ち寄る。地元タクシー会社のロザリオ社長にはスタンフォード大学に進学した自慢の娘ニーナ(レスリーグレース)がいて、今度帰郷する。タクシーの呼び出し係のベニー(コーリー・ホーキンズ)は気のいい男でニーナが好きだ。ウスナビは店に買い物に来るデザイナーを目指しているヴァネッサ(メリッサバレラ)がお気に入りだ。
ニーナが帰郷して、街の秀才をハイツのみんなで暖かく迎えるが、様子がおかしい。大学を辞めようとしている話を聞いて、初耳の父親をはじめみんなビックリ。説得しようとしても難しそうだが。。。
⒈下町人情劇
ウスナビ、ニーナ、ベニーとヴァネッサの4人を中心に、すべてはワシントンハイツを中心にストーリーは展開する。実際に存在する移民中心のエリアだ。そこでは共存共栄でみんな助け合って生きている姿を見せてくれる。複雑な話ではない。
これって昭和40年代くらいまでの日本の下町と変わらないよね。下町人情劇とも言えるのだ。ここに来て、日本では近所付き合いの煩わしさを嫌がる傾向が次第に強くなっているデータが目立つ。アメリカでも同様だというのは米国共同体が変わりつつあることが書いてあるロバートパットナム「孤独なボウリング」を読んでもよくわかる。
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しかし、地域開発の波はこのエリアにもきている。みんなの馴染みの美容院も駅でいくつか先のブロンクスに移ることに決まったし、タクシー会社の社長も資金繰りの関係で資産売却せざるを得ない状況だ。ウスナビも祖国ドミニカに行くことをきめた。そういう地域情勢の変化も映し出される。まったく違うエリアだが、先日観たホーチミンを舞台にした「走れロム」の貧民マンションも頭に思い浮かべた。住民たちが宝くじが大好きだというシーンも同じである。貧乏人ほど一攫千金を夢みる。
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⒉ミュージカル
正統派ミュージカル映画が好きな訳ではない。ニューヨークが舞台のミュージカルというと、名作「ウエストサイドストーリー」を連想する。60年経ってもあの完璧なダンスの凄さはかわらない。下層社会を中心に描かれるのは同じだ。ポーランドとプエルトリコ移民の抗争を基調にした恋の物語である。音楽は名指揮者レナードバーンスタインでもポピュラー調の楽曲も多い。いつ見てもナタリーウッドにドキドキしてしまう「トゥナイト」をはじめとして何年たっても心に残る曲が多い。
ここでは、中米カリブ海の色彩が満載で俗っぽい部分が強い。こうやって映画を見終わって最も印象に残る曲と言ってもあげられる訳ではない。でも、それだからダメというのでない。ここでは全体に流れるカリビアンのムードとコミカルな歌詞のラップを楽しめればいいんじゃなかろうか。
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自分の映画ベスト3の1つである「ブルースブラザーズ」や「サタデーナイトフィーバー」を彷彿させるシーンも多い。周辺のストリートやハイツの中で住人たちが踊るダンスは「ブルースブラザーズ」でジェームスブラウンやレイチャールズの歌に乗って踊りまくる黒人たちのパフォーマンスをすぐさま連想する。
ラテン系クラブのダンスフロアのシーンは「サタデーナイトフィーバー」をダブらせる。サルサ音楽とディスコミュージックと鳴り響く音楽のテイストは違うけど、ノリの良いのは同じ。このサルサダンスは観ているだけでウキウキしてくる。
このダンスシーンと戦後ミュージカルのスターである元水泳選手の エスターウィリアムズの映画を連想させるプールのシーンが好きだ。コーエン兄弟の「ヘイシーザー」でもスカーレットヨハンソンが同じように水着着てオマージュしていたよね。夏にこのシーン観るのは心地よい。
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⒊名門大学に行ったのになじめない
タクシー会社の社長の娘ニーナが大学を辞めると聞いて、みんなビックリ。子どもの頃から上昇志向が強く地元のコロンビア大学に行っても良いのに、あえて遠方にあるスタンフォード大学に行った。それなのに、孤立してしまうことも多く、同じ寮の女の子が真珠をなくしたときに疑われたこともあったらしい。このエリア出身ということもあるのか?
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学費についても本人の奨学金はあってもそれだけでは足りない。父親は金策に走るが、滞納気味だった。日本の大学の学費も自分たちの時代よりずいぶんと高くなったと思うけど、アメリカの名門大学は日本の私立医学部並みである。軒並み高い。そんな金欠話も一部に織り込まれる。ただ、それだけに日本よりもアメリカは教育歴はかなり重視されているし、名門大学に行っているというだけで街のみんなの自慢になるというのは現代日本と違うかも。
⒋ニューヨークのダウンタウンへの引越し
ウスナビの恋人ヴァネッサは一生懸命お金を貯めてダウンタウンに引っ越そうとしている。お金はあるんだけど、それだけでは入居審査は通らない。40ヶ月分の収入証明書を出してくれと言われ、難しくなる。それは保証会社利用が必須になりつつある日本の賃貸事情と変わらないよね。
「サタデーナイトフィーバー」のトラボルタのダンス相手ステファニーもは上昇志向が強く、いつもマンハッタン話で見栄をはっている。ある意味このヴァネッサとかぶってしまう。あれから40年近く経つけど、マンハッタンのセンターを目指す女性の思考は変わらない。
逆に男性はトラボルタもそうだけど、この映画のアンソニーラモス演じるウスナビもまったくそういう上昇思考がない。ある意味そちらの方が好感がもてる。同時に応援したくなる。アンソニーラモスは若いころのロックのカルロスサンタナに顔が似ているね。
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前半から飛ばしまくりで、息も抜けず楽しい。でも、後半戦ちょっとバテ気味かも。それでも、実に楽しい映画を満喫できた。観に行かれる方はエンディングロールで帰らないようにご注意ください。
これはすばらしい!
躍動感のあるミュージカル映画である。
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「イン・ザ・ハイツ」はトニー賞を受賞したミュージカルを台湾系アメリカ人ジョンチャウ監督が映画化した作品である。ラテンの色彩が強いという解説に、なんか楽しそうと思って足を運んだがムチャクチャ良かった。
ともかく明るい。ワシントンハイツにいる住人の生活は必ずしも楽ではなく、気分が暗くなりそうな場面はいくらでもあるが、曲のノリでダークな部分を消す。それなので、後味がいい。
ニューヨークマンハッタンの北部、移民が多く住むワシントンハイツで、ドミニカ系二世のウスナビ(アンソニーラモス)は食品店を営んでいて、地元のみんなが買い物に立ち寄る。地元タクシー会社のロザリオ社長にはスタンフォード大学に進学した自慢の娘ニーナ(レスリーグレース)がいて、今度帰郷する。タクシーの呼び出し係のベニー(コーリー・ホーキンズ)は気のいい男でニーナが好きだ。ウスナビは店に買い物に来るデザイナーを目指しているヴァネッサ(メリッサバレラ)がお気に入りだ。
ニーナが帰郷して、街の秀才をハイツのみんなで暖かく迎えるが、様子がおかしい。大学を辞めようとしている話を聞いて、初耳の父親をはじめみんなビックリ。説得しようとしても難しそうだが。。。
⒈下町人情劇
ウスナビ、ニーナ、ベニーとヴァネッサの4人を中心に、すべてはワシントンハイツを中心にストーリーは展開する。実際に存在する移民中心のエリアだ。そこでは共存共栄でみんな助け合って生きている姿を見せてくれる。複雑な話ではない。
これって昭和40年代くらいまでの日本の下町と変わらないよね。下町人情劇とも言えるのだ。ここに来て、日本では近所付き合いの煩わしさを嫌がる傾向が次第に強くなっているデータが目立つ。アメリカでも同様だというのは米国共同体が変わりつつあることが書いてあるロバートパットナム「孤独なボウリング」を読んでもよくわかる。
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しかし、地域開発の波はこのエリアにもきている。みんなの馴染みの美容院も駅でいくつか先のブロンクスに移ることに決まったし、タクシー会社の社長も資金繰りの関係で資産売却せざるを得ない状況だ。ウスナビも祖国ドミニカに行くことをきめた。そういう地域情勢の変化も映し出される。まったく違うエリアだが、先日観たホーチミンを舞台にした「走れロム」の貧民マンションも頭に思い浮かべた。住民たちが宝くじが大好きだというシーンも同じである。貧乏人ほど一攫千金を夢みる。
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⒉ミュージカル
正統派ミュージカル映画が好きな訳ではない。ニューヨークが舞台のミュージカルというと、名作「ウエストサイドストーリー」を連想する。60年経ってもあの完璧なダンスの凄さはかわらない。下層社会を中心に描かれるのは同じだ。ポーランドとプエルトリコ移民の抗争を基調にした恋の物語である。音楽は名指揮者レナードバーンスタインでもポピュラー調の楽曲も多い。いつ見てもナタリーウッドにドキドキしてしまう「トゥナイト」をはじめとして何年たっても心に残る曲が多い。
ここでは、中米カリブ海の色彩が満載で俗っぽい部分が強い。こうやって映画を見終わって最も印象に残る曲と言ってもあげられる訳ではない。でも、それだからダメというのでない。ここでは全体に流れるカリビアンのムードとコミカルな歌詞のラップを楽しめればいいんじゃなかろうか。
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ラテン系クラブのダンスフロアのシーンは「サタデーナイトフィーバー」をダブらせる。サルサ音楽とディスコミュージックと鳴り響く音楽のテイストは違うけど、ノリの良いのは同じ。このサルサダンスは観ているだけでウキウキしてくる。
このダンスシーンと戦後ミュージカルのスターである元水泳選手の エスターウィリアムズの映画を連想させるプールのシーンが好きだ。コーエン兄弟の「ヘイシーザー」でもスカーレットヨハンソンが同じように水着着てオマージュしていたよね。夏にこのシーン観るのは心地よい。
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⒊名門大学に行ったのになじめない
タクシー会社の社長の娘ニーナが大学を辞めると聞いて、みんなビックリ。子どもの頃から上昇志向が強く地元のコロンビア大学に行っても良いのに、あえて遠方にあるスタンフォード大学に行った。それなのに、孤立してしまうことも多く、同じ寮の女の子が真珠をなくしたときに疑われたこともあったらしい。このエリア出身ということもあるのか?
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学費についても本人の奨学金はあってもそれだけでは足りない。父親は金策に走るが、滞納気味だった。日本の大学の学費も自分たちの時代よりずいぶんと高くなったと思うけど、アメリカの名門大学は日本の私立医学部並みである。軒並み高い。そんな金欠話も一部に織り込まれる。ただ、それだけに日本よりもアメリカは教育歴はかなり重視されているし、名門大学に行っているというだけで街のみんなの自慢になるというのは現代日本と違うかも。
⒋ニューヨークのダウンタウンへの引越し
ウスナビの恋人ヴァネッサは一生懸命お金を貯めてダウンタウンに引っ越そうとしている。お金はあるんだけど、それだけでは入居審査は通らない。40ヶ月分の収入証明書を出してくれと言われ、難しくなる。それは保証会社利用が必須になりつつある日本の賃貸事情と変わらないよね。
「サタデーナイトフィーバー」のトラボルタのダンス相手ステファニーもは上昇志向が強く、いつもマンハッタン話で見栄をはっている。ある意味このヴァネッサとかぶってしまう。あれから40年近く経つけど、マンハッタンのセンターを目指す女性の思考は変わらない。
逆に男性はトラボルタもそうだけど、この映画のアンソニーラモス演じるウスナビもまったくそういう上昇思考がない。ある意味そちらの方が好感がもてる。同時に応援したくなる。アンソニーラモスは若いころのロックのカルロスサンタナに顔が似ているね。
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前半から飛ばしまくりで、息も抜けず楽しい。でも、後半戦ちょっとバテ気味かも。それでも、実に楽しい映画を満喫できた。観に行かれる方はエンディングロールで帰らないようにご注意ください。