映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「幼な子われらに生まれ」 浅野忠信&田中麗奈

2017-08-30 19:21:07 | 映画(日本 2015年以降主演男性)
映画「幼な子われらに生まれ」を映画館で観てきました。


なかなかの傑作である。浅野忠信主演の新作は、田中麗奈演じる妻と連れ子2人と暮らす男を演じる。夫婦ともバツイチで再婚、男にも前妻との間に生まれた娘がいる。微妙な年齢に育った娘の反発に戸惑う男の姿を巧みに演じる。重松清の原作をベテラン荒井晴彦が脚本化し、「繕い裁つ人」「少女」三島有紀子監督がメガホンをとる。

「映画芸術」をホームグラウンドとした批評家として一言多い荒井晴彦であるが、脚本家としては超一流である。余韻を残す間の取り方がうまい。それでも「この国の空」はそんなに好きになれなかったが、この映画ではセリフにならない情感のこもったシーンのつくり方が実にうまい。それに合わせての浅野忠信の熟練した演技がよく、女流監督による女性のいやらしい部分の見せ方もうまい。おそらくは本年屈指の作品と評価されるであろう。

東京郊外に住むサラリーマン田中信(浅野忠信)はバツイチで再婚、専業主婦の妻・奈苗(田中麗奈)と妻の連れ子2人と幸せに暮らしていた。ところが、夫婦の間に新しい子供ができたことで、連れ子の長女が猛反発するようになる。一方で、キャリアウーマンの元妻・友佳(寺島しのぶ)との間にもうけた実の娘と3カ月に1度会うことになっていた。


血のつながらない長女は子供が生まれて捨てられるのではと辛辣になり、「本当のパパに会わせて」というようになる。もともと奈苗は家庭内暴力で離婚し、長女もその被害を受けていたのにそう言われることに息苦しさを覚え始める信は、奈苗の元夫・沢田(宮藤官九郎)と会うことになるのであるが。。。


浅野忠信は好演だが、田中麗奈演じる奥さんが可愛い。いいなと思わせるシーンがいくつもある。一方で寺島しのぶ演じる元妻がいやな女だ。何で私の気持ちがわからないと元夫に言う話し方が実にいやらしい。観ていてムカつく。でもこういうセリフを女性から引き出す三島監督のうまさもあるのであろう。小学校6年生の設定という連れ子もいやな女になりきっている。

1.浅野忠信
もともとは温厚で家庭思いのサラリーマン。セリフにも定時退勤で、有休を全部消化なんて自分からすると考えられない男だ。ドロップアウトで一方通行になる子会社出向も淡々と受け入れる。インターネットの通信販売の倉庫でブルーカラー的な仕事だ。何より家族が大事と考えていたのに、連れ子の長女から強い反発を受ける。フィクションといえどもつらいシーンである。それでも冷静に抑えていたのが、ある時爆発する。その気持ちわかるなあ。


宮藤官九郎演じる妻の元夫に会うシーンがある。流れ流れて、今もまともな生活をしていない。連れ子の娘を思い、低姿勢で競艇場でギャンブルに興じる元夫に会おうとする姿はいじらしい。田中麗奈演じる妻が何で自分の娘の無謀な反発を許してしまうのか?と劇中ながら思ってしまうが、そのあとに素敵なシーンが残されている。

2.別れた娘との出会いとジーンとするシーン(ネタバレ)
寺島しのぶ演じる元妻の間に娘がいる。3か月に一回会うことになっているが、元妻の夫が余命短いことがわかり、次回の面談は遠慮してくれと言われる。でもそのことは娘に伝わらず、娘は父親に無理やり会おうとする。そこで2人は会うが、その際に元妻の夫が危篤という電話がかかってくる。ところが、突然の落雷で電車も動かない。


娘を連れて、病院まで急ぐ。そして病室まで行く。その際、浅野忠信がこん睡状態の元妻の夫に向かって「今まで娘を育ててくれてありがとう」というシーンには胸がジーンとする。

ここでは子連れの母がいずれも再婚する設定になっている。夜の飲み屋にいくと、母子家庭の母親がいっぱい働いている。まあ、今回のケースはレアなんだろうなあ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「ベイビー・ドライバー」 アンセル・エルゴート&ケビン・スぺイシー&ジェイミー・フォックス

2017-08-20 17:59:23 | 映画(洋画:2016年以降主演男性)
映画「ベイビー・ドライバー」を映画館で観てきました。


なかなかの評判である。週刊文春シネマチャートで満点1点たらずの24点となると、すぐさま観に行くしかない。ここまでの評価は年に1~2回くらいしかない。満員御礼状態である。ライアン・ゴズリング「ドライヴ」とその元ネタであるライアン・オニール「ザ・ドライバー」を意識したカーチェイスがクローズアップされる。主人公は犯罪者の運び屋ということは同じだ。

ケビン・スぺイシーとジェイミー・フォックスというアカデミー賞主演男優賞の受賞者を脇に回すというのはすごいこと。「ドライヴ」と運転の腕が凄腕ということは変わりはないが、主人公は喧嘩が強いタイプではない。アンセル・エルゴート演じる主人公は弱々しさを持つ。ナイーブな主人公と犯罪組織のワルたちの絡みに、主人公の純愛を組み合わせる展開を抜群のセンスのポップミュージックで盛り上げる。


ベイビー(アンセル・エルゴート)。その天才的なドライビング・センスが買われ、組織の運転手として彼に課せられた仕事―それは、銀行、現金輸送車を襲ったメンバーを確実に「逃がす」こと。子供の頃の交通事故が原因で耳鳴りに悩まされ続けているベイビー。しかし、音楽を聴くことで、耳鳴りがかき消され、そのドライビング・テクニックがさらに覚醒する。そして誰も止めることができない、追いつくことすらできない、イカれたドライバーへと変貌する―。


組織のボスで作戦担当のドク(ケヴィン・スペイシー)、すぐにブチ切れ銃をブッ放すバッツ(ジェイミー・フォックス)、凶暴すぎる夫婦、バディ(ジョン・ハム)とダーリン(エイザ・ゴンザレス)。彼らとの仕事にスリルを覚え、才能を活かしてきたベイビー。しかし、このクレイジーな環境から抜け出す決意をする―それは、恋人デボラ(リリー・ジェームズ)の存在を組織に嗅ぎつけられたからだ。
自ら決めた“最後の仕事”=“合衆国郵便局の襲撃”がベイビーと恋人と組織を道連れに暴走を始める―。(作品情報引用)

1.バックミュージックのセンスの良さ
いきなり主人公のドライブテクニックを紹介するのは「ザ・ドライバー」や「トランスポーター」などのスタートと同じである。約6分間に主人公の腕を見せる。ここで他の作品と違うのは主人公のドライブに合わせたノリの良いバックミュージックである。

主人公は子供の時、運転しながら夫婦喧嘩をして衝突事故を起こした父と母を亡くしている。その時から聴力に支障ができた。耳鳴りを弱めるために好きな音楽をipodにいれて聴いている。今や時代錯誤の大事な音源を吹き込んだカセットテープも大事に持っている。若いエドガーライト監督であるが、選曲はひと時代前のR&Bなども含め若干古めである。これが軽快で抜群にいい。


自分としてはサム&デイブ、バリーホワイト、T-REX、クイーンあたりの曲が好きだ。特にバリーホワイトのドスのきいた声が映像にマッチしてしびれる。その他もブラックミュージックのテイストにいい感じがした。ラストのエンディングロールでは久々ポール・サイモンの歌声を聴いて、なかなか席が立てなくなる。映画の題名と同じ「ベイビー・ドライバー」である。サイモン&ガーファンクルの名曲「ボクサー」のシングルB面で、史上空前の大ヒットアルバム「明日に架ける橋」のB面二曲目だ。あれだけ聴いたアルバムなのにすっかり忘れていた。

2.カーチェイスと恋の行方
いきなり見せるカーチェイスはその後も強盗の手助けをするたびごとに続く。これは「ドライヴ」「ザ・ドライバー」と同じであるが、今回は破壊的な衝突が目立つ。エドガーライト監督のインタビューを読むと、「ブルースブラザーズ」から影響を受けているとなっている。これだけ多くの車をつぶすのには確かにその匂いが感じ取れる。

運び屋稼業もジェイミーフォックスやジョンハム演じるかなりヤバい奴らの送迎で面倒だ。敵味方が入り乱れるのはお決まりの構図である。実は主人公はもう足を洗って、堅気になりたい。恋人と仲よく遊びたい。でも、ケビンスぺイシー演じる裏組織の親分がそれを許さず、稼ぎのいい仕事だからと主人公にしつこく運び屋仕事を依頼する。とまどう主人公だ。


「ドライブ」キャリー・マリガン「ザ・ドライバー」イザベル・アジャーニ同様にリリー・ジェームズ演じるドライバーの恋人デボラが登場する。キャリーマリガンが同じアパートに住む人妻で、イザベル・アジャーニが謎の組織の女ということからすると、デボラという名のウェイトレスはいちばんの堅気の女の子である。さすが「ベイビー」という題名がつくだけあってこの映画は純愛の要素を見せるし、この映画Hな絡みがない。少年たちを含めた幅広い観客を狙った作品ともいえる。

ここでの車はスバルのインプレッサである。走りが玄人好みなのか?日本車が前面に出るのはうれしい。これで全米で売りまくるだろう。なぜか群馬県太田市ですぐ公開されているのはスバルの工場があるせいだろう。なるほど
冒頭のカーチェイス↓




ドライヴ
ライアンゴズリングのドライヴがかっこいい(参考記事


ザ・ドライバー
ライアン・オニールの抜群のテクニック(参考記事
Happinet(SB)(D)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「牝猫たち」白石和彌

2017-08-12 18:12:35 | 映画(日本 2013年以降主演女性)
映画「牝猫たち」は2017年公開の日活ポルノ映画である。


久々の日活ポルノがようやくDVDとなる。その昔は各種雑誌に日活ポルノの女優さんたちのヌードが出まくって、女優の名前もすぐ覚えたものだ。今回は監督の白石和彌「凶悪」や「日本で一番悪い奴ら」で知っているが、3人の名前は知らない。他の助演群もざっと名前を追っても知らない人だらけである。低予算という流れは変わらない。

1972年に日活ポルノで「牝猫たちの夜」という田中登監督作品があった。これは新宿で働く3人のトルコ嬢をクローズアップした映画で、玄人筋の評判がいい作品である。1972年8月号の「映画芸術」日活ポルノベスト10でトップになっている。でもここで出演している女優たちは見おぼえない。ある意味、「牝猫たち」も同じように無名女優たちで作られた作品といえよう。

現代の世相に合わせて、3人の風俗嬢のキャラクターはつくられている。ストーリーらしきものはあり、それ自体に不自然は感じないが、男女の絡み合いがその昔に比較するとさみしい感じはする。


池袋の風俗店「極楽若奥様」で働く3人の“牝猫たち”。彼女たちは不思議と気が合って寄り添うが、互いを店の名前で呼び合うだけで本名も、ここで働く理由も知らない。雅子(井端珠里)の今日の客は、引きこもりの男・高田(郭智博)。常連さんだ。ネットで世間を眺めている客に体を提供し、自分も仕事が終われば、寝床としているネットカフェへ帰っていく。


ベビーシッターに子どもを預けて出勤している結依(真上さつき)は、サービスが得意でなく常連がつかない。店長の野中(音尾琢磨)へ、客を回してくれないなら店を変えると愚痴っていると、「男はただ抜けばいい訳じゃないの。本気で惚れたように感じさせたりとか、恋人みたいな気持ちに興奮するんだから。」と説教される始末。


主婦の里枝(美知枝)は、毎回指名をしてくる独居老人の金田(吉澤健)から体を求められることはなく、ただ一緒に過ごすだけ。いつもと同じように呼び出された里枝は、突然金田から大金を見せられ、店とは関係なく会えないかと懇願される…。


ある日、雅子は高田から動画サイトに投稿された盗撮映像を見せられる。仕事の送迎車の中で、運転手の堀切(吉村界人)から嫌な客のことなどを根掘り葉掘り尋ねられ、苛立った雅子が思わず発した「こっちはこれから好きでもない男のアレしゃぶんなきゃなんないんだよ!」という言葉がクローズアップされていた。動画のタイトルは「薄汚い娼婦3号」。高田は、堀切をこらしてめてやると言い出す。あっという間にネットで炎上し、堀切の顔写真、住所までが流出。そんな中「極楽若奥様」には、雅子を指名する予約が殺到するようになるが…。
(作品情報引用)

店長がゴマをすり、女の子たちを働かせようとしている。
一人はネットカフェ難民で家の中でパソコンオタクになっている引きこもり男の指名を受けHをされるわけもなく長時間の相手をさせられている。一人は子持ちで子供を男性ベビーシッターに預けているが、子供は母親の虐待にあっている。一人は夫はいるけれど、妻を亡くしたばかりの男に常に指名されて情を求められている。そんな3人が池袋の出張デリヘルでお客に呼ばれるのを待っている。


いたるところで盗撮が行われて、それを動画でアップして男性の従業員同士の恨みつらみをはらしている。動画にだすことで炎上させてしまうという行為自体ひと時代前にはなかったこと。いかにも現代流で日活ポルノができている。

3人いるんだけど、いずれもボリューム感のあるボディではない。いざとなったら抜くぞと思わせるような色気もあるわけではない。それでも、非現実感はない。もしかしたらこんな女いるんじゃないかというリアルな感じが残る。




牝猫たち
池袋の風俗で働く3人の人間模様



牝猫たちの夜
1972年の日活ポルノの名作
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「王様のためのホログラム」トムハンクス

2017-08-10 08:48:25 | 映画(洋画:2016年以降主演男性)
映画「王様のためのホログラム」は2017年公開のトムハンクス主演映画である。


トムハンクスの小品。この原作を読んで、作品化と主演を要望したという。映画を見てみると、一級作品に絶えず出ているトムハンクスが何で?この映画に?という印象が強い。

アラン(トムハンクス)は大手自転車メーカーの取締役だったが、業績悪化の責任を問われ解任されると同時に離婚。大学生の娘の養育費を払うためにIT業界に転職する。そこでの任務はサウジアラビアの国王に最先端の映像装置〈3Dホログラム〉を売りこむことである。

砂漠に到着すると、ボロテントに仲間3人がいるが、エアコンも壊れ、Wi-Fiもつながらなくてプレゼン資料も作れない。担当者に面会を要請してもいつも不在である。プレゼン相手の国王がいつ現れるのかもわからない。本国の上司からは常に電話はかかってくるし、ストレスはたまってくる。そのとき、酔って背中にあるこぶをいじくろうとして大出血する。病院に行くと、アラビア人の女医に介抱してもらうのであるが。。。


エリートビジネスマンから転落した男が、転職して文化も違うサウジアラビアに行き、王様に映像装置を売り込むという話である。現地オフィスの隣にある砂漠の真ん中のテントを起点に売り込みをかけようとするが、プレゼン資料を作成することすらできない。

現地オフィスの担当者にも会えない。八方塞がりの様子だったとところで、現地オフィスにいる一人のデンマーク女性と知り合う。仲良くなり、内部事情を教えてもらう。最初にこの女性に接近し、積極的な彼女の性的要求にこたえようとするが、いざというときにいたせない。
それでも、その女性と知り合うきっかけがもとで現地オフィスの担当者とようやく会えるようになる。要望したら、住環境も、IT環境も整えてくれる。そして王様へのプレゼンに備えていく。


以上の話にアラビア人の女医と接近する。結局のところ、そんな話である。
繰り返すけど、よくわからないなあ?何でトムハンクスがこの映画にでたのか?アラビアに行ってみたかっただけなのか?起伏のない本当に普通の映画である。制作費に対して、興行収入が極度に少ないというのは仕方ないだろう。トムハンクス主演でなければ、日本公開はなかったであろう。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

本「映画評論入門」 モルモット吉田 

2017-08-09 08:41:08 | 
「映画評論・入門」モルモット吉田著を読みました。


これは予想外の面白さである。
題名からすると、映画評論とはこうするもんだというノウハウ本のように見えるが、違う。日本の映画史で映画評論家と俳優、監督が絡む逸話を紹介する。その逸話にからんだ当時発行された映画記事を構成しているので、事実と批評を織り混ぜたよくできたノンフィクション的な要素をもつ。ずいぶんと映画を見ている自分でも知らない逸話が多々あり、名作がロードショー当時どう評価されたのかを知る意味でもよく調べて込んである本書を読むのは価値がある。

当時ピンク映画中心の活動をしていた若松孝二監督の作品が有名映画祭に出品されることになった話、映画「稲村ジェーン」をめぐって桑田佳祐ビートたけしが言い争いをする話。それに加えての「仁義なき戦い」の名脚本家笠原和夫ビートたけしの言い争いを笠原和夫の脚本「骨法十箇条」に絡めて解説する。
そのほか「ゴジラ」「七人の侍」「2001年世界の旅」「仁義なき戦い」といった有名作品が当初どう評価されたのかという話などなど、興味深い話題が多く、久々に映画本で楽しめた。

全部取り上げてみたいが4つほどピックアップする。

1.映画評論家「増田貴光」の失脚
久々に見る名前である。現在50代半ば以降の人なら、テレビの司会などで毎日のように見た増田貴光の端正な顔立ちはすぐ目に浮かぶであろう。思春期に入りつつあった自分からすると、テンポよく司会をする増田の口調はすごいとしかいいようになかった。その彼を取り上げた著者の視点に感心する。


「ベルトクイズQ&Q」は賞金が270万円と当時あまりにも高く、賞金が100万円以内と当局に決められるはしりの番組であった。昼にやっているので、そんなに見れるわけではなかったが、その番組の初代司会である増田貴光のパフォーマンスが目に焼き付く。映画解説はあまり記憶にないが、若くして土曜映画劇場の解説をすること自体すごい。

でも突然の転落だ。ゲイと自白せざるをえない離婚騒動を起こして週刊誌ネタになる。その後覚せい剤で逮捕されるくらいであるから、クスリが大きく絡んでいたのは間違いない。それさえなければ、テレビ界で長い間活躍していたのだと思う。それにしても当時人気絶頂の川口松太郎ファミリー詐欺未遂事件の話には驚いた。ここまで何でやらなければならなかったのであろうか?履歴からすると大学の先輩にあたる。70年代後半の三田キャンパスには増田貴光に似た風貌は割といたし、テンポのいい話し方と容姿が世話になった先輩にそっくりである。それだけになお残念。

2.市川崑監督の逆襲
市川崑監督石原慎太郎原作「処刑の部屋」を映画化した。その際、朝日新聞の記者井沢淳より、この映画で主人公(川口浩)が睡眠薬の入っている酒を女子大生(若尾文子)に飲ませて自分の部屋に連れ込みいたしてしまうシーンがあるけど、このシーンはカットせよというクレームが大映に入った。それをきっかけに諸団体から次から次へと映画に対する批判が沸騰する。


自分も映画「処刑の部屋をブログにアップしている。いかにも早慶戦を彷彿させる応援席のシーンから始まる映画では、野球の応援を終えて新宿の小料理屋で飲んでいる男女大学生の振る舞いをとりあげる。新宿で飲む設定だから早稲田の学生が悪さしたと連想させる。三島由紀夫がこの作品にはいい評価を与えているので、こういった映画への批判があることは知らなかった。内容からしてこの騒動は無理もないであろう。

でも犯すシーンはエンディングというわけでない。犯された若尾文子川口浩の前に姿を現し、「私のこと好きなの?」と問い詰めるのだ。好きでやったのなら許せるということであろう。そこから当時の若者の遊び三昧が浮き彫りになるが、最終天罰を食らうという構図である。それが「処刑の部屋」の処刑である。


市川崑監督は朝日新聞社の記者が映画に対しての批評をせずに倫理面だけを強調していると反論する。確かにそれらしき作品に対する批評はしていないようだ。「書くなら感情ではなく、徹底的に、いやだということを、つきつめて書かなければ批評にならないとおもう。」という市川崑の主張はその通りである。

3.映画「東京オリンピック」評価と高峰秀子の直訴
自分は前回1964年の東京オリンピックをリアルで知っている一番下の世代だろう。オリンピックが終わった後は大きなグラビア雑誌の特集が家に転がっていて、食い入る様に見た気がする。オリンピックを記録した映画「東京オリンピック」はかなり大人になってから観た。映画ではハードルの依田郁子選手のスタート前逆立ちパフォーマンスが強く印象に残り、ひと時代前の東京の風景の中をアベベ選手がさっそうと走る姿と、苦しそうに走る円谷幸二選手が最後競技場内で抜かれるシーンに悲哀を感じた。

そんな映画が完成した後の1965年3月10日の上映会で、天皇をはじめとした皇族も観ているのに、当時の実力者オリンピック担当大臣だった河野一郎(外務大臣河野太郎氏の祖父)が「芸術性を強調するあまり、正しく記録されているとは思われない」と批判する。そのあと「記録か芸術か」で世間を揺るがす大きな話題となる。建築家丹下健三をはじめとした映画支持者と河野一郎の権威にひざまずく官僚をはじめとした茶坊主軍団であるオリンピック関係者との論争が続く。しかも、河野一郎は外国版の編集を市川崑でない第三者に依頼させようとしていた。

その時、大女優高峰秀子が東京新聞に「わたしはアタマにきた」と投書するのだ。この話にはほんとにしびれた
高峰の文章は「東京オリンピック」を絶賛し、映画作家市川崑の特色を指摘したうえで河野大臣やスポーツ関係者の不見識を具体的に指摘して反論したもので、意見文というよりも「東京オリンピック」の映画評であり、優れた市川崑論になっている。(本文引用 p82)



実はこの3年前にも高峰秀子林芙美子の「放浪記」の映画化にあたっても朝日新聞に対して徹底抗戦している。いやはや、これらの話にはビックリである。一般公開され、時の佐藤栄作総理も鑑賞し、全体としてはよくまとまっているという評価を加える。高峰秀子の投書をきっかけに一気に世間の評価の流れが変わっていく。映画は記録的大ヒットとなる。最終的には河野一郎と高峰秀子は3月26日週刊誌で対談して和解。そこでも直訴してすでに始まっていた第三者による外国版編集を取りやめさせるきっかけを作る。なんという行動力だ。

映画人に味方がいないなら、私がやるわ!というすごい気概をみせる凄みには感動する。その後、河野一郎氏はその年7月8日その生涯を終える。まさかこの件は何も関係ないと思うが。。。

4.日活ロマンポルノと評論家煽動
自分は中学生の分際にもかかわらず、18禁の日活ロマンポルノにこっそり?入ってみていた。受験勉強の合間にすっきりしたかったのだ。
大映が倒産し、日活映画がポルノ路線に入ったとき、映画雑誌では全然取り上げられなかったのが、徐々に注目を集めるようになる。その時、キネマ旬報社の白井佳夫編集長は、ロマンポルノを見ない老映画評論家たちをわざわざ試写に参加させる。歴代のキネマ旬報ベストテンをみて、あるとき日活ポルノ作品が出てきたなあと思っていた理由がわかった。

その時反発を示して、キネマ旬報のベスト10の評者から退いた評論家もいた。津村秀夫である。実は津村秀夫は私の大学で「映画論」を教えていた。いわゆる一般教養の日吉での講義でなく、専門課程の三田での定例講義であった。テストもあり、今でもその時の教科書は私の書棚にある。昔のベスト10を見るとき、津村秀夫と私の高校の大先輩である双葉十三郎の2人がどう評価しているのかをチェックしている。ある時選者からはずれ、自分が講義を受けたのはずっと後なのでどうしたのかと思っていた。なるほどこういうことなのね。

映画公開時を知らない1978年生まれのモルモット吉田の丹念な映画資料の調査力に感動する。

映画評論・入門! (映画秘宝セレクション)
最近の映画本ではいちばんおもしろい。


処刑の部屋
酒を飲ませて悪さする悪い奴(ブログ記事


東京オリンピック
64年の日本の躍動状況がよくわかる
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「フェリスはある朝突然に」 ジョンヒューズ&マシュー・ブロデリック

2017-08-05 10:47:31 | 映画(洋画 89年以前)
映画「フェリスはある朝突然に」は1987年のアメリカのコメディ映画だ。


80年代のムードが映画全体に漂うジョン・ヒューズ監督による青春コメディ映画だ。いたずら好きの少年が親と学校をだまして遊びまわる一日を描いた作品で、インターネットも携帯電話もない時代になりすまし電話や音響機器を駆使して学校や親を騙す姿を面白おかしく映し出す。ある意味シカゴ観光案内的な要素もあり、むちゃくちゃ面白い映画である。

シカゴに住むフェリス(マシュー・ブロデリック)は今日も仮病をつかって両親をだましてズル休み。これで合計9回目のズル休みだ。両親と妹ジニー(ジェニファー・グレイ)も外出したあと、フェリスは本当に病気で休んでいる金持ちの息子キャメロン(アラン・ラック)の家からフェラーリを引っ張り出させる。ルーニー校長(ジェフリー・ジョーンズ)はフェリスはズル休みに違いないと感づき、フェリスのズルの証拠を何とか入手しようとイライラし出した。一方でフェリスは学校のデータにある累積欠席日数を、パソコンを使って減らす。それなのに校長はフェリスの偽電話にだまされて、フェリスのガールフレンドのスローアン(ミア・サーラ)をフェラーリで乗り付けたフェリスが変装した偽の父親に引き渡してしまう。3人はシカゴ市内をフェラーリで遊びまわる一方で、校長はフェリスの仮病を見破ろうとフェリスの自宅まで押しかけるのであるが。。。。


1.マシュー・ブロデリック
映画の観客に向かって話しかける手法を使う。「こんないい日に誰が学校へなど」自分のずるを次々解説しながら映画が進む。フェリスは東宝全盛時代の植木等を彷彿させる要領のいい男である。マシュー・ブロデリックはその後30代、40代と名脇役として活躍する。アレクサンダーペイン監督「ハイスクール白書 優等生ギャルに気をつけろ!」で、ここでのフェリスと似たような役柄のリース・ウィザースプーンが演じる女子高校生と全面対決する高校教師を演じたのが皮肉のようだ。今の奥さんは「セックス アンド シティ」のサラ・ジェシカ・パーカーである。ずいぶんと稼ぎのいい嫁さん見つけたものだ。


2.シカゴロケで回遊する3人
シカゴは大都市であるが、日本人にはなじみは薄いのではないか?以前シカゴのオへア空港に到着したとき、全米を代表する広い大空港を出るまで一人の日本人にも会わなかった。これはニューヨークなどでは考えられないことである。いわゆる昔ながらに白人と黒人がいてという構成で、東洋系やイスパニック系は少ない。

海にしか見えない五大湖の一つミシガン湖を背にして、個性のある外観の高層ビル群が立ち並ぶ。夜はブルースの町である。そんな街を観光するかの如く、フェリスをはじめとした3人がシアーズタワーや商品取引の殿堂シカゴマーカンタイル取引所、シカゴ美術館をまわる。

自分も行ったがシカゴ美術館で展示されている作品はレベルが高い。ゴッホ、モネの印象派の代表作をはじめとしてエドワード・ホッパー「ナイトホークス」、カイユボット「パリ通り、雨」、スーラの「グランドジャット島」とかメトロポリタン美術館に匹敵する素晴らしい作品がそろう美術館である。本当に感動した。そんな美術館で映画撮影できてしまうこと自体がありえない感じがする。アメリカ人は実に懐が深い。この映像は貴重である。


3.シカゴを舞台にした映画
これが粒ぞろいの映画ばかりだ。何といってもコメデイ映画の最高峰「ブルース・ブラザーズ」、架空の設定だが実はシカゴとわかる青春映画の最高峰「ストリート・オブ・ザ・ファイア」、暗黒街の帝王アル・カポネを主人公とするマフィア映画「アンタッチャブル」など名作ぞろいだ。ループ鉄道を走る列車や高架の下のを走る車が絵になりやすく、高層ビルが立ち並ぶ一方で黒人労働者たちがたむろうダウンタウンも絵になる。


それにしてもフェリスのいい加減な高校生ぶりが笑える。シカゴで有名なパレードの台車に乗り、ズル休みにもかかわらずビートルズの「ツイストアンドシャウト」を歌う場面は実に痛快だし、いかにも80年代という眉毛メイクで登場するフェリスの恋人役のミア・サーラがかわいい。




フェリスはある朝突然に
シカゴの高校生のズル休みの一日
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「ファウンダー ハンバーガー帝国の秘密」 マイケルキートン

2017-08-04 20:09:52 | 映画(洋画:2016年以降主演男性)
映画「ファウンダー ハンバーガー帝国の秘密」を映画館で観てきました。


これは面白い!久々のおすすめ映画である。
まさに超満員の客席、実は自分も一回観そびれている。これはまずいとネット予約で向かう。映画館の外には観そびれている夫婦やら大勢いた。マクドナルドの真の創始者マクドナルド兄弟と全米のフランチャイズ化に成功したレイ・クロックの物語である。

わかりやすい映画だ。
多少の脚色はあるが実話に基づいており、話はずっとだれない。周りの人は食い入るように画面に目を向けている。ここまで観客の熱い視線を感じる映画は少ない。労基署からの厳しいご指導?のおかげで働き方改革という言葉にがんじがらめになっている日本のビジネス社会とは全く真逆なレイクロックの行動力にはむちゃくちゃ魅かれる。

1954年アメリカ。52歳のレイ・クロック(マイケル・キートン)は、シェイクミキサーのセールスマンとして中西部を回っていた。ある日、ドライブインレストランから8台ものオーダーが入る。どんな店なのか興味を抱き向かうと、そこにはディック(ニック・オファーマン)&マック(ジョン・キャロル・リンチ)兄弟が経営するハンバーガー店<マクドナルド>があった。


合理的な流れ作業の“スピード・サービス・システム”や、コスト削減・高品質という革新的なコンセプトに勝機を見出したレイは、壮大なフランチャイズビジネスを思いつき、兄弟を説得し、契約を交わす。次々にフランチャイズ化を成功させていくが、利益を追求するレイと、兄弟との関係は急速に悪化。やがてレイは、自分だけのハンバーガー帝国を創るために、兄弟との全面対決へと突き進んでいくーー。(作品情報より)

1.レイ・クロックとマクドナルド兄弟との出会い
もともと家庭を顧みず仕事に励むワーカーホリックなレイクロックは、車でセールスで飛び回る。夜は自己啓発のレコードを聴きながら自らのモチベーションを高める。でも、常にうまくいっているわけではない。そんな時、電話番の女性から自分の会社のミキサーが6個注文が入って驚く。これは間違いだろうと注文先であるマクドナルドに問い合わせると8個欲しいといわれ驚くことがすべての始まりである。


きっと儲かっているんだろうと、イリノイからカリフォルニアの遠方まで車を走らせマクドナルドの店に向かう。店の前は行列だ。でもすぐにさばかれていく。注文聞きのウェイトレスはいない。食器はない。頼んだらすぐ品物が出てくる。どこで食べるのかと聞くと、どこでも好きなところで食べてくださいと店員に言われる。みんなおいしそうに食べている。


改めてマクドナルド兄弟に話を聞きたいとディナーを一緒にしたいと申し込む。そこで聞いたのは合理的なハンバーガー製造システムである。この場所でやっていられればいいと思うマクドナルド兄弟に、レイ・クロックはフランチャイズシステムを提案するのだ。

そこから、レイクロックは根っからの商売人ぶりを発揮し、一気にフランチャイズを伸ばしていく。この辺りの過程はよくできたドキュメンタリー番組を見るようで実に楽しい。

2.レイ・クロックの家庭
ここではビジネスの話だけでなく、レイ・クロックの家庭生活もクローズアップする。もともとシェイクミキサーを売りに、町から町へと車を走らせるレイは家庭をぞんざいにしていた。デイヴィッド・リンチ映画の常連ローラダーン扮する妻との冷たい生活が、マクドナルドの仕事をやり始めてから急変する。社交クラブへ一緒に食事に出たりして、妻も夫をかばうようになる。でも、英雄色を好むというわけではないが、FC経営者の妻に一目ぼれをして、一気に近づいていくのだ。そのあたりから直情型肉食系のレイ・クロックの人間像を浮かび上がらせる。


3.レイ・クロックと日本マクドナルド
自分が中学生の時、藤田田社長率いる日本マクドナルド社がスタートする。「ギンザナウ」に出演する矢沢永吉を見に銀座三越に行くと、マクドナルドでハンバーガーを食べたものだ。その時彼が書いた「ユダヤの商法」はとんでもないベストセラーとなった。今でも自分の書棚にある。ユダヤ人の商売流儀について書かれている。

藤田田「辛抱よりは見切り千両」として、「ユダヤ人はソロバン勘定に合わないとわかれば、3年はおろか、半年待たないで手を引いてしまう。」(ユダヤの商法 46p)これはクロックに学んだのであろう。クロックはありとあらゆることをそく実行して試してみるのであるが、システムに乗らないなと思ったら即、手を引く。

マクドナルド本社のユダヤ人についてドライな人間像を想像したが、ここで書かれているレイ・クロックは極めて熱い!それを演じるマイケルキートンは抜群にいい。

ユダヤの商法―世界経済を動かす
藤田田とマクドナルドの出会い


成功はゴミ箱の中に レイ・クロック自伝―世界一、億万長者を生んだ男 マクドナルド創業者 (PRESIDENT BOOKS)
ファウンダーの原作のようなレイ・クロックの伝記
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「ハクソー・リッジ」 アンドリュー・ガーフィールド&メル・ギブソン

2017-08-02 20:21:44 | 映画(洋画:2016年以降主演男性)
映画「ハクソー・リッジ」を映画館で観てきました。


映画「沈黙」で転向する宣教師を演じたアンドリュー・ガーフィールド主演の新作である。「ハクソー・リッジ」なんてわけがわからない題名だが、要は「沖縄戦で戦傷者を救出する衛生兵」を描いた映画だ。「沖縄戦」という一言があっただけで抵抗を招くと映画配給会社は考えたのであろうか?いつも訳のわからない日本題をつけるのに今回はもっと訳がわからない方向にもっていく。

主役であるデズモンドが変人の極みといった感じで、共感しずらい映画と思っていたら、後半の沖縄戦では急激にヒートアップする。このあたりはさすがメルギブソン。勝ち負けはわかっていてもドキドキさせられる。映画のレベルはかなり高い。

第2次世界大戦が激化し周辺の若者が次々と出征する中、ヴァージニア州に住むデズモンド・ドス(アンドリュー・ガーフィールド)は、子供時代の苦い経験から衛生兵であれば自分も国に尽くすことができると恋人である看護師のドロシー・シュッテ(テリーサ・パーマー)の反対を押し切り陸軍に志願する。


グローヴァー大尉(サム・ワーシントン)の部隊に配属され、ジャクソン基地で上官のハウエル軍曹(ヴィンス・ヴォーン)から厳しい訓練を受けるデズモンド。だが、狙撃の訓練が始まった時、デズモンドは断固として銃に触れることを拒絶する。

子供の時に兄弟げんかで兄を大けがさせたことと、デズモンドの父親である酒におぼれたトム(ヒューゴ・ウィーヴィング)と母バーサ(レイチェル・グリフィス)とのケンカを止めようとして発砲したことがトラウマになっていたからだ。



軍服や軍務には何の問題もなく「人を殺せないだけです」と主張するデズモンドはグローヴァー大尉から、命令に従えないのなら、除隊しろと宣告される。その日から、上官と兵士たちの嫌がらせが始まった。そして命令拒否として軍法会議にかけられる。デズモンドは軍法会議で堂々と無罪を宣言するが、意外な人物の尽力で、デズモンドの主張は認められる。

1945年5月、デズモンドはグローヴァー大尉率いる第77師団の兵士とともに沖縄の「ハクソー・リッジ」に到着した。先発部隊が6回登って6回日本軍に撃退された末に壊滅した激戦地だ。150mの絶壁を登ったところでは、もう後のない日本軍が粘り強い抵抗をしている。米軍が前進すると、日本軍の四方八方からの攻撃で兵士たちが倒れていく。デズモンドは重傷の兵士たちの元へ駆け寄り、「俺が家に帰してやる」と声をかけ、応急処置を施し、肩に担いで銃弾の中を走り抜けるいくのであるが。。。。

1.沖縄戦
昔の記録映像で米軍戦士が火炎放射器を使ったり、がけっぷちを若い女性が飛び降りるシーンは何度も見たことある。イーストウッドが硫黄島の戦いを日米両方の立場からとった名作はある。でも、日本映画で日米沖縄戦の戦闘自体を取り上げた記憶はない。それなので、沖縄戦では絶対優位にたつ米軍が日本軍を圧倒的に破った印象がある。でも、この映画で描かれているのは、これ以上は攻め込ませないとがけっぷちにきて繰り広げる日本軍の必死の抵抗と攻めあぐねる米軍の姿である。


まあえげつない映像である。体が分断されて、はらわたがあらわになる死体が至る所に転がり、ネズミがたむろう。気持ち悪い。火炎放射器で死体が燃え広がるのも見ていて気分のいいものではない。実際にどうやって撮っているんだろう。

2.ハクソーリッジ
解説には150メートルの絶壁と書いてあるが、50階建ての高層ビルの高さである。今、自分もそういうビルに勤務しているが、いくらなんでもこんな高さをロープで降りるというわけではないだろう。まあ残された写真を見ると、だいたい50m前後の絶壁だったように思える。それにしてもこんな絶壁から敵の銃撃を避け75人の人物を降ろしていくのは普通じゃない。デズモンドの勇気に感激だ。


アカデミー賞の編集賞を受賞したという。戦闘シーンでは2~3秒ほどのカットが続く。次から次へと残虐な場面が続き、情のこもった音楽に合わせ緊迫感が高まる。確かに賞の価値がある。その中で意地になって戦う日米両軍の戦士がフィクションでなく実際にいたかと思うと胸がジーンとする。心からご冥福を祈りたい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする