映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「国境ナイトクルージング」 チョウ・ドンユイ

2024-10-19 16:33:16 | 映画(中国映画)
映画「国境ナイトクルージング」を映画館で観てきました。


映画「国境ナイトクルージング」は中国映画、朝鮮族が多く居住する延吉の町を舞台に3人の若者を映し出す。予告編で観た雰囲気がよく早速映画館に向かう。「少年の君」チョウ・ドンユイが主演3人の1人だ。シンガポールのアンソニーチェン監督の作品だ。現題は「燃冬」

中国北部延吉の町、バスガイドのナナ(チョウ・ドンユイ)は、ツアー客を朝鮮族の観光施設に案内する。ツアーの中に上海のビジネスマン、ハオフォン(リウ・ハオラン)がいる。友人の結婚式に出るためにこの町に来た。時折スマホにメンタルクリニックから電話が入る。

気がつくとスマホをなくして困っているハオフォンを、ナナは食事に誘う。男友達シャオ(チュー・チューシアオ)が待つ店に連れてきて、3人で飲み明かす。3人はそのままナナのアパートで雑魚寝。翌朝、ハオフォンは上海行きの飛行機に乗り遅れそのまま居座る。3人はバイクに乗って国境の川に繰り出す。いずれも心に挫折感を感じていた。ナナもフィギュアスケートの選手だったがケガで断念したのだ。


若者の嘆きが自分には伝わらず正直のれない映画だった。
朝鮮族が多く住む延吉の町に行くことは一生ないだろう。いくつかの韓国映画で町は見たことはある。町を車で走らせると、漢字の看板の中にハングル文字が混じる。ハオフォンが出席する結婚式では朝鮮語と中国語が混ざってにぎやかだ。ナナはツアー客に朝鮮族の住居を案内して、朝鮮の衣装を着た女性たちの踊りを見せている。この曲って「トラジの歌」でなかろうか?そして、ツアー向けの食堂にもう1人のシャオがいる。

朝鮮民族モードが強い前半戦から、ぐうたらの若者がただふらつく姿が中盤にかけてずっと映し出される。書店で悪さを企んだり、クラブで踊りまくったり、まだ暗い早朝に動物園に行く。それぞれに悩みはあるんだろうけど、自分は感情移入できない。成り行き次第な感覚だ。食堂で働くシャオはナナに好意を持つが、ナナは交わす。そのナナは行きずりの恋のようにハオフォンとメイクラブする。ナナを演じるチョウドンユイの乳首は見えそうで見えない。


寒々しい雰囲気が伝わる映画だ。町の中心部を離れると水は凍りつく。本当に寒そうだ。最後3人は虎と熊が対決する伝説の地、長白山を目指す。雪が激しく降る山で目的地を目指すが、なかなか着かない。吹雪が強くなり山の管理人から戻れと言われる。そんな時そこで軽い見せ場をつくる。が本当に出てくるのだ。そして、「アリラン」の歌声を聞きながら映画は最終場面に向かう。
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映画「西湖畔に生きる」 

2024-09-29 19:48:04 | 映画(中国映画)
映画「西湖畔に生きる」を映画館で観てきました。


映画「西湖畔に生きる」は中国映画、前作「春江水暖」で古い中国の雰囲気をにじませる映画を送り出したグー・シャオガン監督の作品である。前作は自分も魅せられた好きな映画である。前作同様杭州が舞台、直近でワンイーボー主演のダンス映画「熱烈」も都市開発が進み高層ビルが立ち並ぶ杭州を映し出していた。題名の西湖も出てくるが、郊外の中国茶の段々畑をドローン撮影で俯瞰して美しく映し出す。

杭州市の郊外に暮らす母・タイホア(ジアン・チンチン)と息子・ムーリエン(ウー・レイ)が2人きりの母子だ。10年前父は家を出て行方がわからず、タイホアは山の茶畑で茶摘みの仕事をしている。息子は大学出ても就職先が見つからず、やっと見つけた仕事も老人向け健康器具販売で詐欺まがいですぐ辞めた。タイホアは、茶畑の主人チェンと一緒に暮らすつもりが、その母親の逆鱗に触れ茶畑の仕事からを追い出される

一緒に辞めた茶畑での同僚の兄弟がいる会社に行こうと誘われて行くと、「足裏シート」を販売する会社だった。会社に行き集団で説明を聞き、違和感を当初持っていたタイホアも気がつくと周囲の熱狂に押されてマルチ商法の罠にハマっていた。


山水画の雰囲気を持つ風景の美しさと現代中国のドス黒い部分のコントラストが強い傑作だ。梅林茂の中華テイストの音楽が映像にピッタリと合う。
スタートから杭州郊外の緑あふれる段々畑をドローンで映す。小動物が動き回る田園風景の中で母子を映すカメラワークも柔らか「山水映画」の色彩が強いと思いきや一変する。


最近の日本では話題にならないが、まさしくマルチ商法の世界である。こういう悪い連中の拠点に行ったらマズイと言わんばかりだ。現代中国ではこういう詐欺がいまだに続いているのかもしれない。うさん臭い中国裏社会を描いた映画はどれもこれもおもしろい

⒈マルチ商法の手口
お茶摘みの同僚と一緒に勧誘される人たちが乗る大型バスに乗って行く。バスの中から洗脳が始まっているのだ。組織の女性が巨万の金が入ってくるよと集団全員に訴える。その勢いで現地に着くと、みんなを狂乱の渦に落とすショーのようになっている。足裏シートをたくさん売ってマネジャーになれば1000万元入ってくるよと主催者側が叫ぶと周囲は大歓声だ。母親のタイホアは疑心暗鬼だったのにだんだん周囲の勢いに同調するようになる。悪夢のような世界だ。

新興宗教にしろマルチ商法にしろ洗脳の構図は一緒だ。誘われて先方のホームグラウンドにいる時点でもうダメだ。この手の詐欺話は韓国映画に多いけど、中国でも詐欺は横行しているのか?前作は立ち退き問題を取り上げたが、今度は明らかな犯罪だ。


⒉詐欺に引っ掛かる母親と元に戻そうとする息子
最初の勧誘のシーンからしばらくして母親と息子がゴンドラのような小舟に乗って対面するシーンがある。もともとスッピンに近い母親がチリチリの髪でドギツイ化粧に変身する。完全に組織を信用している。息子は足裏シートを試すが、母親の部屋に行ってびっくりだ。商品の足裏シートの箱が部屋の中に大量にある。どうしたんだと聞くと、家を売って資金に充てたと。財産をぶっ込んだと聞き息子は大慌て。そして、組織を信じる母親の一方で懸命に母親を救おうとする。


こんなシーンを観ていると、安倍元総理の暗殺事件の犯人山上を連想してしまう。母親が統一教会に次から次へとお金を入れ込むことで、巡り巡って鉾先がとんでもない方に向かった。常軌を逸する行動でとても許されないことだが、犯人の気持ちは世間には通じて統一教会への締め付けが厳しくなった。この映画では息子はあの手この手でなんとか母親を助けようと奮闘する。

⒊西湖畔の美しさ
中国史の中でも古くから取り上げられる湖だ。杭州が舞台の映画「熱烈」では高層ビルが立ち並ぶ映像が多く、トレーニングシーンで湖畔が少し出ただけだった。マルチ商法の勧誘を西湖上の船で行ったり、歴史的な建造物の雷峰塔が出てきたりする。寺院を含めて建物の選択のセンスはいい。

この映画ではドローン撮影が効果的に使われている。先日観たノルウェーが舞台の「ソングオブアース」でもドローンから俯瞰して見る氷河や雪山の映像が良かった。時おり空を飛ぶ夢を自分が見て、地上を見渡して気がつくと目が覚める一歩手前のような風景が出てくる感じがいい。
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映画「熱烈」 ワンイーボー

2024-09-09 07:51:47 | 映画(中国映画)
映画「熱烈」を映画館で観てきました。


映画「熱烈」は中国映画、若手スターのワンイーボー主演のブレイキン・ダンスを題材にした作品。監督は大鵬(ダーポン)となっていて相撲の大鵬を連想してしまう。パリオリンピック「ブレイキン」が競技種目となる。日本選手が金メダルをとり話題になった。TVではダイジェスト版しか見ておらず、ルールもよく知らない。ストリートダンスもオリンピック種目になるんだという実感だ。

ブレイキン自体と言うより現代中国の若者がダンスに歓喜する姿が予告編に映り気になる。文化大革命以降の改革路線に入る前は西洋かぶれと非難されたはずだ。今の北朝鮮みたいでありえない映像だ。世相が変わって良かったね。主演のワンイーボーは香港のトニー・レオンとの共演の「無名」、テストパイロットを演じた「ボーン・トゥ・フライ」を直近で観ている。97年生まれで古い中国は知らない世代だ。徐々に顔なじみになる。でも、日本人はあまり中国映画が好きではないからか観客の数はそれなりだ。


ブレイキンプロダンスチーム「感嘆符!」は、社長の一人息子である“カリスマダンサー”=ケビンが練習にも出ずやりたい放題。コーチ(ホアン・ボー)も形だけで口を出せず、チームは振りだけの代役を探さなければいけない状況に。コーチはかつてオーディションを受けた青年、陳爍(チェン・シュオ)(ワン・イーボー)のことを思い出す。陳爍は全国大会優勝の夢を持ってチームに加わり、仲間たちと練習を続け友情を築いていく。(作品情報 引用)

中国の若者パワーを感じさせる作品でスポーツ根性モノ的なテイストだ。
スポーツの成長物語に良くありがちな紆余屈折を途中でつくって最後につなぐ。ストーリーの基調は注目するほどでない。若者パワーに注目したい。ただ、説明の省略も多いせいか訳がわからなくなる場面もある。

ワンイーボーは主人公であっても、もともとはスターダンサーの代役的な存在だ。本大会は出れない前提でチームに加えてもらう。以前オーディションで落選しているので、本人も代役で十分だった。ところが、徐々に力をつけて来るのだ。あとは長州力に良く似ているコーチにも存在感を持たせる。


自分はダンスの巧拙がわからない。ヘッドスピンや体操のあん馬のような足の動きがすごいのだけはわかる。カメラワークもよく、ダンススピードの緩急なども含めて適切な編集をかさねて映像にしている。躍動感を感じる。ブレイキン自体中国で人気があるのだろうか?ともかくダンスバトル会場の熱気がすごい。演出もあるだろうが、日本映画ではここまでの熱気は出せないだろう。

会場の観客と演じるダンサーとに一体感があるのに好感が持てる。なぜか男女比率が男性に偏っているように見える。1人っ子政策の弊害で若者に男性が多いことも影響しているのであろうか。


⒈杭州の街にビックリ
浙江省の省都で人口約1200万の大都市だ。地図だけで見ると、比較的上海が近い。映像で映る高層ビルやショッピングセンターなど街の様子は近代的だ。2000年前後までの中国大陸の都市はここまで発展していなかった。ダンス会場の体育館もスケールが大きい。不動産市況の停滞はあまり感じられない。世界史でも習う随の時代にできた大運河の終点で、街の中心にある西湖は風光明媚で唐の時代から有名だ。映像は湖の近くでトレーニングする姿も映す。

⒉普段は副業だらけの主人公
ワンイーボー演じる主人公チェンの実家は中華料理屋で、父親はおらず母親が切り盛りする。おじさんがつくった蝋人形が置いてある。チェンは料理に使う野菜を市場に買い出しに出る。それだけでなく、商業施設のイベントでのキャラクターショーでヒーローを演じたり、クルマの洗車場で高級車を洗車したり、バリバリ副業する。その合間に乗客がいない電車の中などでヘッドスピンの稽古をするのだ。


主人公の母親も中華料理屋だけでなく、結婚式のウェディングシンガーをやったりする。自分が知っているだけでも、中国には昼夜働き詰めの中国人っていっぱいいる気がする。今の日本人が労働法の関係上副業がしづらいのとは大違いだ。楽天の三木谷社長も「早く帰れ」だけではまずいと言っているが、ユニクロの柳井社長の言うように今のままだと日本は滅びる。

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映画「ボーン・トゥ・フライ」ワンイーボー

2024-06-28 21:10:07 | 映画(中国映画)
映画「ボーントゥフライ」を映画館で観てきました。


映画「ボーントゥフライ」(長空之王)中国空軍のテストパイロットたちの偶像を描いた中国映画だ。ポスターには「トップガン」のような戦闘機が見えるが、これまで中国映画で空軍が前面にクローズアップされる映画は見たことがないことに気づく。アメリカ空軍を題材にした作品と似たような映画が技術力の向上で中国でも作れるようになった。つい先日トニーレオン「無名」でダブル主演を張ったワンイーボーの主演である。あの時のアクションはすごかった。

空軍のパイロットであるレイ・ユー(ワン・イーボー)は、操縦に長けているが訓練中にトラブルを起こしていた。ある時、戦闘機のテストパイロットチーム隊長のチャン・ティン(フー・ジュン)が彼の才能に気付き、チームへと誘う。レイは厳正な選考を経て、ドン・ファン(ユー・シー)を始めとする優秀な飛行士6人と共に、テストパイロットに選ばれる。彼らは、新世代ステルス戦闘機のテスト飛行任務に就くが、高度1万メートル以上の世界で、繰り返される厳しいテストは過酷だった。レイは思うように成果を出せずにいらだつ。(作品情報 引用)


中国空軍のレベル向上を確認できるので隣国の人間としては少しビビってしまう。
映画に映る実際の戦闘機自体は本物だ。全面的に中国空軍の協力を仰いでいるのは間違いない。中国の軍事レベルが上がっているのを内外に見せつける宣伝映画にも見えてしまう。戦前の日本が士気高揚のためにゼロ戦映画をつくったのと似たようなものだろう。観客動員が多いのもわかるような気がする。

ただ、この映画はあくまでステルス戦闘機の能力向上のためのテストパイロットの話だ。高い位置から何周もぐるぐる回ったり、普通のパイロットよりも難易度の高い飛行をする。それをこなせて初めて使える戦闘機になるのだ。「トップガンマーベリック」を思わせるシーンも多い。当然訓練中に犠牲者もでてくる。その飛行をこなすためにテストパイロットは体力の限界を超えるぐらいの訓練をする。クイズタイムショックで失敗したときのトルネードスピンのようなものに繰り返し乗ったりする。現代の日本では絶対につくれない映画だ。


中国の戦闘機は防衛先進国に比べると能力的に遅れていた。映画ではその技術の遅れを素直に認めてエンジン能力を改善しようとする意欲を強調する。同時に、過去100年の中国近代化の遅れを憂うセリフがパイロットからある。ここでの中国人がいつもと違い極めて謙虚なだけに逆に中国に畏怖の気持ちを持つ。そこが北朝鮮の空虚なツッパリと違うところだ。

いきなり、領空を侵害してくる敵国機(アメリカを想定しているだろう)と空中戦をするシーンが出てくる。中国は自分の領域をいいように解釈する国だから、台湾統一問題で危険領域でレベルの高い戦闘能力を発揮されるとあっという間に制空権を奪われそうで怖い。そんなビビる話の中で、医療チームの女性と主人公の軽い恋が語られる。この女の子どこかで観たと思ったら「少年の君」チョウドンユイだった。
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映画「無名」 トニーレオン

2024-05-08 07:42:38 | 映画(中国映画)
映画「無名」を映画館で観てきました。


映画「無名」は香港の人気俳優トニーレオンが主演で、1940年代前半の汪兆銘の日帝傀儡政権に絡んだ中国人スパイの探り合いを描いた作品である。この時代、日中戦争の裏側で二重三重で侵入するスパイたちを取り上げる映画はこれまでも数多くあった。自分のブログの歴史で再三とりあげてトニーレオンとともに歩んできた気持ちがある。。

「ラストコーション」は同じくトニーレオン主演で今回と同じように傀儡政権側の幹部であった。アンリー監督がメガホンを持ち、エロチックな描写も多い傑作である。2019年に制作され本年公開された「サタデーフィクション」オダギリジョーとコンリー主演で、1941年の魔都上海を描いている。

1940年代前半の中国、日本の傀儡政権である汪兆銘政権の政治保衛部のフー(トニーレオン)、フーの部下であるイエ(ワンイーボー)は日本軍の渡部(森博之)とともに諜報活動をしている。周辺には国民党と共産党の女性スパイも入り乱れている。誰が味方か敵かを常に疑っている。


カラーの大画面で見る1940年代の中国の映像は見応えある。
1938年の広州陥落から、1941年の日本軍上海占領、1945年の戦争集結を経て、戦後まもない時期まで映す。それぞれのシーンの顛末を途中で止めて、後からデートバックして真相を映すなど時間は軽く行ったりきたりする。

「蒋介石はあくまで軍閥で、中国の3大都市を見放した」とか,「石原中将と東條英機が仲悪い」とか,「すべてに悪いのは東條英機でなく近衛文麿だ」などのセリフがあったり,悪口が飛び交う。結局中国映画なら当局の検閲も受けているわけで、最終的には中国共産党は悪者にはならない。そこだけは面白みに欠ける。

上海外灘の建物など現存するものはある。大部分は基本的にはセットであろう。芸妓を呼ぶお座敷は中国製作にしては上出来だし、障子の部屋もある。夜の上海のバーや香港の料理屋など美術のレベルが高くなっている。衣装もいい。セットにリアル感があるので美形のスパイなどの人物もはえてくる。


トニーレオンは,オールド香港を描いた名作「花様年華」マギーチャンとペアで撮った時から23年経つ。早いものだ。容姿の雰囲気は少しも変わらない。メイクもあるだろうが老けていない。レトロな中国風の雰囲気がなおのことそう感じさせる。それにしても60を過ぎているトニーレオンがスタントマンなしのアクションを繰り広げているのには驚く。割とマジな格闘シーンも目立つ。ここまでやるとケガは大丈夫かと心配してしまうくらいだ。


格上でトニーレオンがクレジットトップであるが,ワンイーボーもこの映画の中では強いインパクトを与えている。韓国のイケメン俳優のような端正な顔立ちをしている。整髪料で固めた髪にバシッと決めたスーツが似合う。目を細めると怪しい雰囲気もでてくる。今回はアクションも踏ん張り、トニーレオンにも手加減しない。日本語のセリフにも挑戦している。

日本軍の悪さを糾弾するシーンもあるが、矛先は国内の国民党や汪兆銘の傀儡政権に向けられている。いずれにせよ、中国共産党の正統を主張する主旨である。
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映画「再会長江」 竹内亮

2024-04-17 20:02:15 | 映画(中国映画)
映画「再会長江」を映画館で観てきました。


映画「再会長江」中国在住の日本人監督竹内亮が、中国を流れる6300キロの長江沿いの町に暮らす人たちとの交流を描くドキュメンタリーだ。2011年にNHKで放映された「長江 天と地の大紀行」を撮った時に出会った人たちとの再会場面も多い。竹内亮監督は前回ドキュメンタリーを撮った時は、中国語はまだ話せなかった。その後中国人女性と結婚して、現在南京に住んでいる。今回は主人公的存在だ。


上海からスタートして武漢、重慶という内陸の大都市を過ぎてからは、色んな少数民族と出会っていく。長江沿いに完成したダムのために以前あった建物がなくなっている場所もある。そして、長江の最初のしずくを映し出すためにチベット高原に向かうのだ。


期待を裏切らないすばらしいドキュメンタリーであった。
長江沿いの町に4億人が住んでいるという。大都市部を過ぎると、少数民族だらけである。女性中心の村もあるし、民族衣装は華やかだ。観光案内的要素も若干あるが、以前出会った人たちとの再会を感動的に描く。ウブな少女が10年の月日を隔てて美しい女性に成長している姿を映し出すシーンはいい感じだ。

大きなダムが完成して、以前は急流だったところが、穏やかな流れになっている。10年で大きく変わっている。ダムができているところは大きな観光船をエレベーターで位置を上昇させる。3000tの船まで大丈夫と聞くと驚く。

2011年の放送時にまだウブだった女の子と母親を上海まで連れていった。それはそれで感動的だったと思う。以前、上海に行った時、地下鉄から降りようとしたら、いかにも田舎から出てきた人たちがこちらの真正面に押し寄せてきて驚いたのを思い出した。17歳で親のススメで隣の村の男と結婚した。結婚するまで一度も会っていなかったという。戦前の日本でよく聞くような話が、ほんの10年前の中国の田舎でもあったようだ。その少女が民宿経営者になって、美しく成長している。これも感動的だ。


他にも女の国とも言われる女性中心の村も再度訪れる。男性は女性の家に「通い婚」で生活するらしい。近くに湖があり,エンジンを積んだ船は禁止だ。透き通った湖を船で優雅に乗っている姿はいい感じだ。

最後に向けては、4000mを超える高地を進む。空気は薄い
竹内亮監督も高山病にかかってしまう。数々の困難にもぶち当たる。それでも向かっていく。
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映画「海街奇譚」

2024-01-26 18:43:58 | 映画(中国映画)
映画「海街奇譚」を映画館で観てきました。


映画「海街奇譚」は2019年の中国映画で、その年のモスクワ映画祭に出品して審査員賞を受賞している。その時の審査員長は韓国の故キムギドク監督というのが気になる。予告編に流れるムードがなんか怪しい雰囲気だ。先日観た「緑の夜」で韓国のあやしい夜を味わったばかりで、今回も同じような期待をもつ。

妻を探しに離島へ行った俳優の男(チュー・ホンギャン)は、現地のホテルの女やダンスホールの女(シューアンリン)などと出会って奇妙な感触を覚える。加えて現地の町民たちは海難事故で次々と行方不明になるのに戸惑い落ち着かない生活をおくる。


映像表現は巧みだが、訳がわからない映画だ。
大画面に映る海辺のさみしい町のホテルやこの町で唯一ネオンが輝くダンスホールの映像は趣きあるし、撮影も巧みだ。原題にあるカブトガニやタコなどの「海洋動物」とそれぞれのパフォーマンスを繋げようとしている。

ダンスホールの美人マスターと似たような女が次々と出てくる。それぞれの顔が似ているので、アタマが混乱する。すると、主人公が元妻とやりとりする映像に似たような女が出てくる。美形のシューアンリンが一人で色んな役をやっていることに途中で気づく。


映画祭に出品している中国映画を見るとあえてセリフで語らず、映像で見せる映画が多い。映像理論の基本としてそれで良いかもしれない。ただ,あまりに説明がなさすぎて訳が分からなくなることも多い。この映画も同様だ。

幻想的と言えば「マルホランドドライブ」などのデイヴィッドリンチ作品もある。ただ、まぼろしと回想と真実の交差が中途半端で、リンチのレベルはほど遠い。よくわからないまま進む尻切れトンボの印象を受けた。「緑の夜」ほどにはあやしいアジアの夜の雰囲気は感じない。コロナを挟んだのはわかるけど、5年もたって劇場公開なのは新作不足ということ?


現代中国映画を観ると、日本の1980年代前後のディスコを彷彿させるダンスフロアの映像が出てくることが多い。曲のタッチも昭和のディスコを思わせる曲だ。離島のディスコといえば、ひと昔前の夏の伊豆七島には即席ディスコがたくさんあった。その頃を思い出す。
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映画「緑の夜」 ファン・ビンビン&イ・ジュヨン

2024-01-22 19:38:02 | 映画(中国映画)
映画「緑の夜」を映画館で観てきました。


映画「緑の夜」は韓国を舞台にした香港映画。脱税で摘発された中国の美人女優ファンビンビンの復帰作だ。「ベイビーブローカー」では刑事役で、「野球少女」では主役を張った韓国女優イ・ジュヨンの共演だ。予告編を観て、緑の髪のイジュヨンの雰囲気があやしいのが気になる。中国の女性監督ハン・シュアイの脚本監督作品だ。

中国から韓国に渡り仁川空港の保安検査員をやっているジン(ファン・ビンビン)が緑色の髪の女(イ・ジュヨン)を検査している。靴に探知器反応があり、摘発しようとするが、女は渡航をやめる。ところが、空港の外で緑の髪の女が再度接近してくる。ジンは配偶者ビザで韓国にきたが、今のままだと居られない。緑の髪の女は運び屋だ。気がつくと、2人は夜を一緒に彷徨うことになる。


怪しいムードがずっとただよう。
アジアの妖しい夜を体感した経験のある人にとっては、このムードに浸ると一種の快感を覚えるのではないか。

ストーリーはあるにはあるが、尋常じゃない2人と裏稼業の連中とが関わる妙な話が続く。ファンビンビン演じる中国人女性も、訳ありで韓国に来ている。韓国人の夫は強烈なDVだ。その男に暴力を振るわれながら仕方なく暮らす。永住権ビザを得るには3500万ウォン必要だ。イジュヨン演じる韓国人運び屋もまともじゃない。彼氏が元締めのようだ。そんな2人が彷徨う夜の韓国はあやしいムード満載だ。ボーリング場まであやしく見える。絶対こんなところ行きたくないと思うようなエリアを映し出す。

保安検査員の上司が、運び屋と通じていたり、警察沙汰の事件が何もなかったように処理されるシーンがある。この辺りは韓国の裏社会の世界に通じるのであろう。


映画を観ているときに,連想した作品は「薄氷の殺人」「鵞鳥湖の夜」やジャジャンクー監督の「罪の手ざわり」などの中国の怪しい夜の雰囲気である。映画が終わって解説を見て中国人女性監督の監督脚本と知り、しかも香港製作だという。なるほどと思った。中国に行くと、街を軽く外れると真っ暗な夜に遭遇する時がある。そんな雰囲気をこの映画で体感した。この感覚は映画館でないと得られない。手持ちカメラと普通のカメラを巧みに使い分けたカメラワークも良かった。

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映画「サタデーフィクション」コンリー&オダギリジョー

2023-11-05 15:36:47 | 映画(中国映画)
映画「サタデーフィクション」を映画館で観てきました。


映画「サタデーフィクション」は中国映画, ロウ・イエ監督が1941年太平洋戦争開戦前の各国のスパイが入り乱れる国際都市上海を描いた映画である。中国の大女優コン・リーと日本のオダギリジョーが共演している。1941年の日本軍上海英仏租界侵攻を描いた映画は多い。クリスチャンベールがまだ子役だったスピルバーグの「太陽の帝国」も開戦時のドタバタとその後を描いていた。西洋文化が交わり魅力的な国際都市だった戦前の上海を描いた映画が好きだ。。

ロウイエ監督の作品には、現代中国の暗部に注目した題材が多い。2017年の「シャドウプレイ」は広州の開発エリアでのトラブルを描いていて中国では上映まで2年かかったらしい。日本公開は2023年だ。でも、強烈に電圧の高い激しい作品だった。実は「サタデーフィクション」はコロナ禍前の2019年につくられている。今回は戦前までタイムスリップするが、おもしろそうだ。


1941年、人気女優ユージン(コンリー)が「蘭心大劇場」で舞台「サタデーフィクション」を演じるために上海を訪れる。国際都市上海には日本海軍の古谷少佐(オダギリジョー)や特務機関の梶原(中島歩)だけでなく、フランスの諜報部員ヒューバート(パスカル・グレゴリー)をはじめとした各国の諜報部員が集まっていて、各国の動きを探りあっていた。


映像のセンスは認めるが、訳がわからない展開だ。

この映画のストーリーを書くのはむずかしい。解説はほぼない。この当時、中華民国自体も日本の傀儡政権的な汪兆銘(精衛)の南京政府が分裂して蒋介石の重慶政府と分かれている。それぞれの諜報部員が登場する。ユージンが以前労働組合に関わっていたなんてセリフがあると、共産党側の人物だと連想してしまう。それに加えてフランス人スパイや日本の特務機関が加わり何がなんだかよくわからないままストーリーが進む。途中から急展開して、誰もがスパイになっている。現代中国史がわかっていても混乱する。

どっちが味方か敵だかわからなくなるのは、東映の実録物ヤクザ映画を観ている時の感覚だ。深作欣二監督手持ちカメラを多用するのと似たように、ブレまくりのカメラで登場人物を背後から追う。ロウイエ監督の前作「シャドウプレイ」はカット割りも多く、すごいスピード感だったけど、この作品では後半戦になって展開が早くなる。最後に向けて入り乱れている中で、ようやくスパイの目的が日本が開戦する場所を掴むことだとわかる。ただ、オダギリジョークラスの将校へ開戦に関する極秘内容が伝わるのはあり得ないのではと思う。

日本映画で、1940年代を撮るとなるとほとんどセットになる。どこか不自然で稚拙にみえることが多い。ところが、上海黄浦江に面した外灘エリアに今もレトロな建物が並んで建っている。ここを舞台にすることでリアル感が増長する。モノクロの手持ちカメラで撮ったレトロな建物で繰り広げられる映像に魅せられる。ただ、自分が知っている上海のフランス租界ってもう少し住宅街ぽいエリアだったけど違うかな。あと、パリ陥落以降なのでフランス人スパイという存在自体が微妙。ドゴール将軍側ということだと解するけど。

国際派女優コン・リーは健在だった。いかにも中国人女性らしいキツさを備えた表情は変わらない。50代後半になってもアクション場面に通用するのはさすがだ。モノクロ映像ではそんなに老けて見えない。雨の中の対決がスタイリッシュに見える。


オダギリジョー怪しい雰囲気を持った日本人将校役が上手い。中島歩は日本ではもう少しヘラヘラした役も演じるけど、特務機関の男という雰囲気を残す。加えて日本語を話す日本軍の下っ端が酔っ払いなども含めてずいぶんと登場する。


ロウイエ監督のこれまでの作品と比較すると、この映画は中国当局に承認された映画を撮っている雰囲気が強い。最終に向けての展開はそうなるだろうなあと予測した通りだった。
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映画「兎たちの暴走」

2023-09-01 18:16:13 | 映画(中国映画)
中国映画「兎たちの暴走」を観てきました。


映画「兎たちの暴走」は中国映画、内陸部の工業都市で起きた殺人事件を描くクライムドラマだ。実際の事件にもとづく。中国映画でも裏びれた町の一角での泥くさい犯罪モノは好きだし、ピックアップして観ている。今年はじめに日本公開された「シャドウプレイ」も中国の裏事情にスポットをあてた自分が好きなタイプの映画だった。同じスタッフが今回参加しているという。2020年に映画祭に出品された映画が今さら公開というのもずいぶんと遅い気もするが、興味深い。でも、公開館は少ない。

中国四川省の工業都市の女子高校生シュイチン(リーゲンシー)は、父と継母と弟と暮らしている。しかし、継母とは折り合いが悪い。その街に一歳の時に別れ大都市に移った実母チューイン(ワンチェン)が帰ってくる。ダンサーの母親は感傷的にならず冷静だが、シュイチンは実母に接近する。ところが、実母は200万元の多額の借金があり、黒社会筋のヤミ金の取立てに追われていて、しかも期限が迫っていた。


女性監督らしくきめが細かい。あらゆる映像に目が行き届いた感触をもつ良作である。
女の子の微妙な心理状態がよく描かれている。エンディングなどに欠点もあるけど、掘り出し物の一つだろう。

ポイントは、継母といい関係が築けない女の子のもとに、幼い頃に別れた母親が身近なところに戻ってくる時に女の子が感じる心の動きだ。その母親は美しく、スポーティーな黄色のクルマを乗りまわし、学校で仲間にもダンスを教えてくれる自慢の母親だ。再会できて誰よりもうれしい。その実母が怪しい奴らに追われている。しかも、多額の借金をしていて、遠方から取り立てが来ている。何とか実母を助けなければという健気な気持ちだ。そこでインチキ誘拐事件を装って友人の実家からカネを引き出そうと企むのだ。


実質主役とも言える高校生を演じるリーゲンシーは、「初恋のきた道」の頃のチャンツィーを彷彿させる純真な少女だ。一歳の時に自分を捨てた母親だけど、実母には違いない。母親を慕う気持ちで犯罪に加担した主人公が実に切ない。珍しく実際の犯人に同情心を持ってしまう。

ここでは、主人公シュイチンの友人として2人女の子を登場させる。1人は家は裕福なんだけど、意地の悪い子でいわゆる女のいやらしさを兼ね備えている。もう1人はモデルになるくらいの美貌をもち金持ちから自分の養女にしたいと言われている子で、心配性の実父から虐待を受けている。この2人の使い方は女性監督ならではかもしれない。ストーリーのネタバレになるので言わないが、事件にも関わってくる。


つい最近も韓国映画「あしたの少女」で女性監督が巧みに脚本監督をこなしたが、ここでもシェン・ユー監督が巧い。四川省といっても広い。今回の舞台となる工業都市は中核都市成都とは700km以上離れている。東京から青森の距離だ。金沙江と言う川に沿った工業都市で,煙突から煙がもうもうと出ている。実際には別の都市で起きた事件のようだが,ロケハンがうまく良い撮影地を見つけて,現地の高校生たちにも協力してもらったようだ。その辺の配慮が映画を見ているとよくわかる。
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映画「崖上のスパイ」チャン・イーモア

2023-02-12 18:30:18 | 映画(中国映画)
映画「崖上のスパイ」を映画館で観てきました。


「崖上のスパイ」は中国の巨匠チャンイーモアが1934年満州国統治時代のスパイ活動を題材にした新作である。2つのオリンピック開会式で演出をつとめたチャンイーモアは中国映画界では最高の監督であるのは誰もが認めること。日本の傀儡政権満州国の特務組織に対して、正体を隠しての潜入者も含めてスパイ活動を描いていく。

1934年ソ連で教育を受けた4人の共産党のスパイが満州国の大雪が降る山間部に降り立つ。2人の男女で二方向に分かれて行動するのを、内偵者によって満州国の特務警察はつかんでいた。泳がされながら移動するが、リーダー格が当局に捕まる中で寝返りした者たちも作戦に助言を与えてスパイ戦が続く。


いかにもチャンイーモア監督の映画らしく映像は美しい
騙しだまされて敵味方が交錯するのはスパイ映画にはありがちなパターンだ。ただ、それぞれの場面の理解がしづらい。あまり事前情報を得ずに映画を観るタイプなので、女性陣はわかっても男性陣の顔が同じように見えてしまう。深く雪が積もる山間部にパラシュートで降り立った後も、極寒のため服で顔が隠れている。登場人物がよくわからないままにストーリーが進む。それでも、列車の中での緊迫感のある場面など見どころは数多く用意する。

この映画をこれから観る人は作品情報で登場人物の顔を確認してから行くことを勧める。

映画ではずっと雪が降り続く。音楽も極寒の景色にあっていてムードを高める。ハルビンの街の撮影はセットなのであろうか?それともそのまま残っている古い建物の中で撮影されたのであろうか?戦前のクラシックカーでカーチェイスのシーンもある。こんなに車潰して大丈夫なんだろうか?と思ってしまう。


中国共産党の先人にはこういう人たちがいたという宣伝映画の様相も呈している。すこし興ざめしてしまう。サスペンス映画としては弱い気がする。

巨匠チャンイーモア監督の新作であると同時に、中国共産党を評価する映画なので映画予算はふんだんにあるのであろうか?気になったのは、満州国の特務警察の中に日本人がいなかったこと。さすがにトップは日本人だったんじゃなかろうか?


あとは、女性スパイの1人がいかにもチャンイーモア好みの女の子だったこと。コンリー、チャンツィイーの若き日を彷彿させる小蘭役のリウハオツンがかわいい。出演しているチャンイーモアの前作「ワンセカンド」はコロナ期で上映館が少なく観れていない。おそらく人気スターになるだろう。
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映画「シャドウ・プレイ」 ロウ・イエ

2023-02-01 20:13:20 | 映画(中国映画)
映画「シャドウ・プレイ」を映画館で観てきました。


映画「シャドウプレイ」は中国のロウイエ監督が広州の都市開発エリアで実際に起きた事件に基づいて制作した作品だ。台湾、香港のロケ撮影を含めて2017年には完成していて2019年に中国公開、今回ようやく日本公開となる。中国の裏社会に通じるフィルムノワール映画ってわりと好きだ。「罪の手ざわり」以降のジャ・ジャンクー作品でも裏社会が絡んだ移り行く中国を映し出す。ただ、こういう類の映画はあまり当局からはよく見られていない。完成から中国公開に2年かかったことでもよくわかる。

強烈に電圧の高い映画である。
アクション映画としてのレベルが高い。一見の価値がある。
カット割りが多く、スピード感がある。「仁義なき戦い」を思わせる手持ちカメラの映像を駆使して素早いテンポで進む。ブレまくりの映像で緊迫感が高まる。タンの妻リンがアユンと車の中でもめに揉めるシーンがある。激しいシーンでこちらまで身をくねらせてしまう。ただ、いったいどうやってこのシーンを撮ったんだろうと思わせる。カメラワークが凄すぎる。



2013年広州天河区の高層ビルが建ち並ぶ横にゴチャゴチャした住宅が並ぶエリアがあった。開発業者が立ち退きの条件交渉をしている時に、解体工事が着手された。


怒った住民たちが暴動を起こすと、役所の補償責任者タン(チャン・ソンウェン)が仲裁に入る。ところが、肝心のタンがビルの上から転落して死亡する。開発業者の社長ジャン(チン・ハオ)がタンの殺しに絡んでいるのではとの疑いもあり、ヤン刑事(ジン・ボーラン)が捜査を始める。いきなり妨害に入られて要らぬ疑いを持たれる。タンの妻リン(ソン・ジア)がジャンの元恋人だったことやビジネスの相棒アユンが行方不明になったことを含めてヤン刑事が事件を追う。


香港ノワールやクライムサスペンスが得意な韓国映画でもここまで凄まじいアクションを観たことがない。香港や台湾ロケも含めてお金がかかっている印象を受ける。他の中国映画同様エロティックなシーンは抑え気味だが、残虐さは半端でない


中国人からすると、立ち退き「収用による補償金をたくさんもらえて儲かる。這いあがるチャンスだ」という気持ちが強い。その趣旨でいくと、他にも似たような作品はある。でも、ここまでのすごいアクションは見せない。

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映画「柳川」 中野良子&池松壮亮

2022-12-31 21:40:47 | 映画(中国映画)
映画「柳川」を映画館で観てきました。

映画「柳川」は中国朝鮮族のチャンリュル監督による福岡県柳川を舞台にした中国映画である。映画ポスターの夜のムードが雰囲気良さそう。2011年の夏と2019年の冬の2回柳川でお堀を舟で遊覧したことがあり、なじみがある。中国人男女3人が主演だが、池松壮亮と中野良子が日本人俳優として加わる。

末期がんを宣告されたドン(チャン・ルーイー)が飲みながら兄チュン(シン・バイチン)を日本の柳川への旅に誘う。行く気のなかった兄に、柳川は中国読みでリュチュアンで、元恋人の名前と同じだと伝える。しかも、柳川に行方不明だった元恋人チュアン(ニー・ニー)がいるらしいと連れ出す。2人は柳川のバーで歌を歌っているチュアンと再会するとともに、宿泊している宿の主人中山(池松壮亮)や居酒屋の女将(中野良子)と交流する日々を描いていく。

予想通り柳川のお堀付近の映像はきれいだった。
人気のない街路のしっとりとした夜のムードも、船頭が誘導するお堀を遊覧する舟に乗る姿も優雅である。観ていてたのしい。美しいショットも数多く、エピソードも次から次へと盛りだくさんに出てくる。ただ、つぎはぎの感はある。つながりに流れがないのが残念である。(筆者撮影↓)


⒈中野良子
久々にみる。自分が中学から高校にかけての人気はすさまじかった。NHKの「天下御免」をはじめとしてTVドラマで見ない日はなかった。田宮二郎主演TVドラマ「白い影」での看護婦役がなぜか印象に残っている。

高倉健主演「君よ憤怒の河を渡れ」が中国で大ヒットした影響はその後も残っている。文化大革命の悪夢が明けたあとで、観れる映画も限られていただろう。オリンピックの開会式の演出もやった中国映画界の巨匠チャンイーモウ監督高倉健主演の映画をつくったくらいだ。当然ヒロインの中野良子はもてはやされる。

日本では忘れられた存在の中野良子もここではいい感じの居酒屋の女将を演じる。中国人兄弟の会話を絶妙に交わす会話は手慣れているプロの水商売の女将の雰囲気すらある。


⒉池松壮亮
中国人兄弟が泊まる古民家の民宿の主で、最初は大した役ではないのかと思った。ここで中国人兄弟と関係があった中国人女性チュアンとロンドンで出会い、君の名前と同じ「柳川」という町が日本にあるんだよと伝える。17歳の時にできてしまった15歳の娘がいる設定だ。

いつも通りのマイペースな演技である。
英語でチュアンと会話する。酒に呑まれる役で、いいところはまったくない。でも彼らしい感じである。


⒊柳川の町とと印象深いシーン
中国の朝鮮族だったというチャンリュル監督はかつて柳川の町を訪れたことがあったのであろう。そこで、ヒロインの名前が「柳川」を中国語読みしたリュチュアンという女性になったことや今回のストーリーの流れを思いついたと思われる。特に、お堀の近くの街路を中国人の3人が夜散歩するシーンが素敵だ。

でも、それだけではない。お堀をクロールで泳ぐ人を登場させたり、松岡修造が高校時代テニスに励んだ柳川高校の女子生徒が出演したり、柳川にルーツがあるジョンレノン夫人の小野洋子さんにつながる歌が流れたりする。おひな様がでてくる。確か、地域の領主だった立花家の邸宅で見たことがある。(筆者撮影↓)


ただ、いちばん素敵に見えたのは、自動販売機のそばでチュアンことニーニーがダンスするところ。かっこよかった。
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映画「こんにちは、私のお母さん」

2022-01-10 17:39:08 | 映画(中国映画)
映画「こんにちは、私のお母さん」を映画館で観てきました。


中国の喜劇俳優ジアリンによる自身の体験をもとにした脚本を監督して自演した作品だ。母と2人乗りの自転車に乗っているときに交通事故に遭い、重体の母のそばで泣いていたら気がつくと20年前にタイムスリップして自分が生まれる前の母に出会う話だ。母と交わす交情でお涙頂戴の世界である。

期待して映画館に向かったが、もう一歩かなあ。ジアリン演じる主人公が母親に出会う1981年の中国は鄧小平により市場原理を取り入れた経済体制となって間もない時期だ。ひと時代前にTVで見た中国の映像がよみがえる。太っていてコミカルなジアリンは表情豊かで決して悪くないし、若き日の母親役チャン・シャオフェイはひと時代前の三田佳子を思わせる美貌で、存在感がある。だけどちょっとなあ。


明るく元気な高校生ジア・シャオリン(ジア・リン)と優しい母リ・ホワンインは大の仲良し。ジアの大学合格祝賀会を終え、二人乗りした自転車で家に帰る途中、交通事故に巻き込まれてしまう。病院で意識のない母を見てジアは泣き続け、そして気がつくと…20年前の1981年にタイムスリップしていた!

独身の若かりし母(チャン・シャオフェイ)と〝再会〟したジアは、最愛の母に苦労ばかりかけてきたことを心から悔やみ、今こそ親孝行するチャンスだと奮起。自分が生まれなくなっても構わない。母の夢を叶え、幸せな人生を築いてもらうことが、娘としてできる「贈り物」なのだ!だが、やがてジアは“ある真実”に気づく……。(作品情報より)

映画でもカラーTVが一般家庭に普及していないというセリフもある。まだ文化大革命体制の貧しい世界から脱却できていない。いわゆる公営工場での集団労働、大きなスローガン看板が掲げられる社会主義中国の原風景が映る。当時の中国人民のとっぽい服装は90年代に入っても大きくかわっていなかった。香港に90年代初めに行ったとき、大陸人と香港人とはそのどんくささで見分けがすぐついた。1981年ならなおさらだ。


でも、そんな昔を懐かしむ中年以上の中国人たちには受けるだろう。中国ではずいぶんとヒットしたようだ。習近平主席も格差是正で「共同富裕」のスローガンをあげる。まさか、この頃に戻れとは思っていないとは思うけど。


ただ、自分の理解度が弱いからかもしれないが、途中で現実と虚実の境目がぐちゃぐちゃにになり、訳がわからなくなる。人間関係のつながりは見ていて消化不良になってしまうような世界だ。ここ最近、中国の裏社会を描く作品に傑作が目立ったが、これは中国当局が推奨する人民映画みたいな感覚を得てしまう。だからのれないのかな?
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映画「少年の君」 チョウ・ドンユイ

2021-07-21 05:01:32 | 映画(中国映画)
映画「少年の君」を映画館で観てきました。


オリンピックの開幕を前にして、開会式の音楽担当に関する過去のいじめ経験がマスコミにクローズアップされている。「少年の君」は中国の高校におけるいじめが題材になっている。同時に中国の受験生模様も描かれる。本を読んで厳しい受験生事情は知ってはいたが、こうやって映像で見るのは初めてだ。香港の名優エリック・ツァンの息子デレク・ツァンの監督作品である。

同級生からいじめにあっている受験を前にした進学校の高校生が、ひょんなきっかけで裏社会に足を突っ込むチンピラ少年としりあう。自分を守ってもらうように頼むが事態が悪化してしまう顛末である。現代中国の受験事情を描くと同時に、裏社会につながる黒い部分にもスポットを当てているので、単純な青春ものとは違うテイストがある。ノーヘルで2人乗りバイクで仲良く街を疾走する映像は素敵だ。ただ甘酸っぱい恋愛ではない。


ストーリーの行き先には目が離せない面白さはある。ただ、韓国クライムサスペンスでも感じるんだけど、こんな女子高校生が暗い夜道を歩くのかなあという素朴な疑問だ。ちょっと出来過ぎの気もするけど、現代中国を知るにはいい作品だ。

2011年の中国、高校生のチェン・ニェン(チョウ・ドンユイ)は、進学校で名門大学を目指して勉強に励んでいる。「全国統一大学入試(=高考)」が近づいているある日、同級生の少女がクラスメイトからのいじめを苦に、飛び降り自殺で命を絶った。

校庭で死体に寄り添っていたのをみて、チェンはいじめグループの次の標的となってしまう。チェンは母親が出稼ぎ中で、1人住まいだった。下校途中、1人の少年シャオベイ(イー・ヤンチェンシー)がリンチをくらっているのを見て通報する。急場を救ったことをきっかけに親しくなる。シャオペイはチンピラグループの一員だった。


その後も、チェンへのいじめは止まらず、我慢した末に警察に連絡をする。それを受けていじめグループは停学にはなるが、まったく反省の余地がなく、仕返ししてくる。そこでチェンはショオペイの掘っ立て小屋の棲家に逃げ込む。ショオペイはいじめから救うためにボディガードを買って出るのであるが。。。

⒈家庭に恵まれない女の子チェン
コンクリートの公営アパートと思しきところに住んでいる。シングルマザーの母親は出稼ぎと称して娘を1人置いて化粧品の販売に携わっている。客から肌が荒れたというクレームを受けているようだ。(この映像を見ていると、日本における中国人の化粧品爆買いの意味がなんとなくわかる)借金取りが自宅に押し寄せている。金を返せという張り紙がアパートに貼ってあり、それを目ざとく見つけたいじめグループがSNSで撒き散らす


世間をだましだまし生き抜いてきたであろう母親がいたので、なんとか金がかかりそうな進学校に通っていたのであろう。それでも、大学に入れば、今より良い水準の生活ができるからと、懸命に勉強している健気な女子高校生だ。

自殺したいじめられっ子からは「助け」を求められたが、結局何もできなかった。その思いで、死体に近寄っただけだ。故人と親しいのかと思われて、警察に事情徴収を受けたが、何もしゃべっていない。それでも、いじめグループは何かチクったのではと思い、次の標的にされる。気の毒だ。

⒉中国進学校事情
映画によると、中国における大学入試共通テストには全国で923万人受けているという。(日本は48万人、中国は約20倍近くだ)ここで映る進学校は共学であるが、学校内の熱気がちがう。このイメージは、日本で言えば名門中学を目指す塾で「合格!」に向けてのシュプレヒコールを叫んでいるかの如くだ。むしろ、日本のレベルの高い進学校の生徒はもっと冷めているし自由だ。そういえば、この間日本でいちばんの女子高で自殺があったと報道されていた。

生徒のパフォーマンスにはいくつかあれ!?と思うシーンはある。それぞれの生徒の机の上にテキスト、教科書?らしきものが乱雑に積まれている映像が印象的だった。試験の不出来で教室の席順もかわる。みんながガツガツ勉強しているイメージである。

でも、受験を控えている進学校の生徒にいじめにうつつを抜かすヒマってあるのかしら?という疑問は残る。話が出来過ぎというのはその部分である。


⒊全国統一大学入試(=高考)
いじめを受けたりするが、チェンは共通テストを受験する。そこには作文がある。課題に対して、先生がヤマを張るなんて言葉があるが、記述式である。日本の新共通テストでは、採点に難ありとマスコミに非難され記述式は中止になった。

1300年もの間科挙という官僚登用試験のあった中国には作文というのは欠かせないものなのであろうか?アジアの大学ランキングでは常に中国は上位にランクされる。ますます日本と中国及び香港、シンガポールとの学力レベル差が大きくなるのではないかと感じる。

⒋学歴と能力
自分が敬意を払う社会学者である本田由紀東大教授「教育は何を評価してきたのか」によれば、

努力:努力する人が恵まれる。能力:知的能力や技能のある人が報われる。教育:給与を決めるとき教育や研修を受けた年数の長さ、日本では能力、努力、教育の順となっている。(本田「教育は何を評価してきたのか」p41)日本以外の国(特に欧米先進国)では教育歴が給与に反映されるべきだとする。(同 p42)日本では学歴は能力を反映しないという見方が強い。(同 p47)

この日本の考え方に反するつもりはない。諸外国において大学を出るという意味が日本における戦前の旧制帝国大学を出るくらいの意味を持っているのかもしれない。

上海市の正社員の給与昇給率は14%以上だ。20%以上もある。初任給が日本企業より少なかったとしても30歳になる頃には,日本の給料を追い越している場合も少なくない。(中島恵「中国人のお金の使い道 」p37)アリババファーウェイといった中国を代表する有名IT企業であれば初任給は手取りで2万元約300,000円だった。入社3年目で3.6万元約540,000円にアップしている。(同 p40)

上記のような記述からも日中の違いが良くわかる。いずれにしてもこれらの給料もらう人が大卒なのは間違いない。

⒋パクリという説については
そもそもこの手の話は似通っているものだ。演歌の節回しがどれも似通っているのと同じであろう。東野圭吾の作品からとったというパクリ説もある。良いとこどりはあっても、パクリではない。韓国映画で連想すると、高校生がむごい目に合う母なる復讐や不良と子供の友情を描いたアジョシなんて映画を思い浮かぶ。中国映画というより、陰湿な韓国映画で良く描かれたパターンなのかもしれない。まあ、何かしらかぶるものだ。


この映画は重慶でロケされたという。坂道と階段が多い。いずれも映画と相性が良い。何処なのかなと考えていた。猥雑なダウンタウンから高層ビルが立ち並ぶ現代的な中国に急激に変わりつつあるその姿を見るだけでも価値があるんじゃなかろうか?
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