映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「レヴェナント」レオナルド・ディカプリオ&トム・ハーディ

2016-04-28 05:35:19 | 映画(自分好みベスト100)
映画「レヴェナント」を映画館で見てきました。


レオナルド・ディカプリオが念願のアカデミー賞主演男優賞を受賞した「レヴェナント」は、演技、ビジュアル、音響効果いずれもすぐれた総合的完成度が極めて高い近年まれにみる傑作だ。当然今年一番の作品と評価されることは間違いあるまい。上映時間は157分と長いが、途中飽きることなく次に何が起こるのかとドキドキしながらみていた。

エマニュエル・ルベツキが撮影監督なので、映像美を楽しめるだろうというくらいの個別情報最小限で見に行った作品だった。映画が始まってから、いつの時代なのかという説明は一切なく、野生動物に立ち向かう主人公たちとそれに対抗する先住民らしき集団との対決が見られるので、西部劇と同じような年代だと想像する。それでも人物同士の関係がよくわからんと思っていると、レオナルド・ディカプリオがクマに襲われるシーンが出てくるのだ。これが迫力ある。それで一気に映像に引き込まれる。


どうなっちゃんのだろうと映像に注目するうちに、次から次へと凄いシーンが続いていき、ようやくそういうことなのかとわかっていく。
余計な説明は一切ないが、究極のサバイバル物語だということがわかっていくのだ。

西部開拓時代のアメリカ、野生動物の狩猟をして毛皮を採取するハンターチームはネイティブアメリカンの一団に襲われ命からがら船で川を下る。チームのひとり、ヒュー・グラス(レオナルド・ディカプリオ)は息子、ホークとともにガイドとして同行していた。翌早朝、グラスは見回り中に子連れの熊に襲われ、瀕死の重傷を負う。チームは担架でグラスを運ぶが瀕死でもあることから、隊長のアンドリュー・ヘンリーが死ぬまで見届け埋葬する者を募ると、ホークとフィッツジェラルド(トム・ハーディ)、若いブリッジャー(ウィル・ポールター)が残ることになった。フィッツジェラルドは足手まといのグラスを殺そうとするところをホークに見つかり銃を向けられるが、返り討ちにしてしまう。フィッツジェラルドはブリッジャーを騙しグラスに土をかけその場を離れる。グラスはその一部始終を見ていたが、声は出ず身体は動けない。グラスは奇跡的に一命をとりとめ、息子を殺したフィッツジェラルドを追う。


1.レオナルド・ディカプリオ&トム・ハーディ
レオナルド・ディカプリオのこの映画での演技をみれば、誰もアカデミー賞主演男優賞受賞に異議を唱える人はいないであろう。熊に襲われるシーンで度肝を抜かれた後も、瀕死の重傷であえぐシーンや急流の川で流されていくシーン、追われて逃げた時に馬が転落死してしまいその馬の内臓を引っぱり出し、寒さに耐えるためにその中で寝るシーンなど見どころが満載だ。スタントを使っている時もあるだろうけど、川の中にいる魚を手づかみで捕り生のままで食べるシーンはCGのはずはない。ともかく凄いサバイバルシーンをよく演じたものだ。

トム・ハーディはここ近年でもっとも力をつけている俳優だろう。「ダークナイト・ライジング」における不死身の悪役を演じてから「マッドマックス」そして「レヴェナント」と話題作に連続して登場している。ここでは悪役に徹している。今回のアカデミー賞助演男優賞にノミネートされたが、いくらなんでも今回は相手が強すぎ、「ブリッジオブスパイ」のマーク・ライランスや「クリード」のシルベスター・スターローンには勝てないよなあ。


2.監督 アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
この監督の作品にハズレはない。今もっとも注目すべき監督だと思う。自分も「21グラム」で注目してから菊池直子の出演で日本でも注目を浴びた「バベル」バビエルバルデム盤「生きる」とも言うべき「ビューティフル」などいい作品が続き「バードマン」でアカデミー賞を受賞、それに引き続くこの映画のレベルが半端じゃない。


極寒のロケ地を選ぶためのロケハンに成功することがこの映画成功の必要条件だと思う。一部セットもあると思うが、アメリカ、カナダ、アルゼンチン、メキシコとロケをしたそうだ。そのロケ地の選択とあわせて、エマニュアル・ルベツキの撮影が加われば鬼に金棒だ。そして先住民と闘いを交えたり、格闘をするシーンではかなり過酷な演技要求をしている。どこまでが本気なのかわからないが、それに配役のそれぞれが期待にこたえている。お見事としか言いようにない。

3.撮影 エマニュアル・ルベツキ
「ゼログラヴィティ」サンドラブロックの優雅な宇宙遊泳を映しだし、「バードマン」では一筆書きのように1つの映画の中で連続性あふれる映像を描いた。手持ちカメラで劇場内における主人公を追いかけて行った映像が印象に残る。この2作でアカデミー賞撮影賞を連続で受賞した。まさしく当代きってのすばらしい撮影者だ。


自分はベンアフレック主演「トゥザワンダー」の映像で度肝を抜かれた。映像コンテの選択がうまく、5~7秒程度のカット割りの多い連続した映像のどれもこれもがすばらしい。この映画では当初の格闘部分で「バードマン」の時と同様の一筆書きのような映像が続き、「トゥザワンダー」のような美しい映像コンテが5~7秒程度次から次へと続くのと組み合わさる。CGを使ったものもあると思うが、いったいどうやって撮ったんだろうと思わせるシーンが続く。なんとすばらしい映像だろう。映画史上最強の撮影者だと思う。


4.音楽 坂本龍一
これもすばらしい。甲高くバックで音楽が鳴り響くというわけでない。それぞれの場面にあわせて、美しく同化している。音楽がある時間は決して多くはない。嫌味がなくそのどれもが心地良いものである。おそらくは監督と念入りに打合せをしたのであろう。映像にマッチするというのがここまでうまくいっている作品は少ない。
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映画「スポットライト」 マイケルキートン&マークラファロ

2016-04-27 18:30:53 | 映画(洋画:2016年以降主演男性)
映画「スポットライト 世紀のスクープ」を映画館で見てきました。


「スポットライト」は2015年度のアカデミー賞作品賞、脚本賞に輝く作品である。余計な先入観なく見に行った。神父による性的虐待事件の取材活動が進み、真実が暴かれていく姿に緊迫感を感じた。丹念にインタビュー重ねるだけでなく、あらゆる記録を調べていく。ミステリーのように予想外の結末でないのはわかっていることながらドキドキ感が高まっていく作品だった。

それにしても神父から子どもたちへの性的虐待はひどい。ここまでカトリック教会がハチャメチャになっているのを世の教会通いの信者さんたちは知っているのであろうか?教会だけでなく、学校の教師にも神父たちはいて、次から次へと色狂いがわかっていく。自分が無宗教で本当によかったと思わせる映画である。

2001年の夏、ボストン・グローブ紙に新しい編集局長のマーティ・バロン(リーヴ・シュレイバー)が着任する。


マイアミからやってきたアウトサイダーのバロンは、地元出身の誰もがタブー視するカトリック教会の権威にひるまず、ある神父による性的虐待事件を詳しく掘り下げる方針を打ち出す。その担当を命じられたのは、独自の極秘調査に基づく特集記事欄《スポットライト》を手がける4人の記者たち。デスクのウォルター"ロビー"ロビンソン(マイケル・キートン)をリーダーとするチームは、事件の被害者や弁護士らへの地道な取材を積み重ね、大勢の神父が同様の罪を犯しているおぞましい実態と、その背後に教会の隠蔽システムが存在する疑惑を探り当てる。


やがて9.11同時多発テロ発生による一時中断を余儀なくされながらも、チームは一丸となって教会の罪を暴くために闘い続けるのだった・・・。(作品情報より)

1.聖職者の独身
こういった神父からの性的虐待はボストンだけの問題ではないようだ。エンディングロールで示すように、今回の報道がきっかけで数多くの都市で同じような事件が繰り返されていたことがわかった。
でもこれって、カトリックの神父が結婚できないとこが大きな原因であることは間違いあるまい。聖職者の俗人化や聖職売買で一気に進んだ腐敗をなくすために、カノッサの屈辱で有名な教皇グレゴリウス7世がおこなった改革で聖職者が独身であるべきということになる。まさに11世紀から12世紀の中世の暗黒時代に定まったことがそのまま現在まで残っている。

一方でプロテスタントの聖職者は結婚ができる。宗教改革の先駆者マルティン・ルターは結婚しているし、カルヴァン「キリスト教綱要」で独身制を否定している。これは私見だけど、ルターがサンピエトロ寺院建設のための免罪符による腐敗を訴えることが宗教改革のきっかけになったというのが世界史の教科書にあることだ。でも本当は聖職者が結婚できないことに不満だったことが改革を起こした原因だったりして。

東西両教会が歴史的面談をするような時代になったわけだから、少しは考え直した方がいいのでは??

2.米国新聞の取材
特集記事欄のチームということで精鋭が集められているという設定である。そのこと自体がはっきりと映像に示される。徹底的なインタビュー取材、ある仮説をたてるための分析とそこでピックアップされた人物への徹底取材、そして裁判記録の確認などなかなかすごいなあと思わせる新聞記者たちの動きである。議事録が削除されていることに疑問を感じて、カトリック教会から圧力があったことがわかりそれを懸命に追及する。そういう動きをかなりやってもすぐさま記事にしない。記者たちはものすごいフラストレーションを感じたと思うが、時期が来るのを待つ。この辺のもどかしさをこの映画では映像で示している。なかなかうまい。


3.近年アメリカ映画の俳優たちの名演
エンディングロールではマークラファロがクレジットトップである。マイケルキートンがリーダー役だっただけにちょっとこれは意外だ。マークラファロはここ数年いい作品にずいぶんと出ているが「フォックスキャッチャー」での殺されレスラー役が印象的だ。ここでも特ダネを持ってきたのに時期が来るまで待てとリーダーのマイケルキートンに言われ、激高して逆らうシーンの激しさが印象的だ。


マイケルキートンは前作「バードマン」でマイケル本人とかぶるような過去に栄光があった俳優を見事に演じあげた。「スポットライト」で二年連続でアカデミー賞にからみ、俳優としての地位を復活させているような気がする。
レイチェルマクアダムスも近年活躍がめだつ。個人的にはブライアンパルマ監督の「パッション」での悪女の演技が好きだ。


あとは編集長役のリーヴ・シュレイバーも近年の活躍が際立つ名優だ。「完全なるチェックメイト」トビ―マクガイアのライバルである冷静沈着なチェスチャンピョン役が印象的だ。ここでも編集長役で肝心な場面で威厳のある言葉を語る。いい感じだ。



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娘と皇居へ行く

2016-04-25 05:15:55 | 散歩
皇居東御苑に娘と散歩してきました。

いつもながらの御茶ノ水~神保町への散歩でぶらぶらしたあと、普段と道筋を変えてみた。
皇居の緑をみて、あっちへ行くかというと娘もなぜか了解
東大の「学士会館」、一橋大の「如水会館」をこえ、まさしく一ツ橋を渡ると毎日新聞社にでてくる。
皇居近くまでたどり着く。

いつもであればそのまま東京国立近代美術館とか行くのになぜか皇居に一般の人が入るのが見える。
平川門のところだ。あれ?いいの。
皇宮警察と思しきこわそうな警官に入っていいかと聞くと、いいという。
荷物を調べられたが、中に入る。
まったくをもって恥ずかしい話だが、50も半ば過ぎるまで平川門側から皇居に入っていいとは知らなかった。




諏訪の茶屋


花がきれいだ


二の丸庭園

大手町のビル群を借景にするところがいい
鯉もでかい


池の裏手


竹林ではタケノコが生えている


本丸地区に向かう


すげえ芝生だ


ビル群を借景で見る


天守台へ、芝生方面を見る


音楽堂だ。
香淳皇后の還暦を記念してつくられた桃華楽堂だ。




汐見坂からお堀をみると


大手町のビル群を大手門側から見るとこうなる

そひて東京駅にそのまま向かう
まったくの偶然だったが、これはなかなかいける。外人率60%~70%程度と高い。
ちなみに無料だ。
記念にキーフォルダーを購入、菊の紋入りだ。これはいいことあるかもしれない。
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ドキュメンタリー映画「ヴィヴィアン・マイヤーを探して」

2016-04-24 19:44:08 | 映画(洋画:2013年以降主演女性)
ドキュメンタリー映画「ヴィヴィアン・マイヤーを探して」は2015年公開のアメリカ映画だ。


「ビル・カニンガム&ニューヨーク」と「セバスチャン・サルガド 地球へのラブレター」という2つの写真家を題材にしたドキュメンタリーは映画館で見ていずれもよかった。それなので女性写真家をフューチャーした「ヴィヴィアン・マイヤーを探して」も気になって仕方なかった。上映映画館が少なく、残念ながらスケジュールに合わなかった。結局DVDスル―となってしまったが、なかなか良くできたドキュメンタリーである。

ヴィヴィアン・マイヤーを女性写真家と言ったが、実際には1人の写真好きの独身ベビーシッターにすぎない。生前、彼女は写真として15万枚以上の作品を残しながら、一般に公表していなかった。シカゴ在住の青年ジョンマルーフが彼女のネガをたまたまオークションで得てブログにアップすると、その出来の良さにプロのカメラマンからも賛辞が寄せられる。そこで彼女の半生を追うことが製作者ジョンマルーフのライフワークになったのだ。

(製作者ジョンマルーフの言葉  作品情報より引用)
2007年、地元シカゴの歴史の本を執筆しているときに、その本に掲載する古いシカゴの街並みの写真を 探して、地元のガラクタや中古家具などを扱っているオークション・ハウスに出かけた。そこで、写真のネガでいっぱいの箱をひとつ競り落としたが、それらの写真が本に使われることはなかった。。。「僕には見る目がある。時間があるときにゆっくり見よう」そう思ったのだ。2年後、そのとき買った写真が20世紀最高のストリート・フォトグラフの発掘の始まりとなったのだった。僕はこの素晴らしい写真を撮った人物を探す旅を記録して、映画にすることを決めた。


そのネガは、ヴィヴィアン・マイヤーという女性のものだった。僕は彼女の遺品と大量の奇妙な所有物を手に入れて、彼女のことをもっと詳しく調べ始めた。僕は、マイヤーがどういう人物なのかを解き明かしていく過程を映画にしたいと思ったのだ。彼女の残した証拠物件は僕を、彼女を知る人物から人物へ導いていった。しかし、さらなる事実を発見すればするほど、疑問が湧いてくるのだった。彼女は僕がやっていることをどう思うだろうか? なぜ彼女は自分の写真と私生活を、他人の目に触れないように したのか? 一体全体、どういう女性なのだろう?。。。


すっかり取り憑かれた僕が集めたインタビューと、世界中に散らばった彼女にまつわる奇妙な物語のライブラリーができた。僕たちはおよそ100人程度の、ヴィヴィアン・マイヤーと接触のあった人々を見 つけ出した。映画の中では、彼らの好きなように話してもらった。(一部略)


1.インタビューを通じて半生を追う手法
ミュージシャンのスライ・ストーンの周辺をインタビューをすることにより、彼の実像を追うドキュメンタリー映画「スライストーン」も同じ手法であった。人気の出ていた70年代前半から不可思議な奴と評された彼の実像をインタビューだけで浮き彫りにしようとする。映画の最終展開で彼本人へのインタビューを成功させることで締めに持っていくのである。しかし、ヴィヴィアンはもうすでにあの世の人である。インタビューはできない。それでも彼女は自分の生きてきた軌跡を大量の写真だけでなく、8mmや16mmの動画にも残すと同時にカセットテープに自分の思いを吹き込んだりもしている。それを製作者ジョンマルーフが丹念に整理している。しかも、フランスの人里離れた村に2回行ったことがあることに注目して、自ら取材してしまう。この作業はなかなか凄い。


2.ヴィヴィアン・マイヤーの性格
過去の雇い主のインタビューをきくと、若干変わりもので孤独を愛していたということがうかがわれるようだ。その雇い主自体リッチな人たちが多いが考えが偏り、むしろそっちの方が偏屈なような気もする。
もともと母親と2人で暮らしていて、その他の親戚もいない。独身で子どももいない。過去に男性にいたぶられたことがあるような言動があったと聞くと、孤独を愛するようになる気持ちはわからなくもない。その方が気が楽なんだろう。


隣人の家でペンキを塗る作業があった時に、家主が古新聞をあげてしまいヴィヴィアンが憤慨したことがあったそうだ。私が想像するに、新聞に載っている報道写真をみながら次にこういう構図で写真をとってみようと参考にしていたのであろう。それができなくて雇い主に珍しく反発したなんて話を聞くと、諸外国で活躍する報道写真家のような気分になって2眼レフのシャッターを押す瞬間が一番幸せだったのであろう。

3.監督の手法
雇い主や面倒をみた子どもたちからの評価は悪くはないが、彼女のパフォーマンスに対して酷評をする人もいる。また、ヴィヴィアンが話すフランス語に対して、フランス訛りの英語という人もいれば、それは絶対に違うと言い切る言語学者だった雇い主もいる。そういう両方の評価を対比してどっちが正しいと言い切るわけでない。ヴィヴィアンをクローズアップするわけなので、ジョンマルーフ監督はヴィヴィアン寄りなはずである。それでも強く評価を下すわけでなく客観的にそのインタビューを並列で構成する監督の手法がいい感じだ。



(参考作品)
ビル・カニンガム&ニューヨーク
NYタイムスの写真家のドキュメンタリー


セバスチャン・サルガド 地球へのラブレター
全世界を駆けめくる写真家のドキュメンタリー


ヴィヴィアン・マイヤーを探して
生前に日の目をみなかった孤独な写真家


Vivian Maier: Street Photographer
ヴィヴィアンマイヤーの作品
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映画「ボーダーライン」 エミリーブラント&ベニチオ・デル・トロ

2016-04-17 14:08:34 | 映画(洋画:2013年以降主演女性)
映画「ボーダーライン」を映画館で見てきました。


「灼熱の魂」のもつ緊迫感に圧倒され、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作品を追いかけている。今回はエミリーブラント主演でアメリカとメキシコの国境地帯で繰り広げられる麻薬戦争の現実を、リアルに描いた作品だ。

アメリカとメキシコの国境における麻薬取引を描いた名作「トラフィック」は正直見ていてわけがわからなかった。この麻薬取引というのを理解するのは簡単にはできないような気がする。大統領候補ドナルド・トランプは不法移民のアメリカ流入を徹底的に阻止すべしというが、ここの国境にではアメリカに不法移民として入ろうとする人たちだけでなく、麻薬を持ちこもうとする連中の両方がいる。しかも、アメリカ側からメキシコ方面を眺めると、至る所で銃撃戦が繰り広げられている。すさまじい仁義なき戦いだ。

FBI捜査官のケイト・メイサー(エミリー・ブラント)は、メキシコの麻薬カルテルの壊滅を目指す特殊チームにスカウトされ、リーダーのマット・グレイヴァー(ジョシュ・ブローリン)と、謎めいた男アレハンドロ(ベニチオ・デル・トロ)とともにメキシコのフアレスへ向かう。

極秘任務とはいえ具体的な作戦を知らされないことや、渋滞した国境手前で銃撃戦を繰り広げて敵を皆殺しにするといった、チームの常軌を逸したやり方にメイサーは反発する。さらには自分がスカウトされた本当の理由を知り無力感に襲われるが、やがて作戦に秘められた衝撃の真実にたどり着く。(作品情報より)

この映画も余計な説明は省いているので、最後まで見終わった後でもよくわからないことだらけだ。それでも効果的な音響効果や音楽で映像イメージが強化されて緊迫感が高まるのでスリル満点である。エミリーブラントが映画ポスターの前面に出ているけれど、実際に強烈な存在感を持つのは「トラフィック」にも出ていたベニチオ・デル・トロだ。メキシコ系スペイン語も話せる彼の不死身度が凄い。ジョシュ・ブローリンも影が薄くどちらかというとベニチオ・デル・トロのワンマンショーに近いかもしれない。


1.ドゥニ・ヴィルヌーヴ
彼が監督した「灼熱の魂」では1人のレバノン人女性の生きざまをイスラム対キリスト教の宗教戦争を並列で描きながらド迫力で描いた。今回はメキシコの麻薬カルテルを壊滅を目指すFBIやCIAなどの面々が集まったアメリカの特殊組織が法令を飛び越えて対抗する姿を描く。
国境を超える大渋滞の中で敵を見つけ、激しい銃撃戦を起こす場面では心臓の鼓動のようなドキドキものの音楽を流しながら緊迫感を高める。そこで映像に目が釘づけになる。こんなのは法令に沿っていないとするエミリー・ブラントの存在感がだんだん弱くなり、ベニチオ・デル・トロに主役が移る。クライムサスペンス映画「プリズナーズ」でもドキドキさせてくれたが、ここでも監督はうまい。


2.ベニチオ・デル・トロ
比較的シリアスな映画にも出てくるが、この風貌はクライムアクションにあう。ましてやメキシコ国境の麻薬が絡んだ映画となれば、彼が一番の適役だろう。韓国映画「哀しき獣」キムユンソクが演じたどんなことがあっても不死身の男を連想した。まさにボーダーを越え、麻薬シンジケートの親玉に接近していくシーンではドキドキしっぱなしである。「ゼロダークサーティ」でビンラディンを追い詰めるシーンを思い出す。ここで追いつめた彼がとったパフォーマンスはちょっと意外の持ち込み方だった。


凶悪犯罪を解決するのには普通な方法じゃ無理なんだということと、そういう捜査における女の非力を印象付けるような映画だと思う。

(参考作品)
灼熱の魂
ドゥニ・ヴィルヌーヴの生んだ傑作


トラフィック
メキシコ国境における麻薬捜査を描く
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スペイン映画「マジカルガール」 

2016-04-14 20:58:40 | 映画(欧州映画含むアフリカ除くフランス )
スペイン映画「マジカルガール」を映画館で見てきました。

スペイン映画界の鬼才ペドロ・アドモドバルが絶賛しているスペイン映画が公開されているという。不思議ちゃんみたいな雰囲気に魅かれて映画館に向かう。


いきなりアニメが好きなような少女がでてくると、バックでは日本語の歌が流れて踊っている。一体何じゃという感じだ。そうするとその少女がばったり倒れる。少女が不治の病にかかっているようだ。父親は文学の先生だったようだが、リストラにあって無職だ。治療費もかかるし、子供のために娘が好きなアニメキャラクターグッズを買いたいんだけど金はない。そんな父親に主人公の女性が絡んでくる。


マジカルガールは不思議系の映画と思いしや、若干サスペンス的な要素もおりまぜる。基調は恐喝だが、それだけでは済まない。確かにペドロ・アルモドバルを思わせる独特な雰囲気で、一筋縄にいかない。カルロス・ベルムト監督はけったいな登場人物を次から次へと映像の中に放つ。徐々にそれぞれの出演者が人間としてのリズムを失っていく構図を見せ、緊迫感が高まる。美術、編集が上手で悪夢のような映像に引き寄せられる。傑作とまでは思わないけど、妙な後味を残す個性派の作品だ。

白血病で余命わずかな12歳の少女アリシア(ルシア・ポジャン)は、日本のアニメ「魔法少女ユキコ」の大ファン。彼女の願いはコスチュームを着て踊ること。 娘の最後の願いをかなえるため、父ルイス(ルイス・ぺルメホ)は失業中にもかかわらず、高額なコスチュームを手に入れることを決意する。
どうしても金策がうまくいかないルイスは、ついに高級宝飾店に強盗に入ろうとする。まさに大きな石で窓を割ろうとした瞬間、 空から降ってきた嘔吐物が彼の肩にかかるー。

心に闇を抱える美しき人妻バルバラ(バルバラ・レニー)は、逃げようとするルイスを呼び止め、自宅へと招き入れる。 そして…。バルバラとの“過去”をもつ元教師ダミアン(ホセ・サクリスタン)は、バルバラと再会することを恐れている。 アリシア、ルイス、バルバラ、ダミアン―決して出会うはずのなかった彼らの運命は、交錯し予想もしない悲劇的な結末へと加速していく……。(作品情報より引用)

かわいい少女が白血病で余命少ないと診断される。父親は彼女のために何とかしたいと思うが、失業していて金がない。宝石泥棒に入ろうとした途端に、自虐的で少し心が病んでいる主婦であるもう一人の主人公が自家中毒でげろをした嘔吐物が彼の身体に落ちてくる。悪いことをしてしまったと反省する主婦が彼を家に入れようとすることですべてのリズムが狂いはじめる。

以下ネタバレあり
1.ユスリ(強請)
精神科医の旦那がいないのをいいことに、ふとしたことで知り合った男と寝てしまう。翌朝男から電話があると、旦那にばらすぞと脅しをかけてきたのだ。このユスリに対して、自分の身体を売って脅迫の代償を支払おうと主人公が動くのがこの映画のベースである。


強請は古今東西の映画の題材になってきたものである。強請が繰り返されていくうちに被害者による殺人事件が引き起こされるというのがよくあるパターンで、テレビ朝日のサスペンスドラマや韓国のクライムサスペンス映画では繰り返し広げられる。

2.強請への対抗
強請に対して、自分の立場を守るためにお金を用意する。それもやりたくないことをしながらだ。そこで脅迫者の言うなりになって金を支払う。このときに例えば交通事故の示談みたいに今後何も異議申し立ては致しませんなどと、一筆を書くようにはならない。これでいいのかと思うと案の定再度ゆすられる。ヤクザさんの恐喝も一回二回じゃ済まない。そういえば、飲み屋の女に「やったこと奥さんにばらすわよ」と百万単位でとられたという人を知っている。

こういう時ってどうしたらいいんだろう。やっぱりばれても仕方ないと腹をくくって警察に訴えるしかないんだろうなあ?

3.長山洋子「春はSARA SARA」
長山洋子というと演歌歌手としてのイメージしかないけど、アイドル歌手でデビューしていたんだなあ。監督のカルロス・ベルムトは大の日本びいきだそうだ。アニメ系アイドルも大好きなんだろう。来日している時は新宿ゴールデン街を徘徊しているようだ。自分も月の2,3回は夜の谷間におぼれているけどわからないなあ。今は外人多いからね。

4.大富豪の家
旧知の女性に頼んで高いお金を自分を買ってくれる女性のところへ行き、大富豪を紹介される。なんせ8時から15時までの拘束時間で7000ユーロ(約86万円)で買ってくれるわけである。この雰囲気がペドロアドモドバルの映画に出てくる大富豪にダブる。スペインの金持ってちょっと半端ないんでしょう。


さくっと脱いだバルバラ・レニーのヌードがエロっぽい。このあと何したんだろうと妙に想像させてしまう。そして出てくるのが黒蜥蜴だ。ご存じ美輪明宏の十八番で明智小五郎探偵のライバルだ。変装に次ぐ変装であらわれる盗賊である。その黒蜥蜴をクローズアップするところがすごい。

それにしてもラストに向けての動きはちょっと予想外
途中までの動きはいかにも物語の定石を歩む。ユスリへの対抗は、目には目をといった過激なスタイルなんだけど、突如バーンと来て驚き、そのあとも収まらない。こういう展開に持ち込むという発想が日本人脚本家にあるだろうか?いかにも中世から近世に至るまでイスラムに領土を奪われていたスペインらしい気がする。
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オランダ映画「孤独のススメ」

2016-04-13 18:20:25 | 映画(欧州映画含むアフリカ除くフランス )
オランダ映画「孤独のススメ」を映画館で見てきました。


映画ポスターの雰囲気にひかれ見に行ってきました。
男やもめがあるルンペン男と出会い身辺が変化していく姿を描いたものだという。会社での地位が変化するに従って、孤独を好む性癖が自分についてきた気がする。みんなで群れあっているのが最近とみにうっとうしくなってきた。相変わらず毎日のように夜の宴席が多いが、疲れてきた。1人でいる方がすっきりする。せいぜい娘と外出するときくらいが楽しいくらいか。
そんな生活が続いていると、孤独という言葉に敏感になってくる。むしろ孤独な方が気が楽だ。そんな自分には「孤独のススメ」という題名がしっくりする。

映画が始まり、田舎道を走るいかにも欧州らしい路線バスが出てくる。題名はマッターホルンとなっている。孤独とはまったく無縁な題名ではないか。そして出てくるのはフィンランドのアキ・カウリスマキ監督の作品を連想させるような地味で無口な男だ。出演者の会話は少ない。寡黙な出演者が無表情で演技しながら朴訥に進む展開はいかにもアキ・カウリスマキ監督作品の影響を受けている印象を持つ。自分はアキ・カウリスマキ監督作品は大好きだけど、ちょっとこれはどうかな?よくわからないままに最後まで進んでいってしまった印象だ。


オランダの田舎町。妻に先立たれ、1人静かに暮らす初老の男フレッド(トン・カス)。信仰篤いこの町で、毎週日曜日の礼拝以外は周囲との付き合いを避けて、ひっそりと生活していた。そんな彼の前に、ある日突然、言葉も過去も持たない男テオ(ルネ・ファント・ホフ)が現れ、なぜか家に居ついてしまう。

やむなく始まる奇妙な共同生活。次第に2人の間に奇妙な友情が芽生え、ルールに縛られたフレッドの日常は鮮やかに色づいてゆく。ところが、保守的な田舎町に住む近隣の住民は、彼らのことを問題視。村から追い出そうとするが……。(作品情報より引用)

ガス欠だと言って、金をせびる変な男がいる。男はほとんどしゃべらない。信仰深い初老の独身の主人公は家に連れてくる。それでも口は開かない。食べ物をご馳走しようとしてもナイフフォークを普通に使えない。変な男だ。そんな男を泊らせて一緒に生活をはじめる。動物の鳴き声を模写することくらいしか、能がない。


なんかうっとうしい男だなあ。主人公は妻に先立たれ、息子は家を飛び出している。ここでは主人公の家族との思い出がポイントになる。だけど、ルンペン男との奇妙な友情という設定にどうしても感情流入できなかった。宗教的な絡みもよくわからない。教会の世話役の存在がうっとうしく思えるし楽しくないまま最後に向かって行ったという印象だ。

久々に007の主題歌で名高いシャーリーバッシ―の歌が出てくる。
挿入歌だ。もともとバッハしかきかないという主人公にこの曲が絡んでくる。
これはシャーリーバッシ―だ。↓
いかにもむかしのシャーリーはゴージャス



マッターホルンは最後に向けて登場
この山は実に美しくスケール感あるねえ
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映画「砂上の法廷」キアヌ・リーヴス&レニー・ゼルウィガー

2016-04-06 19:29:16 | 映画(洋画:2016年以降主演男性)
映画「砂上の法廷」を映画館で見てきました。


キアヌリーヴスの新作法廷映画は予測不能のどんでん返しの展開だという。気になって見に行ってしまう。父親殺しの嫌疑をかけられた息子の弁護を引き受けたキアヌリーヴス演じる弁護士が不利な状況から無罪を目指すという展開だ。それだけであれば、どうってことない。どのようにラストに進むかと思ったら、さすがに前評判通り意外な展開に進み、確かに自分も騙されていた。

「評決」「フィラデルフィア」「情婦」という法廷ものの名作ほど映画としての深みはないけど、娯楽としては十分楽しめる作品になっている。最低限の事前知識だけで見た方が楽しめるかもしれない。

アメリカの南部。大邸宅に住む大物の弁護士ブーン・ラシターが殺害される。逮捕された容疑者は、ブーンの息子で17歳のマイク(ガブリエル・バッソ)。拘留されたマイクは、何も喋らない。マイクは、父親と同じ法律家を目指していて、法律にも詳しい。ラシターの妻ロレッタ(レニー・ゼルウィガー)は、家族ぐるみでつきあいのある敏腕の弁護士ラムゼイ(キアヌ・リーヴス)に、息子の弁護を依頼する。


法廷でも、マイクは発言しない。検察側の証人たちは、マイクに不利な証言をする。ラムゼイの許に、ジャネル(ググ・ンバータ=ロー)という黒人女性弁護士がヘルプとして手伝う。

ジャネルには、証人の偽証を見破る才能があった。ジャネルは検察側の証人たちの偽証を見破っていく。マイクに不利な状況が変化し始めた頃、マイクが衝撃的な発言をして、法廷でのやりとりが大きく変わるのであるが。。。(作品情報より)

主人が大変なことになっていると被害者の妻が警察を呼び、婦人警官が豪邸の中をゆくと夫がナイフで刺されていて死んでいる。


その横には少年がいる。いかにも自分がやったと思わせるような発言をしている。
この豪邸だけを見ると、被害者は実業家のようだが、弁護士だ。その後、この被害者が家族や周辺に横暴な振舞いをしていた映像が次から次へと映しだされる。なんじゃいな??要は被害者が妻や息子を虐待していたことへの反発で殺してしまったということなのか。しかし、単なる殺人だと思わせるような証拠しかない。被疑者の少年は何も話さない。キアヌリーヴス演じる弁護士は不利な状況だ。そこに若い女性弁護士がきて少しづつ挽回していくという展開だ。

1.法廷もの映画
和解の申し立てを断り、不利な裁判に挑んだのは「評決」のポールニューマン演じる弁護士である。相手は有名法律事務所でポールニューマンは酒びたりの小者弁護士にすぎない。少しづつ逆転への道筋をつけて最後逆転に持ち込むというのは法廷映画の定石のようなものだ。
そこでいったん終了をむかえた後にどんでん返しをつくるのが、ビリー・ワイルダー監督の傑作中の傑作アガサクリスティ原作の「情婦(検察側の証人)」だろう。最初この映画を見た時の衝撃はすさまじかった。チャールズ・ロートン演じる老練な弁護士の演技もユニークだけど、出来過ぎと思える結末には驚いた。まさに検察側の証人マレーネ・ディートリッヒの大戦後における最高の演技だろう。ネタバレ気味だが、どちらかというと、この映画は「情婦」に近い衝撃を与える映画といえる。


比較的単純な展開で判決の先行きも読める。でもそんな読める展開では終わらないんだろうなと、どうけりをつけるのか考えているとあと10分だ。そこで異変が起きる。これだけは言えないなあ。

2.レニーゼルウィガー
被害者の妻役の中年女がいい感じだ。軽く肌を見せて色っぽい。この話の重要なカギを握る。終わってエンディングロールでクレジットを見るとレニーゼルウィガーじゃないか。いやー本当に気付かなかった。彼女の映画はかなり見ているんだけどね。そういえば最近見ないと思って作品情報を見ると何と6年ぶりの登場だ。軽いしわがあって中年女らしいけど、比較的スリムでブリジットジョーンズとは違う。でも今の彼女が魅力的に見えるのは自分も年をとったということか


3.キアヌリーヴス
キアヌリーヴスが出ているせいか女性客が多い。彼の作品って割と相性が合うことが多い。前作「ジョンウィック」もよかった。ここでは割と普通、でもこの役柄はそんな感じでいいんじゃないかな。最初裁判で不利な状況な時に、モハメド・アリの話をする。1974年連戦連勝のジョージフォアマンと対戦したアリが絶対的不利を克服して、相手がパンチを打ち疲れたところを逆転した話にたとえ、まずは相手側にやるだけやらせてから逆転を狙うと言っていた場面が印象的だ。

(参考作品)

情婦
史上最高のどんでん返し映画


評決
法廷映画の最高峰
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映画「蜜のあはれ」 二階堂ふみ

2016-04-03 18:12:44 | 映画(日本 2013年以降主演女性)
二階堂ふみの新作映画「蜜のあはれ」を映画館で見てきました。

二階堂ふみの新作は早めに映画館で見るようにしている。今回は室生犀星の原作に基づき、作家と女の子に化けた金魚との交流という題材である。
ロケハンティングがうまく室生犀星の出身地加賀、金沢を中心に昭和30年代前半という時代設定のイメージにあった場所が選ばれている。池のある庭があるたたずまいがいかにも30年代らしい木造家屋やおそらくは格式高いと思われる割烹などで撮影された映像はいい感じだ。


しかし、期待していたほどはのれなかった。基調となる題材が自分にはしっくりこなかったのかもしれない。二階堂ふみにしろ、大杉漣にしろ2人が絡む芝居は実にうまいんだけど物足りない感が強い。

自分のことを「あたい」と呼び、まあるいお尻と愛嬌のある顔が愛くるしい赤子(二階堂ふみ)は、共に暮らす老作家(大杉漣)を「おじさま」と呼んで、かなりきわどいエロティックな会話を繰り返し、夜は身体をぴったりとくっ付けて一緒に眠る。 しかしなにやら様子がおかしい。赤子は普通の女とは何かが違う。 普通の人間には彼女の正体がわからず、野良猫には正体がバレてしまう。 そう、彼女はある時は女(ひと)、ある時は尾ひれをひらひらさせる真っ赤な金魚だったのです・・・。


そんな或る時、老作家への愛を募らせこの世へと蘇った幽霊のゆり子(真木よう子)が現れる。 老作家の友人・芥川龍之介(高良健吾)、金魚売りの男(永瀬正敏)が3人の行方を密かに見守る中、ある事件が起きて・・・。(作品情報より)

1.二階堂ふみ
二階堂ふみ「私の男」などを経て、着実にエロさを増している。「私の男」の題材はいわゆる近親相姦で、そのきわどい題材をこなしながら成長していくのがわかる。今回もポスターをみて、そのよろめき具合に期待した。色っぽいんだけど、個人的には不完全燃焼に終わる。かなり肌の露出感が高まったが、乳首は隠して完全ヌードは見せない。こんな感じでバストトップを見せない芝居が続くのであろうか?あと10年近くはチラリズムか?もったいない。


2.大杉漣と真木よう子
室生犀星というと何度も映画化された「あにいもうと」を思いだす。ただ、顔の印象はない。今回初めてマジマジと写真を見て、見比べたが似ているではないか。大杉漣のロイド眼鏡がいい感じだし、演技もうまい。
自分の祖父もそうだったが、昭和30年代のおじさんには割とこの形のメガネをしている人が多くいたような気がする。そういえば、「英文700選」で有名な駿台予備校の伊藤和夫先生は似たようなロイド眼鏡をして、お腹を出しながらあまりうまくない発音で英語の講義をしていた。それが懐かしく2人が思わずだぶった。それを知っているのも我々の世代くらいだろう。



真木よう子はこの老作家に以前関係のあった女の幽霊を演じている。金魚から現生の女に変身している主人公には幽霊も見えるのであろうか?幽霊は主人公に近づきキスを交わし、一瞬レズビアン的要素を出そうとするが二階堂がそれを拒否する。そんな感じで見せ場がないままに真木よう子は姿を消す。

「さよなら渓谷」で人生最高の演技を見せて以降、「そして父になる」もよかったが、適役に恵まれない印象を持つ。

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