映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

ドキュメンタリー映画「GUNDA グンダ」

2021-12-28 18:05:25 | 映画(洋画:2019年以降主演女性)
ドキュメンタリー映画「GUNDA グンダ」を映画館で観てきました。


ドキュメンタリー映画「グンダ」はある農場での母豚と子ぶたの交情を中心に動物たちの映像を追った作品だ。ロシアのヴィクトル・コサコフスキー監督の作品で、ジョーカー役で世界中に名を売ったホアキンフェニックスがエグゼクティブプロデューサーだ。

映画情報でイノシシみたいなブタの写真を見ても正直いく気にもならなかった。それでも至るところで推薦されているので、あらためてHPの予告編を見てみる。そこで、親豚のそばで動き回る生まれたばかりと思しきかわいい子ぶたの様子が気になってしまい映画館に向かう。

映像はモノクロで、ナレーションがないばかりか音楽もない。自然音のみである。場所がどこかもわからないし、ブタだとわかっても品種の解説もない。字幕も皆無だ。今回その存在を初めて知ったヴィクトルコサコフスキー監督は作品情報で、ビジュアルより魂に焦点を置いたとのたまう。農場では、ブタの親子だけでなく、ニワトリや牛も映し出す。でもあくまで中心はブタの親子だ。その仕草にずっと目を奪われる。最後には少し悲しいシーンもある。でもこれは演技ではない。

⒈子豚の出産ってこうなんだ!
いきなり農舎の出入口のそばで寝そべっている母豚を映す。しばらくすると、小さな子犬のような子ぶたが大きな母豚のそばを横滑りに落ちる。しばらくすると、別の子ぶたもまるで小さなリスのように母豚の周りをたわむれる。


そして、母豚の乳を大勢の子ぶたが自分が先とばかりに吸い付く映像が出てくるのだ。イヤーこの年になって豚の出産ってこうなんだというのを初めて知った。本当にびっくりした。思春期に赤ちゃんが生まれる原理を初めて知ったときと似た衝撃だった。映画を見終わったあと、早速ネットで調べた。どうも母豚は一度に10匹前後の子ぶたを産むようだ。YouTubeを検索すると、出てくる出てくる。出産の映像が。頭の中ではもう気になって気になって仕方ない。

⒉本能で動く子豚
最初は気づかなかったが、映像に映る子ぶたは生まれたばかりだったのだ。母豚には乳房が14あるという。であるからか?、10匹前後生まれるといっても14匹以内になるようだ。映像では、母豚の乳房を競い合うように吸い付くようにおしゃぶりに向かっている。いきなりの生存競争だ。モノクロ作品とはいえ、母親の体内から抜け出したばかりで羊水で濡れている子ぶたというのはツルツルした感じでわかる。そんな子ぶたも生まれていきなり母親の乳房をまさぐる。この本能にはおったまげた。


生まれてばかりの人間の赤ちゃんは、当然ながら自らの身体を動かすことなど含めて何もできない。手足をバタバタするだけだ。生まれる前に、誰かが子ぶたたちに世に飛び出したらすぐおっぱいにすぐ飛びつくんだよと教えているみたいに膣から乳に向かう映像は、知っている人には当たり前なのかもしれないが、自分には子ぶたの本能が驚異としか思えない。

実に不謹慎な話だが、幼児に戻って本能のように乳を求めてみたくなるような心境になってしまった。本当にまいった。年末にして調子が狂う。
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Netflix映画「消えない罪」サンドラブロック

2021-12-12 18:43:50 | 映画(洋画:2019年以降主演女性)
Netflix映画「消えない罪」は2021年配信


久々のサンドラブロックである。日本でも大人気だったゼログラビティが2013年、その後ポツポツ出演しているようだが、blogコメントしていない。Netflix映画で久々に登場して早速見る。「愚作駄作もみろ!」という押井守の教えでNetflix新作を見ても半分以上はずれる。最近のNetflix映画「パワーオブザドッグ」や「チックチック」もおもしろくなかった。ヴィオラデイヴィスをはじめ共演俳優陣は充実していても、この映画も期待していなかった。

ところが、久々にサンドラブロックが登場製作するだけあって、脚本は練られている。映画の展開は悪くない。途中で何回も予想をはずす。思わずグイッと引き込まれてしまう。サスペンス映画的にドキドキしてしまう場面も数多く,思ったよりも良かった。

保安官殺しで20年の刑を終えて出所したばかりの女が、事件で離れ離れになった年の離れた妹をムショ帰りで世間の白い目に耐えながら探そうとする話である。主人公ルースの父が亡くなったあと家に居座り強制退去を命じられた家で、無理やり家に入り込もうとした保安官を撃ち刑務所に入った。その時、まだ5才の年の離れた妹を親代わりで面倒をみていた。彼女は養女として一般家庭に預けられているが、行方は分からず、何度も手紙を送っても返事はなかった。そのあたりからのスタートだ。


⒈葛藤をもつ適切な登場人物の配置
出所した女ルースに恨みをもつ人もいる。殺された保安官に2人の息子がいる。兄はもう犯人も刑期を終えたからと淡々としているが、弟は殺気じみてルースの行動を追っている。どこかで復讐せねばという話を常にしている。ルースに対して強い葛藤をもって敵対する。この兄弟が重要人物になってくる。

ルースは住んでいた家で事件を起こした。そこで何か妹の行方はわかるのではと向かう。そこで、現在の住人と出会う。場所が辺鄙な場所で今の住人に帰り送ってもらう時に事情を告白する。住人は弁護士で相談にのってあげる。でも、弁護士は家を訪ねてきた女が殺人犯だったことを妻に黙っていてということで罵倒される。夫婦の軋轢が起きる。

以上のような対立関係をいくつもつくる。脚本づくりの定石かもしれないが、適度な数の登場人物で葛藤する関係がいくつもできておもしろくなる。単純にいかない人間関係にうまさを感じる。

⒉読みをはずす展開
いくつかの対立関係をつくりながら、進むストーリーも単純ではない。弁護士名で妹が引き取られた現在の養父母に手紙を送る。最初は面会も嫌がった養父母も結局弁護士立ち会いの元、会うことになるのだ。ここで驚いたのであるが、ルースがその養父母に対して縦つく態度が普通でない。弁護士の顔が丸つぶれだ。何でそうするのと画面の外の自分がヒヤヒヤする。

これがこれが一つの例だが、世間の常識では考えられない事象をいくつもつくる。保安官の遺族に関しても兄弟に予想外の出来事が起こる。読みをはずす。脚本が練られているというのはそういうことだ。

この映画のネット上の評価は割れているが、悪い評価もある。その中に映画の展開は読みやすいと言っている投稿もある。これを読めるそんな神様のような鑑賞者はいないと思う。超一流女優サンドラブロックが選んだ脚本だけあると自分は思う。

⒊汚れ役サンドラブロック
もともとキツイ顔立ちのサンドラブロックなので、気が強い女の役は似合う。この女はまともな教育は受けていないようだ。すごいかんしゃく持ちだ。上記であげた弁護士を交えての面会でも普通はこういうパフォーマンスはしない。もともと日本流に言うと大工のルースが、あまりに腹立たしくせっかく自ら造作工事をして貼り付けた石膏ボードを壊すシーンにも精神の荒々しさを示す。


「スピード」での活躍で人気女優になってからのサンドラブロックの輝かしいキャリアは40代になって絶頂に達した。アカデミー主演女優賞を受賞しただけでなく、最悪映画のラジー賞を受賞して授賞会場に行くなんてすごいパフォーマンスでみんなをあっと言わせる。それなのに最近の沈黙はどうしたんだろう。

しかし、色鮮やかなアメリカ流ラブコメディ美貌を見せつけてきたこれまでのサンドラブロックからは違う凄みを感じる。いくつかのシーンでは演技のうまさに感嘆した。さすがの格の違いを見せつけた。今後の活躍を期待する。
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映画「パーフェクトケア」ロザムンド・パイク

2021-12-05 20:23:01 | 映画(洋画:2019年以降主演女性)
映画「パーフェクトケア」を映画館で観てきました。


「パーフェクトケア」は映画ゴーンガールの悪女ぶりがお見事だった美人女優ロザムンドパイクが再度悪女を演じるという宣伝文句にすぐさまのってしまう。怖いもの見たさの心境だ。介護が絡むという文字は見えたが、事前情報は最小限レベルで観た。

これはおもしろかった
サスペンススリラー基調に加えて若干ブラックコメディの要素もある。若い人がデートで観るというよりも、介護する身内がいる方や、初老の域に入った人が観るには超おすすめである。でも、自分はこれを観て、身震いするような怖さも感じた。

数多くの老人の法定後見人として、財産管理というよりも養護施設に住む維持費という名目で勝手に所有建物や財産を売却したりする悪徳女性後見人の物語である。ロザムンドパイクは、狂気じみたゴーンガールでの悪女ぶりとは異なり、むしろ本当のインテリワルを演じる。アメリカじゃ本当にこんな感じで老人を食い物にする連中がいるのかと思うとショックを受けた。

実に薄気味悪い。日本は大丈夫なのかと感じながら映画を観ていた。最近雑誌などで老後特集記事が目立つが、その手の類に関心のある人は必見の映画である。このところ低予算映画ばかり観ていたので、いかにも典型的な現代アメリカ映画という感じだ。美術、衣装と編集、ポストプロダクションは完璧の映画を堪能した。

法定後見人のマーラ(ロザムンド・パイク)は、判断力の衰えた高齢者を守り、ケアすることが仕事だ。医師や高級老人ホームと結託し多くの高齢者たちから資産をむしり取る悪徳後見人である。パートナーのフラン(エイザ・ゴンザレス)とともに新たに獲物を狙っている。

今回、馴染みの女医から認知症の気が少し出てきたと紹介された老女ジェニファー(ダイアン・ウィースト)は長期に渡って金融機関に勤めていた独身で、これまで結婚歴もなく身寄りはいない。多額の預金があり、一戸建住宅はキャッシュで建てている。狙い打ちをかけて裁判所で認知症が急激に進んだと医師が証言して、マーラが後見人と認められる。


マーラがジェニファーの自宅を訪問し、裁判所で認定されたことを伝えても、自分は一人で十分生活と言い切る。それでも、家の外に警官もいて車に乗せられ行った先は高級老人ホームで、一旦入所すると出入り不可能で所有の携帯も取り上げられたのであるが。。。

⒈後見人としての認定
映画が始まりいきなり、高級老人ホームに母親に会わせてくれという息子が無理やり入り込もうとする映像が映る。プロレスラーのような警備員にガードされ入れないのだ。この息子にはもう権利がない。気がつくと、裁判所で後見人と認定された主人公に権利がすべて行っているのだ。

それにしても、本人が立ち会わず、医師の診断と証言だけで裁判所が後見人として認めてしまうこの話は実にショックだ。こんなこと認められるんだと呆れるばかりである。しかも、そのあとは、家中の持ち物をオークションにかけ、貸金庫のカギを見つけると金庫を荒らし放題である。家も売り物にされる。

本当にこんなんでいいの?と思ってしまう。この映画をきっかけに日本で後見人と称したワルが増えないか心配である。

⒉ロザムンドパイク
ロザムンドパイクはオックスフォード大学出の才媛である。それこそ先日久々観たハルベリーと007のボンドガールをやったのがメジャーデビューである。ただ、映画界に存在感を示したのはゴーンガールであろう。普通の奥さんが狂気じみた悪女に変貌する姿には驚いた。傑作である。


でも、そのあといくつか出演しているが、「エンテベ空港7日間」は死んでしまうテロリスト役で実力からするとちょっともったいなかった。やはり今回のような悪女役が似合う。水中でのシーンとか割とむずかしい演技を必要とされるシーンもあり、かなり頑張った。

⒊ダイアンウィースト
後見人に食い物にされる老女を演じる。ダイアンウィースト出演の映画にはハズレがない。ブログ記事でそう書いたことがある。今回出会うのは久しぶりだ。履歴を見ると、クリントイーストウッドの「運び屋」に出演している。すっかり脳裏に記憶がない。その昔の「チャンス」や「ブロードウェイと銃弾」の印象が強い。最初はアネットべニングが老化粧をしているかに見えた。


わりとほんわかしたタッチのいでたちで今回も巧みにこなす。後見人ロザムンドパイクに引きつられ、所員の大歓迎を受けて老人ホームに入るシーンが印象的だ。その後、裏社会とのつながりがあることがわかる場面での表情の変化もうまい。若い頃はウディアレン映画の常連だったけど、最近はちょっとウディは評判悪いからなあ。

⒋全部うまくはいかない。
最初は軽妙に悪徳後見人を演じていたロザムンドパイクも予期せぬ背後に調子が狂う。それでも「私には負けはないの」と強気だ。このようにストーリーにアップダウンの変化をつける。詐欺映画からサスペンスに転化して、裏社会の親玉の小人(ピーター・ディンクレイジ)も出てくると、コメディの匂いさえ出てくる。なかなか巧妙だ。


ただ、最後はゴールデンエイジの頃のアメリカ映画の終わりかたにまとめたのはどうしてなのか?

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Netflix映画「ブルーズド」 ハルベリー

2021-11-28 17:47:54 | 映画(洋画:2019年以降主演女性)
Netflix映画「ブルーズド 打ちのめされても」は2021年配信のNetflixオリジナル映画


Netflixで面白そうな格闘技映画「ブルーズド 打ちのめされても」を見つける。アカデミー賞女優ハルベリーが監督主演のようだ。底辺から這い上がっていくファイターを描く格闘技映画って好きだ。ついこの間も北朝鮮脱北者がボクサーになる話を観たばかりでおもしろかった。ここ最近Netflix映画にはつまらなく外されることが多く、Netflixオリジナル作品はいくつも感想が棚上げになっている。逆にこれは十分楽しめた。

総合格闘技の世界で勝ち抜いていたのに惨敗して引退して堕落しきった状態の女主人公が、離れて暮らしていて言葉を失っていた6才の息子を引き取りながら、黒人女性トレーナーの下、再度UFCのチャンピオンを目指す話である。

元UFCで活躍していたジャッキー・ジャスティス(ハル・ベリー)は元マネジャーと怠惰な生活を送っていたが、地下の本気ファイトの会場で周囲に正体を見破られる。アングラで闘う「男にしか見えない大女」にファイトを挑まられて、元の杵柄で倒す。開始早々のこのファイトシーンでハッと目が覚める。ハルベリーの身の交わしに驚く。すげえなあ!

アクションに度肝を抜かれたあとは、アメリカ下層社会特有に共通する家庭内問題を連続でさらけ出す場面が多い。上昇志向で上を目指すトレーニングシーンは、代役に任せているとは思えず、ハルベリーが映画製作に向けて鍛えた基礎体力の凄さがよくわかる。これって男優でもそう簡単にはできない。挑戦してもあっさり秒殺されるという世間の評価とは裏腹に懸命に頂点を目指して闘う姿を身をもって表現する。今や若くはないハルベリーに敢闘賞をあげたい気分になる。

⒈ハルベリー
「チョコレート」黒人女優初のアカデミー主演女優賞を獲得した。大胆に脱いで形の良いバストを披露して度肝を抜いた。ボブソーントンとの絡みシーンは今でも脳裏に残る。いい映画だった。考えてみると、あれから20年も経つ。映画見終わって年齢見直したら55歳だって。それなのに、この映画の格闘パフォーマンスは信じられない。


アカデミー主演女優賞を受賞した後の2000年代前半、ボンドガールを演じたり、ラジー賞とはなったが、「キャットウーマン」を演じた。自分にはいずれも世評以上によく見えた。ハルベリーの映画を感想アップするのも10年ぶり以上経つ。ブルースウィリスとの共演「パーフェクトストレンジャー」以来だ。

割と気前よく脱いでくれ、しかも裸体は美しく映画映えする。ここでも、ヒモのような元マネジャーとの激しいファックシーンやレズビアンシーンも用意されている。通常こういうトレーナーは絶叫型の男性が常道である。トレーナーのブッタカンは,東洋の神秘みたいな振る舞いだ。混血黒人のハルベリーと違いアフリカの陸上選手のようなイメージで色も黒く逆に存在が新鮮だ。そして硬い話だけではもたないと、黒人トレーナーとの絡みレズビアンシーンで柔らかさを出すのも悪くない。

⒉下層社会のネタ満載
映画では、下層社会に彷徨う姿をこれでもかとあぶり出す。元マネージャーだった恋人のデシもろくに働いていない。ジャッキーを非公式のファイトクラブに連れていって、再度格闘技の世界に入らせてちゃっかり儲けようとしている。

ジャッキーがむかし作って別れた子の父親が殺されてしまい、実子は言葉を発することができなくなる。そんな子を引き取るが、ジャッキーの恋人は連れ子へ家庭内暴力をふるって、日本のワイドショーまがいの話となってしまう。それに加えてジャッキー本人が受けた少女時代のレイプの話で母親ともめたり、常にいさかい起こしての家出の連続とか下層社会を象徴するような最近の日本映画と同じ展開はちょっと見飽きたかな。


それでも、最後の試合シーンは自分が見た中では、形勢が逆転に次ぐ逆転で迫力ある演出になっていたと思う。メイクでできたケガも多いけど、実際にも生キズものであろう。あえて言えば、下層社会の面倒な部分はもう少し適度な量にして、下層から這い上がろうとする勝利のファイトシーンを見せてくれる方がもっとよかったかな?その方がみている方には高揚感が高まる。でも、そうできるほどにはハルベリーは若くないという気もする。
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映画「アンテベラム」ジャネール・モネイ

2021-11-09 21:47:42 | 映画(洋画:2019年以降主演女性)
映画「アンテベラム」を映画館で観てきました。


「アンテベラム」は映画評を見て行きたくなった映画である。どんでん返しがあって、あらすじすら知らないで行った方がいいネタバレ厳禁映画と言われると好奇心がわく。南北戦争時代の奴隷による強制労働と黒人人種差別が映画の根底に流れるようだ。そんな基礎知識だけで、映像を追う。

映画としては、「ショーシャンクの空」を監督したフランクダラボンによるスティーブンキング原作の映画「ミスト」を連想させる秩序を失う世界に持ち込まれた。スリラー的要素も持つけれど、スプラッター系、ホラー系ではないので苦手な人はご安心を

最初にアメリカ南部の綿花畑が出てきて、南北戦争の南軍の白人兵が見張る状況で、無理やり働かせていて脱走しようとする黒人が迫害されるシーンが次々出てくる。その1人に監視の白人兵から個室でお仕置きを受けている黒人の若い女性がいる。名を名乗れと言われても黙っている。すると、リンチじみた仕打ちで痛ぶられ、やむなくエデン(ジャネール・モネイ)と名乗る。暴力や虐待を耐え忍び、エデンは奴隷仲間とともに密かに何かを企てる。


一方でリベラル派として知られるベストセラー作家のヴェロニカ(モネイの二役)を映し出す。夫、幼い娘と3人で、ゴージャスな住まいで暮らしている黒人セレブである。エリザベスと名乗る謎めいた白人女性からのオンライン取材をこなした後、講演会のために単身ニューオーリンズを訪れる。自己啓発的セミナーの講演で喝采を受けた後に、女友達とリッチなディナーを過ごすヴェロニカに注目する者がいるのであるが。。。


あくまで、1860年代と思しき、黒人が奴隷として残酷な仕打ちを受けている酷いシーンが最初続く。黒人人種差別の映画なんだろうなあと思う。黒人同士で南軍兵の悪口をこそこそ言っていると、強烈な虐待を受ける仲間がいる。このタコ部屋のような処からは到底逃れられないような印象を受ける。

そう思ったら、奴隷の女エデンが目を覚ますと突如現代の黒人セレブの生活になっている。大学や院の卒業証書もあって、言うことも偉そうなゴージャスな雰囲気で固めた女になる。


この対比した2つの映像がどう繋がるんだろうと思う。奴隷のエデンがセレブのヴェロニカの祖先なのか?その呪いの映画なのか?と推測する。そして、映画の場面は現代と1860年代を交差する。ありがちな場面移動だ。どう映画が進むかと思ったときに、遊びの帰りのデリバリータクシーでヴェロニカが罠にはまる。ブライアン・デ・パルマの映画の世界へ急に飛び込む。どうなのかと思ったときに、気を失ったヴェロニカの前に監視役の南軍兵が映る。ところが、次の瞬間、「なにそれ?」というシーンとなる。


まったく予測がつかないと思っていた映画に、1つの仮定を脳裏で推測する。いつも当たらない自分の推理だけど、不思議と予測どおりに進む。結果はほぼ近かった。予測があってしまうというのもある意味残念かもしれない。期待しすぎはしない方がいいかもしれない。


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映画「リスペクト」アレサフランクリン&ジェニファーハドソン

2021-11-07 19:31:41 | 映画(洋画:2019年以降主演女性)
映画「リスペクト」を映画館で観てきました。


映画「リスペクト」アレサフランクリンの人生をジェニファーハドソン主演で描く伝記的作品だ。自分の映画ベスト3の1つ「ブルースブラザース」の中で強烈な存在感を示している1人がアレサフランクリンである。映画の中で歌われている「シンク」を予告編でジェニファーハドソンが歌っているのを見て、早速映画館に向かう。

非常に感動した。圧倒的な歌唱力をもつジェニファーハドソンが素晴らしく、ウガンダの独裁者アミン大統領を演じてアカデミー賞を受賞したフォレストウィテカー演じる父親とつかず離れずの関係にやさしい父娘の交情を感じた。男運のないアレサフランクリンの人生の浮き沈みはまったく知らなかったので、興味深く映画に溶けこめた。自分の好きなタイプの作品である。



⒈シンク!
映画「ブルースブラザース」で刑務所を出所したブルースブラザースの2人が、もう一度バンドを組もうと堅気で仕事をしているミュージシャンのところをまわる。ギターリストのマットマーフィーとアレサフランクリンが夫婦でやっている「ソウルフード」という店にも勧誘に行くのだ。
「せっかく夫婦仲良くやっているのに、私を置いて出ていくのかい?」「よく考えろ!」と歌うのが「シンク!」だ。

このシーンは何度見ても滑稽でおかしい。女性バックコーラスを引き連れながら歌い、マットマーフィーに何度も「シンク!」と迫る店の厨房で働いているサックスプレイヤーもサックスを吹き出し、ブルースブラザースの2人も奇怪なダンスを踊りだす。歴史的迷シーンといえる。
シンク↓



この映画でも夫兼マネジャーのテッドと大げんかした後に、ステージで「不当に扱われたことのある人へ」とMCで一言言った後に「シンク!」をジェニファーハドソンが歌い出す。全世界の不良亭主をもつ女性への賛歌である。こればかりは訳詞を一度見てアレサフランクリンの歌声を聞くことをお勧めします。

最後のエンディングロールで、ブルースブラザースのダンエイクロイドとジョンべルーシとの記念写真を見たときには思わず涙が出てきた。

⒉リスペクトと誕生秘話
映画「ブルースブラザース2000」という続編が20年の月日を経て作られた。前作で出ていたアレサフランクリンやジェームスブラウンに加えてエリッククラプトンやBBキングなんてもの凄いメンバーも出演する。出てきたときは自分もおったまげた。その映画でアレサフランクリンは「リスペクト」を歌う。

映画では車のディーラーの社長になっていたマットマーフィー、アレサフランクリンの夫婦のもとにジョンべルーシ亡き後ダンエイクロイドが新制ブルースブラザースを引き連れもう一回バンドをやろうとやってくるのだ。そこで歌うのは「リスペクト」である。「私のおかげでここまでなったのよ!尊敬しなさい」とばかりに、大デブになったアレサフランクリンが歌う。これぞ、アレサフランクリンがメジャーに登りあがる全米ヒットチャート1位の曲である。


デビューした後のアレサフランクリンは、なかなかヒット曲が出ずに悩んでいた。アラバマ州の白人ミュージシャンと組むことになってようやく芽がでてくる。もともとオーティスレディングのヒット曲だった「リスペクト」をスタジオの中のセッションで、ゴスペル風、スイング風に緩急アレンジしながら試行錯誤して、アレサの姉妹のアイディアを取り入れ生まれて行ったのがアレサフランクリン流「リスペクト」である。人生の絶頂期に向かっての生産過程を見るのはこちらもウキウキして楽しくなる。


⒊男運のなさ
黒人のシンガーというと、育ちの悪さを想像するがアレサフランクリンは違う。アメリカンスタイルのきれいな一戸建に住んでいる。フォレストウィテカー演じる父親は超有名な神父さんである。幼少の頃からホームパーティをやると、デュークエリントンやエラフィッツジェラルドのような有名アーチストが家に遊びにくる。父親はキング牧師とも友達で黒人ハイソサエティというべき存在だ。そんなすごいメンバーの中で10歳のアレサが歌うシーンからスタートする。これは予想外だった。演じる少女の歌もうまい。

むしろステージパパというべき存在で、レコード会社にも圧力をかけてデビューしてしまうのだ。でも、アレサフランクリンはどうも男運がないようだ。アレサの子ども2人が家庭内にいるシーンがあり、その年号だとアレサが19歳なので一瞬何かの間違いかと思った。そうでないのが映画をずっと観ているとわかる。具体的な言及はないが、少女時代に妊娠して腹が大きい姿も映画で見せる。


でも、若い時に一目惚れしたテッドとの付き合いは切ってもきれないものとなる。どこかの国の皇室がらみの恋のように恋は盲目状態で、いったんはステージパパの父親から離れるが、結局はうまくはいかない。そういった男運のなさが映画の根底に流れる。


ジェニファーハドソンの歌はキャロルキングがつくった「ナチュラルウーマン」などどれもこれも良かった。聴きながら何度か感涙してしまった。ひとつだけ残念なのは自分の好きな「小さな願い」を最悪期にステージで歌い、ぶっ倒れてしまったこと。まあ仕方ないでしょう。
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映画「モーリタニアン 黒塗りの記録」 ジョディフォスター&ベネディクト・カンバーバッチ

2021-10-30 20:11:07 | 映画(洋画:2019年以降主演女性)
映画「モーリタニアン 黒塗りの記録」を映画館で観てきました。


映画「モーリタニアン 黒塗りの記録」は911のテロの首謀者の補助をしたとして捕らえられた男をジョディフォスター演じる人権派弁護士が弁護する話である。ジョディフォスター主演作品は久しぶりに観る。ついこの間クーリエで見たばかりのベネディクトカンバーバッチが共演する。ベネディクトが出演するので英国系かな?と思いきやBBCが製作に関わって、英国のケヴィンマクドナルド監督がメガホンをもつ。

ビンラディンを探し出して殺害する話を描いたゼロダークサーティでも被疑者への水責めの拷問が描かれる。ここでは被疑者の冤罪を晴らすと言うよりも,被疑者に対するアメリカ当局の常識外れのきつい拷問に焦点が当てられる人権擁護の映画である。現代世界史の裏側を描く国をまたいだスリリングな展開は日本映画では見られないスケールの大きさが醸し出される。

911テロの2ヶ月後2001年11月アフリカのモーリタニアでモハメドゥ・スラヒ(タハール・ラヒム)が拘束される。ビンラディンと親しく、NYテロの航空機の操縦士をアルカイダにスカウトした疑いがかけられている。拘束後裁判は一度も開かれていない。生死さえ不明であった。キューバのグアンタナモ収容所で投獄生活を何年も送っていた。2005年、弁護士のナンシー・ホランダー(ジョディ・フォスター)はスラヒの弁護を引き受ける。ナンシーは「不当な拘禁」だとしてアメリカ合衆国を訴える。


時を同じくして、テロへの報復で政府から米軍に、モハメドゥを死刑判決に処せとの命が下り、スチュアート中佐(ベネディクト・カンバーバッチ)が起訴を担当する。起訴事実を固めるために調査が始まる。一方で開示請求でようやく政府からナンシーに許可がでた機密文書は、重要な部分がほとんど黒ペンで消されていて何もわからない。ナンシーは隠された部分を公開するように法廷に問うのであるが。。。


⒈ジョディフォスター
2度もアカデミー主演女優賞を受賞している現役女優はほかにヒラリースワンクくらいしかいない。「タクシードライバー」の子役時代からジョディフォスターとの付き合いは長い。それでも、久しぶりに映画館での再会だ。ラブコメディは全く似合わず犯罪の香りがよく似合う。名門イェール大出身でインテリ女が得意である。「インサイドマン」でも弁護士を演じたが、ここでも人権派弁護士である。適役といえる。


ブロンドというよりプロレスのフレッドブラッシーばりの銀髪というべきヘアに黒いサングラスがよく似合う。童顔だったジョディからするとむしろ老け役といえる。円熟味を増してきた。こんな弁護士を相手側にしたら面倒だろうなあという怖い女性で、一度喰いついたら離さないこの役柄はうまい。

⒉アメリカでどう評価されるのかなあ?
どうしてもゼロダークサーティと比較してしまう。さまざまな事件に関係するイスラム教絡みの被疑者を徹底的に拷問により調べ出し、ビンラディンの居場所をパキスタン内で突き止め秘密裏に飛行機で他国侵入して殺害するスリリングな映画だった。

西アフリカのモーリタニアで生まれ育ち、優秀でドイツの大学で電気工学を学んだモハメドゥ・スラヒはビンラディンと近い筋だったのは確かだ。しかし、テロに関わったことは否定している。自白を強要されたとは言うもののこればかりはわからない気がする。

ジョディフォスター演じるナンシーには「テロの弁護をするとテロの支持者と思われる。」と言う台詞がある。ナンシーが裁判の法廷に向かう際に「911を忘れたのか」というプラカードを持った人に囲まれているのを見るとなんとも言えない気分になる。


911のあとすぐは米国をあげて報復ムードは強かった。大量破壊兵器があるという前提でイラク戦争に駆り出されたアメリカには、大義名分が本当に正しかったの?という疑念があるだろう。それだけにビンラディンと付き合いがあったイスラム教徒というだけでテロに絡らんでいる疑念の映画も今やつくれてしまうんだろう。でも、BBC中心に強引につくった感じもして自国の米国人にとっては複雑な映画ではないだろうか?

確かに拷問シーンは想像を超える。作品情報には例によってリベラル系の人のアメリカ政府を非難するコメントが目立つ。でも、国家機密書類に関する消し込みは当然のことでコメント者のレベルがちょっと低いなあという気がする。
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映画「プロミシング・ヤング・ウーマン」キャリー・マリガン

2021-07-23 17:35:08 | 映画(洋画:2019年以降主演女性)
映画「プロミシング・ヤング・ウーマン」を映画館で観てきました。


自分にとっては相性の良いキャリーマリガンの新作「プロミシング・ヤング・ウーマン」は、アカデミー賞の脚本賞を受賞している作品だ。好奇心を誘う。ポスターはピンク基調の原色で、派手目な女性映画の色彩が匂う。人気女優マーゴット・ロビーもプロデューサーに加わり女優でもあるエメラルド・フェネルが脚本を書いた上にメガホンを持つ。

promisingというと、受験時代のテキストの文章にあって「前途有望」と覚えた記憶がある。医大生が前途有望なのは当然アメリカでも同じだろう。医大を中退して、今はカフェの従業員をやっている30 歳の独身女性が、医大時代の同級生に再会したのをきっかけに、むごい目にあった親友の仕返しをしようと事件の当事者に会って復讐を重ねる顛末である。


メイクがどぎつくなったキャリーマリガンの変身ぶりにはビックリする。ストーリーの進行とともに展開予想を少しづつ外すのは巧みではあるが、脚本賞を受賞したというストーリーとパフォーマンスにはもう一歩のりきれない。

30歳を目前にしたキャシー(キャリー・マリガン)は、ある事件によって医大を中退し、今やカフェの店員として平凡な毎日を送っている。その一方、夜ごとバーで泥酔したフリをして、お持ち帰りオトコたちに裁きを下していた。

ある日、大学時代のクラスメートで現在は小児科医となったライアン(ボー・バーナム)がカフェを訪れる。この偶然の再会こそが、キャシーに恋ごころを目覚めさせ、同時に地獄のような悪夢へと連れ戻すことになるが。。。(作品情報 引用)

⒈キャリーマリガン
映画が始まって、いつものキャリーマリガンとはえらく違う雰囲気で泥酔している。ベロベロで尻軽と思われて、男にお持ち帰りされるが、いざという時になって返り討ちを喰らわせて驚かせるシーンでスタートする。起きた出来事を暗号のような文字で手帳にチェックをつける。昼間はカフェのごく普通の従業員だ。これって、渋谷神泉で起きた東電女子社員殺人事件で被害にあった娼婦のパフォーマンスみたいな展開なの?と思わせるが、そうではない。


家庭崩壊を描いたポールダノ監督の前作「ワイルドライフ」では、夫が離れているうちに不倫をしはじめた途中からメイクが変わっていったのが印象的だった。もともと17歳の肖像」から追いかけている。「ドライヴ」や「私を離さないでなど彼女の作品はほとんど見ている。清純派テイストが強かった女優である。この映画では、最初から強烈なあばずれメイクでいつもと違う。SMクラブの女王様みたいな雰囲気である。


その中でも、ナースのコスプレメイクで男に手錠をしてベッドにつなげて動けないようにするシーンが印象的だ。

⒉復讐劇
ハッキリと説明しているわけではないが、少女時代から仲の良かったニーナという同級生がレイプにあったのに、学校当局も取り合わず失望したニーナが自殺して、その時にキャシー(キャリーマリガン)が医大を中退したという顛末のようだ。

当時の同期で事件に関わっている女に会いベロベロに酩酊させて、依頼した男に誘惑させたり、復学したいと言いつつ母校の教授にあい、教授の娘に酷いことを企てていると思わせる脅しを企てたり復讐はエスカレートする。


⒊むごい事実を想像させる脚本
実はむごいことが行われているんだけど、露骨なレイプシーンなどはない。一部の場面を除いて、全部想像の域を超えない。説明調ではなく想像させる。そのこと自体は悪くないけど、実際のところどうなのかがよくわかりづらい。


ちょっと突っ込むと、地方性が強いアメリカで、この舞台となるキャシーの自宅のあるエリアと医大の位置関係がどうなっているのか?同じエリアなのか?セリフでは、キャシーはしばらく同期の女性などにはあっていないようだが、同じ地方都市にいるんだったら、いくらなんでも全く会わないこともなさそうだけど。男たちを手玉にとるバーもそんなにはないと思うので、手帳にあるほど何度も繰り返して悪さできないような気もする。

ちょっとわかりづらかったかな。
キャリー・マリガンの熱演はすごかったけど
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映画「17歳の瞳に映る世界」 シドニー・フラニガン&タリア・ライダー

2021-07-18 18:12:12 | 映画(洋画:2019年以降主演女性)
映画「17歳の瞳に映る世界」を映画館で観てきました。

同じ青春ものでも、日本では見たことないテイストの青春映画である。
一見の価値がある良く出来た作品だ。


2020年のベルリン国際映画祭の銀熊賞作品で、評価は極めて高い。ロッテン・トマトでも99%の超高評価というのも凄い。その評価自体は映画を見てみると納得できる。17歳の望まれない妊娠をしたペンシルバニアの女子高校生オータム(シドニー・フラニガン)が仲の良いイトコのスカイラー(タリア・ライダー)と共にニューヨークに中絶手術に向かう顛末を描く。


当然フィクションであるが、まるでドキュメンタリーと思しき映画の流れをくむ。妊娠してしまった女の子は泣いたりわめいたりしない。どうしてこうなってしまったか?ということを含めて説明は少ない。数少ないセリフと映像描写で説明する手法エリザ・ヒットマン監督の力量を感じる。

こういう映画の内容だからか、女性スタッフ中心でできている映画である。一般に相手に共感を求める度合いが高いのは女性の方だ。だからといって女性だけに受ける映画ではない。ただ、男性に強い警鐘を与えているのも事実、われわれ男性は謙虚に受け止めなければならない。

主人公の名前は、オータム・キャラハン。意識しているかどうかわからないが、ダーティハリーのハリー・キャラハン刑事を連想して思わず唸る。

⒈普通の17歳
両親が普通にいる家庭である。母親の方が仲が良く父親とはギクシャクしているが、それ自体は思春期では別におかしくもない。妊娠が分かり、思いっきり泣いたりはしない。でも、自虐的にお腹を叩いて、流れてしまえばいいのにとなり気がつくとアザができる。

いとこで友人のスカイラーもスーパーのレジをやっている。スカイラーはスーパーのマネジャーに好意をもたれている。それもあってか、ちょっとした隙に売上のお金をさっと持ち去って、中絶のための資金に充てる。ペンシルバニアから長距離バスに乗ってニューヨークへ2人で向かうのだ。


普通は、この世代の女の子だとおしゃべりし放題という感じだが、しゃべりは極めて少ない。この辺りが日本青春映画で見るタッチと若干違う。

⒉妊娠中絶にあたって
望まれない妊娠というのは診断した初老の女医にもすぐわかる。中絶はペンシルバニア州では親の同意がいる。女医は中絶というのは小さな命を殺すことだとビデオをオータムに見せて養子縁組を勧める。こういったディテールには細かい映画だ。
昨年の日本映画の傑作「朝が来る」では若すぎる妊娠をした高校生が産んで養子縁組で子供を授ける話であった。同じように女医には勧められたが、そうしていない。


親になんて言えるわけがない。ネットで調べて、ニューヨークでの中絶を決意して、一緒のスーパーで働くいとこに付き添いを頼む。地元の診断では、10週目ということであった。ところが、ニューヨークで診断すると、18週目になっているという。これだと、1日で処理することはできない。金銭面も含めてあらゆる予定が狂っていくのだが。。。

ここでは、中絶手術のためにカウンセラーから質問を受ける。これがしつこいくらいに執拗に続く。性交渉の頻度や初体験、体験した人数などそこでいろんなことがわかる。この映画の原題はNever Rarely Sometimes Always、これはその時の4択の質問をこの4つのどれかで答えるのである。

いくつかの質問でオータムが心を乱す場面がある。
映画の見せ場かもしれない。

⒊ニューヨークの片隅で
もともと金はない。バイトしているスーパーの売り上げの一部をネコババして旅費と中絶費に充てている。1日で終わらない処置となるため、帰りの旅費もピンチだ。治療で健康保険を使ったら親にバレるから使えない。まともにホテルには泊まれない。街のベンチで泊まってしまおうとしても、追い出される。都会の片隅でたたずむ姿に哀愁が漂う。



美少女の2人を舐めるようにカメラが追う。大画面にアップで映る2人は初々しいところを持ちながら美しい。撮影の腕前も光る。当然フィクションであるが、そう思えないほどのリアル感が漂う。好演である。

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映画「ソング・トゥ・ソング」 テレンス・マリック&ルーニー・マーラ

2021-06-03 20:32:23 | 映画(洋画:2019年以降主演女性)
映画「ソング・トゥ・ソング」は2017年のテレンスマリック監督作品


テレンス・マリック「ソング トゥ ソング」は日本では遅れて2020年秋に公開された。出演者はよくぞ揃えたと思うくらい超豪華である。普通であれば、このメンバーならすぐさまロードショーとなってもおかしくないが、何せ難解とされるテレンス・マリックの作品である。ヒットは望めずやむを得ないであろう。


作品情報のあらすじは下記のようになっているが、いつものようにストーリーはあってないようなもの。テレンス・マリックとカメラマンのエマニュエル・ルベツキのコンビで作られる甘美な映像を楽しむための映画である。例によってこれが素晴らしい。数秒の動画を集めて写真集を作ったみたいな映像である。しかも、どれもこれも素晴らしい。気の利いたスタイリッシュなカフェでバックに流すのには最適かもしれない。


音楽の街、オースティン。何者かになりたいフリーターのフェイ(ルーニー・マーラ)は、成功した大物プロデューサーのクック(マイケル・ファスベンダー)と密かに付き合っていた。そんなフェイに売れないソングライターBV(ライアン・ゴズリング)が想いを寄せる。
一方、恋愛をゲームのように楽しむクックは夢を諦めたウェイトレスのロンダ(ナタリー・ポートマン)を誘惑。愛と裏切りが交差するなか、思いもよらない運命が4人を待ち受けていた…。(作品情報より)


*テレンス・マリックとエマニュエル・ルベツキのコンビ
アカデミー賞最優秀撮影賞を「ゼログラヴィティ」「バードマンあるいは」「レヴェナント」で3年連続で受賞している。すごいことだ。でも、賞の受賞うんぬんよりもエマニュエルが撮る映像コンテが何より美しい。上記の3作は映画自体の魅力もあるが、成功にはエマニュエル・ルベツキのカメラが貢献しているのは言うまでもない。

上記3作と別におったまげたのがテレンスマリックとのコンビで映す「トゥ・ザ・ワンダー」だ。美しい映像のカットが続く。数えてはいないが、1000カットを大きく超える映像カットが次から次へと続く。こんなすごい映像は他には真似できない。ストーリーがあってないようなものなので、好き嫌いが分かれるのではないか。


今回も同じ系統である。よくぞ見つけてきたという絵になる街の風景やスタイリッシュな部屋に合わせて、美男美女を映す。それぞれのカットは長くても10秒はない。3秒から5秒くらいのカットが延々と続く。120分として、平均5秒なら12 ×120で1440だ。もっとあるかもしれない。これだけのカットを撮るのもすごいが、編集者の腕の見せ所である。このコンビの映像ではいつも複数の編集者がいる。今回は3人の名前がある。まず、こういう完成品にするのに時間がかかるのではないか。粘り強さに感心する。


でも、きっと流行らないと思う。それなのに制作するのにこのスタッフにキャストどうやって資金集めするのか気になるところである。
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映画「ノマドランド」フランシスマクドーマンド

2021-03-27 19:19:32 | 映画(洋画:2019年以降主演女性)
映画「ノマドランド」を映画館で観てきました。

オスカー主演女優賞を2度受賞しているフランシスマクドーマンドの新作である。前評判は高く、ベネチア映画祭とトロント映画祭で作品賞を受賞している。夫であるコーエン兄弟の作品をはじめとして自分には相性の良い女優である。必見と思い、映画館に向かう。


ここでは、夫をなくして1人になった女がキャンピングカーで車上生活を続けるロードムービーである。実際にノマド生活をする人たちが多数出演し,ドキュメンタリー的な色彩も強い。フランシスマクドーマンドは演技を超越した演技である。ちょっと老けたなぁ。ただ,期待したほどの面白みはなかった。

ネバダ州の町、エンパイアが不況により採掘所が閉鎖されて、町そのものが消滅する。仕事と住居を同時に失った60代のファーン(フランシス・マクドーマンド)は、亡き夫の思い出を詰め込んだキャンピングカーに乗り、車上生活をする。

生活費を稼ぐために、Amazon配送センターや国立公園のスタッフなど、季節労働の現場を渡り歩く。同じようにノマド(遊牧民)として生きる人たちと各地で出会い触れ合う。さまざまなトラブルにも遭遇しながら、自由に生きる道を進んでいく。


1.車上生活
車上生活といっても,車を止めるところを探すのも一苦労だ。そこには,同じように車上生活をしている仲間たちがいる。いろんな地方を渡り歩きながら,再会する人も多い。一緒に暮らさないかと言ってくれる人も多い。でも,迷いながらも1人で暮らす道を選ぶ。そういう苦悩もいろんなところで見せてくれる。意外にも,アマゾンの配送センターやハンバーグレストランの裏方など季節労働の職が方々に色々とあるのに驚いた。


夕陽を見せるシーンが多い。どれもこれもきれいだ。クロエ・ジャオ監督はロケハンティングに成功している。

2.フランシスマクドーマンド
「スリービルボード」は傑作であった。ちょっと性格が悪いいやな女だった。「あの頃ペニーレインと」での主人公の母親役が子供にも他人にも厳しい人でやっぱりいやな女で、こういう役柄に力量を発揮する気がする。ジョエル・コーエンが夫なので一連のコーエン兄弟映画には常連のように出演しているが、むしろそれ以外の作品で力量を発揮していると自分は思う。


この映画の役柄でも、ノマド的放浪がクローズアップされるが、性格は決して良いとは言えない。やっぱり普通じゃない。そんな主人公の気持ちに同化することはなかった。ある意味、こういう変人はフランシスマクドーマンドの得意技なのかもしれない。
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映画「私というパズル」 ヴァネッサカービー

2021-01-22 12:31:24 | 映画(洋画:2019年以降主演女性)
私というパズルはNetflix映画


映画館で観たいのが少ないとNetflix映画で探す。気になるのがヴァネッサカービー主演の「私というパズル」だ。死産の後、夫婦に災難が続くという展開は好きな題材ではないが飛びつく。これは想像よりも良かった。一見の価値がある映画である。心理描写も見応えがあるし、カナダロケだという冬景色に馴染む音楽も実に適切なタイミングと音色だ。

映画が始まって出産を待ち望んだマーサ(ヴァネッサ・カービー)とショーン(シャイア・ラブーフ)のカップルの姿を映した後で、臨月のマーサが破水するシーンとなる。いきなりの出産シーンが一筆書きのように30分近く続くのに驚く。いつカットが入るのかと思いながら、自宅での出産を望んだ主人公夫婦とお産婆さんが奮闘する。

そもそものお産婆さんの代理できた女性だが、手際は悪くない。本来は病院に行かねばならないのであるが、マーサは強情だ。普通に聞こえてきた心音の調子が悪くなる。それでも、苦渋の表情の中で赤ちゃんが生まれ、小さな鳴き声が聞こえる。生まれた後が弱い。赤ちゃんは冷たい。異常に気づきやがて救急車がくる。


その後、落胆する2人を映す。死亡原因が特定されない。沈滞ムードが続く。2人の仕事にも張り合いがない。お墓の文字のスペリングで内輪もめ。妻の自分の母との関係は微妙、これまで何かあったのかあまり良くない。母親も変な女だ。夫もどこか変だ。家の中は洗っていない食器が散乱、観葉植物も水やりせずに枯れる。

世間では、お産婆さんへの魔女狩りが始まっているようだ。「え!何で?」という印象を持つ。別に悪いことしていないじゃない。でも、夫や妻の母親は親類の法律家(弁護士?)を通じて訴訟しようとしている。これっておかしくないと観ながら感じる。

そして気がつくと映画は法廷モノの要素を持ってくる。



この辺りはコルネル・ムンドルッツォ監督が観客への印象づけを意図的にやっていることなんだろうけど、徐々に引き込まれる。個人的な2015年日本公開のベスト映画ホワイトゴッドの監督だということに見終わった後に気づく。そうなんだ。この映画ホワイトゴッドは凄かった。あのレベルでつくれる人の映画であれば間違いない。でも、この映画をつくっているとは知らなかった。

1.ヴァネッサカービー
ヴァネッサカービーは昨年スターリン政権下のソ連を取材する英国記者が飢えた人々を見つける顛末の「赤い闇」で、肝になるニューヨークタイムズのモスクワ支局に勤める女性支局員を演じていた。魅力的な存在だった。今回の演技で、黒沢清監督が監督賞を受賞したヴェネツィア映画祭で主演女優賞を受賞している。ミッションインポッシブルでは重要な謎の女を演じて、これがまた色っぽい。次作にも登場する模様だ。


橋ゲタの現場監督の旦那を持つけど、ヴァネッサカービーのここでの役柄はインテリで自立した女である。自分というものを持っている。周囲が何を言おうが自分の道は自分で決める。それなので、自宅で子供を産むのにこだわる。途中でのお産婆さんを追求する動きにどう振る舞うかと思ったけど、最後に向けては素直に彼女に気持ちが同化できた。

2.絶妙な音楽
バックに流れる音楽がいいのに途中で気づく。肝心なところはむしろ無音だ。この主人公ヴァネッサカービーは雪景色が似合うクールビューティである。ヴァネッサと風景にピッタリのリリカルなピアノとストリングスを使い分け、ジャズピアノが入る場面もある。ハワードショア、「ロードオブザリング」でアカデミー賞音楽賞も受賞したことのある名作曲家だ。格が違う。

最後に向けて、リンゴの木の下でアレ?というシーンを映す。そこで流れるピアノとストリングスが併せ持ったピアノ協奏曲的エンディングは最後までずっと聴いていたい衝動に駆られた美しい曲だった。
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映画「ニューヨーク親切なロシア料理屋」 ゾーイ・カザン

2021-01-20 20:56:29 | 映画(洋画:2019年以降主演女性)
映画「ニューヨーク親切なロシア料理屋」を映画館で観てきました。


まずは題名の「ニューヨーク親切なロシア料理屋」にひかれる。ロシア料理は亡くなった父が好きで、子どものころから渋谷の「サモワール」などに連れて行ってくれた。今でも新宿「スンガリー」や神田駿河台「サラファン」には時々行く。大好物だ。主演のゾーイ・カザンエリア・カザンの孫という血筋の良さで、連れ合いのポール・ダノと撮った「ルビー・スパークス」からのファンだ。公開以来時間合わず後回しになったが観に行く。

警官の夫からの家庭内暴力に音をあげて息子2人と家を飛び出してマンハッタンに来た主人公が、文無しで街の中をさまよう顛末である。結果は、あまりよろしくなかった。ロシア料理屋と日本題からおいしそうな料理で目の保養になると考えると、まったくの期待外れになるだろう。最後まで待っていたけど、ロシア料理の映像はまったくでない。新宿「スンガリー」を親から継いだ実質オーナーの加藤登紀子さんの推薦文があるのにだまされた。まあこういうこともあるだろう。

ニューヨークのマンハッタンで、創業100年を超える伝統を誇るロシア料理店〈ウィンター・パレス〉。だが、現在のオーナーであるティモフェイ(ビル・ナイ)は商売下手で、かつての栄華は過去の栄光となり果て、今では経営も傾いていた。

店を立て直すためにマネージャーがスカウトされるが、マーク(タハール・ラヒム)というその男は刑務所を出所したばかりの謎だらけの人物。店を支える常連の一人である看護師のアリス(アンドレア・ライズボロー)も、恋人に裏切られて以来、救急病棟の激務に加え〈赦しの会〉というセラピーを開き、他人のためだけに生きる変わり者だ。次々と仕事をクビになったジェフ(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)ら、ワケありの過去を抱えた者たちがアリスを慕っていた。


そんな〈ウィンター・パレス〉に、まだ幼い二人の息子を連れて、事情を抱えて夫から逃げてきたクララ(ゾーイ・カザン)が飛び込んでくる。無一文で寝る場所もないクララに、アリスとマークにジェフ、そしてオーナーも救いの手を差しのべる。しかし、ある事件をきっかけに、夫に居所を知られるのも時間の問題に。追い詰めれたクララは、皆から受け取った優しさを力に変えて、現実に立ち向かうことを決意するが…。(作品情報引用)

刑務所から出所したばかりでロシア料理屋のマネジャーになった男やセラピスト的な行動もする看護師の物語と平行する。
こんなことあるの?と思わせるのは無一文で子ども三人を連れてマンハッタンにやってくるなんてことがそもそもあるのかしら?夫からの家庭内暴力があったにもかかわらず、ニューヨークに住む夫の父親に金の無心をするなんてことから話はスタートする。それ自体ありえないよね。

金がないのにホテルに泊めてくれとフロントにからむとか詐欺師まがいの行動でむちゃくちゃだ。しかも、ブティックには行っては脱衣ルームに試着のふりして洋服を盗んだり、関係ない宴会に侵入して料理をかっさらう。店番のふりしてクロークに入り込んで、客のコートの中から金を取ったりするなんて行為を見てこの女に同情したくはない。今までのゾーイカザンの映画とまったく違って感情流入ゼロだった。

訳があって下の息子が危篤状態になり入院したときの入院費用だって払っているのかい?日本と違って医療費は高いはずだから、無一文プラスアルファでできるはずがない。まあそんな訳でむちゃくちゃな脚本で、書いた人は金銭観念のないかなりの世間知らずだと思う


ここで映るロシア料理屋はロシアの民族衣装を着たバンドが入って、飲めや踊れやの雰囲気である。日本でこういうロシア料理屋はみたことがない。そもそもはこんな感じなんだろうか?ピアノを弾くビル・ナイのおさえた老巧な演技だけはまともだった。
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映画「Swallow/スワロウ」 ヘイリーベネット

2021-01-15 21:09:26 | 映画(洋画:2019年以降主演女性)
映画「Swallow/スワロウ」を映画館で観てきました。


「Swallow/スワロウ」のポスターが気になっていた。一瞬いい女に見えるような感じだけど、ジェニファー・ローレンス??いや違う。ヘイリー・ベネットである。ポスターの色使いも気になるので映画館に向かう。富裕層に嫁いだ若妻が懐妊した後で、精神が安定しないので異物を飲み込む様になってしまうという話だ。サスペンスというほどではないが、サイコスリラー的要素を持つジャンルかな??

たしかに主人公が住むのがすごい豪邸で色彩設計がうまく、赤や青や原色の使い方が上手い。それに加えてアップを多用するカメラワークも悪くない。映像としてのセンスにあふれている。ただ、この映画は懐妊後の女性の複雑な感情やアメリカ版微妙な嫁姑関係などがからんでいくので女性の方が共感できるかもしれない。


どこまでばらしていいのか難しい映画なので、作品情報そのまま引用します。

完璧な夫、美しいニューヨーク郊外の邸宅、ハンター(ヘイリーベネット)は誰もが羨む暮らしを手に入れた。ところが、夫は彼女の話を真剣に聞いてはくれず、義父母からも蔑ろにされ、孤独で息苦しい日々を過ごしていた。そんな中、ハンターの妊娠が発覚する。待望の第一子を授かり歓喜の声をあげる夫と義父母であったが、ハンターの孤独は深まっていくばかり。

ある日、ふとしたことからハンターはガラス玉を呑み込みたいという衝動にかられる。彼女は導かれるままガラス玉を口に入れ、呑み下すのだが、痛みとともに得も言われぬ充足感と快楽を得る。異物を“呑み込む”ことで多幸感に満ちた生活を手に入れたハンターは、次第により危険なものを口にしたいという欲望に取り憑かれていく…。(作品情報引用)

1.ヘイリーベネットとセレブの嫁
先入観なく映画を見たが、マジにジェニファー・ローレンスに見えた。ヘイリーベネットといえば、ついこの間Netflix映画「ヒルビリーエレジー」で主人公の姉演じていた。ああそういえばという感じだ。今回は富裕層の家に嫁入りした。夫は若くして父親を継いで常務に昇進、言うならば玉の輿だと思う。プール付きの大豪邸からは美しい川が見れる光景が眺められる。ハドソン川沿い高級住宅なんてこれだけ映画を見ていても出くわしたことがない。うらやましいくらいのすごい家だ。


そこには優しい夫がいて専業主婦で何も不満もない生活 、夫と義父母ともに懐妊に喜ぶのだ。男からみたら、何の文句もつけようがないように見える。でも、きっと女はちがうんだろうなあ。ネクタイにアイロンをかけただけで機嫌が悪くなる夫、自己啓発の本を読めと言ってくる姑など、男性にはわからない何かがあるのであろうか?

でも、気になったのはどういうきっかけでこの2人カップルに?
義母が「あなたは今までなんの仕事をしていたの?」なんて聞いてくることってなんか不思議だ。キッカケ何なの?

2.異食症って?
何も不自由のないように見える主人公なのに、ふとビー玉のようなガラスの玉を口に入れる。それだけではない。画鋲ピン📌のようなもの口に飲み込む。見ていて大丈夫なの?と思ったら、血染めになったガラス玉やピンがでてくる。これって排出されたのか?


でも、結局夫にバレる。赤ちゃんの様子を見るための超音波検査で異物が入っていることがわかる。いろんなものが中にある。大騒ぎだ。
セラピー受けたり、看護師が雇われたりするのだ。おいおいどうなっちゃうんだろう??
このストレスは初めて知った。 ネットを見ると、妊娠中になりやすいと書いてある。へえそうなの?

途中で、どう最後にもっていくのかと思ったけどね。でも今ここでは語れない出来事がキーポイントになる。セレブを映し出すと同時に下層社会の末端も語っている気もした。
最後のエンディングロールにはビックリ、こういう形になると何かあるんじゃないかとなかなか退出できないよね。
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映画「セインツ-約束の果て-」ルーニーマーラ&ケイシー・アフレック&デイヴィッド・ロウリー

2021-01-03 13:08:49 | 映画(洋画:2019年以降主演女性)
映画「セインツ-約束の果て-」は2013年のアメリカ映画


年始に蓮實重彦の映画の新書「見るレッスン」を読んだ。その中で絶賛されているのがデイヴィッド・ロウリー監督とその監督作品映画「セインツ」である。この映画の記憶はない。主演は「ソーシャルネットワーク」ドラゴンタトゥーを撮った後のルーニー・マーラでこの映画は気にいったはずなのに存在に気づいていなかった。褒め言葉をよんで、いきなりamazonでピックアップして観てみた。妻の懐妊に気づいた後で銀行強盗を犯して捕まって収監された元常習犯が、脱獄して妻の元へ戻ろうとするという話である。

蓮實重彦の本の中では90分で映画をおさめることの素晴らしさが語られる。「セインツ」もほぼ94分である。映画の趣旨を簡潔に映像で捉えているのは確かによくわかる。無駄がない。その中で大草原が延々と続くアメリカの田舎を映す映像もきれいだ。カントリータッチの音楽もうるさくなく、心に刺さる。独特のムードで最終場面に向けて単純には行かないんだろうなあと思わせるストーリーも先を読ませず、確かに推奨作品といえる快作である。

強盗を繰り返しているカップルがいる。ルース(ルーニー・マーラ)が懐妊しているのに知りながらもボブ(ケイシー・アフレック)は仲間と銀行強盗に入る。しかし、保安官たちに囲まれ銃撃戦になったときに、ルーズが撃った銃弾が保安官パトリック(ベン・フォスター)の肩にあたる。ボブはここで収監してもすぐでられるよとルースをかばって投降する。やがて、ルースは無罪となり出産するが、ボブは懲役25年となってしまった。


ボブとルースの育ての親であるスケリット(キース・キャラダイン)はボブが刑務所にいる間にルースと娘に家を買い与えて本当の親のように見守っていた。ある日、ルースの家に保安官パトリックが姿を見せる。どうやらボブが脱獄したようだ。5回失敗した後で看守の目を盗み作業者から逃げた。そのあと、貨物列車に乗ったり、通りがかりの女を脅したりして移動していた。


同時にスケリットが営む店にはボブを狙った殺し屋たちが戻ってくることを予測してたむろってくるのであるが。。。

1.ボブとルースを取り巻く人間関係
単純に妻の元へ戻ってくるという話にはしない。ボブには黒人でバーを経営するむかしの仲間がいる。元のすみかに戻ってきてまずは仲間を頼る。これはボブにとっての援助者だ。保安官は知人として当然来ているか確認するが、仲間は黙っている。

育ての親パトリックもボブにとっては味方の一人だが、娘を育てているルースとボブの仲がもどるのがいいと思っていないので完全の味方ではない。そんなパトリックの元に殺し屋集団が来る。なんかわけがわからない連中だけど、こういう存在がいるので最終の決着がわけわからなくなるのだ。

映画を見るのに集中できるのはストーリーの先行きが気になるからだと思う。まさにそれ、変化技にうなる。


2.蓮實重彦「見るレッスン」
文面は一つの文を句読点を使って長めに書くいかにも蓮實重彦というようなタッチではない。内容は好き嫌いが激しい彼らしく、世間で評判がいいとされる作品も一刀両断される。「デトロイト」のキャスリン・ビグローやソフィア・コッポラも蓮實重彦からみると酷評である。ゴダールやウディアレンのように映画を90分におさめることにこだわっていて、デイヴィッド・ロウリー監督の評価がやけにいい。なんと、蓮實先生自ら直接メールをしたそうな。年初あらためてデイヴィッド・ロウリー監督を追ってみたい。

日本映画では別の意味で有名になった濱口竜介監督「寝ても覚めてもが推奨されている。これは自分と同意見だ。しかも、世間でボロクソにされた唐田えりか非常に魅力的と評している。まあ、元東大総長の蓮實重彦にとっては週刊誌ネタはどうでもいいことだろう。それに負けじとルーニー・マーラは「キャロル」に劣らずかわいいけど。


その一方で「カメラを止めるな」はある女性から聞いた話では、彼女の住むマンションのママたちはみんな見ていたらしい。でも、それはないだろうと思います。だから、自分の好きなものを発見せよと言いたい。(蓮實2020 p.4)こういうことはありがちかもね。

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