映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

マリー・アントワネット  キルスティン・ダンスト

2009-05-31 22:04:03 | 映画(洋画:2006年以降主演女性)
ソフィアコッポラ監督が描く女性の世界。世紀の悪女マリーアントワネットの女性としての歩みをかわいらしく映している。ベルサイユ宮殿をロケで使ったのでスケール感はある。スパイダーマンの恋人キルスティンダンストが演じるとマリーアントワネットがかわいそうな存在に見える。

娘が授業でフランス革命をやっていた。社会の教員がかなり気合を入れてプリントをつくっていた。池田理代子「ベルサイユのばら」の漫画から、いかにマリーアントワネットが浪費家だったというのを示す場面を抜き出していた。でも「本当は彼女もなりたくてそうなったんじゃないよ」ということで、一度見たこの映画のDVDを借りて一緒に見た。

オーストリアとフランスとの政略結婚でフランスの王太子ルイにお嫁に行くことになったマリーアントワネットはキュートでかわいい女の子。ベルサイユ宮殿に嫁いだが、周りからは白い目で見られている。しかも、王太子は夜のお勤めをしないので子供がなかなかできない。そうしているうちに王太子の弟に男子ができる。。。。。
日本の皇室にダブってしまうような話でもある。彼女は子供ができないそのストレスを衣装や靴の贅沢やギャンブルの散財に向けてしまっている。最終子供は生まれるのだが、その使いっぷりは変わらず、国民の批判をあびフランス革命が起こるという話だ。しかし、後年の評価では浪費はそんなにひどくはなかったと言われている。国民と乖離している中、ネタミが集中したのであろう。

ソフィアコッポラ監督は余計なセリフを排除して、画像でセリフに充当することを実に見事に表現している。コンテの美しさと美術の素晴らしさは特筆すべきところだ。視覚的に美しいデザートがこれでもかと出てくる。この時代からこんなデザートがあったのであろうか?おいしそう!!
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イーグルアイ  シャイア・ラブーフ

2009-05-30 20:24:16 | 映画(洋画 2006年以降主演男性)
スピルバーグ製作のアクション物。普通の人間が気が付くとテロリストになるように仕組まれてしまう話。超スーパーコンピューターもどき存在が、あらゆる情報機器のデータを一瞬にして傍受し、次から次へと指令を出してしまう。カーアクションなどもすごい。ものすごいスピード感をもって映画を構成する。でもちょっとやりすぎかな?という感想

主人公は普通のフリーター。名門スタンフォード大を中退して、職を転々としている若者。家賃すらまともに払っていない。そんな彼は空軍のエリートであった双子の兄弟をなくす。その彼の口座にある日突然75万$もの大金が振り込まれる。しかも、家に帰ると荷物が山のように届いている。中を見ると銃や武器が入っている。驚く間もなく何者からか電話が入る。
「あと30秒後にFBIがあなたを逮捕するから至急その場から逃げるように」
慌てふためいているうちに本当にFBIが部屋に乱入してくる。そのときもう一度指示があり、窓から飛び降りて主人公は逃げていく。そして都度天の声のように指示が次から次に入る。同じように子持ちの普通の女性に何者からか「息子を預かった。」と電話が入る。二人は指令に従って、同じ車に同乗することになる。天の声に従って動き回るが。。。。

空軍がテロ組織の要人らしき集団を高性能武器で撃つのが、最初の場面である。何がなんだかしばらくの間は良くわからない。はっと気が付くと、次から次へとアクションシーンが続く。カーチェイスのシーンもけっこう派手である。スピード感はありすぎるくらいあり、情報機器を利用した情報傍受が次から次になされるので、一息つく暇すらない。

でも動きすぎの気がする。これぞ現代アクション映画の見本のようなものであるが、ちょっと疲れる。
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グラントリノ  クリントイーストウッド

2009-05-29 21:29:01 | クリントイーストウッド
「グラントリノ」を劇場で見た。イーストウッド最後の出演作。往年のイーストウッドを思わせる殴るシーンもあり、胸をときめかせる。エンディングでは周りの女性たちからすすり声が聞こえていた。基本的には男性映画であり、正直それほど泣ける映画とも思えない。大スターイーストウッドの過去50年の集大成といった気がする。最後と思うと熱狂ファンの一人としては悲しい。

フォードの修理工であったクリントイーストウッドが妻に先立たれた葬式の場面からスタートする。朝鮮戦争の退役軍人で気難しいイーストウッドは自宅での「葬儀のお清め」から、息子たちやその娘たちの振る舞いが気に入らない。一人の方が気兼ねなくてタイプ。頑固な性格を映画は描写していく。
そんな時、隣にアジア人の家族が引っ越してくる。「モン族」という東南アジアの民族である。親族との連帯感が強く、常に騒いでいる隣をイーストウッドは気に入らない。そのアジア人の息子が同じ民族の不良仲間にそそのかされて、イーストウッドの愛車「グラントリノ」を盗もうとして、未遂に終わるが。。。。。

「弱いものを助ける」とか「やられたらやり返す」というようなイーストウッドの伝統的なストーリー展開である。詳細の筋はいえないが、最後の復讐場面でのイーストウッドの顔は、「許されざる者」でモーガンフリーマンの死体がさらされているのを見て保安官ジーンハックマンに対して向かっていこうとする時のにおいを感じた。結果は意外な展開になるが。。。。

この映画でのイーストウッドのプロフィルやストーリー展開は過去のいろんな映画とだぶる。そういった意味で彼の俳優としての集大成なのである。
しかし、年取ったなあイーストウッド!先日「続夕陽のガンマン」をDVDで見たとき、その声の響きは「ミリオンダラーベイビー」のコーチ役の声と大きく変わらないと思った。「グラントリノ」の声はおじいさんの声になっていた。78歳なんだもの仕方ないけどね。
インテリの役ではない。兵役の義務を果たし、フォードの組立工をやったという典型的なアメリカブルーカラーの役柄である。朝鮮戦争で出征していたイーストウッドだからこそ演じられた部分も多い気がする。イーストウッド以外でも演じられるが、彼で本当に良かった。 この役を他の人が演じていたら、こんなに人気が出たであろうか?疑問である。「ダーティーハリー」や「夕陽のガンマン」の彼を知っているからこそ、別れを惜しみにアメリカ人たちは映画館に向かっていったのであろう。
アメリカの大部分はブルーカラーであり、自分の姿とラップさせる中高年が多かったに違いない。私も小さいときに「ダーティハリー」を劇場で父と見た。本当にかっこいいと思った。その同じ感動を持っているアメリカ人はたくさんいるはずだ。

映画自体では、脇役のちりばめ方が上手だったと思う。「モン族」の隣の家族全員(英語が話せない祖母、母、娘、息子)、教会の神父、「モン族」の不良グループ黒人の不良グループ、イーストウッドの息子たちと孫たち、「モン族」の親族たちなどなど。。。。それぞれに活躍していた。
決してイーストウッドだけの映画ではない。大スターがイーストウッドだけだったので、脚本的にも配慮する必要がなかったかもしれない。公平に役割分担を与えていた。脚本のうまさを感じる。
作家の小林信彦はイーストウッドが死んだら、映画は見なくなるかもしれないといったそうな。その気持ちはわかる気がする。
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娘の中間テスト2

2009-05-29 06:12:00 | 家族
昨日中学2年の娘の中間テストの成績表が返ってきた。
中間テストなので国数英社理である。
平均95点以上の点数なので順番上がると思ったら学年4番になっていた。
妻は「たいへんなことになった。」と言っていた。

中学1年の中間テストが学年160人中50番くらいだったので、ずいぶんとよくなった。
やはり塾行かないのは正解!家庭学習が一番だと思う。
それから無駄なノート作成とかの作業で時間をつぶさないことに尽きる。
問題集をひたすら解きまくる作戦が一番のようである。

やる気になったのか、昨日も何も言わなくても勉強を始めている。
思えば自分が娘と同じくらいのときは、科目によっての好き嫌いが激しかった。
ここまでムラなくやれなかった。
でもコーチのような存在って大事だと思う。最後ついて問題集を一緒にやった。
それがよかったのかな?自画自賛したくなる。気恥ずかしいが、たまにはいいかも

こういうことしていると余計な飲み会は全部パスになるし、いい傾向だ。

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バグダッドカフェ  女の友情

2009-05-28 19:37:14 | 映画(洋画 89年以前)

題名にバグダッドとあり、中東映画と思っていた。勘違いでした。
舞台はラスベガス郊外の「バグダッドカフェ」というカフェ兼用のモーテル。女主人が切り盛りする店にドイツ人の太った女性が宿泊する。彼女がカフェの仕事に首を突っ込みカフェが次第に変わっていく話。 意外なことに女の友情を描いた映画であった。誰もが10回以上聞いたことある主題歌「コーリングユー」が心に響く。

怒りっぽい女主人が切り盛りする郊外のカフェはさびれていて、カフェといいながらコーヒーメイカーすら壊れている。女主人は大喧嘩して旦那を追い出したばかりである。そこに米国旅行中に夫婦けんかして取り残されたドイツ人の中年女性が泊めてくれと来る。
突然の来客に不審な人物かと女主人は疑い保安官を呼ぶが何も不審なところはない。きれい好きのドイツ人は部屋をきれいにすると同時に、カフェの中もいらないものを捨てて整えていく。女主人は怒るが、次第にカフェが変わっていく。。。。
けだるい始まりで、登場人物に美男美女はいない映画。最初は大丈夫かな?と思う。ところが、中盤からピッチを上げていく。

奇妙な登場人物が多い。主役二人は超個性的だし、バッハばかり弾いている息子、泣きじゃくる息子の子供の赤ちゃん、男狂いの遊び人の娘、売れない画家、敷地内でテントを張って寝泊りするブーメランの名手の若者、原住民のコックなどなど。。それらが少しずつ変わっていく。
伊丹十三の「タンポポ」「スーパーの女」のような匂いも軽く残しているが、ドイツ人女性が別にかっこいいわけではない。
牧歌的な要素が強く、気持ちが徐々に穏やかになってくる。後味が良い映画だ。

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8人の女たち ドヌーヴ

2009-05-27 20:46:24 | 映画(フランス映画 )
フランスの女性スターたちを集めてのミステリー。色彩感覚に優れる作品で、ミュージカル的な楽しさもある。雪の中のお屋敷での殺人劇

大雪の降る中、お屋敷のご主人がナイフで殺されているのが発見される。人の移動は困難な場所のため、お屋敷の中にいた7人と殺された主人の妹の誰かが殺したようだ。犯人探しで8人の女性によるお互いのこれまでの悪事の暴きあいが始まる。

殺された主人の妻であるカトリーヌドヌーヴが中心の展開。妻の母親、ドヌーヴの妹、二人の娘、エマニュエルべアール演じるメイド、黒人の召使が室内にいて、主人の妹ファニーアルダンもここにきた形跡がある。途中までいったいどういう結末になるであろうとやきもきした。一瞬アガサクリスティ「オリエント急行殺人事件」ばりに全員犯人と思ったくらいだ。

ほとんどがセットで撮られる。男性の出演者は主人以外はいない。女性だけで映画を構成するのは意外に難しい。女性中心の日本映画というと、成瀬巳喜男監督「流れる」がある。それでも宮口精二や加東大介とか男性は出てくる。そうでないと映画が成り立たないからだ。
そういった意味では女性映画として成功した方かもしれない。皮肉なことに監督のフランソワーズオゾンはゲイらしい。不思議なことだ。色彩感覚の美しさは同じゲイの監督ペトロアルモドバルを思わせる。
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東京流れ者  渡哲也

2009-05-26 19:55:52 | 映画(日本 昭和35年~49年)
中年以上が多いカラオケスナックにいくと、テーマソングを時たま聞くことがある。渡哲也の初期の作品。B級映画で荒ぽさが目立つがたまにはいいだろう。鈴木清順監督といえども日活アクション映画はどれもこれもあまり変わらない。

渡哲也はヤクザの組から足を洗おうとしている若者。そんな彼の元親分も組の解散を企てている。ところが、ヤクザの闘争に巻き込まれてしまう話。
松原智恵子は歌手の役だが、声は吹き替え、しかもまったく似合わない声カラー映画なので、色づかい鮮やかだけれども、美術は非常に稚拙セリフもたどたどしかったりする。川路民夫は普通。二谷英明はニヒルでかっこいい。見所は佐世保のクラブでの大喧嘩くらいかな?

40年代前半の様子がずいぶんと映されている。これがなかなか趣がある。佐世保の米軍相手の飲み屋街はロケ。米軍キャンプ近くの英語看板のバーが映されている。40年代の横須賀を思い出す。そのころの横須賀も今より英語系の匂いが強かった。
近代化途中の日本。まだまだ雑な匂いがする。
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スラムドック・ミリオネア  これは凄すぎる!

2009-05-25 05:44:58 | 映画(自分好みベスト100)

昨日劇場で見た。こんなにすごい映画だと思わなかった!
インドスラム街出身の青年がテレビのインド版「クイズミリオネア」に挑戦し、正解を連発する。同時にその偉業に不正を疑われ警察に拷問的取調べを受けるという話。ジャンプカット、クロスカッティングといった映画の手法を駆使して、インドスラム街の実態とそこに育つ若者たちの悲劇的人生を描く腰の据わった傑作である。

映画は主人公が「クイズミリオネア」に登場する場面と警察で取調べを受けている場面が平行して展開する。主人公の少年はムンバイのスラム街で育つ。宗教闘争のからみで母親をなくし、兄と二人取り残されてしまう。そこにその後腐れ縁になる少女が紛れ込んでくる。「夢の島」のようなゴミの街の片隅でいるところを大人に助けられる。連れて行かれてお腹いっぱい食べさせてもらって3人は安堵する。しかし、大人たちは3人に街で物乞いをやらせるように強要する。。。。

兄と弟のつらい人生はずっと続く。二人は精一杯生きていく。学校には行かない。しかし、「人生の大学」を実体験で学んでいく。知恵をつけていく。その中でも、主人公の弟は純粋な気持ちを持って素直に生きていく。
「シティオブゴッド」というブラジル・リオのスラム街で育った子供たちを描いたすごい傑作があった。テンポが速く「マフィアになるしか生きる道がない」子供たちを描いていた。その映画を連想させた。この映画では近年のインドの大きな変貌を描き、黒い世界だけでなく、純愛を織り交ぜるところが違うところ。
みのもんたを連想させるあくの強いクイズ番組の司会者とのやり取りも映画の大きな見どころで、マイナーな世界だけでなく、メジャーな世界も映し出す。

戦後間もない日本を思わせる彼らが育ったスラム街の雑踏を映しながら、インドの変貌をカメラが見事とらえる。スタッフはあのドツボのようなところで良くがんばったと思う。しかも音響、編集、美術どれにしても最高である。オスカーをあれだけとるのに値する素晴らしいスタッフたちだと思う。

最後はインド映画特有のダンスで締めくる。途中目を背けたくなるシーンが多々あった。それでも一緒にいった娘は後味がいい映画だといった。
私にとっては今年に見た109本のベスト1である。

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エリン・ブロコビッチ  ジュリアロバーツ

2009-05-24 20:53:43 | 映画(洋画:2000年以降主演女性)

ジュリアロバーツがオスカー主演女優賞を受賞した作品。環境汚染訴訟で大手企業から3億ドルの多額の賠償金を原告に勝ち取らせた法律事務所の一所員の行動力あふれる姿を描く。

ジュリアロバーツ
は夫のいない3人の子供の母親。自動車追突事故で大怪我をしたにもかかわらず、まともな賠償金が受け取れなかった。そのときのうだつのあがらない弁護士の事務所に入り込む。入所後、ある地域の汚染についてのファイルに目を留める。被害を受けた人たちの話を聞いて、PG&E社の仕業と判断してウラをとりに行く。PG&E社側は代理人を立てて和解に持ち込もうとする。弁護士はそれで決着しようとするが、職員のジュリアロバーツは徹底抗戦を主張する。。。。。

実話に基づく話である。法廷モノとも違う。弁護士以外の法律事務所の人間の活躍を描いた作品って他にはないのではなかろうか?気が強くかんしゃくもちの主人公の性格をジョリアロバーツがたくみに演じる。600人以上の原告たちの事情をすべて知りつくし、ドブ板営業的な動きを見せるところはブロコビッチ本人に敬服する。

スティーヴンソダーバーグ監督の映画はあまり相性が良くない。この映画もジュリアロバーツの活躍以外はそんなに凄みは感じない。まあまあってとこかな?

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硫黄島からの手紙  クリントイーストウッド

2009-05-22 05:51:27 | クリントイーストウッド

イーストウッド硫黄島二部作の日本側視点の作品。家族との別れを惜しみ本当は死にたくなかった人たちのプライベートな気持ちに入り込み、戦争の悲惨さを訴える。戦闘云々よりも戦前日本の撃沈主義への疑問を感じた。
一部渡辺謙の回想場面を除き、すべて日本語である。日本映画といっても良い。しかし、この映画の中に流れる独特の無常さは「ミスティックリバー」や「ミリオンダラーベイビー」をつくったクリントイーストウッドならではである。


結果は誰でも知っていることなので、ストーリーはあえて語らない。ただ単に負けそうだから自決するのが美徳としていた軍の考えではなく、最後まで防御を固め、相手に向かって戦う栗林中将の姿勢はすばらしいと思う。アメリカの駐在経験があるので、前近代的であった軍中枢部とは違う考えも持ち合わせていたようだ。渡辺謙は「ラストサムライ」に劣らない好演である。

捕虜に対する扱いがこの映画で一つの焦点となっている。
東条英樹首相は「相手に捕らえられるくらいなら自決してしまえ!」という話をしていたようだ。当然捕虜に関するジュネーブ条約は、軍上層部の知るところであったであろうが、下士官には伝わっていなかった節がある。
この映画で興味深い場面が3つある。
1.バロン西こと西中佐が、捕らえられた米軍兵を抹殺しないで手当てをする場面
2.相手側に投降した日本兵の同士の会話で、ここでは食事が出るそうだと話し合う場面
3.2の日本兵を監視していた米軍兵が、夜通しの監視が面倒くさくなって日本兵を殺してしまう。その殺された姿を見て、日本軍下士官が「捕まえるとお前らもこうなるぞ」と言う場面

1.西中佐は乗馬の1932年ロスアンゼルスオリンピック金メダリストである。学習院初等科経由(鳩山、麻生の先輩)で東京府立一中経由(今の日比谷高:昭和40年代まで全国一の高校)の秀才であり、男爵である。国際感覚があり、ジュネーブ条約に基づいた扱いをしたのであろう。
2.日本では捕虜を虫けら扱いしたといわれている。米軍の捕虜たちにはろくなものは食べさせなかったのであろう。しかも、戦況悪化とともに何も食べていない日本軍兵にとっては、一瞬オアシスに見えたかもしれない。
3.とはいうものの全ての米兵がまともであるわけがない。面倒くさくなって捕虜を殺してしまうシーンが出る。それみたことかと日本の下士官たちが叫ぶ。玉砕するしかないよと。。。。 非常に微妙である。

デイヴィッドリーン監督「戦場にかける橋」の捕虜収容所の話を思い出した。アレックギネスと早川雪州との微妙な関係のなか、捕虜たちが日本軍に協力して、一緒に橋を作る話である。これは2次大戦開始間もないからこういうこともあったのかもしれない。

いずれにせよ、玉砕していった人たちのことを思うと悲しくなる。
幸せな時期に生まれて本当に良かった。

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花様年華  トニーレオン&マギーチャン

2009-05-21 19:15:21 | 映画(自分好みベスト100)
香港の巨匠王家衛監督のスタイリッシュな作品。香港の2大スタートニーレオンとマギーチャンの二人の恋。60年代の香港をノスタルジックに、色鮮やかに描く香港映画の最高峰。ともかくマギーチャンのチャイナドレス姿が美しい。

この映画は渋谷の文化村でロードショーになり、見たのが最初。はまってしまった。劇場で3回、DVDで3回見ている。何度見てもあきない。
ストーリーは単純である。1962年香港、アパートに引っ越してきた通信社に勤めるトニーレオン夫婦の隣に、ほぼ同時にマギーチャン夫婦が引っ越してくる。マギーの旦那は貿易関係か?出張がちである。旦那が出張の時に買ってきたハンドバックと同じバックをトニーの妻が持っていることに気づく。お互いの疑問の中、二人は初めて食事を共にする。。。。。
ストーリーはどうってことない。サプライズもない。ひたすら二人の姿を追っていく。バイオリンの主題音楽がノスタルジックに響き、60年代を想定した背景にマッチした二人のファッションとナットキングコールのヴォーカルが相性いい。

王家衛には「恋する惑星」「ブエノスアイレス」と名作といわれる作品が多々ある。しかし、どの映画もこれには及ばない。オールスターを集めた「2046」は美術が稚拙すぎて物足りないし、アメリカ進出1作「マイブルーベリーナイト」はつまらなかった。 マギーチャンはチャイナドレスを10数回取り替える。スタイルのいい彼女には地味な色でも、派手な色のどちらでもチャイナドレスがよく似合う。それがこの映画に強烈な色彩を放つ。 彼女といえば「ラブソング」というレオンライ共演の名作がある。中国本土からの流れ者なので地味な設定である。 今回は、貧富の差が今より激しい時代のエリート夫妻同士の不倫を描いていて服装が全然違う。舞台は香港島、勤めているところはセントラル、住んでいるところはコーズウェイベイ付近と想定される。60年代日活映画でいえば、石原裕次郎と浅丘ルリ子の「二人の世界」を連想させる。同じ時代背景だが、香港が国際都市であるだけ、何かスタイリッシュなものを感じさせる。自分でバーを開くことがあったら、この映画BGM風にしてずっと映してみたい。
花様年華
ノスタルジック香港での恋
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赤ちゃん泥棒  ニコラスケイジ

2009-05-20 18:42:14 | 映画(自分好みベスト100)

コーエン兄弟らしさが一番にじみ出るコメディ。最初から最後まで笑える。ニコラスケイジ、ホリーハンター夫婦もいいが、コーエン兄弟の常連脇役が抜群の活躍を見せる。

 ニコラスケイジはこそ泥の常習犯。出所するたびごとにコンビ二泥棒を繰り返す。刑務所に入所するときの写真係が、妻になるホリーハンターである。入所3回目の撮影のとき、彼女が失恋して悲しんでいるところ見て、出所したら一緒になろうと約束、無事結婚する。ところが、毎日毎日のラブラブモードにもかかわらず、子供ができない。調べてみると彼女に問題ありで子供が生めないことがわかる。前科者のニコラスには養子縁組も成立しない。
二人が落胆していたとき、アリゾナの家具屋夫婦に5つ子の赤ちゃんができていることが報道される。二人はそのうちの一人でもほしいと家具屋夫婦の家に行って男の子一人を盗んでしまうが。。。。
後のドタバタ劇は賞金稼ぎの荒くれ者や金に目がくらむニコラスの刑務所からの脱獄囚などを交えてとんまで間抜けなコメディが繰り広げられる。ひたすらおかしい!

ニコラスケイジはまだ髪の毛がふさふさ。このころの彼は、まともな人間というより、警察沙汰すれすれでいつも生きているような役が多かった。デイヴィッドリンチ監督「ワイルドアットハート」やシェール共演の「月の輝く夜に」もキャラクターがみんな似ている。こういう役が本当にうまい!

コーエン兄弟はスピードアップして映画をスタートさせる。序盤の夫婦紹介、刑務所内の描写、出所後の夫婦生活をあっという間にくぐり抜ける。この簡潔さが素晴らしい。基本的に長時間の映画って彼らの場合あまりない。ほとんどが90分強で映画を完成させる。セリフの羅列でだらだらさせずに、映像のおかしさで簡潔に映画を完結させることに意義がある。
 娘の中間テストが昨日終わった。前からテストが終わったら「赤ちゃん泥棒」を見ようと言ってあった。娘はさっそく見た。 もちろん大笑いだった。

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娘の中間テスト

2009-05-19 05:48:52 | 家族
ここしばらく中学2年の娘の中間テスト勉強に付き合っていた。
塾行くよりは、自宅で勉強した方が定期テストであれば、成績が上がると思うので、今でも塾に入っていない。その方が親子のふれあいができるので、我々は良いと思っている。
おかげで飲みにも行かずまじめな生活だ。

社会は地理と江戸の歴史、理科は電気の初歩と地学という内容。数学の範囲は一年の復習と2年の計算式のみで簡単。英語もまだ初歩。いずれにせよ、社会を除いては学校の進むのが遅い。行事も多く、授業数が少ないのであろう。
テスト勉強は、ひたすら問題数を解くしかないといったところだ。ただ、英語の文法の基本が今ひとつ理解できていないのかと心配。

娘は週休二日制の第一期というのを昨日初めて知った。休みが多く、逆に自宅での勉強時間はたくさん取れる気がする。学校からたくさん課題が与えられてまじめに提出している。高校はともかく、中学時代は準拠問題集もこんなにはなかった。同じころ、自分がここまで勉強したかどうか?

そうしているうちに今日は試験。がんばってほしい。
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モンタナの風に抱かれて  レッドフォード

2009-05-18 19:26:03 | 映画(洋画 99年以前)
ロバートレッドフォード監督の傑作。モンタナの大自然の中、片足を失い心を痛めた少女スカーレットヨハンソン母子と愛馬との暖かい交流を描く。スカーレットのその後の活躍を予測させる演技と自然の中に溶け合った画像がすばらしい。

13歳の少女スカーレットヨハンソンは、友人と馬遊びをしている際に、トレーラーとの接触事故を起こして、片足を切断する羽目になる。彼女の父親は弁護士、母親クリスティン・スコット・トーマスは売れ筋雑誌の編集長という家庭環境。事故の後精神的ショックが大きく、娘は学校に行きたがらない。また、事故で大きな損傷を受けた愛馬も、手のつけられない暴れ馬になっている。見かねた母親が調べて、モンタナ州に「horse whisperer」なる馬の心を癒すロバートレッドフォードの存在を知り、馬と娘と一緒にモンタナの牧場に向かうが。。。。。

レッドフォードは徐々にヨハンソンと馬の心を癒していく。牧場の家族、クリスクーパーとダイアンウィーストも温かく迎えてくれる。次第にレッドフォード映画特有の叙情詩的感覚に浸ってくる。彼の監督作品「リバーランズスルーイット」でもモンタナが舞台になった。あの映画の風景の美しさはぴか一であった。こちらは牧場が中心。それでも奇妙な形の雲がクローズアップされたり、上から鳥瞰的に焦点をとらえたりというカメラワークにはうならせられる。

スカーレットヨハンソンのセリフが、たぶん一番多いのではなかろうか?よくまあこれだけのメンバーの中で、物怖じせずやれるものだと思う。まだ少女のあどけなさが強い顔には今の面影がそのままある。
クリスティン・スコット・トーマスは、いかにも英国人らしい気品の高さがある。オスカー作品「イングリッシュペイシェント」で主役を張った後で、自信に満ち溢れているという演技である。「イングリッシュペイシェント」では主演女優賞を獲り損なった。個人的には「ファーゴ」のマクドーマンドよりは良いと思う。
クリスクーパーダイアンウィーストが脇役に廻った映画は間違いがない。二人には都会派の映画よりも、牧場を舞台にしたこういう映画のほうが、あっているかもしれない。

監督レッドフォードは馬を良く手なずけたものだと思う。何よりもそれに感心。荒馬を演じたり、おとなしくなったり馬自身にオスカー動物賞をあげたいくらいである。
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近松物語  溝口健二

2009-05-17 20:53:45 | 映画(自分好みベスト100)
溝口健二監督が近松門左衛門の戯曲を題材に作った傑作。天下の二枚目長谷川一夫がダメ男を演じる。香川京子は京都の老舗の奥様。その二人が駆け落ちをする。みっちり演出したのを十分感じる情感あふれる作品

京都の老舗にお嫁にいった香川には、親類筋からの金のせびりが絶えない。困った香川は番頭の長谷川一夫に相談する。長谷川は主人の進藤英太郎から発注依頼の印鑑を預かる際に、白紙の印鑑を使って余分に発注書を作り、金の工面をしようとする。それがばれて長谷川はお仕置きを受ける。納屋で謹慎させられているが、飛び出し長谷川は香川がいる部屋に向かう。。。。

元々、主人の奥様と番頭の関係で香川と長谷川に色っぽい関係があったわけではない。長谷川に思いを寄せる下働きの南田洋子。南田は、長谷川と結婚するといって、夜な夜な南田のもとに言い寄る主人進藤英太郎の関係から逃れようとする。謹慎中の納屋から飛び出して長谷川が向かった南田の部屋にいたのは香川であった。その4人の関係がいつの間にか香川と長谷川の関係に変わってしまう。偶然と誤解の世界である。

大ベテラン長谷川一夫は、ダメ男の役を演じるに当たって、溝口監督からは宇野重吉のような気持ちで演じてくれといわれたそうだ。それでも、長谷川一夫はやっぱり天下の二枚目から抜けきれない。香川京子との絡みはいかにも情感あふれる熱演だと思う。

香川京子は23歳、まさに熱演である。彼女は成瀬巳喜男監督「稲妻」に出ていた。これはこの映画の2年前である。このときの彼女の演技は大根役者の域を超えない。しかし、溝口監督のかなり厳しい演出指導で、ものすごいレベルの芝居をしている。老舗の奥様としての気品あふれる話し方。突如長谷川との情熱的な恋に狂う女心の表し方。彼女にとってはベストの演技であろう。

溝口映画の常連、進藤英太郎、浪花千栄子はいつもどおりの活躍。しかし、この作品では主役の二人の演技がすさまじいので他の作品ほどの存在感はない。宮川一夫のカメラにせよ、他の作品ほどはその活躍に凄みは感じない。

何よりこの水準の演技にまで主役の二人を仕込んだ溝口監督の手腕に脱帽である。
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