後藤和弘のブログ

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総合文芸誌「岩漿」第二期創刊号(通巻第16号)の読後感

2008年02月26日 | 本と雑誌

伊東市にある文学会「岩漿」の木内光夫代表より第二期創刊号が送られてきた。

平成9年7月16日の第一期創刊号から11年、通巻第16号である。140ページの雑誌ながら俳句、詩、小説、エッセイ、追悼記などを網羅する総合文芸誌である。

読みはじめて止められなくなり最後の入会規定、投稿規程まで読んでしまった。なんと言っても全ての文章が明快で、小説はストーリーが面白い。詩や俳句もレベルが高くそれぞれ独特な香がある。

岩越孝治氏の巻頭小説「あなたの心の片隅で」は叙情的な力作である。話がドロドロした男女間の悲劇を描いているが筆致がロマンチックで救われている。

橘史輝氏の小説、「イルカ騒擾」は伊豆の富戸と川奈村でイルカを捕って食用にしていた明治時代からの縄張り争いの実態を描いたもので日本の貧しい漁村の生活が描かれていて興味深い。

深水一翠氏の小説「幻の金」は蝉取りをしている少年達と話しながら50年前の昆虫採集のことを回想した小説である。少年達との会話がいきいきとして軽快で、つい読み進んでしてしまう。

最後の力作小説、馬場駿氏(木内光夫の筆名)の「死なない蟻の群れ」は老夫婦の恋愛や離婚を取り上げた作品である。高齢者の恋愛感情や夫婦間の確執をいろいろな視点から描いた重厚な作品であり興味が尽きない。

エッセイでは森周映雄氏の「山桜のテーブル」は分厚い桜の一枚板でテーブルを完成するまでの悪戦苦闘の描写である。洒脱な文章がテンポ良く展開し、作者のユーモア感覚についニャリとしてしまう。

その他、俳句や詩も多く楽しい。伊東を中心にしたローカルな文化の香りがして、地方の文学会の特徴が分かり面白い。とくに詩人、小山修一氏による追悼記、「阿部英雄さんのこと」は故人の謙虚な性格と詩作を讃えている。この追悼記によると阿部英雄氏は実業家としても成功した人で、東京に本社を置く富士経済グループの七つの会社の社長であった。経営者には文学を愛する人格者も居るということが分かり興味深い。

この文学会は結成後、11年、伊豆半島東海岸の地方文化を豊かにして来た。このような小さな文学会の運営や活動内容に興味があるので今後2、3回調査して関連記事を掲載したいと思う。詳しくは、http://www.gan-sho.book-store.jp/index.html をご参照下さい(終わり)