
【原文】
四十以後の人、身に灸を加へて、三里を焼かざれば、上気の事あり。必ず灸すべし。
【現代語訳】
四十過ぎて性懲りもなく身体に灸を据えた後、足の裏を焼かないと、逆上せることがある。必ず足の裏の決まった場所を焼くことだ。
◆鎌倉末期の随筆。吉田兼好著。上下2巻,244段からなる。1317年(文保1)から1331年(元弘1)の間に成立したか。その間,幾つかのまとまった段が少しずつ執筆され,それが編集されて現在見るような形態になったと考えられる。それらを通じて一貫した筋はなく,連歌的ともいうべき配列方法がとられている。形式は《枕草子》を模倣しているが,内容は,作者の見聞談,感想,実用知識,有職の心得など多彩であり,仏教の厭世思想を根底にもち,人生論的色彩を濃くしている。