学生時代の弓道部の先輩が、会社を退職後俳句の集まりに参加されて、作句を楽しまれています。
このほど先輩は句集を出されました。阿智胡地亭もその句集「山懐」を頂きました。
お礼のメールを入れました。
⇒「新谷さん
先日Oさんから頂いたメールで新谷さんが句集を出され出版のお祝いも
あったことを知りましたが、昨日句集を頂戴いたしました。
ありがとうございます。
句をいくつか味わってから、退職後に俳句を始められたと知り驚きました。
ご自分の持つ資質にあった世界を見つけられ、その世界に研鑽され
高い境地で作句を楽しんでおられるんですね。
向けられる目は自然の移り変わりだけではなく、人の行いや社会を見る目の句も多く
まさに現役時代からの新谷さんのお姿や心映えをも写しているのではないかと。
日本とはと問いなほされる菜の花忌
フクシマや見る人のなき花辛夷
また気持ちの広さ余裕というかそこはかはとないユーモアが
赤の色褒められ今もこのセーター
挑む目の裸婦にたぢろぐ美術展
そしていま過ごす日々のバックボーン
来し方にひそかな自負や吾亦紅
などもいいなあと思いました。
吟行の場所が出石や伊賀上野、甲斐信濃、仲見世など
自分も今も懐かしい覚えがある場所が多いのも嬉しいです。
柴田多鶴子さんという俳句の新谷さんの先生にも興味がわき
ネットで検索したらインタビューのYoutubeがありました。
よき人、良き師に巡り合うのは人生の醍醐味の一つであり
素晴らしい指導者に出会ったのも新谷さんの持つ徳の一つなんでしょうね。
これから全句をじっくり読ませていただきます。
ありがとうございました。あらためて御礼申し上げます。
阿智胡地亭 辛好 拝
余談ですが祖父が生涯洋服仕立て職人をしながら詠んだ句集をネットに載せています。
同じく弓道部の先輩Tさんから俳人「坪内稔典」さんが「山懐」の句を紹介する毎日新聞の記事を送って頂きました。
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俳句「アトラス」サイトから引用;
『山懐』(さんかい)
著者:新谷 壯夫(しんたに・ますお) 「鳰の子」同人会長
寝転んでアイガー仰ぐお花畑
バザールのをんな立膝蕃椒売る
駆け抜ける風のかたまり競べ馬
あらゆる場面から詩を掬い上げようとする新谷さん。
海外赴任先で得た句、趣味の登山の句、行事の句など『山懐』には新谷さんの多様な句の世界が広がっている。
スケール大きく豊かなみのりの一冊である。
―柴田多鶴子「鳰の子」主宰-
【収録作品より】
アンデスの山駆け下る雪解川
熊棚を残して栃の芽吹き初む
矢を渡す師範の所作の淑気かな
西行の日と決めてけふ花を詠む
濡れし身を乾すにほどよき岩魚の火
村歌舞伎厚化粧して娘役
苔の色よみがへりたる雨水かな
天牛は虫の貴公子髭にも斑
月餅を購ひ戻る雨月かな
環濠の水の昏きに菱の花
龍の玉言の葉探すかに探す
するどい、センスと言葉の表現は感動しました。
美術館の句は可笑しいです。ボーと生きている自分に反省です。毎日懸命には生きるだけの自分の人生もあるかと。それにしても日本語の俳句文化は素晴らしい。感性が無ければ、心に響く短い言葉でこれだけの句は出て来ません。発刊お目出度うございます。