今宵、バッハをはなれてきくのは、ピエール・ガブリエル・ビュッファルダンのフルート協奏曲。このきわめて技巧的な協奏曲は、ル・プティ・トリアノンというジュネーブを拠点とするアンサンブルが2020年に録音したアルバム、「Pierre-Gabriel Buffardin: Sonatas & Concerto」(RICERCAR RIC 428)に収録されたものです。
ビュッファルダンは1693年、トゥーロン生まれのフルート奏者で、1768年にパリで亡くなりました。1715年から1749年までドレスデンの宮廷楽団に属しており、ヨーハン・ヨーアヒム・クヴァンツの師として有名で、バッハの兄であるヨーハン・ヤーコプの師でもあったとされます(ヤーコプからは作曲を学んだ可能性をオリヴィエ・リールが解説書で指摘)。バッハとも知己があり、1724年にはライプツィヒのバッハを訪問しています。
フルート奏者として名高いものかかわらず、伝承された曲はわずかで、確実なのはこれからきくホ短調のフルート協奏曲(クヴァンツが筆写)とイ長調のトリオ・ソナタのみ。ともにル・プティ・トリアノンのアルバムに収録されています。ル・プティ・トリアノンは、フルートのリール、ヴァイオリンのアマンディーヌ・ソラノ、チェロのシリル・プーレによって結成されたアンサンブルです。