いまからきくBWV1014は、現代のヴィルトゥオーゾのひとり、ヴィクトリア・ムローヴァが、HIP(Historically Informed Performance)によるアプローチで演奏したバッハ。コーガン門下の名ヴァイオリン奏者ムローヴァが、バロック弓とピリオド奏法によってどのような演奏をするのか。もともと、すぐれたモダンの演奏家による、こうした演奏を待望していただけに、とても興味深いCDです。
使用楽器は、いつもの愛器「ジュール・ファルク」(1723年製ストラディヴァリウス)ではなく、この録音では1750年製のグァダニーニ。このグァダニーニにガット弦を張り、バロック弓での演奏は、なかなかスケール感があります。ただ、ムローヴァの存在感にくらべ、チェンバロのダントーネが少し弱いのが気になります。ダントーネが位負けしたわけではないでしょうが、ちょっとざんねん。
とはいえ、ジルバーマン・モデルの楽器(オリヴァー・ファディーニによる2007年製)を弾くダントーネも、それほど悪いわけではなく、第4楽章などは熱気に満ちた演奏をきかせてくれます。しかし、そうはいっても、チェンバロがコープマンやシュタイアーだったらと思ってしまいます。ムローヴァは、無伴奏の録音もひかえているようですし、むしろそちらで真価をはかるべきかもしれません。
CD : ONYX4020(Onyx Classics)