秋名の 超・早咲きヒカン桜 例年の観察によると あとひと月ほどで咲き始める。
一枚だけ残った葉。つぼみの中はどおなっているのか。
「手折って」観察するわけにはいかない。
公道の並木の桜
↑ 本茶峠のヒカン桜
↑ 本茶峠のヒカン桜 去年2月
藤沢周平 表題 「時雨みち」に収録の短編『山桜』を読む
桜の枝を手折るシーン 映画『山桜』公式サイト
江戸後期、この作品も北の小国、庄内地方の架空の?海坂(うなさか)藩が舞台。
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「野江」の二度目の結婚も、しあわせとは言えなかった。
つらい結婚生活。花ぐもりのあたたかいある日、叔母の墓参りの帰り道
野江(田中麗奈)は、ふと左手に見える野道を歩いて帰ろうかと思った。
その道で、丘の斜面から道に覆(おお)いかぶさるように咲いた「薄い紅いろをふくんだ花」を見る。
ーーー おや、やっぱり桜だった。
「主のある花ではないから、ほんのひと枝持ち帰るぐらいなら、許してもらえるのではないか」、野江は、そう考えた。
桜の木に近寄る野江。
カメラはローアングルで野江の足元をとらえる。
映画では、時代劇初挑戦となる田中麗奈さん(あのサントリーのなっちゃん)の歩き方の演技は、見事だった(どこで映像を見たのか捜せません)
下駄のまま爪先立って、指先にふれた枝があったが、わずかにつかめない。
よろめいて下駄の鼻緒が切れそうになったそのとき、野江の背後で、不意に男の声がした。
「手折(たお)って進ぜよう」
その声の主、長身の武士・弥一郎(東山紀之)こそは、
一年前の再婚の縁談で野江が気が進まずに話が流れてしまった相手だった。
縁談の話があったとき、野江は、会ったこともない弥一郎のことを、
剣ができるということだけで何となく粗暴な男と思い、気が進まないでいたのだった。
「今はしあわせでござろうな」
目の前の男は長身で幅広い肩をもっていたが、眼は男にしてはやさしすぎるほど、おだやかな光をたたえていた。
このお方が・・・・・・
この時はじめて野江は、弥一郎を見た。
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回り道をした野道で 桜を見た野江。
ものがたりは、ここから始まる。
世の中は、権力者に賄賂を使うわるい者が肥え太り、
善良で貧しものは、ますますやせ衰えていく。
大挙して代官所に強訴する農民の姿も描かれている。
武士・手塚弥一郎は、母と二人暮しでほかに係累(けいるい)のわずらいはない。
「男は、ひたむきに正義を貫いた」
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来年の桜の咲くまで、野江と弥一郎の幸せへの人生のまわり道は、
この出会いの後、なお紆余曲折をたどらなければならなかった。
来年、野江は再びあの桜の木の元へ立つ。
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この作品は映画化もされているが
また、たしかこの夏NHKbsで「私の藤沢周平」という番組で
小室等さんの好きな藤沢周平作品ということで「山桜」のこのシーンが朗読された。
小室等さんの、50歳ではそうではなかった死が、60歳を過ぎた今はリアルで常に
死は自分の直ぐ隣にあるという中で読む「藤沢周平」は、・・・という話が印象に残った。それと「野江」という名前もよい。
立春の桜 2008 02/04 大和村 フォレストポリス 水辺の広場