奄美 海風blog

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さざん花 サザンカ 藤沢周平

2008年11月27日 | 本と雑誌

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晴れの日は、むしろ貧しげな・・・?(下記参照)

サザンカ google

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サザンカ(山茶花、学名:Camellia sasanqua)は、ツバキ科の常緑広葉樹。

分布
日本では山口県、四国南部から九州中南部、南西諸島(屋久島から西表島)等に、日本国外では台湾、中国、インドネシアなどに分布する。

ツバキ科の植物は熱帯から亜熱帯に自生しており、ツバキ、サザンカ、チャは温帯に適応した珍しい種であり、日本は自生地としては北限である。

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↑ さざん花のとなりに咲いていたツワブキ(キク科)

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内容(「BOOK」データベースより)
にがい思い出だった。若かったとはいえ、よくあんな残酷な仕打ちが出来たものだ。出入りする機屋の婿養子に望まれて、新右衛門は一度は断ったものの、身篭っていたおひさを捨てた。あれから二十余年、彼女はいま、苦界に身を沈めているという…。

表題作「時雨みち」をはじめ、「滴る汗」「幼い声」「亭主の仲間」等、人生のやるせなさ、男女の心の陰翳を、端正な文体で綴った時代小説集。

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山形県うまれの藤沢周平。農村の描写のこまやかさには定評がある。奄美大島では、たんぼの風景はあまりないのですが、藤沢周平の小説で涙が出そうな田園風景の描写に出合うことがある(蝉しぐれ)。

季節の移り変わりや、時間の経過の描写などもテンポよく、ここちよい。

それに、剣の勝負のときの、一瞬の描写も刺激的だ。

このあいだ読んだ『時雨みち』に、

さざん花の描写をみつけた

表題作「時雨みち」の冒頭の部分。2ページ近くにわたる詳細な描写はめずらしいのではないか。

サザンカは、

童謡「たきび」(作詞:巽聖歌、作曲:渡辺茂)の歌詞や

1982年8月に発売された大川栄策のシングル『さざんかの宿』
にも登場するが、

歳をとるまでサザンカの花を知らずにいた。
冬の花のイメージで、なんとなく奄美にはない花だと思っていたのだろうか。(もともと植物には、あまり・・・)いまも、これはほんとにサザンカか?と思いながら書いている。

以下、きょうサザンカを見て、藤沢周平の以下の描写に納得したので・・(スキャナ「読み取り革命」
で。(長い引用・・)

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 機(はた)屋 新右衛門は、さざん花を見ている。こんなに大きな本だったかと思っていた。
池のそばにある松などにくらべると、幅はさほどではないが、木の頂きは、すぐそばの塀(へい)をはるかに抜いて、枝の先は灰色の空までのびている。その枝頭にも花が咲いていた。

 木の回りの湿った地面に、夥(おびただ)しい花びらが散っている。そして本は、まだ夥しいつぼみをつけていた。寒くなるのを待っていたように咲きはじめた花は、ひらききるやいなやすぐに散りはじめるものらしい。

 そういったことに、べつに今日はじめて気づいたわけではない。塀ぎわのさざん花は、
茶の間からまっすぐ見える場所にあって、部屋を出入りするたびに目についた。
   
 花は白である。晴れた日はさほど目立たない、むしろ貧しげな花だが、曇り空の下や、小雨の日には、花がある一画だけ、ほのかな明るみに包まれて、あ、さざん花が咲いているなと思わせるのである。
   
 だが、こうしてそばに立って、しみじみ花を眺めたなどという記憶はなかった。
ただ季節の目安に目にとめただけのようである。
いそがしくて、花どころではなかったのだと、新右衛門はあらためて考える。
   
 もっとも、曇っている午後の庭に、そこだけ沈んだ光を湛(たた)えている花木にひかれて庭に降りたものの、感じ入って長く眺めている花でもない気がした。新右衛門はやり手の商人で、日々の関心は、あらかた商いのうま味にむけられている。風流とは縁遠かった。酒は少々飲むが、女も買わず、小唄もならわず、商い仲間からは堅物とみられている。

   あだげない花だの。
 
 新右衛門はすぐに倦(あ)きて、そう思った。うつくしさからいえば、さざん花よりも、庭の隅にある黄菊の方がきれいだと思った。

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