===
和(にぎ)君の姿を見るとサルがまたぐらをおさえて逃げまわる」とか「和先生がたまほじくりしてからサルん性格が悪うなったごとあるわ」
これはフィールド系の研究者や職員の言葉であるP54
この方言(これは大分の方言だろうか)のやわらかさはどうだろうか。
前後の文脈を抜きにしても、著者(和先生)のひととなりばかりか、この本のすごさが凝縮されているようで、すぐれた科学書でありながら文学的にも感動して思わず声を出して笑ってしまいそうになった箇所である。サルもヒトも男も女も面白い。方言だとなおさら面白い。
著者は、高名なサルの研究者として世界的も知られている。
サルのいない奄美大島の生まれである。
私の高校の同級生には、和先生の弟さんとして知らない人はいない、と思う。
文章にはこれほどの高名でベテランでありながら、権威主義のかけらも感じられない。権威にこびず先入観にとらわれずあくまでも虚心な研究態度で積み重ねられた豊富な知識が伝わってくる。きどらない語り口から伝わってくるユーモアは感動的ですらある。
サル好きの民族といわれる日本人の間では、サルに対する誤解も多く、科学的に装われた言説から与えられた誤った先入観のイメージは中々消えにくい。本書はその先入観の大本に気付かせ、あなた自身について考えさせてくれるだろう。
サルにかんする本はこれまでいくつか読んだことがあるが、その中でもダントツに面白く考えさせてくれる。中学生や高校生にもおもしろく読めるとおもう。奄美図書館の2階に行くと、著者の他のサルの本やほかの著者の本とならべておいてある。
オスとメスと男と女―サルとヒトの生と性 (寺子屋新書)
価格:¥ 840(税込)
発売日:2004-10
先日の地元紙(2日付け南海日々「談論」)に著者の奄美の森林伐採に関する投稿記事を読んだ。
「人工林の「間伐」という管理方式を、「自然林」の「更新」に強引に結びつけようとしている論調」の問題点を、奄美の林業関係者や市民に対して、やわらかい口調述べられていた。押し付けがましくもなく、わかりやすいあの説得力に脱帽して、著者の本を読んでみたくなり図書館で探して読んだのですが、本書を読んでみて、あの、やわらかさと説得力の源泉がわかったような気がした。(記事にはサルの研究のことはふれられてもいないのだが)
著者は「北海道大学獣医学部を卒業してから、ずっと、獣医学の立場からとくに彼らの”皮膚の内側の現象”を知りたいということにこだわりつづけて、生殖生物学やサルとヒトに共通する環境汚染がらみの疾病というような従事してきた研究者の一人である。(本書あとがきより)
猿の惑星(PLANET OF THE APES)
発表年:1968年
昔、名瀬の映画館(当時3つあった)で見て、「ああ、映画ってほんとにスゴイですね」と初めて思った作品。原作の小説は、なかなか深そうなのだが、今思うと映画はいかにもアメリカ的だと思うのだが、その後、この映画の衝撃を上回る作品には・・・。
若いうちに本書のような本に出会っていたら、とも思う。