サッカーがはじまります。あとでまた書きます。
橋ものがたり 新装版 [単行本]
藤沢 周平 (著)
商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
微かな悲哀が、胸を染める。江戸の橋を舞台に、市井の人々の情を描く珠玉の連作短篇集。遠藤展子氏の書き下ろし「父と娘の『橋ものがたり』」特別エッセイ収録。
五年後に再び会う約束をした男女の人間模様を描く「約束」、突然家に逃げ込
んできた男をかくまう独り者の女の心情とその結末を描く「小ぬか雨」など、江
戸の橋を舞台に、市井に生きる人々の情を描く名作十編です。
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約束
幸助は五年後に再び会う約束をした女がいた。
約束の時間になってもお蝶は、現れなかった。
五年の間には、若い二人はお互いに変わってしまっていたのは当然と言えば当然なのだが・・・。
小ぬか雨
ある日、独身で一人住まいのおすみが家に帰ると、土間に男がうずくまっていた。
「追われてるんです、すぐに出ますから」
若くて男前のいい新七に「すみませんお嬢さん」といわれ、おすみはこころを揺さぶられる。
おすみには、勝蔵という下駄職人の許婚がいた。
勝蔵はすることなすこと野卑なところがある男で、おすみはあまり好きではなかった
が、別にそのことを不満に思うのでもなかった。
何日か、新七を匿う間におすみは勝蔵にはない新七のやさしさに惹かれていく。
しかし新七は若い女を殺した殺人犯だった。
それでもおすみは・・・。
しかし、結末は?
?
思い違い
赤い夕日
夫の新太郎に女がいると知ったおもんにも新太郎には言えない秘密があった。
小さな橋で
氷雨降る
殺すな
まぼろしの橋
おこうは呉服屋美濃屋のもらい子であった。
しあわせな新婚生活をおくるおこうの前におこうの実の父親・松蔵に知り合いだという弥之助という男が訪ねてきた。
おこうは貧しい身なりの弥之助に、なぜか
吹く風は秋
川霧
”六年前の、その朝。新蔵はいつものように富島町の裏店(うらだな)を出て、掘割にかかる橋を二つ渡って永代橋に出た。”という書き出し。
新蔵は若い蒔絵師。住み込みの年季奉公が終わり、通いのお礼奉公があと一年半勤めれは、それで一人前の職人になれるというところまで漕ぎ着けていた。
その女は、思いつめたような顔で遠い川下のあたりを見つめていた。
昨日もおとといの朝も同じ場所立っていた。新蔵が何も言わず通り過ぎたのは若い女に対する羞恥心からで、彼はまじめで女に慣れていなかったのである。
四日目の朝も女はそこにいた。一体、何をしているのだろう。
今日は思い切って声を掛けてみようと新蔵思ったその時、橋の下を大きな船が水面を覆う皮霧をわけるようにして、黒い船体を見せながらゆっくり遠ざかる。
新蔵が女に眼線をもどしたとき、女が欄干の下に倒れた。
「もし」・・・「もし、あんた」
・・・
こうして、おさとを介抱したのがきっかけだった。
謎めいたおさとに新蔵は惹かれていく。・・・
突然姿を消したおさとの働く店をようやく探し当てた新蔵に「来ちゃいけないと言ったのに」と言ったおさとの顔は思わず息をのむほど凄艶だった。
最後に六年間の出来事のつじつまが合う。ささいな事だが、あの時、あんな早朝に橋の下を通り過ぎた大きな船が何だったのかも。