製作年 1962年(昭和37)
DVD 販売元: 松竹
DVD発売日: 2005/08/27
時間: 113 分
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出演: 岩下志麻, 笠智衆, 佐田啓二, 岡田茉莉子, 三上真一郎
監督: 小津安二郎
形式: Color, Dolby
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共に暮らす娘の婚期を気にかけながら生きる、元海軍将校のサラリーマン。やがて娘を嫁がせる彼の孤独と老いをあらわにした、名匠小津安二郎監督ならではのヒューマンコメディである。
全編ほのぼのとしたやりとりが続くなか、そこはかとない人生の厳しさや空しさなどが、達観した演出によりチラホラ見え隠れする。小津作品の常連である笠智衆の父親像も好演だが、娘役の岩下志麻の快活さも、それまでの小津作品とは違った味わいを醸しだしている。飲み屋で『軍艦マーチ』を聞きながら、ユーモラスに敬礼を交わし続ける人々のせつないシーケンスも、忘れがたい印象を残してくれる。
なお、この作品は小津監督の遺作となり、翌年、60歳の誕生日に息を引きとった。(的田也寸志)
==========山田洋次監督が選んだ日本の名作100本 家族編 NHKBSで見ました。
筋は簡単、登場人物の関係もすぐにわかる。
その分、じっくりと楽しめる。何度見ても新しい発見がありそうだ。画面の隅ずみまで楽しめる。
俳優や、食卓の上の茶碗、部屋の調度品などを使い、まるで監督が画面の上で絵を書いていくようなカットの流れ。若いうちはこれのどこが面白いの、と思うような作品。
若い頃から、たとえばCMでも、背景のどうでもいい小道具に目がいっては、どうでもいいことを考えたものだ。重大なニュースを読むアナウンサーの服装のことに目と思考がいってしまっているのと同じだろう。
小津安二郎監督の「小津調」の主な特徴として、(参考wikipedia)
ロー・ポジション(ローアングルのことではない)でとること、
カメラを固定してショット内の構図を変えないこと、
人物を相似形に画面内に配置すること、
人物がカメラに向かってしゃべること、
クローズ・アップを用いず、きまったサイズのみでとること、
常に標準レンズを用いること、
ワイプなどの映画の技法的なものを排することなどがある
ということは前回の記事で少しだけ触れた。
この作品も、厳密に計算された構図の中で、食卓に並べられた食器類の配置のしかた、形、色までも計算されいる。きっちりと作り上げられた画面は清潔感があってすがすがしい。汚いものは出てこないのである。こだわりの「赤い色」も効果的に取り入れられている。
一度や2度見たくらいでは、その全てに気づくことは困難だろうと思えるほどだ。
やはり名作と言わざるを得ない。
画面の美しさへのこだわりから小津安二郎は戦後の焼け跡や汚い風景、服装は画面にいっさい入れなかったといわれ軍服姿の軍人も登場しないという。
完璧な演技指導の話も番組では紹介されていたと思う。
こうした映画の手法や作品の傾向に飽き足らない思いを抱いた人たちがやがて松竹を去り、「松竹ヌーヴェルヴァーグ」の一翼を担うことになるという話もいつかの記事で述べたと思う。
「日本ヌーヴェルヴァーグ」の当初の映画監督は、羽仁進、勅使河原宏、増村保造、篠田正浩、大島渚、蔵原惟繕、そして今村昌平である。
↑ ナレーションが時代がかっている。それもユーモアか。
さて挙げればキリがないが、今回印象にの残った場面は、軍艦マーチのシーン(上の動画1:35から)。みな名演技だ。加東大介: 周平の軍隊時代の部下。
中でも、岸田今日子の敬礼。岸田今日は、平山周平 ( 笠智衆)が亡き妻に、あごのあたりが似ているというBARのマダムなのだ。一度見たらこの役は岸田今日以外にはありえなくなる。こんな新鮮な軍艦マーチ聴いたことがない。パチンコをしなくなって20年あまりになるか。
当時の戦争経験者、また未来のひとたちはこの場面をどんな思いで見るのだろう。
これを戦争賛美と見るのはここでは論外だが、しかし単に反戦というのももったいない。話すと長くなりそうだ・・・。
実は、この軍艦マーチのシーンは小津監督の代表作と言われるあの「東京物語」昭和28年のなかにもある。
興味のおありの方は小津安二郎 静かな反戦5/5の03:33 あたりからごらんください。http://youtu.be/2XLs-6BXhEc
秋刀魚の味には秋刀魚は一切出てきませんが、リンダの焼いたサンマがいくらおいしいといっても映画では、煙たさや、匂いや味まで表現できるものではない、という小津安二郎監督の達観と謙虚さがにじむ反戦の表現ではないだろうか。