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映像:本州最北、大間崎にある石川啄木の歌碑(2006-08-19 取材)
『東海の 小島の磯の白砂に われ泣きぬれて 蟹とたはむる 』 (一握の砂)
『大という字を百あまり 砂に書き 死ぬことをやめて 帰り来れり』 (一握の砂)
『大海に むかひて一人 七八日 泣きなむとすと 家を出でにき』 (一握の砂)
啄木のあまりに有名な失意の歌。青森県大間崎にある啄木碑の三つの石塔の真ん中に
刻まれている。この句は当初からこの大間の地を想って書かれた説と函館大森海岸説
がある。啄木と言えば函館とういうのが一般的かもしれない。この歌は在京時の作で、
小島とは本州地続きの灯台の島「弁天島」の事で青年時磯遊びをした記憶を基に創作
したと思われる。明治期この地は白砂もあり、磯蟹も沢山いたそうな。大間までの旅
は当時難儀なもの、いかなる思いでこの地に遊んだか、石川啄木の境地を想像できる。
函館大森海岸での想い出は楽しいものであり、この句の物悲しさは不遇であった東京
の果ての弁天島の事と解釈するのが自然と思う。今では蟹も居ず、白砂も無い。先の
青森朝日放送取材陣ヘリコプーター遭難はこの周辺で起こった。新たな悲しみの地だ。
一首謹呈:
『最北の 石碑に刻む 啄木の 哀しみは 今何処なり』 (和)