孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

リビア児童集団HIV感染事件 最高裁死刑判決

2007-07-12 13:31:39 | 国際情勢

写真は今回の事件によりエイズで死亡した子供のひとり
(“flickr”より By Khalid Aljorni  
なお、Khalid Aljorni氏は写真のタイトルや写真への加工により、被告等のウイルス注射によりこの子供が死に至ったこと、及び、被告等の死刑の即時執行を訴えています。)

リビア・ベンガジの病院において医療スタッフが行った輸血でリビア人児童426人がエイズに感染、52人が死亡したとされる事件で、リビア最高裁判所は11日、被告のパレスチナ人医師1人とブルガリア人看護師5人に対し求刑通り死刑判決を宣告しました。

被害者児童の家族・遺族らと、リビア、ブルガリア両政府が設立した特別基金との間で補償協定が成立したことが前日発表されたばかりで、EUの支援に下に進められた和解交渉により、犯罪者引き渡し条約に基づくブルガリアでの服役への減刑が期待されていました。
11日の最高裁判決が、補償と和解に与える影響は明らかでないとされています。

被告らは1999年2月に逮捕されて以来8年間リビアの刑務所に収監されていますが、無罪を主張しています。
6人は最初、罪を「自白」しましたが、後にこれを撤回。
これまでの裁判を通じて6人は容疑を否認し、「自白」は裁判前の拘禁中に拷問によって引き出されたものであると繰り返し証言しています。
彼らは、2004年2月に面会したアムネスティ代表団に対し、電気ショック、殴打、両腕で吊るされるなどの拷問を受けたと語っているそうです。

また、エイズの専門家は、HIVへの大量感染の原因は病院の衛生状態が悪いことと注射器の再利用であると法廷で証言しています。
アムネスティ・インターナショナルは「非常に不公正な裁判によって死刑が言い渡されている。」と死刑判決破棄を求めていました。
一方、容疑者の家宅捜索を行った警察官は「容疑者宅から、アルコール飲料やポルノ雑誌に混じり、HIVウイルスの入ったビンを押収した」と証言しており、被告等が故意にHIVウイルスを児童に投与して殺傷したと主張しています。

鉄格子越しに被告看護師に対する証言を行うリビア人医療従事者
(“flickr”より By Khalid Aljorni  
なお、Khalid Aljorni氏は被告等の死刑の即時執行を訴えています。)

おおまかな事件の概要は以上のようなところです。
リビアは「革命指導者」カダフィのもので長く極端な反米路線をとり、アメリカはリビアのテロ行為の報復にカダフィを狙って首都トリポリを空爆、リビアはこれに対する報復として88年パンアメリカン航空機を爆破(リビア情報機関の人間が爆弾をセット)し乗客・住民270名が死亡、国連は経済制裁を実施・・・など国際社会から孤立していました。
なお、カダフィは阪神淡路大震災が起きた際には「経済力で悪魔に奉仕してきた日本人に天罰がくだった」と声明を出したこともあります。

ここ数年は路線を変更したようで、核開発の全面放棄やパンアメリカン航空機爆破事件の容疑者引渡し応じた結果、国連の経済制裁は解除され、欧米との関係改善も進んでいました。

今回の事件については、もちろん、何が正しくて誰がウソをついているかなど私にはわかりません。
しかし「ひとりの精神異常者の行為ならともかく、6人が共同して故意にウイルスを投与するなんてあるのかしら・・・?」「衛生管理の問題では・・・」と考えてしまうところもあります。
また、偏見を持って判断してはいけない・・・とは言いつつも、これまでのリビアの“実績”がありますので「国の責任になる衛生管理の不備なんて決して認めないだろうな・・・」「拷問もやるかもね・・・」なんて思ってしまいがちです。
やはり“日頃の行い”というものでしょう。

被告等を糾弾するポスター
(“flickr”より By Khalid Aljorni)

しかし、仮に被告に同情するにしても、今無用にリビア側を刺激することは刑の執行を早める結果にしかならないでしょう。
今更リビアが「間違っていました。でっちあげでした。拷問もしていました。」とは絶対言いませんから。
リビアも“特赦”を外交カードにしたい思惑があるのかも。
“うまく”交渉するしかないようです。

看護師5人の母国ブルガリアは国をあげて支援していますが、パレスナチナ人の医師については?
明確な国家が存在しないということは、こういうとき悲しいものがあります。
ただ、パレスチナにしてもそれどころではない・・・というのが本音でしょう。
もっと多くの人命が毎日のように犠牲になっているのが実情でしょうから。
数人の命の問題が国家的な問題になるというのは、そういう意味では、その国が恵まれた状況にあるということでしょう。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする