孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

7日からCOP15開催  温暖化は誇張か? 目を背ける人々

2009-12-06 16:48:00 | 環境

(バングラデシュ 今年5月のサイクロンによる洪水 バングラデシュは気候変動に最も脆弱な国のひとつです。“flickr”より By oxfam international
http://www.flickr.com/photos/oxfam/3570999890/)

【難航必至 明日から開催】
国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)の開催が明日7日からコペンハーゲンで開催されますが、12年末に期限が切れる「京都議定書」に代わる新議定書合意は早々にあきらめられ、政治合意にいかに実質的拘束力を持たせるかが会議の焦点になっています。
政治合意内容については、議長国デンマーク政府が①2050年までに世界全体の温室効果ガス排出量を1990年比で半減 ②2020年までに世界全体の排出量を減少に転じさせる――といった項目を柱とする原案を提示しています。

****COP15:合意文書草案、中国など新興国4カ国が反対*****
コペンハーゲンで7日から始まる国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)を前に議長国デンマーク政府が各国に提示した合意文書草案の主要部分について、中国などの新興国4カ国が反対の姿勢を示しているとロイター通信が伝えた。
草案は温室効果ガスの排出量を世界全体で2050年までに1990年比で半減させる数値目標などを盛り込んでいるとされる。だが、南アフリカの交渉担当者はロイター通信に「(先進国分以外の)残りを途上国で削減しなければならず『50年半減』には合意できない」と述べたという。
ロイター通信が欧州外交筋の話として報じたところによると、中国、ブラジル、インドも草案の受け入れに難色を示し、先進国の削減努力強化を求めているという。【12月4日 毎日】
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先進国と途上国・新興国の対立は相変わらずですが、新興国の中国はGDP一定額あたりの二酸化炭素排出量を20年までに05年比で40~45%削減すると、ブラジルも主にアマゾン熱帯雨林における伐採の抑制により、何も対策をとらなかった場合の2020年の推定排出量から36~39%削減すると、それぞれの立場で法的拘束力のない“自発的行動”としての数値目標を出しています。

有力新興国としては最後になったインドも3日、GDP一定額あたりの二酸化炭素排出量を2020年までに05年比で20~25%削減できるとの見通しを明らかにしています。
なお、GDP一定額あたりの排出量を減らすということは、増加のペースは鈍るものの、長期的に排出量は増え続けることを意味するため、環境保護団体などからは実態を隠す煙幕に過ぎないという批判もあります。

中国と並んで最大の排出国アメリカは、オバマ大統領の会議への出席について、予定していた9日を取りやめ、18日の首脳会議出席に変更したことが発表されました。
大統領は、当初は欠席するとも言われていました。
アメリカ上院における温暖化対策法案の審議が遅れており、国際的会議の場で公約するような先走りはしたくないし、出席して会議の失敗の責任をとらされたくない・・・でも、会議では大きな成果が出ないことがはっきりしてきたので、それなら顔だけでも出すか。ちょっとした合意でもできれば成果になるし・・・どうも首脳会議にでないと国際的に失敗の責任を負わされそう・・・そういった及び腰の姿勢も窺われます。
サルコジ仏大統領は「決定的な日(首脳会合)に来なくて意思決定ができるのだろうか。1人の指導者のために世界的取り組みが阻まれるのは許せない」と批判していました。

【「クライメート(気候)ゲート事件」】
会議の場外でも騒がしい動きがあります。
****盗み出された「温暖化」メール 論争に火 陰謀説も*****
気象研究で有名な英イーストアングリア大のコンピューターにハッカーが侵入し、研究者が地球温暖化を誇張したとも解釈できる電子メールなどが盗み出された。12月の国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)を控えた陰謀との見方もあり、英米メディアはウォーターゲート事件をまねて「クライメート(気候)ゲート事件」と呼んで報じている。

メールには、国際的に著名な気象研究者同士のやりとりが含まれ、イースト・アングリア大のフィル・ジョーンズ教授が米国の古気候学者らに出した「気温の低下を隠す策略(trick)を終えたところだ」などと書かれたものもあった。
この記述に対し、地球温暖化やその人為影響に懐疑的な人たちが飛びつき、ネットなどで批判が相次いだ。ジョーンズ教授は声明で自分が書いたことを認める一方、「誤った文脈で引用されている」などと反論。木の年輪のデータから推定されるが信頼できない気温のデータを使わなかっただけで、科学的に間違ったことはしていないと主張している。
公開を前提にしない私信とはいえ、ほかのメールで懐疑派を「間抜けども」などと呼ぶなど研究者の態度にも関心が集まっている。

米国の保守派シンクタンク、企業競争研究所(CEI)は20日、「『世界一流』とされる研究者が、科学研究より政治的主張の流布に集中していることは明らか」とする声明を発表。23日には、急速な温暖化対策に批判的な米上院のインホフ議員(共和党)が「(感謝祭の議会休会が終わる)来週までに真相が明らかにならなければ、調査を要求する。この問題は重大だからだ」と述べ、「事件」が議会で問題にされる可能性も出てきた。

COP15を2週間後に控えた時期の発覚で、世論への影響も懸念される。21日付米紙ニューヨーク・タイムズは「(COP15直前の)時期のメールの暴露は偶然ではないだろう」との研究者の見方を紹介している。
米国では今年に入り、温暖化の科学的根拠に対する信頼感が下がっている。
世論調査機関ピュー・リサーチ・センターが9~10月に実施した世論調査によると、「ここ数十年、地球の平均気温は上昇していることを示す間違いない証拠がある」と答えた人は57%で、08年調査の71%、07年、06年調査の77%から大きく下落した。
同センターは、景気の落ち込みのほか、今夏は例年より寒かったことが理由ではないかとみている。【12月6日 朝日】
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【なぜ目を背けるのか?】
温暖化の議論に対する人々の反応についての一般論として、こんな記事も。
****なぜ多くの人が気候変動の脅威から目を背けるのか?*****
人類の活動が原因で気候変動が進み、地球規模の災厄が降りかかろうとしていることを示す証拠が次々と示されている一方、気候変動の脅威は誇張されているとか、まったくのうそだと言う人も相変わらず多い。
例えば、英国で11月14日に発表された世論調査結果では、人類の活動が地球温暖化の原因になっていると回答したのは41%だけだった。なぜだろうか。

■快適な生活を捨てたくない
ロンドン大学の哲学教授で著書も多いアンソニー・グレーリング氏は、「現在の快適な生活をあきらめたくないという気持ちがある」と指摘する。このような傾向は欧米だけでなく、近年中間所得層が増えた中国、インド、ブラジルのような国々にもみられるという。(中略)

■恐怖から目をそらしたい
別の説明もある。世界は破滅に向かっているという恐ろしい真実から目をそらしたり、脅威を和らげて理解しようとするのは人間の本性だというのだ。
パリのエコール・ポリテクニークのジャンピーエル・ドュピュイ教授(社会心理学)は、「破滅に際して、人間は自分が知っていることを信じようとしない」と語る。
前述のグレーリング教授も「だれもが現実を否定し――あるいは否定したいと思い――あまり大きな責任を負わされたくないと思っている。ここに一種の断絶がある」と説明する。(中略)

■いつまで目をそらせるか
脅威を感じた人間は、安心したり、脅威から目をそらすために、実にすぐれた才覚を示す。
例えば、環境によい小さな行動をことさら強調する人もいる。「白熱電球を電球型の蛍光灯に替えて、自分の義務は果たしたと言う人もいる」(カッサー教授)。このような態度は米国でよく見られるという。
温室効果ガスの排出削減に消極的な中国やインドをことさら非難したり、個人の力ではどうしようもないとため息をついてみせるのも、恐ろしい現実から目をそらしたいという心の働きの現れだ。
しかし、いずれ現実は襲ってくる。(中略)
国家が破綻したり、バングラデシュのような温暖化に脆弱な国で大災害が起きたりするなどの衝撃的な事態が2、3発生しないと、現実を認めないかもしれないとグレーリング教授は言う。「しかし、一度そうなれば『これは現実ではない』とか『科学的に解決できる、そのうち過ぎ去る』などと言うことはできなくなる」。【12月4日 AFP】
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世の中一般と異なる意見を主張することで、自分は大勢の馬鹿どもとは違うということを顕示したい欲求もあるのかも。

【番外編】
「稲作」も地球温暖化を促進する?
二酸化炭素の少なくとも20倍もの温室効果があるとされているメタンは温室効果ガスの全排出量の5分の1を占めます。メタンの主要な発生源はウシのゲップと生分解性の埋め立てごみですが、全体の約10%は水田から放出されているとか。そうすると休耕田は温暖化防止策か?【12月6日 AFPより】

売春婦組合、COP15参加者に「無料サービス」
デンマークの売春婦団体は5日、同国コペンハーゲンで7日から開かれるCOP15の参加者に対し、「無料サービス」を提供することを明らかにしました。現在コペンハーゲン市議会で審議中の「反売買春条例案」に抗議することが目的だそうですが、会議成功の一助となればなによりです。【12月6日 AFPより】

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