(4月4日 アテネの国会前広場で「威厳ある形で人生を終えるには、こうするしかない。ごみ箱をあさるようにはなりたくない」と、77歳男性が銃で自らの頭を撃ち抜きました。その場所には、彼の死に衝撃を受けた市民から多くのメモがささげられました。“flickr”より By YanniKouts http://www.flickr.com/photos/ykoutsomitis/7047280519/)
【「ギリシャでは近い将来何が起こるか、だれも分からない」】
5月26日には、国際通貨基金(IMF)のクリスティーヌ・ラガルド専務理事が英紙ガーディアンのインタビューで、「アテネといえば常に税金逃れをしようとする人が思い浮かぶ」「(アフリカの貧しい人々のことが)常に頭にある。アテネの人々よりも彼らのほうが助けを必要としている」と、“ギリシャ人の税逃れ”を批判し、ギリシャ国内の激しい反発を招きました。
アテネでは5月30日、4月の拳銃自殺に続き、「孫がギリシャで生まれないことを望む」と国の将来を悲観する遺書を残し、年金生活者の男性が公園で首をつって自殺しているのが見つかり、市民にショックを与えています。
そんなギリシャでは、個人も、企業も、政府も支払いが遅延する連鎖的状況に陥っているとのことです。
再選挙後の政治混乱で、ユーロ圏と国際通貨基金(IMF)からの救済資金払い込みが更に遅れる事態になれば、国内の悪循環は一層深刻化します。
****今年の給与、依然支給されず-ギリシャの病院を襲う支払い遅延という疫病****
アテネ中央にある近代的な病院アンリ・デュナン病院はギリシャでも最も良い医療機関の一つだ。しかし質の良さにもかかわらず、ギリシャの経済危機のあおりから免れることはできなかった。ギリシャ人たちを深い奈落の底に追いやろうとしている支払い遅延という疫病だ。
同病院の職員は医師を含めて1150人。彼らはまだ2012年の給与を一切もらっていない。職員は5月末に昨年分の最後の給与をようやく受け取ったばかりだ。ギリシャ赤十字が保有している同病院は仕入れ先や銀行に何千万ユーロもの借金を抱えている。逆に、政府には少なくとも2000万ユーロ(約19億6000万円)貸しがある。
ギリシャでは、代金支払いを受けていないため自分も借金を支払わない企業や機関が急増しており、同病院はその一つだ。多くの従業員は給与を受け取っていない。遅延は当たり前で、全く支払いがないケースもある。企業は互いに支払いを行っていない。そして政府は仕入れ先に支払っていないし、納税者へ税還付もしていない。
米空軍病院の元マネジャーで、病院救済のために派遣されたチームの幹部アンソニー・ラップ氏は「この病院が現在オープンしているのは、給与を支給されていない職員がオープンしているからにすぎない」と述べ、「この病院で起こっていることは、ギリシャで起こっていることの縮図だ」と語った。
2010年に危機が始まって以降、ギリシャでは支払い遅延が急増し、過去6カ月間ではそれがまん延している。
ギリシャ政府の労働市場監査局によれば、同国の民間部門契約従業員200万人のうち、3カ月ないしそれ以上支払いが遅延しているのは40万-50万人に達している。同監査局はこうした統計を2月から集計し始めており、それ自体、問題深刻化の表れだ。当局者によれば、給与の支払い遅延は実際、1年前に比べて急増しているという。
ギリシャ専門職・職人・商人連盟が1月に実施した調査によれば、ギリシャの中小企業のうち3社に1社は仕入れ先への支払いが遅延している。
その後、状況は劇的に悪化した、と同連盟会長でアテネ中央で100年続く菓子店を営むドミトリス・アシマコポウルス氏は言う。ギリシャがユーロ圏から離脱するとの憶測を受けて、ギリシャ人たちは代金支払いを一層嫌がり、ユーロを手元に置きたがるようになった。
同氏は「とりわけここ1、2カ月間、税金であれ給料であれ仕入れ先への借金であれ、だれも支払おうとしない」と述べ、「ギリシャ人はユーロをハードカレンシー(硬貨)そのものとみており、銀行、自分のポケットの中、そして自宅にそれを保管している。支出を嫌がり、支払いを嫌がっているのだ」と語った。
ギリシャ政府も共犯だ。同政府は昨年末時点で仕入れ先などさまざまな納入業者に57億ユーロの負債を抱えている。ユーロ圏と国際通貨基金(IMF)が予定されていた救済資金払い込みを遅らせる決定をすると、事態は一層深刻になった。例えば、欧州委員会のギリシャに関する最新報告によると、9月から12月まで救済資金の払い込みが延期されたため、支払い遅延を削減するとの政府の計画は実現しなくなった。
政府の支払い遅延の影響は、国内消費の崩壊を乗り切るためのけん引役とみられている輸出業者にまで及んでいる。欧州最大級のデニムメーカーであるヘレニック・ファブリクス社はギリシャ政府から付加価値税(VAT)還付金700万ユーロの支払いを受けていない。
同社のジョン・アッカス取締役は「国家は極めて時間がかかり煩雑な手続きを使って、民間部門へのVAT還付を遅らせている」と述べた。
同社は従業員を2008年の500人強から400人に削減した。VAT還付の遅れと銀行による融資締め付けによって、同社はキャッシュフロー問題に直面している。同取締役によれば、従業員の給与は平均で1カ月遅れているという。同取締役は、同社は銀行信用枠がまだあるが、「ギリシャでは近い将来何が起こるか、だれも分からない」と語った。
ギリシャの輸入業者にはさらに悪いニュースが入った。世界最大級の貿易信用供与大手であるアリアンツ子会社ユーラーヘルメスとコファスが、デフォルト(債務不履行)懸念を理由にギリシャ向け輸出に保険を付けないと通告したのだ。(後略)【6月6日 ウォール・ストリート・ジャーナル】
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【「住宅を要求するのは憲法で保障された権利だ」】
スペインでは、不動産バブルの崩壊で、金融機関が多額の不良債権を抱え込んでいることが問題となっていますが、バブル崩壊後の空きビルでは、住む家を失った家族が不法占拠して暮らしている現状があるとのことです。
****経済危機のスペイン、空きビルを占拠する家族らの現状****
スペイン南部アンダルシア州の州都セビリアに住む67歳のアナ・ロペス・コラレスさんは、約20年間寝たきりの70歳の夫と共に集合住宅へ引っ越してきた。まだ1週間しか経っていないのにすっかり前の家のような気分だというが、実は自分の家ではないし、また家賃も払っていない。
この4階建ての空きビルには、家を失った32家族が住んでいる。彼らが行っているのは「スクウォッティング」と呼ばれる行為で、いわゆる空き屋占拠にあたる。
コラレスさんは毎月500ユーロ(約5万円)の家賃を払えず、夫ともども路上に放り出された。今暮らす建物はスペインで2008年の不動産バブル崩壊以降、各地に出現した売れ残り住宅のひとつだ。ビルの開発業者は行方をくらましており、所有権を主張する者もいない。
同国における住宅バブル崩壊後、スペイン全土に放置された空き家は約100万戸。一方、2011年の家屋立ち退きは5万8000件に上った。
「ここはもう2年以上も閉まったままで、誰1人やって来ない。こんなに大勢が身ひとつで路上にいるご時世に、こういうアパートを閉めっぱなしにしておくのはなぜなのかしらね?」(コラレスさん)
コラレスさん夫婦が占拠する部屋はビル内に1室だけある元モデルルームとなっているため、32家族みんなでこの部屋のキッチンを共用している。昼食の支度をする数人を指差して「ここにいる女性みんながホームレスなのよ」と言う。
■憲法が保障する居住の権利だが…
昨年スペイン全土には経済的不平等や腐敗、記録的な失業率に抗議する「怒れる者たち」と呼ばれる民衆運動が登場した。この運動を組織するメンバーの助けで、32家族はここに移り住んで来た。「怒れる者たち」の1人、アントニオ・ペレスさんは語る。「住宅を要求するのは憲法で保障された権利だ。スペイン憲法には『すべてのスペイン国民は適切な住宅に暮らす権利を有する』と書いてある」
これまでのところ、警察からはとがめられていない。「警察は分かってるんだ。裁判所から立ち退き命令が出れば、彼らはそれを執行しなくちゃならない。けれど今のところ警察は僕たちを守ってくれている」
スペインの失業率が工業国中最高の24.4%に達する中、住宅からの立ち退きはさらに増加するとみられる。経済危機の打撃が特に大きいセビリアの失業率は33%という高さだ。(中略)
35歳になる娘のアナ・ロペスさんも同じビルに住んでいる。月426ユーロ(約4万3000円)の家族手当で、6歳と18歳の子どもを育てるのに苦戦しており、「(自分でも)払える額の賃貸住宅がほしい」と言う。
4階のアグアサンタ・ケロ・レジェスさん(38)は夫と子ども3人の5人住まい。レジェスさんがセールスの仕事で得る収入は月250ユーロ(約2万5000円)で、やはり半年分の家賃を滞納して追い出されたという。
今後、どれだけこのビルに居続けるのかは、誰にも分からない。
レジェスさんの隣に住み、現在4人目の子どもを妊娠しているラケル・マチュタ・ロドリゲスさん(29)。「ここにずっといるのが明るい未来とは言えないけど、手に入るものを手に入れるしかないのよね」と述べ、占拠している部屋のために中古家具の購入を決めたようだ。【5月28日 AFP】
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【「最初から最後までヨーロッパの問題だった」】
ギリシャ・スペインだけでなく、アメリカ・日本を含めて先進国経済は沈滞しており、景気悪化、二番底の懸念を抱えています。
“緊急の電話会議”という形で5日に開かれたG7では、欧州情勢に連携して対処するという認識の共有ができただけで、G7として欧州信用不安に対する新たな対策は打ち出せませんでした。
****日米欧、二番底の不安****
日米欧の主要7カ国(G7)の財務相と中央銀行総裁が5日夜、緊急の電話会議を開いた。欧州の債務(借金)危機が再び広がるなか、世界中で株価が下がり、為替市場が混乱しているためだ。各国はそれぞれ政治的な事情を抱えており、世界経済が二番底に陥るのを防ごうと必死になっている。
「最初から最後までヨーロッパの問題だった」
5日夜、安住淳財務相は、G7直後に、その内容についてこう語った。このままでは欧州危機がリーマン・ショック級の世界経済危機に発展しかねない、という危機感が各国を緊急の電話会議に駆り立てた。
5日の東京株式市場。株価は5営業日ぶりに値上がりしたとはいえ、東京証券取引所第1部全体の値動きを示すTOPIX(東証株価指数)の終値は708.24と、2009年3月につけたリーマン後の最安値(700.93)並みの低さ。G7各国の株価はこの2カ月余りで約1~2割下がった。
株式市場から逃げ出したお金は、「安全地帯」とされる日米独の国債などに向かい、国債金利(10年物)は日本では約9年ぶり、米独では史上最低の水準まで低下(国債価格は上昇)している。
市場関係者の心配は、ギリシャの(欧州通貨)ユーロ離脱から、スペインの金融不安に移りつつある。
不良債権問題を抱え、銀行経営が苦しいスペイン。中央銀行によると、今年1~3月には970億ユーロ(約9.4兆円)のお金がスペインから逃げ出した。
金融不安や緊縮財政が影を落とし、欧州の景気は低迷。欧州連合(EU)によるとユーロ圏17カ国は今年0.3%のマイナス成長となる見通し。ユーロ圏の4月の失業率も11%と、通貨ユーロを導入した1999年以来、最悪の水準だ。
春先まで順調に景気回復していたかにみえた米国でも楽観論は消えている。5月の雇用統計では、就業者数の増加幅が1年ぶりの低水準になり、失業率も上昇。新車販売にもブレーキがかかっている。
先進国のなかでは景気が底堅かった日本にも暗雲が垂れこめる。欧米の景気不安から円が買われ、「超円高」の再来が日本の輸出企業を苦しめている。産業界からは「世界同時不況がまたくるのではないか」(米倉弘昌・経団連会長)、「このままでは日本の製造業の崩壊がはじまる」(豊田章男・トヨタ自動車社長)という声が上がっている。 【6月6日 朝日】
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“日本経済は、3四半期連続でプラス成長を記録し、東日本大震災からの復興の道筋が見え始めたばかりだ。しかし、超円高が続けば輸出産業への打撃となって景気を冷やしかねない”【同上】ですが、“欧米の景気不安から円が買われ、「超円高」の再来が日本の輸出企業を苦しめている”現状は、不安から逃れようとするマネーが比較的安全に見える日本にすがり、結果、日本経済も沈み始める・・・といった構図にも見えます。
【「経済成長の鈍化の圧力は大きくなっている」】
一方、先進国に代わり世界経済の牽引車を期待されている新興国の経済も、ここにきて陰りが見えています。
インドでは、今年1~3月期の実質国内総生産(GDP)成長率が前年同期比で5.3%となり、リーマン・ショック直後の数字(5.8%)を下回る約7年ぶりの低成長となっています。
新興国の中心にある中国経済にも警戒感が出ています。
****中国景気、急ブレーキ 指導層交代控え危機感****
中国の景気の減速が止まらない。経済実態をより示すとされる電力や貨物輸送などの指標が相次いで悪化。今年後半の中国共産党指導層の交代を控え、混乱を避けたい現政権は危機感を強めている。欧州の債務危機の広がりなど世界経済のさらなる混乱も想定しながら、安定成長を取り戻すため、対策に乗り出した。
電力消費量、銀行融資、鉄道貨物輸送量――。次の首相と目される李克強(リー・コーチアン)副首相が、中国経済の「温度計」として、国内総生産(GDP)よりも頼りにしていると伝えられた指標が、低迷している。
4月の前年同月比の伸び率は3月より下がった。電力消費量が7.0%から3.7%、発電量が7.2%から0.7%とがた落ち。新規融資額も1兆元(約12兆円)から6818億元へ急降下。貨物の輸送量はやや持ち直して5%台の伸びだったが、2011年通年の8%台と比べて、年初から減速している。(中略)
ギリシャ問題でユーロ圏の混迷は深まり、先進国では景気の二番底が懸念される。当面は輸出の回復も望めず、中国政府は危機感を強める。
温家宝(ウェン・チアパオ)首相は5月23日、副首相らを集めた国務院(内閣に相当)常務会議を招集。「経済成長の鈍化の圧力は大きくなっている」として、「安定成長をもっとも重要な位置に据える」と強調した。
中国の1~3月の実質経済成長率は前年同期比8.1%。政府は通年の目標とする7.5%を死守するため、景気を刺激する方向へかじを切った。エアコンなど省エネ家電の購入補助に265億元(約3180億円)をあてるほか、鉄道、省エネ・環境、貧しい人向けの住宅整備など公共事業の一部も、前倒しでとりかかるよう促した。
今週末には5月の工業生産や消費、輸出入などの指標が発表される。指標次第では、中国人民銀行(中央銀行)が5月に続いて再び預金準備率を引き下げて市場に出回るお金の量を増やす、との観測も出ている。
ただ、米リーマン・ショック時に打ち出した「4兆元の景気対策」のような大規模な刺激策は現時点では「選択肢にない」(国務院発展研究センター研究員)。バブルやエネルギー浪費など、不動産開発や公共事業に偏った投資主導の成長の弊害が目立つため、とみられている。【6月6日 朝日】
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明るい材料に乏しい経済情勢ですが、日本ではAKB総選挙が盛り上がっているようで(私も少しばかりTV放送を観ていましたが)、経済不安など関係ないようにも見えます。