孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ・中国首脳会談  事前の“配慮”や“牽制”はあるものの・・・・

2015-09-24 23:16:10 | 中国

(22日 ワシントン州に到着した習近平夫妻 【9月23日 ロイター】)

ローマ法王訪米と重なった習近平主席訪米
昨日まで中国・西安を観光旅行しており、ニュースにも殆ど接していなかったせいで、ここ数日の出来事には疎くなっています。

私が中国でガイド氏と習近平国家主席の話をしていた頃、その習近平夫妻はアメリカへ向かい22日にはワシントン州シアトルに到着しています。

****サイバー、南シナ海が焦点=米中首脳、25日に会談****
オバマ米大統領と中国の習近平国家主席は25日、ホワイトハウスで会談する。中国によるサイバー攻撃や南シナ海への進出、人権、経済構造改革が主要議題となる。

一方、気候変動やアフガニスタン復興などに関し、両国の取り組み状況を確認する。

両首脳は対立点をめぐり率直にやりとりするほか、協力分野の拡大を目指す。アジア太平洋の安定と繁栄に向けて米中両国が国際的な既存の秩序や規範の順守で一致できるかどうかが焦点となる。【9月24日 時事】 
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おそらくは、オバマ大統領との会談ではそんなに驚くような話は出ないと思いますが、そうはいっても世界に大きな影響力を有する両国ですから、アメリカとの大国関係を世界と中国国内にアピールしたい習近平主席、中国へのアメリカ国内の不満を背景に、中国を牽制したいオバマ大統領、両者の思惑で訪米・会談前からいろいろな動きが見られます。

そもそもの話で、習近平主席の訪米と時期的に被るタイミングで、もう一人の「超大物」、ローマ法王も訪米しています。

****ローマ法王が米に到着・・・正副大統領が出迎え****
ローマ法王フランシスコは22日、キューバからワシントン郊外のアンドルーズ空軍基地に到着し、6日間の訪米を開始した。

オバマ大統領とバイデン副大統領がそれぞれ妻子を伴って空港で出迎えるという、異例の対応で歓迎した。

法王は米、キューバの54年ぶりの国交回復で仲介役を務め、今回は初訪米となった。23日にホワイトハウスでオバマ氏と会談し、24日にはローマ法王として初めて米上下両院合同議会で演説する。

米CNNによると、27日に東部フィラデルフィアで行われる野外ミサの入場券は、ネット上の予約開始から30秒で1万枚が売り切れた。【9月23日 読売】
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影が薄くなってしまうことも懸念される中国が、どうしてこんなスケジュールを認めたのだろうか?・・・と疑問に感じたのですが、やはりいろいろあったようです。

****中国「法王の訪米ずらして」・・・習氏と同時期懸念****
中国の 習近平 ( シージンピン )国家主席が22日から米国を訪問するにあたり、中国政府が同じ時期に訪米するローマ法王フランシスコの日程をずらすよう、米側に再三要請していたことがわかった。

外交筋が明らかにした。法王の訪米に注目が集まり、習氏の訪米が色あせることを懸念した模様だ。

米側は、双方の都合が合う時期を考慮した結果、同時期に受け入れることを決めたとし、中国側の要請を受け入れなかった。

米側の対応は、中国に宗教の自由や人権問題の改善を求めるメッセージとの見方が出ている。法王は、習氏がワシントンに到着する24日に米議会で演説する予定。【9月21日 読売】
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敢えて同じタイミングにセットしたことは、アメリカ側の宗教の自由や人権問題に関する中国への牽制でもあるようです。

【「重要な問題はほとんど平行線をたどることが予想される」】
会談にむけての基本的な姿勢は、中国への圧力を強めたいオバマ大統領に対し、強気の姿勢を崩さない習近平主席・・・といったところです。

****米中首脳会談 サイバー攻撃、南シナ海…どこまで押すかオバマ氏 対等意識し“挑発”重ねる習氏****
 ■圧力の絶好の機会
オバマ大統領にとり今回の首脳会談は、約1年4カ月の残りの任期における米中関係を決定づけかねず、サイバー攻撃、東・南シナ海問題など対立する分野で、一段と強い姿勢を示せるかが注目点だ。

オバマ氏は、過去の首脳会談開催時とは異なる2つの環境の変化を背に、会談に臨むことになる。

一つは中国経済に衰えが見え、習近平国家主席の指導力に疑問が投げかけられていること。そして、より強い態度で中国に対処すべきだとの主張が、次期大統領選の候補らからオバマ政権に向けられていることだ。

オバマ氏には、中国への圧力を強める絶好の機会だといえなくもない。

オバマ政権は中国のハッカー攻撃への対抗策として、攻撃に関与した個人、企業に対する制裁措置を準備している。
背景には、中国が相次ぎ盗み出している機密情報や技術を、軍事技術や装備の開発に転用し、米国の軍事・インフラ施設を無能力化する「サイバー戦争」にも活用する、と深刻に受け止めていることがある。

制裁の発動に踏み切る場合でも、首脳会談で習氏の出方を見極めた後になる見通しで、会談でオバマ氏が制裁の構えをどこまで打ち出すのか、注目される。

対話と圧力を使い分ける対中戦略はこれまで、ほとんど効果がなく、こうした状況のさらなる固定化を回避することは難しそうだ。

 ■「重要問題は平行線」
中国の官製メディアは9月中旬から、習近平国家主席の訪米をめぐり、「新型大国関係を前進させる旅」などと報じ、米中首脳会談に向けた友好ムードを意図的に演出している。

だが、首脳会談について、中国外務省関係者は「今の中国と米国は、協力よりも対立することの方が多い。重要な問題はほとんど平行線をたどることが予想される」と厳しい見通しを示している。

江沢民氏や胡錦濤氏の時代は、国家主席の訪米前に投獄中の民主化活動家を病気療養などの名目で渡米させたり、米国が求める人権問題の改善などで一定の歩み寄りをみせ、いい雰囲気をつくることが一般的だった。

しかし今回、習主席は逆に、訪米前に米国に対し挑発ともいえる行為を繰り返した。7月には北京などの人権派弁護士らを100人以上拘束し、世界中の人権団体から批判を受けた。

また、米国が抗議している南シナ海での人工島建設の継続をも宣言し、9月初めには米アラスカ州沖に5隻の中国海軍艦を展開。国際金融の発言力強化を狙ってアジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立を主導する一方、8月には米国が切り上げを求めている人民元を唐突に切り下げ、世界の市場を混乱させた。

中国が強気を崩さない理由について、共産党関係者は、減速こそしているが経済成長に習主席は自信を深めており、意図的に米国と対等な関係を築こうとしていると分析する。同時に、米大統領選を控え、レームダック(死に体)化しつつあるオバマ政権が本気で中国と対立することはないと判断しているようだ。

習近平政権は当面の緊張緩和よりも米国の政権交代の前に、実現したいことを強引に進め、外洋拡張などで既成事実をつくりたい思惑がある。【9月21日 産経】
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アメリカ:人権問題やサイバー攻撃問題で圧力をかける姿勢も
“7月には北京などの人権派弁護士らを100人以上拘束”については、習近平氏自身の指示ではなく、関係部署の独断だったのでは・・・との見方もあるようです。

9月14日には、昨年10月に「騒動を起こした」容疑で拘束され、今年1月に「違法経営」容疑で北京市公安局に逮捕された中国の著名学者・人権活動家の郭玉閃氏(38)が解放されており、訪米を控えた習指導部が柔軟な姿勢を示したものとの見方もるとのことです。【9月15日 時事より】

一方、アメリカ側は、中国が求めている容疑者の身柄引き渡し問題で一定の配慮を示しています。

****中国人の容疑者、米側が引き渡し 主席訪米前に配慮か****
中国政府は18日、中国当局が贈収賄などの疑いで行方を追い、逃亡先の米国に身柄の引き渡しを求めていた中国人実業家、楊進軍容疑者(57)が強制送還処分を受けて帰国したと発表した。

米国は引き渡し要請に慎重だったが、習近平(シーチンピン)国家主席の訪米を前に、両国の協力をアピールしたい中国に配慮した可能性がある。(中略)

習指導部は「反腐敗」の新たな取り組みとして、昨年から「猟狐(キツネ狩り)」などと称し、海外逃亡した官僚や企業家らの摘発と流出した資産の回収に注力。逃亡先の国々に身柄の引き渡しを求めてきた。

しかし、北京の外交筋によると、米国は、中国当局が本人の背景を示す資料や犯罪の証拠を積極的に提出しない▽収賄でも死刑が適用されることへの人権的な配慮――などを理由に慎重な態度を取ってきた。

容疑者の身柄引き渡し問題は、22日からの習氏の公式訪米でも話題となる見通しだ。
米側が引き渡しに応じたのは、「反腐敗」を米中協力の新たな領域としてアピールしたい中国に配慮し、ほかの分野での交渉を優位に進めようとの狙いも透ける。【9月19日 朝日】
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こうした“配慮”の一方で、“牽制”と思われるような動きもあります。

****ケリー氏、中国活動家らと面会…人権問題で圧力****
米国のケリー国務長官は23日、ワシントン市内で、中国の人権活動家や中国で当局に拘束されている活動家の家族と面会した。

25日に行われるオバマ大統領と 習近平 ( シージンピン )国家主席との首脳会談を前に面会することで、オバマ政権は中国に人権問題でも圧力をかけていく姿勢を鮮明にした。(中略)

ケリー長官はオバマ政権が中国の人権状況への懸念を深めていることを伝え、習氏との会談で政治犯の釈放や法規制の見直しなどを求めていくことを約束した。【9月24日 読売】
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著名人権派弁護士に対する拷問・監禁を伝える報道なども、そうした牽制の一環とも思われます。

****人権派弁護士、5年ぶり消息=拷問・監禁も「中国に残る」―米メディア****
中国で国家政権転覆扇動罪により有罪判決を受け、2014年8月の出所後も公安当局の監視下に置かれ、詳しい消息が不明だった著名人権派弁護士・高智晟氏の声が米メディアを通じて5年ぶりに伝えられた。

高氏は米AP通信のインタビューに応じた。内容を伝えた米政府系放送ボイス・オブ・アメリカ(VOA)中国語サイトなどによると、高氏は監禁中に顔に電気棒を当てられる拷問を受けたと明かす一方、どんな苦難があっても米国に滞在する家族と離れ、中国に残ることが「神が私に与えた使命だ」と述べた。(後略)【9月24日 時事】
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また、首脳会談を控えた22日には、中国で3月に米国人女性企業家がスパイ容疑で拘束されていたことを支援者がウェブサイトで明らかにしています。

近年大きな問題となっているのが中国によるサイバー攻撃です。

***オバマ大統領「サイバー攻撃に対抗措置も」 中国を牽制****
オバマ米大統領は16日、今月下旬に訪米する中国の習近平(シーチンピン)国家主席との首脳会談で、中国側が米企業などの情報を盗み取るサイバー攻撃の問題が主要議題になるとした上で、解決されない場合は「対抗措置を準備している」と語った。

オバマ氏自ら制裁をちらつかせることで、習氏の訪米を控えた中国を牽制(けんせい)した。(後略)【9月17日 朝日】
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中国:経済カードでこの訪米を押し切る戦術
中国側の動きとしては、中国軍機による米軍機への異常接近も報じられていますが、こうした行為が偶発的なものか、習近平主席の意向を反映したものか、あるいは、習近平指導の軍幹部粛清への不満を持つ一部軍部の習近平指導部への“揺さぶり”なのか・・・そのあたりはよくわかりません。どちらかと言えば、後者の線が感じられます。

そうなると、米中関係にしろ、日中関係にしろ、習近平主席の思惑とは別の要素で動く部分があることにもなります。

****中国軍機、米軍偵察機の約150メートル先を横切る 黄海上空で****
25日の米中首脳会談を前に、米国防総省のクック報道官は22日、黄海上空の国際空域で中国軍のJH7戦闘機が米軍の電子偵察機RC135を捕捉して異常接近し、「危険な方法」で横切ったと明らかにした。

現場は中国・山東半島の東約130キロの上空で15日に戦闘機2機が飛来し、うち1機が偵察機の約150メートル先を横切ったとしている。

昨年8月には南シナ海上空で、中国軍の戦闘機が米軍の対潜哨戒機に約9メートルまで異常接近し、下方約15〜30メートルを横切るなど挑発行動を繰り返した。このとき米政府は、「建設的な軍事関係の推進を侵害するものだ」と強く非難したが、報道官は今回、「前回と似たような事案ではない」などと述べるにとどめた。習近平国家主席が訪米して日程を開始しており、対中批判を抑えたとみられる。

中国は9月、海軍艦船を米アラスカ州沖に展開しており、今回の異常接近が意図的である可能性もある。

中国軍機による米軍機の捕捉は東シナ海や南シナ海でもほぼ常態化しており、米上院軍事委員会のマケイン委員長は「アジア太平洋地域で、中国が強引な行動を続けていることを示すものだ」と非難した。【9月23日 産経】
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一方、習近平主席は中国の経済力を見せつけ、アメリカにとって中国との関係強化が“得策”であることをアピールしています。

****習近平氏訪米】「米中関係を正しい方向に」 経済カードで米に揺さぶり****
・・・米中関係が視界不良に陥るなか、習氏はまず米経済界など民間へのアピールを通じ、米国内の中国経済に対する失速懸念を押さえ込み、安全保障問題の懸案が山積するオバマ米大統領との首脳会談に臨む構えだ。

習氏の訪米は2013年のカリフォルニア州訪問以来、2年ぶり。公式訪米は習政権ではこれが初めて。国家副主席時代から米中の「新型大国関係」という持論を掲げ、米側に対等な地位を認めさせたいという考えは、経済が減速期に入った現在も変わらない。

22日にシアトル市内で開かれた米中関係団体の会合で、習氏はこの対米関係の持論を踏まえつつ、相互利益を求める「ウィンウィン」の関係構築を訴え、米中関係を「正しい方向に向けて築いていくべきだ」と述べた。

習氏は同日付の米紙ウォールストリート・ジャーナルに掲載された単独インタビューでも、「中国は米国と手を携えて地域・国際問題に取り組むことを望んでいる」と対米重視を強調。

中国経済の減速については「発展の過程で生じている問題」として、中国経済の先行きに過度の懸念は無用−との認識を示した。

こうした経済カードを前面に押し出すため、中国からは企業家を含めて千人規模の代表団が訪米した。習氏はシアトルで航空機大手ボーイング社の工場を訪ねるとともに、訪問に合わせて同社の大型機30機の調達契約をまとめた。

マイクロソフト、グーグルなど米IT企業のトップを集めた会合にも出席し、中国市場が米国のIT分野にとって、いまなお巨大な市場であることを示す。

中国でのインターネット環境は、ネット監視による統制や強化でグーグル傘下のサービスが締め出されるなど、「冷戦状態」とまで酷評される状況だ。

こうした国家統制は何ら変わっていないものの、インターネット利用者は中国政府の集計で6億6800万人に達したとされる。中国は米国の関連業界の足元を見透かす形で、米経済界への揺さぶりをかけた形だ。

中国の経済カードの重要度については、中国と海外との間で判断に大きな開きがみられる。だが、中国側からは「世界第1と第2の経済体」(王毅外相)などと巨大経済を武器とする見方が示されるなど、なおも経済カードでこの訪米を押し切る戦術がにじんでいる。【9月23日 産経】
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ボーイング旅客機300機の発注は、定価で380億ドル(約4.5兆円)規模とのことです。
ボーイング社CEOは、中国に内装や塗装などを行う工場を建設することも発表しています。

また、17日には中国の国有企業が米国企業と米西部カリフォルニア州ロサンゼルスとネバダ州ラスベガスを結ぶ高速鉄道の建設で合意したことも発表されています。

表に出てくる話以外にも・・・・
なんだかんだで事前の動きはありますが、会談では、人権問題や南シナ海問題で中国が大きく譲ることは考えにくく、サイバー攻撃問題では、高官協議を続けるとか、意見交換の場を設ける・・・といったところではないでしょうか。

それなら首脳会談が無意味かと言えば、そうも言えません。
表に出てくる話はあまりなくても、そうした表の話とは別に、両首脳のやり取りが今後の両国の動きに影響することは十分に考えられます。
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