
(ビジネスホテルのようなノルウェーの刑務所【http://www.all-nationz.com/archives/1001773248.html】)
【フィリピン 定員800人の刑務所に3800人】
フィリピンのドゥテルテ大統領は公約どおり麻薬犯罪者の殺害を奨励する方針をとっており、大統領選勝利後、警察はすでに容疑者110人以上を殺害したとのことです。
****フィリピン検事総長、麻薬犯罪者のさらなる殺害を奨励****
フィリピンのホセ・カリダ検事総長は11日、麻薬犯罪への関与が疑われる容疑者らをさらに殺害するよう警察に要請した。犯罪に対し容赦ない姿勢を打ち出して徐々に批判が強まっているロドリゴ・ドゥテルテ大統領を擁護した格好だ。
何千人もの犯罪者を殺害すると公言し、徹底した治安対策を公約したドゥテルテ氏が5月の大統領選で勝利して以来、警察はすでに容疑者110人以上を殺害したと認めている。
また、公式発表される死者数が増加するとともに、警察による殺害と確認されていないにもかかわらず、麻薬密売人と書かれた札を提げた遺体が複数発見されていることをめぐり、人権問題を専門とする弁護士や一部の議員らは、犯罪との闘いが制御不能に陥りつつあるとして強い懸念を表明している。
こういった批判を受けてカリダ検事総長は11日、国家警察本部で記者会見を行い、警察による殺害の合法性を強調するとともに、麻薬密売に関与した疑いのある容疑者らをさらに殺害するよう奨励した。
カリダ氏は警察による殺害について、「私はまだ不十分だと考えている」と述べ、「フィリピンには麻薬の中毒者や密売人が何人いるだろうか? わが国のほとんどの村に(麻薬が)まん延している」と指摘した。
先月30日に就任したドゥテルテ大統領は、フィリピンが麻薬大国になってしまうのを防ぐためには抜本的な対応が必要だと繰り返し訴えている。【7月11日 AFP】
********************
警察が大統領の意を受けた処刑隊となり、司法の必要性も否定したようにも思えます。
そもそもフィリピンの警察というのは、そんなに信用できる存在なのでしょうか?多くの途上国では警察組織には腐敗が蔓延しています。その警察が“殺しの許可”を与えられたら・・・。
当然ながら容疑者全員を殺している訳でもなく、刑務所は収容者であふれかえっているようです。

【7月31日 AFP】
****超満員の刑務所、フィリピン警察が犯罪撲滅に全力****
フィリピン警察が前代未聞の規模で犯罪撲滅に努めている影響で、同国の刑務所がいま収容者であふれ返っている。
およそ60年前に建てられた首都マニラ・ケソン市にある定員800人の刑務所には、3800人が押し込まれ、階段や床のひび割れた屋外バスケット場、ベットの下、古い毛布で作られたハンモックなどで、順番に睡眠をとっている。29日夜から30日にかけて撮影。【7月31日 AFP】
******************
【パラグアイ 麻薬組織幹部の「VIP監房」】
アメリカTVドラマ「プリズンブレイク」真っ青の状況ですが、南米パラグアイの麻薬組織幹部の豪華待遇もTVドラマの上を行く状態です。この手の話はメキシコなど他の国でも聞きます。

【7月30日 AFP】
****服役中の麻薬組織幹部、監房を豪華スイートに パラグアイ****
南米パラグアイで26日、刑務所で脱獄計画があるとして、警察が麻薬組織の幹部の監房を強制捜査したところ、目にしたものは、プラズマテレビやキッチン、DVDコレクション、会議室まで備わった3部屋ある豪華な居室だった――。
南米で最も危険な麻薬密売人の一人とされるブラジル人のハルビス・チメネス・パバオ受刑者はマネーロンダリング(資金洗浄)の罪で8年の禁錮刑判決を受け、パラグアイの首都アスンシオンの刑務所で服役中だ。
パバオ受刑者の刑務所内における暮らしぶりの実態が発覚したのは、所内で爆弾が見つかったためだった。パバオ受刑者は監房の壁を爆破し、脱獄を企てていたとみられている。
パバオ受刑者の監房には、バスルームやキッチン、会議室などが備わった3部屋あり、エアコンや豪華な家具、大型プラズマテレビ、DVDコレクションも置かれ、壁はタイルで装飾されていて、受刑者の間では「VIP監房」と呼ばれていた。
パバオ受刑者の弁護士によると、監房の豪華居室化にあたっては、法務省関係者や刑務所管理者らが賄賂を受け取ったという。パバオ受刑者の監房について明らかになった直後、カーラ・バシガルーポ法相は更迭された。【7月30日 AFP】
****************
こうした「VIP監房」は刑務所内外では“公然の秘密”として知られていたところでしょうから、麻薬組織幹部本人の問題というより、法務省関係者・刑務所管理者全体の問題です。
“賄賂”以外にも、要求をきかないと本人・家族の命が危険にさらされる・・・といったこともあったのかも。
【北欧 豪華で自由な刑務所事情】
違法な「VIP監房」ではなく、合法的に受刑者の快適な居住空間が保証されている国もあります。
北欧の刑務所は、その快適さでうらやましくなるほどです。(冒頭画像残照)
自由度も相当で、非暴力的な罪を犯した犯罪者を収容するスウェーデン、コルマーデン刑務所では、夜は自分で独房に鍵をかけ、昼間は自由に出歩くことができるとか。
****スウェーデン、ノルウェーの豪華でフリーダム過ぎる刑務所事情****
サダム・フセインも入りたがった、スウェーデンやノルウェーの豪華で自由すぎる刑務所事情、画像をまとめてみました。鉄格子もないホテル並みの個室に、充実した図書館、スポーツジム、音楽スタジオ。PS3を要求する殺人鬼。ちょっと(いやかなり?)うらやましくなる更正環境です。
サダム・フセインも希望した、スウェーデン刑務所
サダム・フセインが、裁判までの待機時間を過ごすなら、スウェーデンの刑務所がいいと言っていると彼の弁護士がスウェーデンのアフトンブラーデット紙のインタビューで公表。
スウェーデンは歴史的にも中立を守ってきた国であり、刑務所の状態や待遇も、他国に比べて良いからだとか。
スウェーデンのソレンツナにある、厳重警備が必要な囚人たちが収容されている刑務所。デザイナーズ家具、自然採光、共用キッチン、そして訪問者用のゲストルームが17部屋もあるのが自慢だ。ちなみにスウェーデン全土の囚人の再犯行率は平均で41%だそうだ。(中略)
それでも低い再犯率、閉鎖される刑務所も
スウェーデンの刑務所では2004~10年にかけて毎年1%、11~12年には6%服役者の数が減少し、現在の服役者の数は約4300人。閉鎖される施設もあり、観光名所にもなっている。
スウェーデンでは受刑者の数に比べて刑務所供給過多になっているため、4つの刑務所を閉じる事になったようです。
しかしながらスウェーデンでは犯罪が減っているというわけではなく、むしろ犯罪発生率は少し上がっているそうですが、犯罪者を閉じ込める手段をとるより、彼らのリハビリを行う方に力を入れた結果、刑務所が供給過多になったんだとか。
実際、2011年から2012年の間で刑務所人口は6パーセント減っています(一方アメリカでは、連邦政府の施設は40%のキャパシティを超えている)。【2014年11月10日 NAVERまとめ http://matome.naver.jp/odai/2141462730782308101】
********************
【ノルウェー 「増悪犯罪に、さらなる増悪や刑罰で答える」ことを否定する】
人権の尊重ということもありますが、刑務所に関する基本的な認識が異なるようです。
“刑務所というのは、罰する場所ではなく、社会復帰のためのリハビリを行う場所なのだ”
****連続テロから5年 復讐という選択肢を拒むノルウェー 遺族や生存者が当時の悲惨なSNSを公開****
<2011年にノルウェーで一人の男が77人の命を奪った連続テロ事件から間もなく丸5年。禁錮21年と短く感じられる判決に豪華な独房などの寛容さは何を意味するのか。テロ被害に遭った他の国からも視察が訪れるというノルウェー流テロとの付き合い方> (銃乱射事件が起きた島には犠牲者の名前が綴られたモニュメントがある)
「あの日」から、5年が経った。
ノルウェーの人々の心をざわつかせる「7月22日」が、またやってくる。2011年7月22日、アンネシュ・ブレイビク受刑者(以下ブレイビク)は、オスロ中心地にある政府庁舎を爆破し8人の命を奪った後、オスロから離れたウトヤ島で労働党の青年部の関係者69人を銃で殺害した。単独犯行によって殺害された合計77人のうち、ウトヤ島では政治活動に積極的な20歳以下の若者が多くを占めた。
犯行の動機は、ノルウェーの多文化主義やイスラム系移民から国を守るためだったとし、「残酷だが、必要な措置だった」とブレイビクは警察に話した。ブレイビクには、最高刑に相当する禁錮21年の判決が下された。「ここまで多くの人々の命を奪ったのに、最高刑が21年?死刑はないのか?」──そう思う人も多いかもしれない。
殺人者に対して、ノルウェーは「優しすぎる」か?
ノルウェーには死刑制度がない。それに加え、ノルウェーのブレイビクに対する処置は、その後も多くの国々を驚かせている。「快適すぎるのでは」という刑務所の環境、オスロ大学政治学科への通信制による入学許可。そして、「隔離収監が人権侵害だ」というブレイビクの訴えの一部は裁判所によって認定された。
ブレイビクが特別扱いされているのではなく、どの受刑者とも同じ権利を国や大学、裁判所が提供しようとした結果だ。
ブレイビクだけに厳格な処置をすることを、ノルウェーは拒む。異例の対応は、国の価値観の変化を意味し、ブレイビクの増悪が勝利したことになる。
ノルウェーの人々は、ブレイビクの「思う壺にはさせない」と、「増悪犯罪に、さらなる増悪や刑罰で答える」ことを否定する。刑務所というのは、罰する場所ではなく、社会復帰のためのリハビリを行う場所なのだ。(後略)【7月21日 Newsweek】
*********************
フィリピンのドゥテルテ大統領のような犯罪者に厳しい対応も強い信念を必要としますが、ノルウェーの“「増悪犯罪に、さらなる増悪や刑罰で答える」ことを否定する”というのも、更に強い思念が必要です。
【難民・移民の増加で揺れる北欧民主主義】
ただ、難民・移民の増加という新たな現象に直面して、そうした北欧民主主義も揺れています。
スェーデンやデンマークでは排外的な右翼勢力が台頭しており、政治の右傾化が進んでいます。
****<北欧>難民審査を厳格化 出入国審査の復活国が相次ぐ****
難民や移民を積極的に受け入れてきた北欧諸国が、転機に立たされている。域内での移動の自由を定める「シェンゲン協定」参加国として廃止していた出入国審査を復活する国が相次ぎ、難民審査の厳格化が目立っている。
昨年の難民申請者が16万人以上に上ったスウェーデンは昨年11月に出入国審査を復活させた。さらにアンデシュ・イーゲマン内相は1月27日、難民申請者8万人を国外退去にすることを明らかにした。行方をくらます人が増えることも想定し、警察官を1000人増強するという。
退去の対象となるのは、紛争地から来たことを証明する旅券などの書類を所持していないケース。スウェーデンは2013年から、シリアなど内乱状態の国から来た難民申請者に永住許可を与えていた。
しかし昨年11月、受け入れ施設の確保などが間に合わないなどとして永住許可を廃止し、3年間の一時滞在許可に変更。同時に難民審査を厳格化する方針を示していた。
難民が暮らす施設への放火や外国人を狙った襲撃事件も相次いでいる。1月29日夜には首都ストックホルムで覆面姿の若者が移民排斥のパンフレットをまき、外国人を襲う事件が起きている。
一方、1月25日には、身寄りのない未成年の難民を保護する施設で、女性職員が難民の少年に刺殺される事件が起きた。
同日に発表された世論調査結果によると、移民排斥を掲げるスウェーデン民主党の支持率が18%と総選挙(14年9月)の時より5ポイント増えた。
一方、難民に寛容な政策をとってきた連立与党の最大政党・社会民主労働党の支持率は総選挙時より8ポイント減の23%。同党にとっては過去50年で最低の支持率となった。
隣国フィンランドも1月末、昨年の難民申請者約3万2000人のうち約2万人を国外退去させる方針を示した。ノルウェーも、ロシア経由で入国した約5000人をロシア側に送り返す方針を打ち出している。
ドイツからスウェーデンに向かう難民らが通過するデンマークは1月4日、ドイツとの国境で旅券による身元確認を始めた。ラスムセン首相は「(スウェーデンによる国境管理の強化で)大量の違法入国者がコペンハーゲンとその周辺に滞留する可能性が高まったため」と説明した。
デンマーク議会はさらに、1万デンマーククローネ(約17万円)を超える価値の金品を持つ人から超過分を徴収する法案を1月下旬に可決した。滞在経費を一部負担させることで、難民流入を抑えようという狙いだ。
難民支援を行うスウェーデンの非政府組織(NGO)「FARR」のサナ・ベスティン代表は、毎日新聞の電話取材に「難民の中には出身国を証明できる書類を失っている人も多く、審査厳格化は人権問題だ」と話す。
ベスティン氏は、右派勢力の台頭について「敵を作りだして人気を得ようとしている」と批判。「難民対策が国家予算を圧迫するとの声もあるが、それは社会に定着する初期段階のことだ。その時期を過ぎれば、国や社会に利益をもたらす存在になる」と主張した。【2月15日 毎日】
******************
“憎しみよりも、愛と思いやりを選ぶ”という北欧民主主義・人権尊重の姿勢は、民族・文化の壁を乗り越えられるのか・・・?
北欧に行ったことはありませんが、最近北欧のミステリーはよく読みます。
スェーデンの「刑事ヴァランダー」シリーズや、デンマークの「特捜部Q」シリーズなどを読むと、移民に対する社会の雰囲気は厳しいものがあるようです。
【ノルウェーの面目躍如? 独立100年のフィンランドに自国領の山の一部をプレゼント】
そうしたなかで、いかにもノルウェーらしい話も。
****独立100年、プレゼントは山=フィンランドにノルウェー検討****
英紙ガーディアンによると、ノルウェー政府は隣国フィンランドの来年の独立100周年を祝うため、両国間の山岳地帯に引かれた国境を変更し、ノルウェー側の山の一部をフィンランドに贈ることを検討している。実現すれば、フィンランドの最高峰がこれまでより7メートル高くなる。
ノルウェーのソルベルグ首相は公共放送NRKに「形式上の問題が少々あり、最終決断はしていない」と述べつつも「検討している」と語った。
この山はハルティ山(1365メートル)。フィンランドの現在の最高地点はハルティ山の支脈上で1324メートルだが、国境を40メートルほどノルウェー側に移せば、高さ1331メートルの支脈の頂点がフィンランド領になる。発案したノルウェーの地球物理学者は、ノルウェーはほんの0.015平方キロの領土を失うだけで、フィンランドをとても喜ばせることができると指摘した。
この案に対し、「(憲法は)領土の引き渡しを禁止している」(与党国会議員)との反発もあったが、フェイスブックで支持を集めるなど両国民の反応はおおむね肯定的となっている。【7月31日 時事】
******************
領土問題となると、「たとえ1ミリでも譲れない」という険しい対応が、日本を含めた世界のどの国でもみられますが、隣国の独立100周年を祝うため、自国領の一部をプレゼントするというのは痛快です。
領土より大切なのは国民の暮らしであり、それを支える隣国との関係です。
別に、“くれてやる”とかいう話ではありませんが、もう少し肩の力を抜いて話し合えば、まったく異なる対応も可能ではないか・・・とも思うのですが。
ノルウェーの話は実現にはハードルがあるようですが、世界の領土に関する固定観念を変革するうえでも、是非とも実現させてほしいものです。