孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

南スーダン 存在意義が問われる国連PKO部隊 救助要請でも出動せず

2016-08-19 21:57:40 | アフリカ

(現在南スーダンには1万2000人の国連部隊が派遣されています。【8月18日 CNN】)

混乱長期化の可能性 すでに国外避難民100万人、国内避難民160万人
キール大統領派とマシャール副大統領派の内戦が続いている南スーダンでは、これまでも“合意”が成立と言いながらも戦闘が継続・再発するという形で、基本的な和解は全く進んでいません。

4月になんとか実現した両派の暫定統一政府ですが、7月にも300人近い死者を出す衝突があり、それをようやく収束したかと思うと、副大統領派が内部対立で分裂、キール大統領がこれに乗じる形でマシャール副大統領を解任するということで、戦闘再燃が懸念される状況となっています。
(7月30日ブログ“「世界は戦争状態にある」 難民問題、イエメン、南スーダン、ブルンジ”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20160730

キール大統領に解任されたマシャール前副大統領はコンゴに出国しており、混乱は長期化するとの観測がなされています。

****南スーダン、前副大統領が出国か 混乱長期化の可能性****
キール大統領派とマシャル前副大統領派による大規模な戦闘が再発した南スーダンで17日、マシャル氏が同国を脱出し、南隣のコンゴ民主共和国に逃れた模様だ。ロイター通信などが18日、伝えた。
 
マシャル氏の出国により両派の対話がこれまで以上に難しくなり、混乱が長期化する可能性が強まっている。南スーダンでは現在、日本の自衛隊が国連平和維持活動(PKO)に参加している。
 
ロイターなどによると、国連報道官が18日、「人道的な理由から、PKO部隊が、マシャル氏や家族のコンゴ民主への移動を手助けした」と明かした。マシャル氏側の報道官によると、マシャル氏は早期のエチオピア入りを希望しており、近く記者会見を開きたいとしている。
 
混乱が続く南スーダンでは昨年8月、和平合意が結ばれ、今年4月に両派統一の暫定政権が樹立された。マシャル氏は副大統領に就任したが、7月に戦闘が再発して以降、首都ジュバを離脱。行方がわからなくなっていた。

その後、キール氏はマシャル氏の副大統領職を解任。マシャル氏派は反発を強め、両派間の緊張が高まっていた。【8月19日 朝日】
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すでに十分に長引いている南スーダンの混乱・戦闘を避けて、100万人に近い人々が国外に逃れており、国内避難民約160万人と併せ、避難民対策が急務となっています。

****南スーダンの避難民約100万人、悲惨な環境で生活 国連が警鐘****
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は15日、紛争の続く南スーダンから逃れた100万人近い避難民が、近隣諸国に設置された悲惨な状況下のキャンプで暮らすことを余儀なくされているとして、警鐘を鳴らした。避難民の大半が女性や子どもだという。
 
UNHCRが発表した声明によると、南スーダンの首都ジュバで新たな戦闘が発生したことを受けて、隣国の一つウガンダだけで、先月に避難した人の数は「1日当たり8000人以上」に上った。

新たにウガンダへ逃れた人々のうち、9割が女性と子どもだったという。
 
UNHCRは「数千人単位の避難民が南スーダンから逃れてきている。近隣諸国は、押し寄せる避難民の数の重圧がのしかかり、危機的なまでに資金が不足する中、対応に苦慮している」とし、「同地域にはすでに約93万人の避難民がいる上、さらに多くの人が連日到着している」と指摘した。
 
UNHCRは近隣の6か国に避難している計100万人近い人々と、南スーダンに約160万人いるとされる国内避難民に物資を供給するのに必要な6億900万ドル(約615億円)のうち、受け取った額は5分の1しかないと訴えている。【8月15日 AFP】
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国連 PKO追加派遣 任務遂行のためななら武力行使も
こうした事態に国連安保理は、PKOの国連南スーダン派遣団(UNMISS)の任期を延長し、4000人規模の部隊を南スーダンに追加派遣する決議を採択しています。
UNMISSは現在、軍事要員約1万2000人で、日本も陸上自衛隊から約350人を派遣しています。

追加部隊は近隣諸国から出される予定で、首都ジュバで国連要員や民間人、空港などの施設防護を担うことになっており、任務遂行のため武力行使の権限が与えられています。国連要員などへの攻撃が準備されているとの信頼できる情報がある場合は、先制攻撃も可能とされています。

****南スーダンに4000人規模の追加派兵、国連安保理が決議採択****
国連安全保障理事会は12日、4000人規模の部隊を南スーダンに派遣する決議を採択した。南スーダンでは特に先月初め以降に武力衝突が激化し、内戦状態に終止符を打つための努力が後退する事態が続いている。
 
米国が草案を作成した決議には、南スーダン政府が新たな部隊の配備を妨害した場合、同国に武器禁輸の制裁措置を発動する選択肢も含まれている。
 
決議には安保理理事国15か国のうち11か国が賛成票を投じ、中国、ロシア、エジプト、ベネズエラの4か国は、国連の追加派兵について南スーダン政府の同意を得ていないことを理由に棄権した。
 
南スーダンの首都ジュバでは戦闘激化によって7月初めに多数の死者が出ており、アフリカ各国の首脳からは、ジュバの治安を確保し、国連の基地を保護するためにアフリカ諸国による部隊の派遣を求める声が上がっていた。
 
主にエチオピアとケニア、ルワンダが兵力を出すとみられる追加派遣部隊には、任務を遂行するために「必要に応じて断固たる行動を取るなど、必要なあらゆる手段を行使」する権限が与えられる。
 
同部隊はジュバと空港などを防護し、「攻撃準備中または攻撃実施中であると信じるに足る者を迅速かつ効果的に阻止する」任務を負う。【8月13日 AFP】
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南スーダン政府は、こうした武力行使も辞さない部隊の受入に難色を示しているとも言われ、速やかな追加派遣が実現するかどうかは不透明です。

“国連は武器禁輸の発動も示唆し受け入れを迫っている”【8月13日 毎日】とのことですが、そもそも、内戦が続いている南スーダンへの武器輸出が認められていること自体が不思議です。

どの内戦・紛争もそうですが、戦闘を鎮静化させる有効な手段は武器・弾薬の補給を断つことだと思うのですが。

救助を求められても出動しないPKO
先述のように、現在でも南スーダンには軍事要員約1万2000人のPKO部隊が展開しているのですが、その存在意義が疑問視されるような事件も報じられています。

****南スーダン兵士が外国人襲撃、「国連部隊は救助要請に応じず」の証言****
南スーダンで援助団体の外国人職員などが滞在していた施設が兵士の集団に襲撃され、1人が死亡、女性職員が強姦されたり暴行されたりする事件が起きていたことがこのほど明らかになった。

襲撃時、国連部隊が救助を求められたにもかかわらず出動しなかったという証言もあり、国連の潘基文(パンギムン)事務総長は事実関係などについて調査を指示した。

AP通信や人権団体のヒューマン・ライツ・ウォッチが15日に伝えたところでは、事件は南スーダンで大統領派と副大統領派の衝突が起きていた7月11日に首都ジュバで発生。外国人職員などが滞在していた施設が、制服姿の南スーダン兵80~100人に襲撃された。

同施設の周辺では数日前から衝突が続いていたが、11日午後3時ごろ、兵士らが鉄鋼製の扉を1時間以上にわたって銃撃して2階建ての建物に侵入。現金や貴重品の略奪を始めた。

米国人女性によれば、浴室に隠れた約16人は、国連や大使館に電話やメールで助けを求め続けたという。
しかし兵士らはドアを破って室内に乱入し、女性を1人ずつ連れ出して暴行。米国人女性は自動小銃で殴られ、銃口を突き付けられて脅されたと話している。
国際機関職員の別の女性も、ほかの数人の女性と共に、複数の男に何度も強姦されたと証言した。

援助団体のフィリピン人男性職員はベッドの下に隠れ、室内を荒らし回る兵士たちを目撃した。兵士たちは「お前たち外国人がこの国で問題を起こした。これはアメリカ人が南スーダンに対してやったことだ」と主張していたという。

兵士たちはさらに、反体制派と同じ民族の地元記者(32)を銃撃して殺害したという。

南スーダンの治安部隊や民間警備会社が事件発生から3時間以上たって、ようやく1人目の生存者を救出。全員が救出されたのは約18時間後だった。

目撃者らの話では、襲撃された施設の近くには国連の拠点があり、国連南スーダン派遣団(UNMISS)は同施設から何度も救援要請を受けたにもかかわらず、対応しなかったという。このため救助は民間警備会社や南スーダン軍に頼らざるを得なかったと目撃者は話している。

国連の潘事務総長は声明を発表し、UNMISSが適切に対応しなかったと伝えられたことを重く見て、独立調査を指示したことを明らかにした。

国連安全保障理事会は8月12日、南スーダンの平和維持部隊を増強するため4000人の増派を決議した。

一方、UNMISSの広報は当時の同国の状況について、「極度に困難かつ予断を許さない治安環境」にあり、「危険にさらされた人員の救助を実行できる能力に重大な限界があった」と説明。UNMISSは事実関係や経緯について調査に乗り出すと表明した。

南スーダンの大統領報道官は、襲撃の計画があることは知らなかったと述べ、事件に関与した人物を見付け出して訴追すると表明した。政府は外国人に対する襲撃を指示したことはないと強調している。【8月18日 CNN】
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“襲撃された施設の近くには国連の拠点があり、国連南スーダン派遣団(UNMISS)は同施設から何度も救援要請を受けたにもかかわらず、対応しなかった”・・・・人員・装備の点で「救助を実行できる能力に重大な限界があった」ということのようですが・・・・。

そうであるにしても、PKOとしてそこにいるのですから、やはり国連の旗を掲げて救援に向かってほしかったという思いがあります。

前回7月30日ブログでも取り上げたように、PKO部隊が住民女性への性的暴行を見て見ぬふりをした・・・という報道もなされています。

****戦闘激化の南スーダンで性的暴行120件、PKO要員が見ぬふりか****
国連は27日、南スーダンでサルバ・キール大統領を支持する政府軍とリヤク・マシャール第1副大統領(当時)の支持勢力との間で激しい戦闘が再発した今月8日以降、少なくとも120件の性的暴行事件が起きたと発表した。

国連の平和維持活動(PKO)要員が暴行現場を目撃していながら見逃した疑いがあるとして、調査を開始したという。

「PKO要員が窮地にある市民を救助しなかった疑いがあり、深刻に受け止めている」と、ファルハン・ハク国連事務総長副報道官は述べ、国連南スーダン派遣団(UNMISS)司令部が調査を行っていることを明らかにした。
 
報道によると、少なくとも1件の女性暴行事件の現場にPKO要員が居合わせたが、何もしなかったという。AP通信は目撃者1人の証言として、基地の入り口近くで女性が兵士2人に襲われ、助けを求めて叫んでいるのを中国とネパールのPKO部隊員30人余りが見ていたと伝えた。
 
ハク副報道官によると、首都ジュバでは国連基地の付近を含む市内各地で、軍服を着た南スーダン兵と私服の男たちが市民に対し性的暴行をはたらいたとみられ、集団暴行も起きたという。被害者には未成年者も含まれているという。(後略)【7月28日 AFP】
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紛争が一応収まっているというPKO派遣時の状態と現在の状況が異なるということはあるのでしょうが、これでは何のための国連部隊なのかわかりません。
紛争国の揉め事にかかわると厄介な事態になるというのもわかりますが、国連の旗のもとに、多少の武器も手にしてそこにいるのですから。

ルワンダでのジェノサイドやボスニア・ヘルツェゴビナ東部スレブレニツァでの事件を経験して、国連も現地住民保護に積極的に関与する方向に変わってきており、今回追加派遣も「任務遂行のためなら武力行使も辞さない」とされていますが、まだ実際に現地に派遣されている部隊の意識はそこまで至っていないようです。

日本の自衛隊も、こうした事態を想定しておく必要があります。
場合によっては、任務遂行のための犠牲もやむを得ないと考えます。それは国際社会において果たすべき責務であるとも考えます。

それにしても、今回の外国人職員などが滞在していた施設を襲撃したのは南スーダン政府軍兵士のようですが、「お前たち外国人がこの国で問題を起こした。これはアメリカ人が南スーダンに対してやったことだ」という彼らの憎悪はどこから生じているのでしょうか?
コメント (1)
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