孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イラン  自由を求め、アメリカ文化大好きな国民の声を制約する内外の政治環境

2017-07-29 10:44:19 | 人権 児童
(イランではgooはアクセスできませんでした。帰国フライトの乗継地バンコクでようやく更新できるようになりましたので、遡ってアップしています)

(イラン北部ラシュト出身の3人組【2016年8月31日 神田大介氏 withnews】)

ギャル系・おしゃれ女子
7月28日 イラン観光5日目  イスファハーン観光
7月29日 イラン観光6日目  イスファハーンからテヘランへ移動 途中カシャーン観光

イスラム教の制約が重視されるイランでは周知のようにファッションにもいろいろ制約があります。

男性の場合は、欧米文化を象徴するネクタイは着用しない、肌を露出する半ズボンは避けるといった程度ですが、常に国内外で問題になるのが女性のファッションです。

女性の美しさの象徴である髪はスカーフで覆うこと以外にも、「首元(胸元)は露出させない」「ヒップラインを出さない」という不文律もあるようです。違反すれば、むち打ちの刑を科されることもあるとか。

こうしたドレスコードを厳格に守る場合、頭からすっぽりと体全体を覆う黒い布(チャドル)を着用する形となり、その黒ずくめのファッションを私は「カラス・ファッション」と呼んでいます。

日差しのきついこの時期、サンバイザーのようなつばを着用する女性もいて、横から見ると、そのつばが嘴のようにも見えて、ゆったりしたチャドルと併せて「ペンギン・ファッション」と呼んだ方がいいかも・・・・とも感じます。

ただ、自由で個性的なファッションを求める女性がこれで満足するはずもなく、上記のような「カラス」あるいは「ペンギン」は、首都テヘランの若い女性について言えば、むしろ少数派のように思えます。

もちろんスカーフは着用しますが、前髪を意識的に露出する(髪も、イラン女性は黒髪がおおいのですが、金髪・茶髪に染めている女性も多くいます)、あるいはスカーフは髪の後ろに引っ掛ける形で、髪のほとんどを露出するいった具合です。

服の色も黒ではなく、カラフルな色使い。

結果的に、黒ずくめの伝統的ファッションと、鮮やか・個性的なファッションが同居する形にもなりますが、後者は当局の取り締まりとも“駆け引き”のリスクを負うことにもなります。
(当局の取り締まり姿勢は、厳しくなったり緩くなったり、変化するようです)

そのあたりの女性ファッションについては「イランにもいるギャル系・おしゃれ女子 風紀警察と駆け引き」【2016年8月31日 神田大介氏 withnews】https://withnews.jp/article/f0160831004qq000000000000000W03510801qq000013913Aに画像とともに詳しく紹介されています。

実際、思わず視線が釘付けになるような思い切ったファッションの女性も少なくありません。
もちろん、伝統的なチャドルも、それはそれでエキゾチックな印象も・・・・セクハラ発言になりそうなので、この話題はこのあたりで。

街にあふれるアメリカ製品のコピー商品
先日、水タバコ抑制策によって、チャイハーネで楽しむことが難しくなっている・・・という話を紹介しましたが、当局が抑制したいのは水タバコといいより、チャイハーネ(茶店)自体であるとも。

それは、チャイハーネのようなところに大勢が集まって、政治を含むいろんな話をすることを嫌っているから・・・という指摘も。

確かに、戒厳令が出されるような国では、一定人数以上が集まることが禁止されますが、それと同じ発想でしょう。

イランは国際的にはアメリカと厳しく対峙する関係にあり、アメリカ製品を国内で手にするのは難しいのですが、実はイラン国民は“アメリカ文化が大好き”で、アメリカ製をパクったような商品が氾濫している、ただし、そういうなかにあってどこのレストランでも目にするコカ・コーラは本物で、その背景は・・・・という話も。

****@テヘラン)イラン人は実は米国文化好き? あの手この手で****
4月にイランの首都テヘランに赴任して、3カ月あまりが経った。反米国家として知られるイラン。だが、実際にテヘランで暮らしてみると、驚くほど米国製品やコピー製品と思われる商品を多く見かける。

電器店では米アップルのロゴマークが至る所に飾られ、携帯電話のiPhoneやアップル製のラップトップコンピューターが売られている。

スーパーにはコカ・コーラの製品があふれかえる。実はイラン人は米国文化や米国製品が大好きなのではないだろうか。
 
それでも、イランで米国製品を手に入れるのはハードルが高い。イランが核開発を大幅に制限する見返りに国際社会からの経済制裁を解除させた2015年7月の核合意後も、イランは依然として米国からテロ支援国家に指定され、経済制裁の対象。そのため特別な場合を除いては、米国企業はイランとの取引はいまだに禁じられているからだ。(中略)

米国文化の象徴ともいえるコカ・コーラも、イラン滞在中はお預けかなと思っていたが、こちらもスーパーなどで買い求めることができる。

調べてみると、こちらは輸入品ではなく、イラン北部の第2の都市マシュハドにある工場で生産された純正品だというのだ。79年のイスラム革命以後、米国企業が締め出されたのに、現在コカ・コーラをイランで生産できるのはなぜなのか。(中略)

イスラム革命の機運が高まりつつあった78年ごろ、コカ・コーラはイランから撤退。だが、イラン人からのニーズが強かったこともあり、1990年代、アイルランドにあるコカ・コーラの子会社から、コーラの濃縮原料を輸入し、イラン国内で製造するという「抜け道」を使ってコカ・コーラのライセンスがイラン企業に付与されたのだという。(中略)

コカ・コーラは生き残った一方で、マクドナルドやケンタッキーフライドチキン(KFC)といった米国の飲食店は今も出店ができていない。

明確に禁止する法律はないというが、高位の宗教指導者が最高指導者となる「イスラム法学者による統治」を採用するイランのイスラム体制では、マクドナルドやKFCといった米国企業のイラン進出は、宗教指導者が忌み嫌う西洋文化の浸透となり「米国支配の象徴」と見なされるからだ。

テヘラン中心部の高速道路沿いに立つ1軒のハンバーガーショップ。一見すると、ニューヨークに本店がある「SHAKE SHACK」(シェイク・シャック)そっくりだ。でも、よく見ると「SHEAK SHACK」(シーク・シャック)とある。

(中略)友達3人と一緒に来ていた医療系企業インターンのエラヘーさん(25)は「コピーした偽物の店でも、米国の雰囲気があるだけで私たちには魅力的よ。イラン政府は米国政府のことは嫌いだけど、私たちは米国文化が大好きだから」と笑顔で話し、おいしそうにハンバーガーをほおばっていた。
 
(中略)これだけではない。テヘラン市内でいわゆる米国ブランドをまねした店は枚挙にいとまがない。(中略)数え切れないほどだ。
 
大学生のハメッドさん(20)は「政治と文化は別だよ。本心ではみんな米国に旅行したいし、米国の文化に憧れている。いつか堂々と、米国企業がイランに来られるようになればいいのにな」と話す。

2年前の核合意後、テヘランにマクドナルドが進出するかもしれないとのうわさが流れただけで、ネット上の検索ワードで「マクドナルド」がトップになるほどの人気ぶりだ。

私も、日本では1カ月に数回はマクドナルドやサブウェイに行っていた。任期中にテヘランでビッグマックやサブウェイクラブを楽しめる日を心待ちにしている。【7月22日 朝日】
**********************

ハメネイ師のロウハニ大統領への恫喝
イランは、宗教的価値観を重視する聖職者、現体制における経済的既得権益を享受する革命防衛隊などの勢力と、穏健派とされるロウハニ大統領を支持してより自由な体制を求める人々の間の綱引きが展開されています。

今日、イスファハーンからテヘランに戻る際に、聖職者の街で、保守強硬派の牙城でもあるゴム周辺を通りました。

ゴム一体は非常に狭いながら行政区画が独立し、国からのいろんな資金が流れている、国の補助金によって物価が非常に安く抑えられている、イスファハーン方面からおいしい水を送るため、周辺では水は枯渇している、現在は聖廟にいたるモノレールが建設されている・・・等々、特別な権益を得ているようおです。

大統領職奪還に失敗した保守強硬派と自由を求める国民を基盤とするロウハニ大統領の間の関係は厳しさを増しているとの指摘も。

****イランで大統領と保守派が権力闘争、サウジでも前皇太子を軟禁に****
ペルシャ湾をはさんで対立するイランとサウジアラビアの石油大国同士の関係は悪化の一途を辿っているが、両国の内部ではそれぞれ権力闘争が激化し、中東情勢に暗雲を投げ掛けている。とりわけ、イランではロウハニ大統領の弟が逮捕されるなど深刻で、最高指導者を巻き込む対立に発展している。

ロウハニ大統領の実弟で、大統領特別補佐官のホセイン・フェレイドウン氏が司法当局に逮捕されたのは7月16日。同氏は逮捕後、体調を崩し、病院に搬送され、17日になって保釈された。同氏の容疑は「金銭をめぐる犯罪」に関与したというものだが、詳しくは明らかにされていない。
 
同氏は2015年のイラン核合意の交渉で重要な役割を担ったことで知られるが、警察や治安機関、司法当局を牛耳る保守強硬派が改革穏健派のロウハニ大統領にダメージを与えるため、かねてから目を付けていた人物でもある。「大統領を直接狙うという露骨なやり方をせずに、大統領に痛手を与える巧妙なやり方」(イラン専門家)だった。
 
保守強硬派はなぜ今、ロウハニ大統領に対して攻勢に出たのか。それは大統領が5月の大統領選挙の圧勝の勢いに乗り、保守強硬派の牙城である司法当局に対する非難を強め、これに同派が危機感を深めたことにありそうだ。

大統領は司法当局が恣意的な逮捕と残虐行為の歴史を繰り返してきたと批判し、同国で最強の治安機関であり、聖域とされてきた革命防衛隊の経済的な不正にさえ、言及した。
 
「国内の自由度を拡大し、西側への開放政策を推進する」という大統領の姿勢は最高指導者ハメネイ師の反発も呼んだ。ハメネイ師は6月、政治家らの集会の席で、ロウハニ大統領に対し、イラン最初の大統領バニサドルと同じ運命をたどることにならないよう警告した。
 
バニサドルは革命直後の大統領だったが、保守派聖職者らと対立して弾劾され、女装して空路脱出し、フランスに亡命した。ハメネイ師はこれまで、ロウハニ師に時折歯止めを掛けながらも、イラン核合意などを支持してきたが、亡命した大統領を引き合いに出しての叱責は初めてだ。(中略)

つまりは大統領の実弟の逮捕と、米研究者の有罪判決はロウハニ大統領と保守強硬派との権力闘争が激化していることを明るみに出したもので、革命防衛隊や司法当局の逆襲が始まったと見ていいのでないか。

重要なのは、大統領の言動を結果的に容認してきたハメネイ師が“ロウハニ離れ”を明確にし始めたことだ。
 
イラン核合意を非難してきたトランプ大統領はイランが合意を順守していることを渋々認める一方で、イランの弾道ミサイル発射実験に対してこのほど、新たな制裁措置を科し、イランへの圧力を強化。

だましだましイランの自由化を進めてきたロウハニ大統領にとっては、こうした米国の動きは自らの立場を弱め、保守強硬派を勢いづかせるものに他ならない。(後略)【7月28日 佐々木伸氏 WEDGE】
**********************

【危機を助長・加速するイラン保守強硬派とアメリカ・トランプ大統領】
イラン嫌いのトランプ大統領はサウジアラビアに肩入れして、中東での両国の対立を煽っていいます。

**********************

トランプ政権の対中東政策は一言で言うと、バランスを欠いています。

サウジを、「価値を共有する同盟国」などと持ち上げています。サウジは基本的人権を尊重するよりも、イスラム原理主義に基づく国であり、トランプのこういう発言がどこから来るのか、理解に苦しみます。あえて比較すればということですが、サウジよりもイランの方がまだ民主主義的です。
 
トランプのサウジ贔屓がサウジのイラン嫌いと共鳴し、イランを敵視することにつながっているのですが、これは感心しません。カタール孤立化をサウジなどがやっていますが、これもトランプの支持を得た上でということのようです。
 
中東は複雑に諸勢力が入り混じってそれぞれの利益を追求している地域です。紛争は数多く起こっています。米国は、紛争当事国より少し距離を置いて、中東安定化を進める仲介役になる方が中東の安定に資するのではないかと思われます。

ところが、トランプは中東の諸勢力を敵味方に二分する単純な思考で複雑な情勢に対処しようとしています。これでは失敗の可能性が高いです。失敗した時に、さらなる介入になるのか、あるいは「あとは野となれ山となれ」の介入縮小になるのか、今の時点で判断できません。【7月28日 WEDGE 「バランス欠くトランプの中東政策」】
**********************

イラン内部の保守強硬派もアメリカとの緊張激化は望むところです。
ペルシャ湾では、危機を望む両者の危険なゲームが繰り広げられています。

****米海軍がイラン艦船に接近し警告射撃、革命防衛隊****
イランの革命防衛隊は29日、中東のペルシャ湾を航行していた同隊の巡視船が、接近してきた米海軍に警告射撃をされたと発表し、挑発的な行動だと非難した。
 
革命防衛隊によると、28日午後4時(日本時間同日午後8時30分)、防衛隊の艦船がペルシャ湾で米海軍の原子力空母ニミッツと護衛艦の艦隊を監視していたところ、米海軍は付近の油田・ガス田近くにヘリコプターを飛行させ、防衛隊の艦船に接近し、警告を発して照明弾を発射したという。防衛隊はこれを「米国による挑発的かつ非プロフェッショナルな行動」と非難している。
 
革命防衛隊は、米艦艇がとった「異例の行動を無視」して任務を続け、その後、米空母艦隊は現場海域を離れたという。
 
ペルシャ湾では数か月前から、米軍とイラン革命防衛隊との異常接近が頻発している。25日にも、革命防衛隊の艦船が米海軍に急接近したとして米海軍の艦艇が警告射撃を行う事態が発生した。【7月29日 AFP】
***********************

自由を望むイラン国民の声を押しつぶしかねない国際関係悪化は憂慮すべき状況です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする