孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

環境政策でも急速な変化をリードする中国 EVやCO2排出量取引 日本は変化についていけるのか?

2017-12-29 21:54:20 | 中国

(石炭ストーブを使う河北省の家庭【12月26日 ロイター】)

【「脱石炭」 勇み足もあったものの、急速な変化も
“PM2.5”に代表されるように、中国の冬場の環境汚染のひどさは国内的にも大きな問題となっています。(中国より汚染がひどい国・都市は、インド各都市やイラン・テヘランなど他にもありますが)

中国指導部も政府批判にもつながりかねない事態を深刻にとらえており、厳しい環境規制に乗り出しています。

****中国における史上最も厳しい環境規制 ~来春にかけて工事停止や減産措置を実施****
11月15日に、中国の北部地域において史上最も厳しいといわれる環境規制が発動された。その日から翌年3月15日までの暖房期は、石炭の消費量が拡大し大気汚染が深刻化する中、汚染状況を軽減するために、鉄鋼や非鉄の減産、建築工事の停止などの規制策をとるものである。(後略)【http://lounge.monex.co.jp/advance/marubeni/2017/11/21.html
*****************

一般家庭の石炭を使用した暖房も規制されましたが、中国ならではの住民の実情に配慮しないトップダウンの指示がやや勇み足にも。

****中国、ガス供給不足で集中暖房がストップ、極寒に耐える市民から批判殺到****
中国当局は今現在、北京など周辺地域の住民に供給する冬季集中暖房システムの燃料を、石炭から天然ガスへの切り替えを進めている。当局は、石炭燃焼が大気汚染物質の排出量増加につながるとして、石炭ボイラーの取り締まりを強化した。
 
寒さの厳しい中国北部の冬に欠かせないのが、「暖気」と呼ばれる集中暖房システムだ。温水やスチームを各住居内に通したパイプ内で循環させることで、屋内を温める。これまで石炭はおもな熱源として利用されてきた。(中略) 
 
しかし、急進的な転換策で天然ガスの供給が不足し、一部地区で暖房の供給が止まった。寒さで体調を崩す年配者や子供が続出した。
 
また、天然ガスの価格は石炭より高いため、暖房費の高騰に多くの住民が不満を漏らした。(中略)

趙さんによると、村の集中暖房システム用の石炭ボイラーが強制撤去されたという。さらに、今石炭ボイラーで暖を取るのも禁止されたため、同村の年配者は厳しい寒さで次々と体調を崩した。中には病院に搬送され、危篤状態になった人もいるという。(中略)

「当局は最初、天然ガスの配管工事は無料で行うと話したが、今は工事料金を要求している。しかも、今日は3000元(約5万1000円)、明日になると4000元(約6万8000円)と、提示される料金価格はころころ変わる」「施工スタッフも専門業者ではない。工事中に火事が起きたなどの話を聞いたことがある」

 天然ガス供給不足
いっぽう、熱源転換によって天然ガスへの需要が高まり、供給が追い付かない状況だ。河北省保定市などの一部地方政府はこのほど、天然ガス供給量を制限すると決めた。市民の生活やまた医療施設に大きな影響を与えている。
 
保定市にある河北大学付属病院はこのほど、天然ガスの供給不足で集中暖房供給システムが稼働できず、手術を行えないため、市に対して緊急供給措置を要請した。(後略)【12月7日 大紀元】
****************

不満の高まりに、政府も石炭使用を暫定的に認めることに。

****中国政府、暫定的に石炭使用許可 天然ガス暖房の普及追いつかない地域に対し****
中国住宅都市農村建設部の公式ウェブサイトによると、同部は近く、全国民にセントラルヒーティングを提供するため、「訪民問暖(訳:各戸を訪問し、セントラルヒーティングについての意見の聞き取り)」運動によってセントラルヒーティングを導入する上での課題を明らかにして、解決するよう『緊急通知』を配布するという。

『通知』では、一部地域でセントラルヒーティングの提供が不完全なために、室温が標準に達しておらず、住民の生活に影響を及ぼしているとしている。

各都市の管理部門が、管轄地域のセントラルヒーティングを提供する企業に対し、「提供できない」「満足に提供できない」などの問題を重点的に解決するよう、強く促すこととしている。

また、天然ガスの供給が間に合わない地域に対しては暫定的に石炭を使用して、セントラルヒーティングを供給することなどを求めている。(後略)【12月24日 CNS】
******************

いろいろ混乱は生じていますが、政府方針によって「脱石炭」も一定に進んでいるようです。

****中国北部390万世帯の暖房燃料が「脱石炭」、今年の目標上回る****
中国環境保護省は、北部各地域の390万世帯で「石炭からガス」および「石炭から電気」への転換プロジェクトが完了し、今年の目標(310万世帯)を上回ったと発表した。

ただ、同省が24日遅くに公表した文書によると、同日時点で3704の村では暖房の燃料として石炭から天然ガスもしくは電気への転換が完了しておらず、これはプロジェクトの全対象の16%に当たるという。

中国政府は今年、北部の大気汚染対策としてプロジェクトを開始。しかし、天然ガス不足が深刻化し、液化天然ガス(LNG)価格の上昇を招くなどした。【12月26日 ロイター】
****************

一方、中国の「脱石炭」方針によって、天然ガス需要が増加し、輸入が急増しています。今後、日本の天然ガス輸入にも大きく影響しそうです。

****中国、2017年は日本に次ぎ世界2位のLNG輸入国に****
トムソン・ロイターのデータによると、2017年の中国の液化天然ガス(LNG)輸入量は初めて韓国を上回り、日本に次ぐ2位になる見通し。

トムソン・ロイター・アイコンの船舶関連データによると、2017年の中国のLNG輸入は、前年比50%超拡大し、約3800万トンに達するとみられる。日本の輸入は約8350万トン、韓国は約3700万トンと見込まれている。

中国では政府が天然ガスの利用を後押ししており、この冬、多くの家庭では、暖房燃料を石炭から天然ガスに切り替えている。これがLNGの輸入を押し上げているとみられる。

中国のLNG輸入拡大により、市場構造にも変化がみられる。

LNG取引は、原油相場に連動した価格で一定量のLNGを毎月購入するという長期契約を結ぶ形態がほとんど。日本と韓国は主に長期契約でLNGをこれまで輸入している。

一方、中国の天然ガス埋蔵量はかなりの規模。さらに、中央アジア諸国からもパイプラインで天然ガスを輸入している。そのため、寒波などによる突発的な需要増加時に限り、スポット市場からLNGを調達する可能性があり、これまでさほど動きがなかったスポット市場の活性化が見込まれる。

調査会社ウッドマッケンジーのアナリスト、ワン・ウェン氏は「中国は間違いなく、アジアのLNGスポット市場の価格を大きく左右する存在になる」と指摘した。【12月27日 ロイター】
*******************

自動車最大市場の中国 25年までに、電動自動車を年間自動車総販売台数の5分の1に
環境対策としてはガソリン車から電気自動車への切り替えも推進されています。
もちろん、環境対策だけでなく、エネルギー政策・経済政策にかかわる大きな転換です。

“中国は去年、およそ2800万台の自動車が販売された世界最大の自動車市場です。その規模は2位、アメリカ(1786万台)のおよそ1.5倍。日本(497万台)の5倍以上に達します。中国の自動車工業協会によりますと、このうち電気自動車の販売台数は乗用車と商用車合わせて40万台にのぼります。”【9月22日 NHK】

この世界第一の大市場の動向は、世界各国の自動車生産をも方向づけることになります。

****中国のガソリン車の時代はもう終わり****
世界の多くの国が今後、ガソリン車を販売しない方針を明らかにしているが、中国もその動きに合わせていくだろう。

多くの自動車メーカーは情報に素早く反応し、次々とエネルギー車の生産に力を入れ始めており、すでにガソリン車の販売を停止することを表明している企業もある。
 
中国国内最大の自動車メーカーの長安汽車は10月19日、2025年までにすべてのガソリン車の販売を停止すると発表した。中国メーカーとしては初めて、明確にガソリン車の販売を停止すると表明した企業だ。
 
これより前、中国工業情報化部(MIIT)の辛国斌副部長は、「一部の国では、伝統的なエネルギー車の生産を停止するのが時流になっている。現在、関連する研究を始めており、関連部門が我が国のスケジュールを作っていくだろう」と言及している。
 
ガソリン車の完全な販売停止に関して、中国は時間的に今のところ定かではないが、多くの国では2025〜40年に集中するのではないかと言われている。オランダは25年、ドイツは30年以後、フランスでは40年前までにガソリン車やディーゼル車の販売を停止する見込みだ。

では、中国のガソリン車の生産や販売の最終的なリミットは何時になるのだろうか?新エネルギー車は完全にガソリン車に取って代わることができるのだろうか?
 
米国ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)ウェブサイトの報道によると、中国国内で稼働する自動車メーカーの多くは、中国政府の政策に影響を受け、電気自動車などの生産に力を入れていくだろうとしている。

報道によると、中国政府は9月、国内外の自動車メーカーに対し、2019年までに必ず新エネルギー車の生産を開始するよう求めている。政府は25年までに、電動自動車を年間自動車総販売台数の5分の1に相当する700万台販売する、とアピールしたい考えだ。(中略)
 
「現時点で、EVスタンドの設備は依然として、車の発展速度に適応していない」。中国電動自動車百人会・欧陽明高(Ouyang Minggao)副理事長は、EVスタンドの設置する場所にも不適切な例が見られることを紹介。

充電したい車がEVスポットを見つけづらいという点と、急速充電といった関連設備が車の発展に追いついていない点を指摘する。

一部の既存EVスポットの利用率があまり高いとは言えず、また、充電技術に求められる技術水準がどんどん高くなってきているためだ。
 
こうしたことから、中国国務院発展研究センターの周研究員は、ガソリン車の生産・販売停止を中国で短期間に実現することは難しいだろうとみている。

「中国人の収入や自動車の所有台数など国外との差もあるので、時期的な問題については単純に比較できない。技術進歩の観点からみれば、新エネルギー車へ取って代わる速度は加速されるかもしれないが、中国の国土面積や人口から考えるとまだある程度の時間がかかるだろう」としている。
 
さらに周研究員は「ガソリン車の使用に慣れてしまってる人がいるし、もし購入した車が排ガスの排出基準内ものであるなどの場合、完全に廃止するには政府からの優遇制度を出すことも不可欠になり、時間も必要とされる。たとえ生産と販売が停止されても市場の表面上ではガソリン車はまだある一定期間までは存在するだろう」と指摘している。【11月2日 CNS】
****************

中国政府は、補助金やナンバー規制で電気自動車導入を推進していますが、市場の方はまだ機が熟していない感も。

****作っても売れない」 悩む中国のEVメーカー****
中国の自動車業界は政府の指示に従い、販売できる台数以上の電気自動車(EV)を生産している。だがEVの売れ行きはまだ宣伝ほど盛り上がってはいない。
 
中国政府は自動車メーカーに対し、2019年は総生産台数の3〜4%前後をEVとするよう要求している。だが広州国際モーターショーに参加した各社は、買い手を呼び込み、さらに利益を生み出すことの難しさを認めている。(中略)
 
EVは既に供給過剰の状態にある。業界団体の中国汽車工業協会(CAAM)によれば、今年1〜9月のEV生産台数は42万4000台。一方、販売台数は39万8000台にとどまった。アナリストらは、このうち消費者に販売した割合は4分の1程度にすぎず、残りは国営のタクシー会社や公共サービスが購入したとみている。
 
ドイツのダイムラーの中国統括責任者、フベルトゥス・トロスカ氏は「顧客はEVに多額の代金を支払うことに二の足を踏んでいる」と語る。気前のよいEV購入補助金があっても、ガソリン車との価格差は大きい。中国政府は20年にEV補助金を打ち切る計画だ。
 
それでも、自動車メーカーは取り組みを加速させている。(中略)

フィッチ・レーティングスの副ディレクターを務める楊菁氏は、電池などEVに不可欠な部品の原価は下がっているが、補助金が打ち切られれば多くのメーカーはEVで利益を上げるのが不可能になると指摘。

メーカーは「市場シェアのために目先の採算を犠牲にする」か、単にEV事業からの撤退を余儀なくされるとの見方を示した。(後略)【11月18日 WSJ】
*****************

電気自動車に関する政策は、今後状況を見ながら随時修正・転換・加速されるものと思われます。
この中国政府の方針が、世界の自動車産業の今後を左右します。

EVの普及は、自動車産業の構造を根底から崩す可能性があるといわれており、自動車業界のトップに君臨してきた日米欧の大手自動車メーカーも対策を急いではいますが、日本企業がついていけるのか・・・・?

CO2排出量取引で世界をリードしたい中国 流れから脱落している日本
環境対策に関連するものとしては、中国が二酸化炭素(CO2)排出量取引の全国市場を設立したと発表したことも最近話題になりました。

****CO2排出量取引、中国始動 全国市場、欧州上回る規模 まず電力業界が対象****
中国政府は19日、地球温暖化対策を効率的に進めるため、二酸化炭素(CO2)排出量取引の全国市場を設立したと発表した。まずは電力業界1700社超が対象で、排出量は30億トンを超える。欧州連合(EU)の規模を上回り、世界最大の排出量取引市場が誕生した。

排出量取引は企業や業界に排出量の枠を定め、達成できなかった所に、超過達成した所から枠を買わせて温室効果ガスの削減を進める制度。

中国は2011年以降、北京市など7省市で排出量取引の制度整備をし、13年からは実際に取引を始め経験を積んだ。全国市場でより多く、効率的に排出量を減らせるようにする。新興国の中国に世界最大の市場ができたことで、先進国以外でも気候変動への対策が加速しそうだ。
 
習近平(シーチンピン)国家主席は15年9月、米中首脳会談で17年に全国市場をつくると表明していた。米国が離脱を表明した地球温暖化対策のパリ協定を履行する姿勢を国際社会に印象づけ、環境分野での世界のリーダー役を担う姿勢を示す効果も見込んでいると見られる。
 
当初は石油化学と化学、建材、鉄鋼、非鉄金属、製紙の各業界も対象とする計画だったが、設立時は電力業界のみという慎重な滑り出しだ。石炭火力発電など排出量が比較的多く、排出量データの把握も進んでいた電力業界を突破口として実績を積む狙いがある。
 
成否の鍵は、排出量を設定するための情報を政府が正確に把握できるかだ。今回対象から外れた鉄鋼業などは国有・民営企業が入り乱れ、過去の排出実績を集めるのも簡単ではなさそうだ。

成長が鈍る中国経済に与える影響も課題だ。今後、拡大が検討される各業種には生産能力が余ってリストラが進む所があり、排出量削減のコストが追い打ちをかける可能性もある。

 ■世界市場へ拡大続く
(中略)世界最大のCO2市場の誕生は、ビジネス界で進む「脱炭素革命」をさらに加速させると見られている。
 
CO2の排出量取引制度は、05年に欧州連合(EU)が導入した。世界銀行によると、同制度など排出に費用を課して削減を促す仕組みをこれまでに導入しているのは42カ国、25地域に広がっている。対象は世界の温室効果ガス排出の約15%を占め、昨年は220億ドルを生み出したという。
 
今月12日にパリで開かれた気候変動サミットでメキシコのペニャニエト大統領は、米国やカナダの一部の州による排出量取引市場に、メキシコ、チリ、ペルーなどが参加し統一市場をつくることを明らかにした。排出量取引市場は将来の世界統一市場を視野に拡大を続けている。

 ■<視点>導入せぬ日本、周回遅れ
EUが12年前に排出量取引制度を始めた後、日本の産業界や経済産業省は「あれは失敗だ」と言い続けた。だが、世界各地で導入が進み、日本は東アジアの日中韓3カ国で、唯一の非導入国になった。
 
日本もCO2排出に費用を課す炭素税を12年に導入したが、1トン当たり289円と国際的に最低水準で、削減にはほぼ意味がない。
 
石油メジャーを含む数多くの世界的企業は、ビジネスチャンスにつながるとして、排出量取引制度の導入を支持している。中国が国全体の導入に乗り出すのも、7省市での試行で削減や経済に有効だと判断したからだ。
 
経産省や産業界は「競争力を奪われた企業が規制の緩やかな国に移転し地球全体のCO2排出が増える」として、排出量取引制度の導入に反対してきた。いま中国では「CO2排出に責任を負わない国からの製品輸入については、炭素関税を徴収してはどうか」という議論が起きている。
 
残念なことだが、両国の立場は完全に逆転した。【12月20日 朝日】
*****************

「脱石炭」、電気自動車、CO2排出量取引・・・・中国のトップダウン式の政策は問題は多々ありますが、急速な変化を生み出すのも事実です。

まずやってみる、問題があれば修正する、ダメなら他を考える・・・・というのが中国式です。

完璧を期す一方で、議論ばかりで一向に前に進まない日本が、中国が主導する流れに今後ついていけるのか・・・やや疑問も。
そもそも、中国の作る流れに日本が対応を迫られるという現実も、一昔前ではなかったことで、世界は大きく、急速に変わりつつりあます。

こういうことを書くと、「中国の真の狙いは・・・」といった類の中国批判が多々ありますが、“じゃ、日本はどうするつもりなのか?”というビジョンが見えません。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする