孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国  「世界人権デー」に逆に監視を強化 習主席サウジ訪問で人権問題の「政治化を拒否」

2022-12-10 22:47:38 | 人権 児童
(サウジアラビアの首都リヤドで、中国の習近平国家主席(左)を迎えるムハンマド・ビン・サルマン皇太子。サウジ王室提供(2022年12月8日撮影)【12月8日 AFP】  最近、習近平主席は以前の仏頂面ではなく、笑顔をふりまくことが多くなったようです。 イメージ戦略でしょう。 中身は変わっていませんが。)

【中国 「世界人権デー」に監視を強化】
今日12月10日は「世界人権デー」・・・・だそうです。
世界人権宣言が、1948年12月10日の第3回国際連合総会で採択されたことを記念して、1950年の第5回国際連合総会において、毎年12月10日に記念行事を行うことが決議されたとのこと。

残念なことに人権問題は日本国内にも、世界各地にもいくらでも存在しているのが実態で、「浜の真砂は尽きるとも・・・」という感も。

日本国内の問題は棚上げして、外国、特に中国の状況を見ると、「世界人権デー」に合わせて当局は締め付けを強化するという逆行する動きがあります。

****「世界人権デー」に中国監視強化 民主派や人権派弁護士に圧力****
中国当局は「世界人権デー」の10日、人権派弁護士や民主派の活動への監視や圧力を強化した。例年この日に抑圧を強めており、法的根拠が不明なまま軟禁されて1年になる弁護士もいる。

中国では「ゼロコロナ」政策への抗議活動が続発したばかり。強権体制そのものへの批判もはらんでいたため、当局は再燃を警戒する。

人権派弁護士、王全璋氏の北京の自宅は9日夜から当局者らに包囲された。別の民主活動家も10日、監視されていると明かした。人権派弁護士、唐吉田氏は昨年12月10日に失踪。家族によると1年間、当局に軟禁され続けている。【12月10日 共同】
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【ウイグル・チベットの状況】
欧米から人権問題で批判されるウイグル、チベットの状況に関しては・・・

国連人権理事会は10月6日の定例会合で、中国新疆ウイグル自治区での人権侵害問題について、来年2月に始まる次期定例会合で討議するよう求めた欧米主導の動議を反対多数で否決しました。

****国連人権理、新疆めぐる討論開催否決 中国が反対働き掛け****
国連人権理事会は6日、中国・新疆ウイグル自治区での人権侵害の疑いに関する討論の開催を否決した。開催を求めていた西側諸国にとっては大きな後退となった。

同自治区の人権問題をめぐっては先月、国連のミチェル・バチェレ前人権高等弁務官が長らく待たれていた報告書を発表し、ウイグル人らイスラム系少数民族への人道に対する罪があった可能性を指摘。

米国とその同盟国はこれを受け、新疆に関する討論を求める草案文書を国連人権理事会に提出した。中国を対象とした討論の提案は史上初だった。

だが中国政府の積極的な働き掛けにより、スイス・ジュネーブで行われた投票では47理事国のうち17か国が賛成、19か国が反対、11か国が棄権し、討論開催は否決された。

反対票を投じたのは、ボリビア、カメルーン、中国、キューバ、エリトリア、ガボン、インドネシア、コートジボワール、カザフスタン、モーリタニア、ナミビア、ネパール、パキスタン、カタール、セネガル、スーダン、アラブ首長国連邦、ウズベキスタン、ベネズエラ。

棄権したのは、アルゼンチン、アルメニア、ベナン、ブラジル、ガンビア、インド、リビア、マラウイ、マレーシア、メキシコ、ウクライナだった。

ある西側の外交官は、結果がどうであれ、新疆に焦点を当てるという「第一の目的は達成された」と強調した。 【10月7日 AFP】
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中国は、今後この「否決」を“国際世論”として利用するものと思われます。

****中国、「米国などのたくらみは失敗」 ウイグル人権討論提案の否決で****
中国外務省は6日夜、国連人権理事会で新疆(しんきょう)ウイグル自治区での人権侵害をめぐる討論の開催を求めた米国などの提案が否決されたことを受け、「幅広い発展途上国の激しい反対を受け、米国など西側諸国のたくらみは再び失敗した」とする報道官談話を発表した。中国は今後、新疆問題を巡る自国の正当性を主張する材料として提案否決を活用していくとみられる。

談話は、米国などの提案について「国連の人権機関を利用し、中国の内政に干渉しようと企てた」と批判。新疆問題について「人権問題ではなく、反暴力テロ、脱過激化、反分裂の問題だ」と主張した。

米国など西側諸国に対し、「新疆問題を口実にデマを繰り返し飛ばして紛糾を起こしている」と非難。その上で、米国や英国などで人種差別や移民の権利侵害、銃暴力の頻発といった人権侵害が起きていると主張し、「人権理事会は重大な関心を払い、討議すべきだ」と求めた。【10月7日 産経】
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賛否の詳細では、世界最多のイスラム教徒を抱えるインドネシアが反対したことが目につきますが、中国からのインドネシア国内イスラム団体への強い働きかけがあったとも報じられています。

また、欧米からの支援を受けているウクライナが棄権したことも驚きでした。やはり中国の強いアプローチの成果でしょうか。後日、ウクライナは棄権から賛成に訂正したとのことですが・・・。

中国の働きかけもあっての採決結果でしょうが、それ以外にも、全体的に「国内人権問題に、欧米から上から目線の指摘・批判を受けたくない」という思いが各国にあるのかも。

そのあたりは、また後ほど。

ウイグル自治区は従来からの抑圧に加えて、コロナ規制による二重の封鎖状態にもあり、そのウイグルでの火災事故犠牲者の発生がゼロコロナ政策の実質的転換をもたらした「白紙運動」のきっかけともなりました。

****ゼロコロナ実態、動画で発信 ウイグル全体が「収容所」****
中国新疆ウイグル自治区で深刻な弾圧を受けているとされるウイグル族が、中国政府による「ゼロコロナ」政策の実態を伝えようと動画投稿アプリで発信を続けている。

住宅地に通じる道路の門扉や住宅の扉が外部から施錠された様子が写り、現地に家族を残す人は「ウイグル全体が巨大な収容所のようだ」と指摘。「命を軽んじる政府と政策を知って」と訴える。

中国では新型コロナウイルス対策で厳しい行動制限を強いる「ゼロコロナ」政策への抗議活動が拡大。契機となったのは自治区ウルムチで起きた火災で、防疫対策による封鎖で救助が遅れたとされ10人が犠牲になった。【12月8日 共同】
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チベットに関しては最近ニュースは多くないですが、以下のような記事も。

****チベットで住民のDNA強制採取 国際人権団体が中国非難****
国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)は5日、中国当局がチベット自治区で、幼稚園の子どもを含めた住民から強制的にDNA採取を進めていると非難する声明を発表した。

声明によると、犯罪抑止などを名目に自治区全域で採取を推進、住民は拒否することができない。自治区への一時的な滞在者も対象となり、当局は地域レベルのDNAデータベース構築に取り組んでいるという。

HRWは「当局は監視能力向上のため住民の同意なしに(DNAを得るための)血液を採取している」と批判。「DNA採取を地域全体に強制するのは深刻な人権侵害」と非難した。【9月5日 共同】
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【在中国EU代表部 人権状況の改善を求めるものの・・・】
上記のような人権状況の中国にあって、在中国EU代表部が世界人権デーに合わせて声明を出し、元人権派弁護士の無条件即時釈放などを中国に求めています。

****在中国EU代表部 世界人権デーに合わせて声明 元人権派弁護士の無条件即時釈放などを中国に求める****
中国にあるEU=ヨーロッパ連合の代表部は10日の世界人権デーに合わせて声明を発表し、中国に対し不当に拘束されている人権派の元弁護士らの無条件での即時釈放などを求めました。

声明の中で中国のEU代表部は、国連人権高等弁務官事務所が8月、新疆ウイグル自治区の人権状況について「人道に対する犯罪にあたる可能性がある」との報告書を発表したことを歓迎すると表明しました。

そのうえで、中国に対し新疆のほか、チベットや内モンゴル自治区のすべての民族の権利を尊重し、保護する義務を果たすよう求めるとしています。

また、EU議会が人権活動などに貢献した人に贈る「サハロフ賞」の受賞者、イリハム・トフティ氏や人権派の元弁護士、常イ平さん、唐吉田さんなど不当に拘束されている人たちの無条件での即時釈放を求めました。

声明では表現の自由や報道の自由、国際法を遵守し、平和的に抗議する権利を含む人権を尊重することも求めていて「ゼロコロナ」政策に反対し、中国全土で起きた抗議運動も念頭にあるとみられます。

人権問題に関する相違点については中国、EUの双方が対話を通じて議論すべきだとして、今月1日にEUのミシェル大統領と中国の習近平国家主席との首脳会談の中で、中国側が人権をめぐる対話を再開する意思を示したことを歓迎するとも表明しています。【12月10日 TBS NEWS DIG】
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“今月1日にEUのミシェル大統領と中国の習近平国家主席との首脳会談の中で、中国側が人権をめぐる対話を再開する意思を示した”云々は、どれほどの実質的意味があるのか・・・、まあ、対話を拒否するよりはましでしょうが。

【習近平主席 サウジ訪問で人権問題の「政治化を拒否」 人権問題を抱える多くの国に欧米からの批判を疎ましく感じる空気も】
外国からの人権批判を受け付けない習近平主席の本音は、サウジアラビア訪問での言動にほうによく示されています。

中国同様にカショギ氏殺害などの人権問題を抱え、アメリカとの関係がギクシャクしているサウジアラビア・ムハンマド皇太子と習近平主席の思惑が一致して、アメリカに揺さぶりをかける恰好にも。

****サウジ、対中接近鮮明…米国の隙をついた習氏****
中国の習近平国家主席のサウジアラビア訪問で、両国はエネルギーに限らない幅広い分野で協力を進めることで一致した。

中東の大国・サウジと米国との関係がぎくしゃくする中、中国がその隙をついた形だ。習氏が重視するエネルギー安全保障の強化に加え、米・サウジ関係にくさびを打ち込み、米国の影響力が強い中東への関与を深める狙いがうかがえる。

「中国はサウジを多極化した世界での重要な勢力とみなしている」
中国外務省によると、習氏は8日のサルマン国王との会談でサウジ重視の姿勢を示した。サウジに対し「戦略的意思疎通を引き続き強化し、各分野での協力を深め、世界の平和と安定を守りたい」とも訴えた。

世界最大の原油輸入国である中国にとって、最大の原油輸出国であるサウジとの関係強化は、エネルギー安保にとって大きな意義がある。香港紙、星島日報(電子版)は9日、中国とアラブ諸国との関係について「相互補完性と、ウィンウィン(相互利益)の性質がある」という識者の見方を伝えた。中東は、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」の要衝でもある。

中国側は、習氏のサウジ訪問を「新中国建国後、アラブ世界に対する最大規模、最高ランクの外交行動だ」と強調。10月の中国共産党大会を経て総書記3期目入りを果たした習氏は、サウジなどアラブ諸国との関係強化を進める姿勢を今回の訪問で鮮明にした。

一方のサウジも習氏を手厚くもてなし、友好国である米国との関係冷却化を印象付けた。サウジは同じ産油国として、ウクライナに侵攻したロシアと協調する姿勢も示しており、米サウジ関係は当面、改善が見通せない情勢となった。

サウジなど石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど主要産油国で作るOPECプラスは4日、閣僚級会合で日量200万バレルの大幅減産という現行の態勢を維持することを決めた。

ロシアの侵攻でエネルギー市場は混乱が続いているが、サウジにはロシア同様、国庫収入確保のために石油の高値を保ちたいとの思惑がある。

米国はサウジの人権侵害を問題視し、武器供与を制限する意向も示しており、サウジの対米不信はぬぐえていない。一方、主要な貿易相手の中国は内政干渉を排する立場で付き合いやすいという側面がある。

8日の習氏歓迎式典では、反体制記者殺害への関与が疑われたムハンマド・ビン・サルマン皇太子(37)が習氏を接遇し、復権をアピールした。サルマン国王は86歳の高齢で、実子である皇太子は9月、国王が兼務していた首相職を譲り受けた。米国との溝が深まるなかで皇太子の王位継承に向けた準備が進む。

中東情勢に詳しいエジプトの評論家サミ・ハミディ氏は産経新聞の電話取材に、「習氏は訪問により、皇太子に不快感を抱くバイデン大統領をいらだたせることが目的だった」との見方を示した。サウジが中露にさらなる接近を図る事態も否定できない。

ただ、中国が中東接近を進めれば、米国の警戒と反発を招く可能性がある。将来、中東が米中関係の新たな対立点となることも予想される。【12月9日 産経】
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人権問題に関する習近平主席の考えは、サウジアラビア・リヤドで開催されたアラブ諸国の首脳会議において明確に示されています。

****人権問題「政治化を拒否」 中国アラブ、米欧念頭に****
サウジアラビアの首都リヤドで開かれた中国とアラブ諸国の初の首脳会議は9日、双方の戦略パートナーシップ強化をうたった声明を発表した。

人権問題を政治化させ、他国の内政に干渉する道具として使うことを拒否するとも声明で明記した。中国やサウジなどに人権批判を行う米欧を念頭に置いたものとみられる。

アラブ諸国が「一つの中国」の原則を維持し、台湾の「独立」をいかなる形でも拒否するとも記した。ウクライナ危機への政治解決の努力を支持することも盛り込んだ。

首脳会議には、中国の習近平国家主席やアラブ各国の多数の首脳が出席した。【12月10日 共同】
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習近平主席は「内政不干渉の原則を守りつつ、真の多国間主義を実践していきたい」とも語っています。

こうした習近平主席の考えが受け入れられる背景としては、サウジアラビアにしても、中東湾岸諸国にしても、あるいは世界の多くの国々にしても、何らかの人権問題を抱えており、前述のように「国内人権問題に、欧米から上から目線の指摘・批判を受けたくない」という思いがあるのでしょう。

しかし、一般的な国内・外交政策と異なり、人権弾圧に関する事柄は、「よその国のことだから・・・」と口をつぐむべきものではないでしょう。ケースバイケースによって“ものの言い方”という話はあるでしょうが。
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