(アフリカ諸国の首脳との記念撮影に臨むバイデン米大統領(手前中央)=米ワシントンで2022年12月15日、AP【12月16日 毎日】)
【歴史的にも、経済的にもアフリカとの強固な関係を築いてきた中国】
中国は毛沢東時代から国際政治における賛同者を確保するためにも同じ途上国の代表者としてアフリカとの関係を重視し、その後の中国の急速な経済発展に伴って強固な経済関係を構築してきました。
その中国とアフリカの関係については、いわゆる「債務の罠」問題とか、中国からの投資の利益が中国関連企業・労働者に集中し、地元の利益となっていないとか、そうしたことからの反感もあって中国企業・労働者が襲撃の対象になるとか・・・問題は多々あるものの、総体的には中国の影響力がアフリカで強固になっており、アフリカ側の中国に対する評価も高いものがあります。
****アフリカの若者、中国への好感度が西側諸国上回る―独メディア****
2022年6月13日、独国際放送局ドイチェ・ヴェレの中国語版サイトは南アフリカの財団が実施したアンケートで、アフリカの若者の間で中国に対する好感度が各国の中で最高となったことを報じた。
記事は、南アフリカのイチコウィッツ財団がこのほど発表した、アフリカ15カ国の若者4507人を対象に実施した世論調査の結果を紹介。生活にポジティブな影響を与えている海外の勢力について約76%が中国と回答、72%だった米国のほか英国、欧州連合(EU)を上回って最も多くなったとした。1回目の調査を実施した20年には83%が米国、79%が中国と回答しており、この2年で逆転が生じたと伝えている。
その上で、近年アフリカ大陸に対して中国、米国やEUを主とする西側陣営はそれぞれ外交や経済の支援を行っており、西側勢力が人権、自由、社会的責任を前提としているのに対して、中国は支援や連携に際して経済効果を重視し、要求する条件が少ないと説明。
中国はアフリカに対して道路、鉄道、空港、ランドマークなど大量のインフラ建設に関与すると同時に、アフリカ市場向けにコンシューマー電子商品、日用品、太陽光発電システム、各種プラスチック製品など大量の廉価な製品を提供しているとした。
また、今回の調査で中国に対する好感度が特に高かったのがルワンダ、マラウィ、ナイジェリアだったとする一方で、アンケートの参加者があらゆる面で中国に対してポジティブなイメージを持っているわけではないとも指摘。新型コロナウイルスの発生源をめぐる問題については、「中国政府が意図的に開発、拡散した」という陰謀論を信じる人が56%に上ったと紹介している。【6月15日 レコードチャイナ】
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単に政治的・経済的関係にとどまらず、実際にアフリカで暮らす中国人の数が圧倒的です。
“アフリカ全体での中国人在住数については100万人から200万人超まで――これまで様々に報じられてきた。もちろん、この中には旧世代も含まれるが、中国側が示す「世界各地華僑華人人口統計(2013年9月13日までの統計に基づく)」ではアフリカ全体で79.07万人に止めている。中国の活動を批判し警鐘を鳴らす人々は多目に、アフリカ各国の親中政権は極く控えめに数える傾向が強いようだ。”【2020年5月6日樋泉克夫氏 (愛知県立大学名誉教授)WEDGE ONLINE】
【軍実支援で存在感を強めるロシア】
ロシアも民間軍事会社ワグネルを使って、イスラム過激派との戦いに苦しむマリやブルキナファソなど西アフリカ諸国を支援するなど、アフリカにおける存在感を強めています。
****ロシアが“友好国”を拡大? 知られざる国際戦略の実態****
プーチン大統領が、予備役の部分的動員を発表するなど強硬姿勢を崩さないロシア。経済制裁などで包囲網を築く欧米に対し、今も“ロシア寄り”の姿勢をとる国は少なくありません。3月の国連総会ではアフリカ54か国中26か国が非難決議を支持せず衝撃が広がりました。(中略)
ロシア"包囲網"の裏で 知られざる国際戦略
非難決議を棄権した国の一つ、西アフリカのマリ。今"ロシアとの関係を深めるべきだ"という声が高まっています。(中略)
1960年まで、40年にわたってマリを植民地支配してきたフランス。独立後も政治や経済、文化の面で深い関わりを持ってきました。
そのフランスへの不信感が決定的に強まったきっかけは、10年ほど前。イスラム過激派による治安の悪化です。
マリ政府の求めに応じ、フランスは軍を派遣。しかし過激派を排除できず、40万人が家を追われました。
マリでの信頼を失ったフランス。一方、そのマリに急接近したのがロシアです。2014年にクリミアを一方的に併合して以降、欧米との関係が悪化。その裏で、アフリカとの関係強化を探ってきたのです。
2019年には、アフリカのすべての国の代表を招いた国際会議を初めて開催。経済や軍事の面で協力を約束しました。
マリでは2020年、2021年と、軍がクーデターを起こし、政権を掌握。ロシアは、マリの軍事政権にヘリコプターなどの兵器を送り、軍事協力を進めました。(中略)
ロシアのマリ進出で大きな役割を担ったと見られているのが、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」です。ウクライナやシリアなどの紛争地で活動してきたとされていますが、ロシアの大統領府は、その存在すら認めていません。(中略)
"友好国"の拡大は? ロシアを支持する国は、今後広がるのか。
アフリカで、マリのほかにワグネルの関与が指摘される国は少なくとも6か国。34か国が、ロシアと軍事面で協力しています。
そして今、その動向が注目されているのが、マリの隣国、ブルキナファソです。2022年1月、イスラム過激派に対処できない政府への不満が拡大し、クーデターで軍が政権を掌握しました。前政権に協力していた旧宗主国フランスへの反発も強まり、今後どの国と協力すべきか国民の意見は割れています。(後略)【9月28日 NHK】
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そのブルキナファソで9月30日に今年2回目のクーデターが発生しましたが、ロシアの存在感が更に強まっています。
****ブルキナファソでロシア支持デモ 仏には反発****
今年に入って2回目のクーデターが起きた西アフリカ・ブルキナファソで4日、ロシアを支持するデモが行われた。一方、旧宗主国フランスに対しては反発が強まっている。
AFP記者によると、首都ワガドゥグで数十人規模のデモ隊が「ロシア・ブルキナファソ間の協力に万歳」と書かれた幕を掲げたり、ロシア国旗を振ったりしながら行進した。
一方で、フランスについては「くたばれ」、ブルキナファソも加盟する西アフリカ諸国経済共同体に対しても「干渉をやめよ」と抗議。ECOWASをめぐっては、西側諸国、特にフランスの利益を支援しているとの批判も浮上している。
ブルキナファソでは、イブラヒム・トラオレ大尉が主導する勢力が新たなクーデターを起こし、1月のクーデターで政権を掌握していたポールアンリ・サンダオゴ・ダミバ中佐を追放した。(中略)
ロシアでは、民間軍事会社「ワグネル」の創設者エフゲニー・プリゴジン氏が、トラオレ大尉の決起を受けて「祝意と支援を表明する」と歓迎した。ワグネルは中央アフリカやマリでも活動が確認されている。
トラオレ大尉については、アフリカの他の旧フランス植民地に追随し、フランスとの関係を断ち、新たにロシアとの関係強化を目指すのではないかとの臆測が広がっている。
米国務省のベイダント・パテル副報道官は記者団に対し、「(ワグネルが)展開している国は弱体化、不安定化している。アフリカだけでもそうした事例を多数見てきた」と語り、ブルキナファソ軍事政権に対し、ロシアと関係を強化することの危険性を警告した。 【10月5日 AFP】
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【アフリカへの取り組みが遅れているアメリカ】
ウクライナ侵攻のロシア非難などの国際世論を形成するうえで、アフリカやアジア・ラテンアメリカなどの「グローバルサウス」と呼ばれる国々の動向が重要であることが最近明らかになりつつありますが、アフリカへのアメリカのこれまでの取り組みはあまり積極的なものでもなく、バイデン政権の掲げる「民主主義国家vs.強権主義国家」という構図もあまり受け入れられていません。
****第3極的存在「グローバルサウス」へ日米はどう対応するべきか****
自由民主主義陣営・強権主義国家に入らない「グローバルサウス」の存在
飯田)WTOは世界のかなりの数の国々が加盟しています。そのなかで議論しようとすると、日本から見て当然、アメリカ側が有利な議論になるのではないかと思ってしまいます。アフリカなどには親中派も多いと言われますが、いかがですか?
小谷(明海大学教授で日本国際問題研究所主任研究員))「グローバルサウス」という言葉がよく使われるようになりましたが、近年はアメリカを中心とする自由民主主義陣営と、中露を中心とした強権主義国家に世界が二分されていると言われます。(中略)
実はそのどちらにも属していない、あるいは両方に属している国がおそらく100ヵ国以上あると思いますが、これらは「グローバルサウス」と呼ばれています。(中略)
かつて米ソ冷戦のときも、アジアやアフリカの多くの国が「第3極」と言われたわけですが、そのときに比べてグローバルサウスは影響力、さらには国力の面でも大きい。今回のロシアによるウクライナ侵攻でも、多くのグローバルサウスの国々が侵略自体には反対し、影響力を示しています。
グローバルサウスからの印象が悪いアメリカ 〜「民主主義サミット」に呼ばれた国と呼ばれなかった国
飯田)グローバルサウスを取り込もうとしたときに、アメリカは印象が悪いのですか?
小谷)アメリカの印象はよくありませんし、扱いが下手だと思います。バイデン大統領は、「いまの世の中は民主主義国家と強権主義国家に分かれている」と言ってしまったのです。(中略)
グローバルサウスからすれば、「では自分たちはどちらに見られているのか」と考える。2021年末にアメリカが「民主主義サミット」を開催しましたが、そこに呼ばれた国と呼ばれていない国で分かれてしまったわけです。東南アジアでも、呼ばれる国、呼ばれない国がありました。「世界を二分してしまっているのはアメリカではないか」という批判もあります。(中略)
バイデン政権はどうしても民主主義的な国を重視するやり方です。(中略)でもASEANはコンセンサスで決断していきますので、民主主義国家だけにテコ入れをしても、ASEAN全体は動かないわけです。(中略)
アフリカ各国に積極的にアプローチする中国の外交に負けているアメリカ
飯田)一方で、中国は習近平氏もそうですし、王毅国務委員兼外相などは積極的に訪問しています。ああいう姿勢が向こうでは評価されるのですか?
小谷)習近平国家主席や中国の外務大臣は、最初の外遊先がアフリカになっているのです。アフリカでの中国の影響力を高めるという戦略の下に進んでいますので、それに対してアメリカの外交は負けていると言わざるを得ません。(後略)【12月14日 ニッポン放送 NEWS ONLINE】
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【形勢の挽回つながるか・・・8年ぶりの米アフリカ首脳会議】
そうした「アフリカで中国に負けている」状況を改善しようとバイデン政権も動き出してはいます。13〜15日にワシントンでオバマ政権時以来の8年ぶりにアフリカとの首脳会議が開催されました。
****米がアフリカとの通商関係拡大で新協定、中国に対抗し影響力強化へ****
バイデン米大統領は14日、アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)諸国との通商関係拡大を目指す新たな協定を結んだと発表した。米国は外交政策でこれまでアフリカの優先順位が高くなかったが、中国に対抗する形でアフリカ諸国への影響力を強める狙いがある。
ワシントンでは13日からアフリカ諸国49カ国とアフリカ連合(AU)の代表を招いて2014年以来となる米・アフリカ首脳会議を開催中。バイデン氏は「米国はアフリカの未来と『全面的に一体』となっている」と強調した。
バイデン氏によると、今回の協定により米企業は人口13億人と市場規模3兆4000億ドルのアフリカ地域でより大きな事業機会が得られる。既にゼネラル・エレクトリック(GE)やシスコシステムズなどが商談をまとめているという。
同氏は「アフリカの成功は米国の成功になる」と訴えた。また同氏はこの会議中に、AUが20カ国・地域(G20)に加わることへの支持を表明する見通しだ。【12月15日 ロイター】
ワシントンでは13日からアフリカ諸国49カ国とアフリカ連合(AU)の代表を招いて2014年以来となる米・アフリカ首脳会議を開催中。バイデン氏は「米国はアフリカの未来と『全面的に一体』となっている」と強調した。
バイデン氏によると、今回の協定により米企業は人口13億人と市場規模3兆4000億ドルのアフリカ地域でより大きな事業機会が得られる。既にゼネラル・エレクトリック(GE)やシスコシステムズなどが商談をまとめているという。
同氏は「アフリカの成功は米国の成功になる」と訴えた。また同氏はこの会議中に、AUが20カ国・地域(G20)に加わることへの支持を表明する見通しだ。【12月15日 ロイター】
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****米アフリカ首脳会議、8年ぶり開催中露対抗、7兆円拠出****
バイデン米政権は13日、首都ワシントンで米国アフリカ首脳会議を3日間の日程で開く。オバマ政権時の2014年に第1回が開催されて以来8年ぶり。地域に足場を築く中国やロシアとの競争を念頭に関与を強化し、「21世紀のパートナー」として対アフリカ関係の再構築を目指す。(中略)
グローバルサウス(南半球を中心とする途上国)に入るアフリカの人口は現在の約14億人から2050年に倍増すると予測される。
サリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)12日、「アフリカは主要な地政学的プレーヤーであり、世界の将来を形作る」と述べ、アフリカ向け支援に今後3年間で計550億ドル(約7兆5千億円)を拠出すると明らかにした。
関与を強める狙いにはアフリカ大陸を舞台とした中露との競争が念頭にある。
中国は巨大経済圏構想「一帯一路」を通じ投資を拡大。米紙ニューヨーク・タイムズによると昨年の対アフリカ貿易額は過去最大の約2610億ドルだった。米国は約640億ドルと縮小傾向にある。
ロシアは最大のアフリカ向け武器供給国で、米シンクタンクのブルッキングス研究所によると、民間軍事会社「ワグナー」を通じて戦闘員をリビア、マリなどに派遣。見返りに鉱物資源を得ているという。
米政権は威圧的な中露と一線を画し、「最良な米国をみせる」(サリバン氏)と意気込む。サミットでは民間企業の参加も得てデジタル経済やクリーンエネルギー、宇宙産業などで投資機会を追求。ロシアのウクライナ侵略でアフリカが苦しむ食料危機も協議する。
米歴代政権では息子ブッシュ政権がテロ対策でアフリカ関与を拡大。オバマ氏は黒人初の米大統領として13年にタンザニアなどを訪問した。
アフリカ側は「米国第一」を掲げたトランプ前政権など、過去に政策が揺れ動いた経緯から、「われわれは中国とも米国とも利益を優先して付き合う」(アンゴラの外交筋)と様子見の姿勢もみせる。
国家安全保障戦略でアフリカを「今後10年の世界の課題解決に死活的な役割を果たす」と位置づけたバイデン政権の本気度が試される。【12月13日 産経】
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****米大統領が支持表明=アフリカ連合のG20参加****
バイデン米大統領は15日、ワシントンで開かれたアフリカ諸国との首脳会議で、アフリカ連合(AU)の20カ国・地域(G20)への正式参加を支持すると表明した。来年にアフリカを訪問する意向も示し、アフリカ諸国との関係を深めていく考えを強調した。
バイデン氏は会議で「地球規模の課題が協議される場に、アフリカもいるべきだ」と語った。バイデン氏は9月、国連総会の演説でアフリカ諸国からの安保理常任理事国選出を支持するとも表明。アフリカへの影響力を拡大する中国に対抗し、関係強化を図る。【12月16日 時事】
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****米、アフリカに25億ドルの食料支援表明*****
米政府は15日、深刻な食料危機に直面するアフリカに25億ドルの追加支援を行うと表明した。緊急人道支援に加え、中長期的に安定的な食料供給体制を構築する取り組みを支える。
バイデン米大統領はワシントンで3日間開催された米・アフリカ首脳会議の最終日に「われわれは世界的な食料危機に直面しており、アフリカ大陸が最も大きな痛手を受けている」と強調。「高い食料価格と高い貿易障壁が、アフリカ大陸の何百万人もの人々の命と生活に打撃を与えている」とした。
米国とアフリカ連合(AU)はまた、アフリカの食料安全保障確保の取り組みを加速させるための戦略的パートナーシップを発表し、いくつかの目標を示した。
短期的には穀物や肥料の安定的で多様な供給源の確保が課題となり、中長期的な目標としては、アフリカの世界市場へのアクセス改善を模索し、肥料の安定調達先や調達量を増やし、農産物の生産品目を多様化することを挙げた。【12月16日 ロイター】
バイデン米大統領はワシントンで3日間開催された米・アフリカ首脳会議の最終日に「われわれは世界的な食料危機に直面しており、アフリカ大陸が最も大きな痛手を受けている」と強調。「高い食料価格と高い貿易障壁が、アフリカ大陸の何百万人もの人々の命と生活に打撃を与えている」とした。
米国とアフリカ連合(AU)はまた、アフリカの食料安全保障確保の取り組みを加速させるための戦略的パートナーシップを発表し、いくつかの目標を示した。
短期的には穀物や肥料の安定的で多様な供給源の確保が課題となり、中長期的な目標としては、アフリカの世界市場へのアクセス改善を模索し、肥料の安定調達先や調達量を増やし、農産物の生産品目を多様化することを挙げた。【12月16日 ロイター】
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来年1月17~28日にイエレン財務長官がセネガル、ザンビア、南アフリカを訪問することも発表されています。
ただ、アメリカが継続的にアフリカに対する関心を維持できるかについてはやや疑問視する向きも。
ただ、アメリカが継続的にアフリカに対する関心を維持できるかについてはやや疑問視する向きも。
****アフリカの思いに応えられるか 米国に立ちはだかる壁****
米国で13〜15日に開かれたアフリカとの首脳会議で、バイデン米大統領はアフリカへの関与を再び強化する姿勢を示した。双方の首脳会議は8年ぶりで、先行してアフリカに浸透する中露の壁は厚い。米国がアフリカの信頼を取り戻せるかは今後の行動にかかっている。
エジプト政府によると、シーシー大統領は訪米中、バイデン氏の招きに謝意を表した上で、米国との関係が「アフリカの人々の負担を軽減し、よりよい将来を確保する」ことにつながるよう望むと述べた。
国内の反体制派を締め付け強権統治をするシーシー氏は1年前、米国で開かれた「民主主義サミット」には招かれなかった。当時、「民主主義を強化して権威主義を押し返す」と呼びかけたバイデン氏は今回、「(アフリカへの)関与を示すため、外交と投資を通じて着実に働く」と述べ、民主主義の色合いを薄めて「協働」を訴えた。
アフリカは紛争が絶えず汚職が蔓延(まんえん)し、強権政権も少なくない。中国やロシアは内政に干渉せず各国の政権に接近し、安価でインフラ建設や兵器供給をし影響力を広げている。後れを取り戻したい米国がアフリカへの姿勢を変えた形だ。
米国のアフリカへの態度は、時の政権によって大きな差がある。トランプ前大統領はアフリカ諸国を「野外便所のような汚い国」と呼び侮辱したとして、非難を浴びた。数百万人に上る黒人を奴隷にした歴史もあり、アフリカの人々は「米国に軽視され、見下されてきた」という不信感がぬぐえないのが実情だ。
シンクタンク、南アフリカ国際問題研究所(ヨハネスブルク)のグスタボ・デ・カルバーロ上級研究員は米FOXニュースに「もし米国の関心が単に中露に対抗することであれば、パートナーシップ作りに向けた能力や興味はいずれ衰えるだろう」と分析した。
米メディアによると、アフリカを巨大経済圏構想「一帯一路」の拠点と位置づける中国とアフリカの貿易高は昨年、過去最高の2610億ドル(約36兆円)で米アフリカの4倍の規模だ。
また、ロシアはアフリカ最大の兵器供給国で、露民間軍事会社ワグネルは軍事教練などを通じマリやブルキナファソなど旧フランス植民地を中心に侵食を図っているとされる。米国がアフリカを中露から引き離すには、支援を継続し誠意を見せることが不可欠だ。【12月17日 産経】
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