孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イギリス  二桁のインフレでストの連鎖 背景に人出不足も EU離脱も影響 日本でもサービス劣化

2022-12-17 23:24:29 | 欧州情勢
(【12月16日 TBS NEWS DIG】)

【英 10%を超える物価上昇 約30年ぶりのスト連鎖】
世界各国でインフレによる市民生活の困窮が深刻な問題となっていますが、イギリスでも二桁の物価上昇が続いています。

****英・消費者物価指数10%超 高水準続く 物価高受けスト相次ぐ****
イギリスの11月の消費者物価指数は前の年の同じ月と比べて10%を超える上昇となり、市場予測は下回ったものの、依然として記録的に高い水準が続いています。

イギリスの統計局が14日発表した11月の消費者物価指数は、前の年の同じ月と比べて10.7%の上昇となりました。伸び率は10月の11.1%を下回りましたが、依然として高い水準です。

「食料品や飲料」が16.4%、「ガスや電気などの住宅関連」が26.6%の上昇となった一方、ガソリンなどを含む「輸送」の上げ幅が縮小しました。

記録的な物価高を受け、イギリスでは賃上げを求めるストライキが相次いでいて、鉄道・郵便局の職員のほか看護師や救急隊員がストを予定。年末に利用客が増える空港の入国審査官もストを計画しています。【12月14日 TBS NEWS DIG】
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日本では(企業も値上げを我慢する一方で)国民は節約などで“我慢”するという話になるのでしょうが、海外では生活自衛のため戦うという姿勢がめだちます。

特に電気・ガス料金の高騰は生活を直撃しており、支払いボイコット運動も起きています。

****エネルギー価格の高騰続く英 ボイコット運動開始****
エネルギー価格の高騰が続くイギリスでは、光熱費の支払いをボイコットする運動が始まりました。

イギリスでは光熱費の支払いをボイコットするキャンペーン「Don’tPay」が1日から始まり、すでに25万人以上の賛同が集まっています。

インフレ率は10%を超え、家計への圧迫を理由に光熱費を滞納している人が少なくとも300万人いると言われています。

光熱費ボイコットに参加・ジョーさん(27):「エネルギー会社は利益のため私たちから搾取している。政府はそれに対し何もしていない」

光熱費が高騰するなか、エネルギー会社はロシアのウクライナ侵攻前より利益を上げているとされ、反発の声が上がっています。【12月2日 テレ朝news】
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もっと一般的な“生活のために戦う姿勢”は労働者のストライキ。
12月8日ブログ“物価上昇で相次ぐストライキ 英国では看護師が 米は政権が介入 韓国では労組対政権の全面対決”でも取り上げたように、日本では考えにくい看護師の大規模ストも。

****英国民保健サービスの看護師が初のスト、インフレ進行受け****
英国民保健サービス(NHS)の下で働く看護師らでつくる労組の「王立看護協会(RCN)」が15日、インフレが進行する中での待遇改善を求めて全国規模のストライキに突入した。

こうしたストは、結成から106年が経過したRCNの歴史で初めて。20日にストが予定されており、既にひっ迫している英国の医療体制に一層重圧が懸かる事態が懸念される。

NHS傘下の病院76カ所で推定10万人の看護師がストを行い、診察予約や手術など7万件の手続きが取り消される恐れがある。

RCNを率いるパット・カレン氏はBBCの取材に応じ「看護業務や患者たち、この社会とNHSにとって悲劇的な1日だ」と語った。ただRCNによると、家計のやりくりに苦しんでいる看護師のためにはストをするしかないという。

看護師側は、もう10年にわたって実質所得の目減りに見舞われ、低賃金のため常に人手も足りず、患者のケアが脅かされていると主張し、物価上昇率プラス5%の賃上げを要求している。

これは19%の賃上げ率に相当するが、政府は今のところ交渉を拒否。カレン氏は、このままでは来年にかけてストが拡大する局面が想定されると述べた。【12月16日 ロイター】
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スト参加看護師からは「賃貸住宅に住んでいますが、家賃が給料とほぼ同額です。それくらいひどいです」「看護師になろうという人がいないので、患者を危険にさらしています」との声が。

また、看護師のストライキに賛同の意思を示すため、クラクションを鳴らして車が通り過ぎていくということで、国民の理解も得られています。(そのあたりは12月8日ブログに記載)

ストライキは看護師だけでなく多くの職種に拡大しており、30年ぶりのスト連鎖とも。

****英国で約30年ぶりのスト連鎖 スナク政権に打撃****
記録的な物価高騰に見舞われている英国で、全国40万人以上の看護師を代表する労働組合「王立看護協会(RCN)」が15日、賃上げを求めて史上初となるストライキを実施する。公共医療に支障が生じ、全国で数万件の手術に遅れが出ると懸念される。

国内では年末に向けて救急隊員や鉄道・空港職員などのストが続き、過去約30年間で最大規模のストの連鎖となる見通し。医療や交通の混乱で、与党・保守党はさらなる支持率低迷を余儀なくされそうだ。(中略)

英国では、13日から鉄道のストが開始。年明けまで断続的に続く。ロンドンのヒースロー空港を含む国内複数の空港では23日からの計8日間、入国審査の担当者らがストを計画している。

英紙フィナンシャル・タイムズによると、広範囲で起きるストの影響で12月の労働損失日数はサッチャー政権時の1989年以来、最悪の水準となる100万日以上になるという。

こうした中、スナク政権は医療や交通の混乱を回避するため、軍による救急搬送や空港での入国審査手続きの準備を開始。スト中に交通網の最低限のサービスを確保する法案も英議会に提出した。

しかし、ストの影響をどこまで抑えられるかは不透明で、最大野党・労働党のスターマー党首は14日、「(政権は)リーダーシップを発揮するどころか、国民の健康をもてあそんでいる」と非難した。

英世論調査大手ユーガブによると、保守党の支持率は7日時点で24%と労働党(48%)に20ポイント以上も差をつけられた。保守党の元議員は「ストの連鎖で国民の生活を危機に陥れたら、保守党の支持率は一層下がる」と予測する。【12月15日 産経】
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【インフレをもたらす人出不足 ブレグジットやコロナ後遺症の影響も】
インフレの背景には、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格の高騰がありますが、それ以外に人出不足も。
特にイギリスの場合は、EUを離脱したことでEU域内からの労働力を従前のようにあてにできない問題があります。コロナ後遺症の問題も想像以上に大きいようです。

****英経済に人手不足の暗雲、コロナ後遺症やEU離脱で*****
英国は昨年末にコロナ禍前の経済規模を取り戻したが、重要な点がまだ回復していない。コロナ禍が始まった時点に比べ、労働人口が約40万人も減っているのだ。

この傾向は大半の先進諸国とは対照的で、40年ぶりの高さに達したインフレに拍車をかける恐れもある。
イングランド銀行(BOE、中央銀行)は、人手不足によって潜在成長率が圧迫され、賃金の上昇圧力がさらに強まることで、インフレ率を目標まで下げるのがさらに難しくなると懸念している。

人々が労働市場から脱落したのは、職不足が原因ではない。今年は求人件数が史上初めて求職者数を上回っており、失業率は1970年代以来で最低だ。

労働人口減少の原因は、長期にわたって病気を患う人や、早期退職者、全日制の大学や大学院で学ぶ若者が急増していることにある。このうち長期療養者の増加には、新型コロナウイルスの後遺症が影響している可能性がある。

BOEは、これらの要因のどれかが早期に好転するとは確信していない。加えて、欧州連合(EU)から離脱した英国はEU諸国からの労働者にも頼れなくなっているため、人手不足が原因でスタグフレーションに陥りかねない。

パンデミック以前の英国は労働参加率が高く、労働人口が着実に伸びていた。
就業者と求職中の人を合わせた数は、2019年第4・四半期に3420万人だった。だが、今年第1・四半期には3380万人に減っている。

経済協力開発機構(OECD)のデータによると、先進7カ国(G7)の中で、15―64歳の労働参加率が英国より大幅に下がったのはイタリアだけだ。

英国は、労働人口が減少し始めてからの期間も1990年代初頭以来で最長に達している。
ベイリーBOE総裁は今月の議会で、諸外国に比べてインフレが長引くと予想される理由について「(労働人口)減少のしつこさと規模に驚いている」と述べた。

<長期療養>
2019年第4・四半期から2022年第1・四半期の間に、長期の疾病を理由に労働市場から離脱した人は約23万3000人と、労働人口減少の約3分の2を占めた。早期退職者は4万9000人、全日制の学習を理由に挙げたのは5万5000人だった。(中略)

<原因はコロナ後遺症か>
長期間病気を患う人の増加が、どれほど直接的に新型コロナに起因するかを正確に示すのは難しい。
新型コロナの症状が1カ月以上続いている英国人の数は4月初めの時点で約180万人と報告されており、このうち34万6000人前後は日々の活動を「大きく制限」せざるを得ないほど症状が酷いと述べている。これは労働参加率低下の原因かもしれない。(中略)

この点について、他国と直接比較するためのデータは乏しい。しかし、英国よりも新型コロナの死亡率が13%低いスペインでは、2019年末から2022年初頭までに病気を理由に労働市場から離脱した人は4%の増加にとどまったのに対し、英国では12%増えている。

<ブレグジットが追い打ち>
英国は今、求人が増えており、今年第1・四半期には賃金が前年比7%上昇した。英国のEU離脱(ブレグジット)前であれば職に就く人が増え、必要に応じてEU諸国から労働者を呼び込んでいたところだろう。

しかし過去2年間で、英国で働くEU加盟国籍の人は21万1000人減った一方、非EUの労働者は18万2000人増えた。

そして今ではほぼすべての外国人労働者がビザを取得する必要があるため、海外からの雇用は困難さを増し、適切な職能を備えた人材を素早く採用して穴を埋めるのはハードルが高くなっている。

BOEは最新の経済見通しで労働参加率の予想を下方修正。今後数年間で労働参加率はさらに下がる一方、インフレによる景気減速で失業率が上昇するとの見通しを示した。さらには、働かなくなった理由として病気を挙げた人のほぼ全員が、もう就職は望んでいないとしている。【5月31日 ロイター】
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【“海外からの雇用で穴埋め” 問題は海外に波及】
“適切な職能を備えた人材を素早く採用して穴を埋めるのはハードルが高くなっている”とのことでしたが、コロナの問題も“とりあえず”は一段落し、手っ取り早く海外からの雇用で穴埋めする方針に踏み出したようです。

しかし、その結果、人出不足が海外に連鎖することにも。

****ジンバブエ、教師も国外流出か 英新方針受け****
英政府の新たな教員採用方針を受けて、ジンバブエは医師や看護師に続き教師までもが国外流出する可能性に直面している。

英政府は今月、養成場所を問わず、高い技能を有する教師の雇用機会を増やす方針を発表。2023年2月からはジンバブエ、ガーナ、ナイジェリア、南アフリカで教員免許を取得した教師を「有資格者」として認め、追加講習などを経ずに英国ですぐに授業を行えるようにした。

ジンバブエの教育制度はロバート・ムガベ旧政権の数少ない成果の一つで、アフリカでも最高レベルとされてきた。
主に失政によって経済が衰退しているにもかかわらず、高度な教育を受けた優秀な教師はまだ国内に大勢残っている。

だが他の公務員と同じく給料は低く、月給は最高でも5万ジンバブエ・ドル(約1万円)で、南アやルワンダなどに移住した教師もいる。

一方、ジンバブエの旧宗主国である英国の教育省によると、同国の有資格の教師の月給は2300ポンド(約38万円)以上とされるが、教師不足に悩まされている。

多数の教師が英国に流出すれば、既に不安定化している教育制度が立ち行かなくなると危惧する声も上がっている。

近年、ジンバブエから医師や看護師が国外流出している事態を阻止するため、政府は資格証明書の入手手続きを複雑化しているが、的外れな対策との批判もある。

野党のヘンリー・マゾレラ元保健相はAFPに対し、「頭脳流出を食い止めるため、政府は専門職の給料を上げるのを優先すべきだ」と述べた。

ジンバブエの保健監視機関が発表した最新の統計によると、11月までの1年間で4000人以上の医療従事者が公立機関を退職し、その多くが国外移住したとみられている。 【12月17日 AFP】
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【日本でも深刻な人出不足 日本の“売り”であったサービスが劣化】
人出不足はイギリスだけの問題ではありません。日本も・・・

****このレベルなら移住は見送りたい…中国人富裕層を幻滅させた「日本のサービス業」のすさまじい劣化ぶり****
■ひさしぶりの来日を楽しみにしていたのに…
今秋、私は約2年半ぶりに来日したという中国人男性と都内で会った。以前日本に住んでいたことがあるというその人は、(中略)実際に各地で出くわした日本のサービスはその人の期待を裏切るものばかりだったという。いったい何があったのか。

日本語も堪能なその中国人は、私に向かって開口一番、「日本のサービスの低下に幻滅した」と明かした。(中略)その中国人は再び東京に住むことを検討しており、ある日、某高級家具店を訪れたという。

「下見のつもりで訪れました。日本人担当者が1人つき、一緒に50万円以上のテーブルやソファなどの家具を見て歩きましたが、私は今日(購入を)決める予定ではない、ということを、あらかじめ伝えておきました。しばらく見て歩いたあと、気に入った家具がありましたが、部屋のサイズなどを正確に測ってこなかったし、やはり、今日はこのまま帰ると伝えました。すると、担当者は商品の10%の予約金を支払えば、一定期間、家具をキープできますよといい、予約を勧めました」

■中国人を驚かせた店員の一言
そこまでであれば、よくあることだろう。だが、その中国人が改めて丁寧に断ると、それまでにこやかだった担当者の表情は一変、自分が接客した時間を無駄にされたと思ったのか、ノルマが果たせなかったことを残念に思ったのか、今後、お得意さまになるかもしれないその中国人顧客に向かって、開き直ったような態度で、こう言ったという。 「私、あなたのボランティアじゃないから」

その言葉を聞いた瞬間、中国人はショックのあまり、わが耳を疑い、二の句が継げなくなった。「これは本当に私が知っている、あのすばらしい日本のサービス、日本のおもてなしなのだろうか?」と思い、しばらくの間呆然としてしまったという。

自分が何か悪いことでもしたのだろうか、と意気消沈したが、別の日、外資系の家具店にも行った。(中略)その家具店の日本人担当者の対応はまったく異なるものだった。(中略)

■どこに行っても高水準で安心できたのに…
「これはあくまでも私の個人的体験に過ぎませんが、他にも今回、都内のさまざまなお店に行ってみて感じたことは、以前よりも日本のサービスの質が落ちている、対応する店員の個人差が大きくなっている、ということでした。

これまで、私が知っている日本式サービスは、マニュアル教育が徹底されていて、どこに行っても均一で、どの人が対応しても同じくらい高水準で安心できる、すばらしいものでした。

それが日本の強みであり、日本おもてなしのクオリティー、質の高さだと思っていたのですが、それが少しずつ変わってきているのでは……と感じました。自分がたまたまいい店員に出会えば、いいサービスを受けられるけれど、運悪く、そうではない店員に会ってしまったら、嫌な気分にさせられます。

ホテルでも疑問に思うことがありました。私は都内のあるホテルに1カ月以上泊まっていたのですが、そのホテルにはフィリピン人、ロシア人、中国人などの外国人スタッフもいました。

日によって担当は交替しますが、私が感じたところでは、日本人スタッフより外国人スタッフのほうが、総じて愛想がよかったのです。これは1カ月住んでみての率直な感想です……」(中略)

■飲食業従事者は2年で19%減っている
(中略)だが、コロナ禍により、日本のサービス産業を取り巻く環境が大きく変化していることは確かだろう。総務省の労働力調査によると、宿泊・飲食の就業者数は2019年10月には約454万人だったが、2年後の2021年10月には約368万人と19%も減少。

今年10月、水際対策が緩和されたことなどによって、同11月末に発表された10月分では、宿泊・飲食ともに約390万人まで戻っているが、相変わらず人手不足であることは変わらない。(中略)人手不足が引き起こす問題として考えられるのは、サービスの低下だ。(後略)【12月16日 中島 恵氏 PRESIDENT Online】
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上記はあくまでも一例ですが、人出不足が日本のいろんな分野で問題化しているのは周知のところ。

また、“日本人スタッフより愛想がいい外国人スタッフ”も、いつまで日本が得られるかは疑問も。
昨今の円安でベトナム人技能実習生が日本から離れつつあるという事実がしばしば報じられています。

日本は「アジアの中で一番の先進国であり、門戸を少し緩めれば多くの外国人労働者が押し寄せる」というイメージをまだ持っているようですが、各国の人的資源争奪戦が激しくなるなかで、もはやそうした考えは幻想になりつつあるようにも。

そのあたりは、長くなるのでまた別機会に。

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