孤帆の遠影碧空に尽き

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ブラジル  敗北を認めない大統領 支持者は大量の攻撃的な銃を所有 進行するアマゾン消失

2022-12-18 22:36:23 | ラテンアメリカ
(ブラジルの首都ブラジリアで、抗議デモを行うボルソナロ大統領の支持者を見張る警察官(12日)【12月13日 読売】)

【正式には敗北を認めていないボルソナロ大統領 支持者に不穏な動きが続く】
10月30日に行われたブラジル大統領選の決選投票では、周知のように左派ルラ元大統領が現職の“ブラジルのトランプ”とも呼ばれるボルソナロ大統領に僅差で勝利しました。ルラ氏は来年1月1日に大統領に就任します。

選挙後、ボルソナロ大統領支持者による道路封鎖などの混乱も生じましたが、そうした混乱についてはボルソナロ大統領は「あなた方の怒りや悲しい気持ちは分かる。私も同じだ。しかし、頭を冷やさなければならない」と“一応”いさめる姿勢を見せてはいるものの、正式に敗北は認めておらず、そうした大統領の姿勢が支持者の行動を煽っているところもあります。

ボルソナロ大統領と陣営は、電子投票機の不具合を理由に選挙結果の無効を訴えています。「電子投票方式では不正が行われる」というのは選挙前からの同氏の主張です。

****ボルソナロ大統領ら、選挙結果無効を主張 投票機に「不具合」指摘****
南米ブラジルのボルソナロ大統領と陣営は22日、10月の大統領選を管轄した高等選挙裁判所(TSE)に対し、ルラ元大統領に敗れた選挙結果を無効にすることを求める異議申立書を送付した。電子投票機の6割近くに「不具合があった」と主張している。

異議申し立ては、ボルソナロ氏のほか、タッグを組んだ副大統領候補のネット元国防相、ボルソナロ氏の所属政党、自由党を含む3政党が行った。

ボルソナロ氏らは、決選投票(10月30日)で使用された2009〜15年製の電子投票機27万9336台について「個体識別において重大な欠陥があり、投票結果の信ぴょう性がない」と主張。有効とする20年製の残り19万2691台のみを集計すると「ボルソナロ氏の得票率は51・05%、ルラ氏は48・95%になる」としている。

TSEのモラレス長官は22日に発表した声明で、「不具合」が主張された電子投票機は1回目投票(10月2日)でも使用されたと指摘。3政党に対し、1回目投票の集計も含む完全な報告書を24時間以内に提出するよう求めた。

決選投票の確定結果は、左派のルラ氏の得票率が50・90%、右派のボルソナロ氏が49・10%だった。連続再選が可能になった1997年以降の大統領選で初めて、ボルソナロ氏は再選を阻まれた現職大統領となった。

ボルソナロ氏は大統領選前から、根拠を示さずに「現行の電子投票方式では不正が行われる」と繰り返し主張。今も正式に敗北を認めていない。

ルラ氏の所属政党、労働者党のホフマン党首は22日、ツイッターで、ボルソナロ氏らの異議申し立てについて「詭弁(きべん)に過ぎない」と一蹴。「悪意のある申し立てで、罰せられるべきだ」と投稿した。

大統領選を巡っては、結果に不服を訴えるボルソナロ氏の支持者が決選投票当日の30日以降、道路を封鎖するなどのデモを展開。数日後には軍施設前で「軍事介入」を求める動きも出た。今回の異議申し立てによって抗議活動が激化する可能性も指摘されている。【11月23日 毎日】
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高等選挙裁判所(TSE)は「今回の異議申し立ては一貫性がなく、民主主義国家への攻撃だ」とボルソナロ大統領らの訴えを退け、更に、こうした訴えは「悪意に満ちている」として罰金も課しています。

****ボルソナロ氏側の大統領選異議申し立て退け、罰金科す 裁判所****
南米ブラジルで10月に実施された大統領選を管轄する高等選挙裁判所(TSE)のモラエス長官は23日、決選投票で敗れた右派のボルソナロ大統領と陣営による投票結果への異議申し立てを退けた。

同時に、このような申し立ては「悪意に満ちている」として、ボルソナロ氏の所属政党、自由党を含む3党に2299万1544レアル(約5億9598万円)の罰金を科した。納付が完了するまで、政党資金の即時凍結も決定した。(後略)【11月24日 毎日】
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しかし、ボルソナロ大統領支持者の不穏な動きは続いています。

****ブラジル大統領の支持者、警察本部への突入試みる****
10月30日のブラジル大統領選で敗北を認めていないボルソナロ大統領の支持者が12日、首都ブラジリアの連邦警察本部への侵入を試みた。

ボルソナロ氏らの調査を主導してきた最高裁判事が同日、反民主的行為で同氏の支持者の身柄を一時拘束するよう命じたことがきっかけ。【12月13日 ロイター】
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【懸念されるボルソナロ大統領支持者が保有する大量の攻撃的な銃器】
今後の動きで懸念されることは、ボルソナロ大統領支持者が大量の銃器、それも軍事用の銃を所有していることです。

政権移行チームはこうした銃器の規制を強化したい考えですが、こうした攻撃的な銃の所有者の多くがボルソナロ大統領支持者であり、すでに大量に保有されているそうした銃を回収することは困難な様子です。

****銃規制強化に「暗雲」、暴力で抵抗するボルソナロ氏支持者****
ジャイル・ボルソナロ大統領の盟友として知られるベテラン政治家、ロベルト・ジェフェルソン氏は、自分を逮捕するために訪れた4人の連邦警察官に向かって、「自分はどこにも行かない」と言い放った。「逃げたまえ」とジェフェルソン氏は言った。「さもないと痛い目に遭う」

ジェフェルソン元連邦議員と、逮捕に向かった警察官らの証言によれば、同氏は警察官らに粗悪な音響閃光弾(スタングレネード)を3個投じ、警察の装甲車にスミス・アンド・ウェッソン製アサルトライフル(自動小銃)で5.56ミリ弾を50発以上浴びせた。破片で負傷した警察官2人が入院し、8時間にわたるにらみ合いの末、同氏はようやく投降した。

この派手な銃撃戦は、大統領再選を目指すボルソナロ氏が決選投票に敗れる1週間前、10月23日に発生した。対立候補の左派ルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ氏が直面する最も厄介な課題の1つが、この事件に象徴されている。

ルラ次期大統領は、銃器所持が広がる一方のブラジルを「非武装化」すると公約している。この国では、個人用の銃器が、ボルソナロ氏を支持する保守陣営のシンボルになっているのだ。

ルラ氏の政権移行チームに非公式に助言を行っているソウ・ダ・パス研究所のブルーノ・ランジーニ氏は、「ロベルト・ジェフェルソン事件からは、市民が殺傷力の高い銃を所持することの危険性が分かる。警察官だけでなく、社会全体が危険にさらされる」と語る。

ロイターは、来年1月1日に大統領に就任するルラ氏の政権移行チームに参加している、あるいは助言を行っている8人の関係者に取材し、銃規制の強化について話を聞いた。計画はまだ確定ではないが、銃規制の緩和に向けてボルソナロ氏が署名した多くの大統領令が銃保有の急増を招いたとして、これらを廃止したい考えだという。

調査会社ダッタフォリャが5月に実施した世論調査では、ブラジル国民の4分の3近くは、ボルソナロ政権による銃規制緩和に反対していた。

関係者らは、優先課題は、ジェフェルソン氏が使ったライフルのような一部の殺傷力の高い銃について一般市民による所持の禁止を復活させることだと話した。

また、銃砲所持許可の新規取得を難しくし、既存の許可の更新についても費用を引き上げ、手続きを複雑にする計画もある。さらに政権移行チームは、軍・連邦警察が運用している不透明なデータベースを合理化する方法も模索しているという。

ここまでは、そう難しい話ではない。

だが、シンクタンクのイガラペ研究所、前出のソウ・ダ・パス研究所によれば、ブラジルでは現在すでに民間所有の銃器が約190万丁も登録されている。ボルソナロ氏が大統領に当選した2018年には約69万5000丁にすぎなかった。

政権移行チームに参加する弁護士ガブリエル・サンパイオ氏は、こうして蓄積された膨大な銃器をできるだけ削減するには「困難が伴う」と語る。銃器の多くを保有するのは、ルラ氏を嫌悪し、その当選に異議を唱える、絶対的なボルソナロ支持者なのだ。

2003─2010年、つまり暴力犯罪対策として広範な銃規制法を成立させた前回のルラ政権時代に比べて、政治状況は一変した。当時は任意提出による買い取りスキームなどの措置により、約65万丁の銃器が流通過程から回収された。

ルラ氏の政権移行チームの関係者によれば、チームでは現在、強制的な買い取り制度により一般市民が保有するアサルトライフルを回収し治安部隊に配布することを検討しているという。

ソウ・ダ・パス研究所のランジーニ氏は、一般市民が合法的に保有するアサルトライフルは4万─7万丁と推定している。ランジーニ氏をはじめとするルラ氏のアドバイザーは、市場価格に見合った価格で強制的に買い取るとすれば、政府は1丁あたり1万5000─2万レアル(約39万─52万円)を拠出することになり、国内で最も危険な銃器の一部を回収できると話している。

ボルソナロ政権による銃規制緩和を受けて、70万人近いブラジル国民が「CAC」、つまり「狩猟、スポーツ射撃、収集」目的として登録し、銃器を確保している。CACライセンスの発行数は、2018年以来、約500%増加している。

だが、こうした銃保有者に対する監督は非常に弱い。ブラジル公共治安フォーラムによれば、銃所持許可が期限切れ又は無効となった銃保有者を軍の監査担当者が直接訪問した件数は、昨年は622件、銃器の押収は400丁以下にとどまった。国内の少なくとも10州では訪問調査をまったく行わなかったが、これら10州の住民は約8000万人を数える。

ジェフェルソン事件は、まさにそうした状況で発生した。

ジェフェルソン氏は「民主主義に敵対する行為」を計画した罪を問われてブラジルで最も著名な服役者の1人となり、その後自宅軟禁に移されたにもかかわらず、自宅でアサルトライフル1丁、タンフォリオ製9ミリ拳銃1丁、「大量の弾薬」、そして禁止対象である手りゅう弾を保有していたと自ら証言した。

またジェフェルソン氏は警察に対し、現在20─25丁の銃器を保有しており、一時は100丁も持っていたと述べた。軍によれば、ジェフェルソン氏は2005年以来CACライセンスを持っていたが、10月の銃撃事件の後、停止された。

ジェフェルソン氏の弁護士であるルイス・グスタボ・クニャ氏は、ジェフェルソン氏はそうした銃器を自宅に保有する法的な資格を有していると説明。「国民から武器を取り上げたいとする政治家は、彼ら(国民)を奴隷にしたがっているのだ、と依頼人は考えている」とクニャ弁護士は言う。

<あふれかえる銃>
ルラ新政権にとって、障害になるのは監督状況の弱さだけではない。

政権移行チーム関係者は、悪用の意図なく高価な他国製銃器を購入したCACライセンス所持者から訴訟を起こされる可能性を危惧している。

今年、ブラジルの拳銃輸入額は、11月までで、昨年通年の2倍近い7500万ドル(約103億円)相当と過去最高の水準に達した。

セキュリティー・アシスタンス・モニターがまとめた米国の公式統計によれば、ブラジルはボルソナロ政権下で、米国製民間用銃器の輸出市場として上位10位にランクインし、2018年には26位だった順位は今年9位にまで上昇した。米国からブラジルに向けた銃器輸出額は、4年前には320万ドルだったが、今年は10月末までで過去最高の1330万ドルに達している。

需要の高まりを背景に、銃保有に寛容な法制を支持する有権者の声も大きくなっている。

10月の選挙では、銃保有支持派の候補の新しい波が生じた。彼らは保守色を強める連邦議会で議席を確保し、米国式の銃所持に寛容な法制を推進しようとしている。

全米ライフル協会(NRA)を手本とするロビー団体「PROARMAS」のトップであるマルコス・ポロン氏は、連邦議員として初当選を果たし、活気ある銃器セクターを抑圧しようとするルラ氏の取り組みに抵抗すると述べている。

「政治的な復讐(ふくしゅう)心から一夜にして銃器産業を丸ごと破壊しようとするのは、独裁的な手法だ」とポロン氏は言う。「スポーツとしての射撃を楽しみ、合法的な自衛権を行使する人々の権利を保障するために、連邦議会が抵抗するものと信じている」

ボルソナロ氏は選挙前、選挙において想定される不正行為に備えた保険として武装するよう支持者に呼びかけた。同氏がまだ敗北を認めず、銃保有を政治的に利用していることが情勢の緊迫につながっている。同氏支持者のグループは軍基地周辺でキャンプを張り、選挙結果を覆すよう将兵らに求めている。

12日、ボルソナロ氏の支持者らが首都ブラジリアの連邦警察本部への侵入を試みて治安部隊と衝突し、車両に火を放った。最高裁判所が、「(ルラ氏の)当選認定を阻止するために武装勢力を集めた」とされる先住民指導者の逮捕状を出したことを受けた動きである。

選挙結果を覆すために銃を取ることを呼びかけるボルソナロ氏支持者は、この容疑者だけではない。

先月行われた抗議行動の映像の中で、ビジネスマンのミルトン・ボールディン氏は、CACライセンス所持者に対し、ルラ氏の当選認定に抗議するためブラジリアに集結せよと呼びかけた。「ここに来て姿を見せよう」と同氏は述べ、黄色と緑のブラジル国旗が「最終的に赤くなるとしても、それは私の血に染まるのだ」と続けた。

ボールディン氏は反民主主義的な言動の容疑で先週逮捕されたが、コメントを控えるとしている。

ロイターがすでに報じたように、合法的に所持されていた銃器が最終的にブラジルで最も暴力的な犯罪組織の手に渡る例は増えている。連邦警察関係者によれば、こうしたトレンドは加速する一方だという。(後略)【12月18日 ロイター】
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【ボルソナロ大統領のもとで進行したアマゾン熱帯雨林消失 政権末期に更に火災急増】
一方、アマゾン開発に積極的なボルソナロ大統領のもとで、金の違法採掘や大豆の畑や牧草地の開墾のためアマゾン熱帯雨林の破壊が進行しています。

****南米ブラジルのアマゾン熱帯雨林 東京都面積の5倍以上が消失****
南米ブラジルのアマゾンで、伐採などで失われた熱帯雨林の面積が、1年でおよそ1万1500平方キロ、東京都の広さの5倍以上にのぼったことがわかりました。

ブラジル国立宇宙研究所は30日、2021年8月から22年7月までの1年間で、アマゾン地域の熱帯雨林が推定1万1568平方キロ消失したと発表しました。

前の年よりも11%減少しましたが、東京都の広さの5倍以上に相当する面積が失われたことになります。消失の原因として、金の違法採掘や大豆の畑や牧草地の開墾のための伐採などが指摘されています。

ボルソナロ大統領が就任した19年から、1万平方キロを上回る消失が続いていて、アマゾンの開発に積極的な姿勢を見せてきたボルソナロ氏に批判が出ています。

アマゾンの環境破壊は、「引き返せるかどうかの転換点」に近づいているとされ、対策が求められています。【12月1日 TBS NEWS DIG】
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アマゾン保護に積極的なルラ氏への政権交代を前に“駆け込み”的とも思われる森林火災が急増しています。

****ブラジル火災面積、ボルソナロ政権末期に急増 11月は90%増****
ブラジルで火災被害に遭った地域の面積が11月に約8100平方キロと、前年同月比約90%増となった。NGOが14日、最新集計を公表した。

熱帯雨林アマゾンの破壊を追跡する共同プラットフォーム「マップバイオマス」によると、消失面積の80%以上がアマゾンに属している。マップバイオマスは、「環境破壊の加速がジャイル・ボルソナロ政権末期に集中したことがデータから読み取れる」と指摘した。

実際、鉱物の採掘や農地拡大を支持する右派のボルソナロ大統領が就任した2019年以降、火災や森林破壊が増加した。しかし、10月に行われた大統領選では左派のルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ元大統領が勝利。ルラ氏は「森林破壊ゼロを目指し闘う」と公約している。

マップバイオマスは、11月が雨期に当たることを考えれば、火災の急増は異例としている。 【12月15日 AFP】
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