孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ロシア  進む「批判封じ」 「密告文化」復活も 深刻化する軍とワグネルの不和

2023-05-01 22:59:36 | ロシア

(ドローンによるとみられる攻撃の後、立ち上る煙=クリミア半島セバストポリで2023年4月29日【5月1日 毎日】 ウクライナ反転攻勢の“のろし”となるのか?)

【強化される「批判封じ」】
ロシアは、ウクライナでの戦争遂行への異論・批判を封じ込める戦時体制化を急速に進めています。

****ロシア、国家反逆罪に終身刑 プーチン氏が法令に署名****
ロシアのプーチン大統領は28日、国家反逆罪に対する最高刑を終身刑とし、従来の懲役20年から引き上げる大統領令に署名した。ウクライナ全面侵攻開始後の政府に対する反対意見を抑圧する措置の一環と見られる。

大統領令は大統領府のウェブサイトに掲載された。終身刑への引き上げは議会ですでに承認されていた。

議会はこのほか、「人命を危険にさらし、ロシアの不安定化を目的とした行為」と定義される「テロ行為」に対する最高刑を懲役20年とし、現在の15年から引き上げることも承認した。

政府は、ウクライナや欧米の情報機関の侵入から国を守るためにこうした措置が必要との見解を表明。人権団体は、わずかながらに国内に残っている反対派の声を抑え込もうとしているとしていると懸念を示している。【4月29日 ロイター】
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ロシアは死刑の執行停止を続けており、終身刑は最高刑に当たります。

****ロシア、国家に脅威で市民権剥奪 - プーチン大統領が改正法署名****
ロシアのプーチン大統領は28日、ロシアの市民権取得手続きを簡略化する一方、国家の安全保障に脅威を与えたり領土の一体性を侵害したりした場合には取得した市民権を剥奪するとの改正法に署名した。署名から180日後に発効する。タス通信が伝えた。

ウクライナ侵攻で一方的に併合を宣言した東部4州などでの政権批判を封じる意図があるとみられる。

プーチン氏は28日、サンクトペテルブルクで開かれた議会関係者との会合で演説、併合した4州のロシアへの統合を法的側面から支援するよう要請。4州は「ロシアの歴史的土地であり、住民はわれわれの同胞だ」と述べて併合の既成事実化を進める考えを示した。【4月29日 共同】
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新たにロシア市民権(国籍)を取得した者が対象のように思われます。

“国家の安全保障に脅威を与えたり領土の一体性を侵害したりした場合”・・・例えば、併合東部4州を「ウクライナ領」と主張することも処罰される可能性があります。

また、発言の時期は問わないとしており、過去にさかのぼって適用される恐れもあるとも。
市民権剥奪に裁判所の同意は必要なく、ロシア連邦保安局(FSB)が決められるとしています。

プーチン大統領は、ウクライナ侵攻に関連して戦争犯罪容疑で3月にプーチン氏らに逮捕状を出した国際刑事裁判所(ICC)への対抗措置として、ICCなどロシアが参加していない国際機関との協力を禁じ、違反すれば最高で懲役5年を科す法改正にも署名しました。

人権団体への締め付けも進んでいます。

****国が「記憶の独占」強化、ロシア人権センター閉鎖へ****
(中略)ロシア国内有数の民主派や人権運動の拠点の一つとなっているサハロフセンターでは、退去期限が5月2日に迫る中、センターの閉鎖準備が進められている。国内の反体制派スパイを意味する「外国代理人」に指定され、モスクワ市当局から立ち退き命令を受けたためだ。

今できるのは、より良い時代が来る時のために本や資料を保存しておくことだと、サハロフセンターのヴィヤチェスラフ・バフミン代表は言う。 「そのような時代がいつ来るかは、分からない」とバフミンさんは続けた。

ノーベル平和賞を受賞したソ連の反体制科学者、アンドレイ・サハロフ氏にちなんで名付けられたこの施設は、同氏の活動内容のほか、旧ソ連指導者スターリンによる大粛清と強制収容に関する資料を展示。民主派活動家の情報交換の場にもなっていた。

センターのある建物はこれまで、当局から無償で貸し出されていた。だが当局はいま、12月に改正された「外国代理人」への支援を禁止する法律を順守しようとしているだけだと主張している。

「外国代理人」という分類は、冷戦期に「汚名」とされていたもので、官僚体制や監査の対象となる人々に負担を強いる仕組みとなっている。

センターの近くには、サハロフ氏がかつて住んでいたモスクワのアパートに設立されたサハロフ博物館と資料館もあった。だが、2カ月前、これらの施設も同様に閉館した。

ロシア国内の人権団体を巡っては、既に著名な「メモリアル」と「モスクワ・ヘルシンキ・グループ」が解散させられている。ロシア司法省は毎週金曜日、新たな団体をブラックリストに追加している。

ロシア当局は、ウクライナ侵攻を巡って西側諸国と存亡がかかった対立を抱えているさなかにもかかわらず、人権活動家は非愛国的で、敵対する外国政府と密接な関係にあると非難。

プーチン大統領は連邦保安局(FSB)に対し、「社会を分断し、弱体化させようとする違法な活動を特定し、阻止する」よう自ら指示した。

<「記憶は国のもの」>
(中略)「いまや記憶の占有が行われている。国家によって独占されているのだ」とバフミンさんは語る。「政府の占有や態度にそぐわないものは全て、敵意があり不必要だと見なされる」

ロシア政府がウクライナでの「特別軍事作戦」と呼ぶ侵攻に対し、同センターは反対を公然と表明している。昨年3月に公表した声明で、ロシア社会は「隣国で死や破壊、深刻な苦痛を引き起こす恐ろしい危機の渦」に身を任せ、飲み込まれることを容認してしまったと批判した。(中略)

ロシア政府は昨年2月、ウクライナに軍を派遣した直後に、大々的な「検閲法」を導入。軍の信用を落とす行為に対する禁錮刑の刑期を延長するなど、厳罰化を進めた。

サハロフセンターは12月、「外国代理人」に関する法律に違反したとして500万ルーブル(約816万円)の罰金を科された。

さらには1月、米国を拠点とするアンドレイ・サハロフ財団が「好ましくない団体」に指定された。これは「外国代理人」よりも重罪に問われる可能性のある分類だ。

サハロフセンターの活動は今後、オンライン上だけに制限され、所蔵されていた書籍や資料はモスクワ中のアパートに分散して保管されることになるだろうとバフミンさんは言う。

同組織は完全に閉鎖されたわけではない。だが、バフミンさんは取材時点で、ロシア司法省の「現場調査」が4月28日まで続くと話した。(後略)【4月30日 ロイター】
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【復活するスターリン時代の「密告」の文化】
そしてロシア社会では、旧ソ連・スターリン時代に見られた「密告」の「文化」が復活しているとも。

****ロシアで復活した「告発文化」、戦争批判に厳罰の法制定 子供が描いた「反戦画」で父が逮捕された***
旧ソ連・スターリン時代には、体制に反する言動を示した者を職場の同僚や友人らが秘密警察に告発、告発された者は逮捕され、多くの人が銃殺や強制収容所への収監などの弾圧に遭った。

家族や親に対する密告すら奨励され、親を告発した子供が「社会の模範」として称賛された。そうした「文化」が現在のロシアによみがえりつつある。

プーチン政権はウクライナ侵攻後、すぐに軍や侵攻を批判する市民を厳罰に処する法律を制定したが、ウクライナでの戦争に反対する発言をしたりネットに書き込んだりした人を、職場の同僚や友人、家族らが、この法律に違反したと告発。告発された者が厳しい処罰の対象となるケースが相次いでいる。

▽子どもの絵、教師が警察に告発
ロシア西部トゥーラ州の女児マーシャ・モスカリョワさんが学校で反戦の絵を描き、父親が禁錮2年の実刑判決を受けたケースは、ロシア社会に波紋を広げた。

ロシアの人権監視団体OVD―infoや主要メディアによると、昨年4月、当時12歳だったマーシャさんは学校の美術の授業で、教師からロシアの「特別軍事作戦」を支援する絵を描くよう課題を与えられたところ、女性と子供に向かってミサイルが飛来する場面を描き「戦争反対」「ウクライナに栄光あれ」と書き添えた。

教師は他の教師とも相談し、マーシャさんの行為を警察に告発。マーシャさんは児童保護施設に収容され、保護者である父親のアレクセイさん(54)は取り調べの中で、過去にSNSで戦争を批判する書き込みをしていたことが判明。

さらに娘の絵についても「何の問題もない」と主張したことから訴追され自宅軟禁となり3月27日の公判には出席したものの、その後逃走。28日の判決公判で被告人不在のまま禁錮2年の実刑判決が言い渡された。(中略)

事件は12歳の子供でも、戦争批判の言動が問題視され施設に収容されたこと、妻と離別し一人で娘を育てていた父親も取り調べを受け有罪判決を受けたことなどから、戦争批判に対する当局の極めて厳しい姿勢を印象づけるものとなった。

▽教師の発言を生徒が録音して警察に通報
密告するのは隣人で、愛国心を理由に行動に移す人も多い。独立系メディア「メディアゾーナ」によると、ロシア中部ウファで侵攻直後、レギナ・イブラモギワさん(30)が自宅の窓に「戦争反対」と書いた小さな紙を2枚貼り付けた。

それを見た隣人の女性が警察に通報、自宅は捜索を受け、イブラモギワさんは初犯ということから2022年5月、1万5000ルーブル(約2万4000円)の罰金刑を言い渡された。イブラモギワさんには2歳の息子がいたが、隣人女性の告発の理由は「このような母親の元では、息子は立派な愛国者になれない」というものだった。

生徒が教師を告発したケースは大きな話題を呼んだ。ロシア中部ペンザで昨年3月、英語の女性教師イリナ・ゲンさん(55)が8年生の生徒2人に「ウクライナは主権国家で、独裁国家ロシアは、これを打倒しようとしている」と発言したところ、生徒の一人が発言の録音を持って警察に通報。ゲンさんは「軍への中傷」の罪で起訴され、執行猶予付きながら禁錮5年の判決を受けた。(中略)

心理学者のバレンチナ・リホシワ氏は独立系メディア「ノーバヤ・ガゼータ欧州」に対し、「密告は恐怖心から生まれる。メディアがスパイや破壊活動、テロについて連日報じる中で、市民は恐怖に駆られ、周りが皆敵であるという認識を持ちがちだ。日常の緊張から逃れようとするが、社会は国内の敵を探すことで答えを見いだす」と語った。【4月24日 47NEWS】
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【招集令状電子化 監視カメラで徴兵逃れ摘発 各地で進む「隠れ動員」】
戦争遂行への批判を封じ込める対策の一方で、ロシア当局は国民の戦争への「動員」を進めています。

****ロシア 招集令状電子化 専門家「市民パニック」 監視カメラも「動員へ最後の決め手」****
ロシアによるウクライナ侵攻が長引くなか、プーチン大統領は、軍への動員や徴兵の招集令状を電子化し、オンラインでの通知を可能とする改正法に署名しました。

政府のポータルサイトの個人アカウントに通知されるほか、州のウェブサイトに招集された人の名前が掲載されます。

オンライン通知の特徴について専門家は、次のように話します。

ロシア問題に詳しい筑波大学・中村逸郎名誉教授:「逃れることはできない。市民は受領したものというふうに政府が一方的に判断するということなんです。『行きたくない』『逃れたい』という人でパニック状態になっている」

さらに中村教授によりますと、モスクワ市内などでは、招集令状を受け取っているはずの若者を探し出すため監視カメラを活用。当局に見つかり、連行される若者が増えているといいます。

中村名誉教授:「兵士不足で非常に戦況が悪いということで、窮地に立たされたプーチン大統領が兵士を集めていくんだと、動員するんだという最後の決め手を打ってきた」(「グッド!モーニング」2023年5月1日放送分より)【5月1日 テレ朝news】
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ロシア国防省は、昨年9月に自軍の戦死者を5937人と発表して以降更新していません。
しかし、英国防省は、ロシア側の死傷者が最大で20万人になると推測しています。

こうした状況でロシア軍は兵員の確保が急務となっており、ショイグ国防相は1月、兵士の定員を現状の115万人から150万人に増やす計画を発表。現役の職業軍人には、侵攻中の除隊を禁じています。

しかし、昨年9月に始めた30万人規模の部分的な動員は、若者の国外脱出など大きな社会的動揺を惹起しました。
ロシア当局は、そうした混乱を繰り返したくないため「追加動員」は発令していませんが、各自治体に職業軍人の採用ノルマを課し、報酬やキャリアの厚遇を強調して応募も促す「隠れ動員」の動きが強まっています。

【ロシア側の混乱 ロシア軍とワグネルが銃撃戦? プリゴジン氏「独自撤退」発言も】
正規軍の不足を補ってきたのが民間軍事会社「ワグネル」ですが、その兵員の多くは受刑者。

「6カ月戦えばヒーローになれる」「犯罪歴を消せる。ちゃんとした仕事につける」といった甘言で釣り、ほとんど訓練もしないまま、十分な装備も与えず前線に投入、まともな指揮官もなく、ひたすら前進を強いられ、「全滅」というより「玉砕」という言葉がふさわしい死体の山を築いている。(後に控える精鋭部隊が攻撃してくるウクライナ兵の位置を確認するため、敢えて元受刑者たちに前進させているとも言われています)・・・・といった「実情」はしばしば報じられています。

戦況が思わしくなくなると、正規の軍とワグネルの間の不和もあからさまに。単にワグネル創設者プリゴジン氏のショイグ国防相・ロシア軍批判にとどまらず、現地では銃撃戦もおきているとか。

****ロシア軍とワグネルが銃撃戦、死者も──ウクライナ軍発表****
<ついに対立が頂点に。撃ち合いで双方から死者も出たという>

ロシア軍兵士と民間軍事会社ワグネルの傭兵の間で撃ち合いが起きたとみられると、ウクライナ軍当局が23日に明らかにした。原因は、ウクライナ侵攻でロシアが戦果を上げられない責任がどちらにあるかをめぐる対立だったという。

(中略)ウクライナ軍参謀本部の23日の発表によれば、ウクライナ侵攻でともに戦っているはずのロシア軍とワグネルの間の緊張が、ここへきて頂点に達している。

発表によれば「大した戦果を上げることができなかったロシア軍とワグネルは、敗北の責任を互いに転嫁しようとしている」という。「どちらも自軍の戦術ミスや被害の責任を相手に押しつけようとし、挙げ句の果てにルハンスク州の村で衝突が起きた」

対立は銃撃戦へとエスカレートし、双方で死者も出たという。事件が発生した正確な日時や死者数といった詳細は分かっていない。(後略)【4月24日 Newsweek】
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ワグネル創設者プリゴジン氏は以前から、軍がワグネルに十分な弾薬を供与していないと批判していましたが、ウクライナ軍の反転攻勢を直前に控えて、「戦線離脱」の発言も。

****ワグネル創設者プリゴジン氏「弾薬不足が解決されなければ前線から撤退」****
ロシアの民間軍事会社「ワグネル」を率いるプリゴジン氏はロシア軍が協力しなければ、ワグネルは前線を離脱すると述べました。また、ウクライナの反撃はロシアに破滅的な結果をもたらすと警告しました。

独立系メディア「重要な話」によりますと、プリゴジン氏は29日に公開されたインタビューで、ロシア軍からワグネルへの弾薬供給が滞っている問題を巡り、プリゴジン氏はショイグ国防相に最後通牒(つうちょう)を添えた手紙を書いたと明らかにしました。

28日までに問題が解決されない場合、ワグネルはウクライナ東部ドネツク州の要衝・バフムトを去るとしています。
また、「ワグネルは間もなく存在しなくなる」とも述べました。

プリゴジン氏はウクライナ軍の大規模な反撃は遅くとも5月15日までに開始されるとして、ロシアに壊滅的な結果をもたらすだろうと警告しています。

プリゴジン氏は14日に突如、特別軍事作戦の終了を発表することが理想的な選択肢だと主張しました。

プリゴジン氏の一連の発言の真意は分かっていませんが、ワグネルが前線から離脱すればロシア軍は苦境に追い込まれます。【4月30日 テレ朝news】
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“プリゴジン氏は数日前、前線に関する自身の発言を冗談だったとして撤回している。”【5月1日 Newsweek】とのことですが、「最高司令部の同意なしに前線からの」撤退を命じるのは「軍事的反乱以外の何物でもない」(元ロシア軍情報部門将校で、ウクライナ東部の親ロシア派武装勢力の司令官も務めたイーゴリ・ギルキン氏)といった批判も。【5月1日 Newsweekより】

とにかく、あまり“まとも”ではない様子。

以前から言われてきたウクライナ軍の反転攻勢は、ゼレンスキー大統領が4月30日「重要な戦いが間もなく始まる」と演説する状況にもなっていますが、「そんなにうまくいくのかね?」という疑問も前々から感じていました。

ただ、上記のようなロシア側の“まとも”ではない様子を見ると、案外劇的にうまくいくのかも・・・・。

ただ、あまりうまく行き過ぎ、クリミア奪還も・・・といった話にもなると、今度はプーチン大統領が何をするのか・・・という不安も出てきますが。
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