孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

日本とアフリカ  「グローバル・サウス」との連携強化を目指す首相歴訪 スーダン在留邦人60名ほど

2023-05-04 23:44:04 | アフリカ

(【4月30日 NHK】 岸田首相のアフリカ歴訪)

【「グローバル・サウス」諸国との連携強化を目指して・・・・】
岸田首相は“5月に広島市で開く先進7か国首脳会議(G7サミット)の議長として「グローバル・サウス」と呼ばれる新興国・途上国との連携強化を目指す”ということでアフリカ歴訪中です。

****岸田首相、就任後初のアフリカ訪問へ出発…4か国歴訪「広島サミットの充実につなげたい」****
岸田首相は29日、エジプト、ガーナ、ケニア、モザンビークのアフリカ4か国歴訪のため、政府専用機で羽田空港を出発した。中国やロシアがアフリカへの関与を強める中、5月に広島市で開く先進7か国首脳会議(G7サミット)の議長として「グローバル・サウス」と呼ばれる新興国・途上国との連携強化を目指す。

首相は出発前、記者団に「国際秩序の根幹が揺らぐ中、アフリカ主要国の首脳と連携を確認したい。広島サミットの議論の充実にもつなげたい」と意気込みを語った。昨年8月の「第8回アフリカ開発会議」(TICAD8)の際、新型コロナウイルス感染で訪問を断念したため、首相は就任後初のアフリカ訪問となる。

最初の訪問国エジプトは、中東・アフリカ地域の大国。ケニアとガーナは、東西アフリカの民主主義国で経済の拠点だ。天然資源が豊富なモザンビークでは、日本企業もアフリカ最大規模の液化天然ガス(LNG)プロジェクトに参加する。ガーナとモザンビークは、日本と共に国連安全保障理事会の非常任理事国を務める。
アフリカには冷戦時代、旧ソ連の軍事支援を受け、ロシアと関係が深い国も多く、ウクライナ情勢で中立的立場を取る国も多い。モザンビークは昨年3月、国連総会の対露非難決議を棄権した。ロシアはセルゲイ・ラブロフ外相が今年1月下旬と2月上旬、南アフリカなどアフリカ7か国を訪れ、関与強化の姿勢を示す。

中国も経済力を背景に、巨額のインフラ整備で各国に食い込む。昨年末に就任した 秦剛チンガン 外相は今年1月、初の外遊先にエジプトなどアフリカ5か国を選んだ。

首相は、食糧難やエネルギー価格の高騰など各国の課題に寄り添い、質の高いインフラ整備などを通じて連携強化を狙う。広島サミットでも議題となる「法の支配」や「国際秩序の維持・強化」への支持を訴え、中露をけん制したい考えだ。

キヤノングローバル戦略研究所の宮家邦彦研究主幹は「米露の対立に巻き込まれたくないと考えるアフリカ各国には地道な支援を丁寧に説明し、信頼関係を築く必要がある」と指摘する。
 
首相は、帰路にシンガポールに立ち寄り、5日に帰国する予定だ。【4月30日 読売】
*************************

ウクライナ問題などで日本や欧米とは一線画した姿勢を見せる「グローバルサウス」諸国への働きかけが主眼ですが、なかなか難しいところも。エジプトはこれまで同様、ロシア批判を避けています。

****「第三極」外交、難しさも 岸田首相、アフリカ歴訪前半終了****
岸田文雄首相は2日、アフリカ4カ国歴訪の前半日程を終えた。ウクライナに侵攻したロシアへの包囲網をグローバルサウスと呼ばれる「第三極」に広げることを目指し、エジプト、ガーナ両国とは「法の支配」に基づく国際秩序の維持を確認。ただ、エジプトからはロシア批判を引き出すことはできず、「第三極」外交の難しさがうかがえた。

「法の支配による国際秩序の大切さ、力による一方的な現状変更は世界のどこでも認めることができない。この点は一致できた」。首相は1日夜(日本時間2日午前)、ガーナ・アクラで記者団に、エジプト、ガーナ両国との首脳会談の成果をこう強調した。

グローバルサウスは「欧米」「中ロ」双方と一定の距離を置く。実利優先の傾向が強く、欧米や日本による対ロ制裁が広がりを欠く要因とも指摘される。このため、首相は今回の歴訪を通じ、普遍的価値を共有する国を増やし、ロシアや中国をけん制したい考えだ。

首脳会談で、「西アフリカの安定した民主主義国家」を自任するガーナのアクフォアド大統領は「大国が小国を踏みにじることが許される世の中があってはならない」と、ロシアを厳しく批判。ただ、エジプトのシシ大統領はロシア批判を避ける従来の姿勢を崩さなかった。

首相同行筋は「ロシアのウクライナ侵攻は受け入れられないが、各国はどこまでロシアを批判するか慎重に考えている」と語る。

エジプトは輸入する小麦の6割をロシアに依存している。首相は会談で、エジプトに打撃となっている小麦などの食料価格高騰に触れ、「(原因は)ロシアが作り出している。早い解決が必要だ」と述べ、欧米への協調を促した。

もっとも、現職首相の訪問はそれぞれ、エジプトは約8年ぶり、ガーナは約17年ぶり。日系企業進出の促進や保健医療分野での協力拡大など、2国間関係は進展した。(中略)

後半日程に向け、首相は1日、「G7サミットへの議論につなげる点を念頭に置き、法の支配に基づく、自由で開かれた国際秩序の重要性を強調し、率直な意見交換を行いたい」と記者団に述べた。【5月3日 時事】
*********************

ケニアでは3日、ルト大統領と会談し、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の実現に向けた協力の推進で一致しました。

また、中国の「債務のわな」を念頭に、「国際スタンダードを順守した透明で公正な開発金融の重要性を確認した」と強調し、東アフリカの主要な経済拠点であるケニアで、日本政府はモンバサ港のインフラ整備などに引き続き協力するとしています。

今日4日は、ロシアの影響力が強いアフリカ南部のモザンビーク。

****岸田首相 モザンビークに到着 首脳会談へ どんな国?*****
(中略)モザンビークが世界有数の天然ガスの埋蔵量を持つなど資源に恵まれていることから、エネルギー分野などへの投資の促進を含め経済関係の強化を確認したい考えです。

また、モザンビークは北朝鮮と国交があることも踏まえ、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮情勢をめぐっても意見が交わされる見通しです。

さらに、日本とともに国連安全保障理事会の非常任理事国を務めていることから安保理改革を含む国連の機能強化に向けて緊密な連携を確認したい考えです。

モザンビークってどんな国?
アフリカ南部のモザンビークは、人口およそ3200万で国土は日本のおよそ2倍の大きさです。1975年にポルトガルの植民地支配から独立したあとも15年余りにわたって内戦が続き、現在も国民の半数以上が国際的な貧困ラインを下回る生活を送っています。

その一方、天然資源が豊富で、北部の沖合ではアフリカ最大規模の天然ガス田の開発が進められています。この開発が軌道に乗れば、将来的には年率20%を超える急速な経済成長を遂げる可能性があると期待されています。日本企業も、この天然ガス開発事業に参加していて、採掘された天然ガスの一部は日本にも輸出される見通しとなっています。

また、インド洋に面し、地政学的にも重要な位置を占めていて、日本が提唱する「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けても重視されています。

日本との関係は?
日本政府は、2020年度にODA=政府開発援助で7000万ドル余りを拠出するなど、モザンビークへの支援に力を入れています。特に現地からのニーズが高い分野の1つが日本が豊富な知見を持っている災害復興です。(中略)

中国やロシアとの関係は?
インド洋に面し、地政学的にも重要な位置を占めるモザンビークには中国がインフラ建設などで影響力を強めているほか、ロシアも旧ソビエト時代からの友好関係を築いています。

このうち中国は2000年代初めから進出を加速させています。アメリカのジョンズホプキンス大学によりますと、2003年に200万ドル余りだった中国の直接投資の額は、2021年には12億ドル余りと500倍以上に膨れ上がっているということです。

また、首都マプトに湾をまたぐ巨大な橋や国立競技場のスタジアム、それに政府の庁舎などを次々と建設し、存在感を際立たせています。

一方、古くからの友好国のロシアの影もちらつきます。モザンビークでは近年、イスラム過激派が活動を活発化させ、テロや襲撃を繰り返しています。治安の悪化を受けて日本企業が参加する北部の大規模な天然ガスの開発事業は中断され、経済にも大きな打撃となっています。

現在は、南アフリカやルワンダなどの周辺国が部隊を派遣して過激派対策を進めていますが、2019年ごろにはロシアの民間軍事会社「ワグネル」が過激派の掃討に協力していたと指摘されています。

モザンビークの現政権は、ポルトガルからの独立戦争やその後の内戦で旧ソビエトの支援を受けてきた歴史があり、現在でも友好関係を維持しています。

ロシアのウクライナ侵攻から1年となる、ことし2月に国連総会でロシアを非難する決議の採決が行われた際にも、モザンビークは「棄権」するなど、同様の決議をいずれも棄権していてロシアに一定の配慮をしているとみられます。(中略)

日本ができることは?
モザンビークでは、首都マプトある南部に比べて北部の発展が遅れているのが大きな課題になっていて、貧困や格差の広がりが過激派組織の浸透を許す背景にもなっていると指摘されています。

このため日本政府は北部の都市ナカラで、物流の拠点となる港の施設の大規模な改修工事を行っていて、ことし中にも完成する予定です。日本政府は、このナカラ港を起点に幹線道路や電力インフラなどを整備し、北部と周辺の内陸国にまたがる物流のネットワークをつくるプロジェクトを進めていて、北部の経済発展を後押ししたい考えです。

モザンビークの日本大使館の木村元大使は「モザンビークは天然ガス開発が進めば経済が急成長する極めて高い潜在能力を持っています。中国の存在が圧倒的になってはいますが、日本としては現地のニーズに重点を置いた協力を進めていきたい」と話していました。【5月4日 NHK】
*********************

【アフリカ重視の動きを見せる米中ロ】
“日本としては現地のニーズに重点を置いた協力を進めていきたい”・・・結構なことですが、正直なところアフリカにおける日本の影の薄さはいなめません。

今後、間違いなく世界の人口におけるアフリカのウェイトは大きくなります。

“国連の「世界人口予測2022」によると、アフリカの2021年の総人口は14億人弱で、世界人口の約18%を占めています。これが2050年には、アフリカの総人口は24億人超となり、世界人口の4分の1をアフリカが占めると予測されています。さらに2100年には、世界人口の38%がアフリカで占めると予測されています。”【2022年8月3日 今村 蓉子氏 BE FORWARD】

例えば、西アフリカのナイジェリアの人口は、アメリカを抜いて2050年にはインド、中国に次ぐ世界3位の人口大国となっている見通しです。

こうした人口増加、更に技術革新の成果の導入によって経済規模は急速に拡大し、極めて需要な市場を形成することが見込まれています。

そのアフリカで影響力を急速に強めているのが中国ですが、遅まきながらアメリカも中国に対抗する動きを見せています。

****米アフリカ首脳会議、8年ぶり開催中露対抗、7兆円拠出****
バイデン米政権は(2022年12月)13日、首都ワシントンで米国アフリカ首脳会議を3日間の日程で開く。オバマ政権時の2014年に第1回が開催されて以来8年ぶり。地域に足場を築く中国やロシアとの競争を念頭に関与を強化し、「21世紀のパートナー」として対アフリカ関係の再構築を目指す。

49カ国の首脳と地域機構のアフリカ連合(AU)委員長を招待。バイデン大統領は、AUが20カ国・地域(G20)の常任メンバーになることへの支持を14日の演説で正式表明する。

グローバルサウス(南半球を中心とする途上国)に入るアフリカの人口は現在の約14億人から2050年に倍増すると予測される。

サリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)12日、「アフリカは主要な地政学的プレーヤーであり、世界の将来を形作る」と述べ、アフリカ向け支援に今後3年間で計550億ドル(約7兆5千億円)を拠出すると明らかにした。

関与を強める狙いにはアフリカ大陸を舞台とした中露との競争が念頭にある。
中国は巨大経済圏構想「一帯一路」を通じ投資を拡大。米紙ニューヨーク・タイムズによると昨年の対アフリカ貿易額は過去最大の約2610億ドルだった。米国は約640億ドルと縮小傾向にある。

ロシアは最大のアフリカ向け武器供給国で、米シンクタンクのブルッキングス研究所によると、民間軍事会社「ワグナー」を通じて戦闘員をリビア、マリなどに派遣。見返りに鉱物資源を得ているという。

米政権は威圧的な中露と一線を画し、「最良な米国をみせる」(サリバン氏)と意気込む。サミットでは民間企業の参加も得てデジタル経済やクリーンエネルギー、宇宙産業などで投資機会を追求。ロシアのウクライナ侵略でアフリカが苦しむ食料危機も協議する。

(中略)アフリカ側は「米国第一」を掲げたトランプ前政権など、過去に政策が揺れ動いた経緯から、「われわれは中国とも米国とも利益を優先して付き合う」(アンゴラの外交筋)と様子見の姿勢もみせる。国家安全保障戦略でアフリカを「今後10年の世界の課題解決に死活的な役割を果たす」と位置づけたバイデン政権の本気度が試される。【2022年12月13日 産経】
*********************

ただ、今後については“壁”の指摘も。

****アフリカの思いに応えられるか 米国に立ちはだかる壁****
(中略)アフリカは紛争が絶えず汚職が蔓延(まんえん)し、強権政権も少なくない。中国やロシアは内政に干渉せず各国の政権に接近し、安価でインフラ建設や兵器供給をし影響力を広げている。後れを取り戻したい米国がアフリカへの姿勢を変えた形だ。

米国のアフリカへの態度は、時の政権によって大きな差がある。トランプ前大統領はアフリカ諸国を「野外便所のような汚い国」と呼び侮辱したとして、非難を浴びた。数百万人に上る黒人を奴隷にした歴史もあり、アフリカの人々は「米国に軽視され、見下されてきた」という不信感がぬぐえないのが実情だ。

シンクタンク、南アフリカ国際問題研究所(ヨハネスブルク)のグスタボ・デ・カルバーロ上級研究員は米FOXニュースに「もし米国の関心が単に中露に対抗することであれば、パートナーシップ作りに向けた能力や興味はいずれ衰えるだろう」と分析した。(後略)【2022年12月17日 産経】
*********************

また、ロシアもワグネル派遣など軍事面を中心に、西アフリカなどで存在感を強めてきました。1月にはラブロフ露外相が南アフリカ、エスワティニ、アンゴラ、エリトリアを訪問、7月にアフリカ各国首脳を招いたサミットを予定しています。

そうした国際状況のなかで日本は・・・・

【スーダンの在留邦人が約60人・・・・主要国に比べて異様に少ないのでは? アフリカとの関係性の希薄さか】
今も戦火がやんでいないスーダンでの内戦について、ひとつ気になったのは、スーダンの在留邦人が60名ほどだったこと。(人数が少なかったこともあって、在留邦人の国外退避は完了しましたが)

アメリカはいち早く大使館職員約100名を退避させましたが、1万6000人のアメリカ人が残されており、その退避は非常に困難だと報じられていました。
“これまで退避に成功してきたのは数十人や数百人単位のグループ。スーダンに残った1万6000人のアメリカ人を救い出すのは至難の技だ”【4月25日 Newsweek】

私が気になったのは、国外退避の困難さや自力退避を求められている状況ではなく、「スーダンでアメリカ人が1万6000人も何をしていたのだろうか?」ということ。

中国は“スーダンには石油関係の国営企業の職員など約2000人の中国人が滞在しています”【4月24日 テレ朝news】とのことですが、政府と関係なくスーダンで働いている中国人はもっと多いのではないでしょうか。

アフリカと関係が深い欧州諸国も、フランスやドイツが数百人規模の国外退避を行っていましたので、数千人規模で在留しているのでしょう。

カナダですら“スーダン「停戦」順守されず、空港では激しい戦闘…カナダ人1590人以上取り残されたか”【4月24日 読売】 どうしてスーダンにカナダ人がそんなにいるのだろう・・・。

インドネシアも日本などよりはるかに多いようです。 “ 東南アジア各国もスーダンからの退避作戦に動く インドネシアは538人救出”【4月24日 TBS NEWS DIG】

もちろん、どんな目的で在留しているのかは、国によって大きく異なるでしょう。

在留邦人の国外退避が無事に完了したことは良いことですが、それにしても約60名しかスーダンにいないというのは、他国に比べて極めて少ないのでは?・・・と感じた次第。

このことは、日本とアフリカの関係の薄さを象徴しているようにも思えました。
単にODAなどで“日本としては現地のニーズに重点を置いた協力を進めていきたい”ということでは、今後経済・政治面で重要性を高めるアフリカで日本が存在感を発揮するのは難しいだろう・・・という印象。

官民問わず「安心・安全」を金科玉条とする日本はスーダンみたいな国ではビジネスなどできない、そんなリスクの大きい国でなく、日本国内で手堅くやっていればいい・・・ということのようにも思えますが、それであれば10年後、20年後の日本の姿も見えるような・・・。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする