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(18日、中国陝西省西安市で、歓迎式典に臨む習近平国家主席(左から5人目)と中央アジア5カ国の首脳ら【5月18日 時事】 いかにも中国らしいド派手な歓迎セレモニーだったようです)
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(習近平主席夫妻 唐の伝統的式典で中央アジアの首脳らを歓迎【5月19日 CRI】 ただ、唐の時代は突厥との抗争の時代であり、唐の最大版図は中央アジア諸国を呑み込む領域に達しています。そのあたりを中央アジア諸国側はどのように考えているのか・・・)
【G7 対中国では温度差も】
G7のメインテーマはウクライナ支援ですが、もうひとつは中国との関係。
ウクライナ支援では各国の立場に大きな差異はありませんが、中国との関係については対抗姿勢を強めるアメリカと経済関係を重視する欧州各国では温度差もあるようです。
****フランス「反中G7にするな」 立場各様、ウク支援は一致****
19日開幕の先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)を前に、参加国・機関が討議に向けた立場を表明した。
ロシアに侵略されるウクライナへの支援では一致しているが、対中政策を巡る温度差は否めない。3日間の議論で踏み込んだメッセージを打ち出せるかが問われる。
「岸田文雄首相と私は、インド太平洋地域の平和と安全を守る重要性で立場が一致している」
スナク英首相は17日の声明で、そう強調した。スナク政権は、台湾海峡危機も念頭に、軍事面でも日本と連携を強化する方針だ。
対中政策を巡っては、欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長が15日の記者会見で、「中国との経済関係は多角的なアプローチが必要だ。デカップリング(切り離し)ではなく、デリスキングだ」と説明した。
「デリスキング」は対中依存の「リスクを除去する」という意味で、米国がトランプ前政権以降、中国の経済孤立を図る「デカップリング」に傾いていった対中姿勢の修正といえる。
一方、ドイツのショルツ首相は今月上旬の演説で、「中国はパートナーであり競争相手だが、競合が強まった」と述べた。経済面で中国と関係が深いドイツだが、警戒をにじませた。
フランスのマクロン大統領は4月の訪中時、台湾問題を巡り、欧州は米中のいずれにも追随すべきでないとの立場を示して波紋が広がった。仏大統領府筋は15日、記者団に「米中の緊張が高まる中、ルールを明らかにし、国際的な協力ができるようにすべきだ」とし、中国との協力の余地を探る構えを示唆した。
さらに「われわれにとって、G7は反中G7ではない」とも指摘。「中国を協力の相手役として前向きなメッセージを送ることができる」と語り、G7が敵対的なトーンを打ち出すことにくぎを刺した。
ただ、G7はウクライナへの支援姿勢で足並みをそろえる。カナダのトルドー首相は、参加国を結びつけるのは「人権や民主主義、法の支配という価値だ」と強調。ロシアの侵略を厳しく非難する見通しだ。【5月18日 産経】
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こうした温度差もあるなかで、各国首脳は“中国の「経済的威圧」に対する懸念を共同声明に盛り込む方向で調整”しているとのこと。
****EU大統領、中国との「安定的・建設的」な協力関係呼びかけ****
欧州連合(EU)のミシェル大統領は19日、中国との「安定的かつ建設的」な協力を維持することがEUにとって利益になるとの見解を示した。主要7カ国(G7)首脳会議の開催地である広島市で記者団に述べた。
米当局者によると、G7首脳は中国の「経済的威圧」に対する懸念を共同声明に盛り込む方向で調整している。
ミシェル氏は「国際社会における役割と経済規模を考えると、中国は世界で特別な責任を負っており、国際的なルールに従わなければならない」とも述べた。
また、ロシアに対する影響力を行使してウクライナでの戦争を終わらせるよう中国に呼びかけた。【5月19日 ロイター】
米当局者によると、G7首脳は中国の「経済的威圧」に対する懸念を共同声明に盛り込む方向で調整している。
ミシェル氏は「国際社会における役割と経済規模を考えると、中国は世界で特別な責任を負っており、国際的なルールに従わなければならない」とも述べた。
また、ロシアに対する影響力を行使してウクライナでの戦争を終わらせるよう中国に呼びかけた。【5月19日 ロイター】
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【中国 「中国・中央アジアサミット」でアメリカ主導の国際秩序に対抗】
これに対し、中国は警戒を露わにしつつ、G7と同時期に中央アジア5カ国の首脳と「中国・中央アジアサミット」を開催し、アメリカ主導の国際秩序に対抗する姿勢を明らかにしています。
****中国がG7に警告、利益損ねれば「断固とした対抗措置」****
在英国の中国大使館は20日、主要7カ国(G7)に対し、中国の利益を損ねる言動には「断固とした対抗措置」を講じると表明した。大使館のウェブサイトに声明を掲載した。
G7広島サミットは同日、経済安全保障をテーマに議論し、「経済的威圧」への対処を進めていくとする首脳声明を発出した。【5月20日 ロイター】
G7広島サミットは同日、経済安全保障をテーマに議論し、「経済的威圧」への対処を進めていくとする首脳声明を発出した。【5月20日 ロイター】
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****中国、国際秩序で米に対抗姿勢 中央アジアとの「サミット」で共同文書****
中国の習近平国家主席は19日、陝西(せんせい)省西安で中央アジア5カ国の首脳と「中国・中央アジアサミット」を開き、共同文書「西安宣言」に署名した。
同文書に「国際秩序やグローバル・ガバナンスを公正で合理的な方向に発展させる」と明記。G7広島サミットが19日から日本で開かれる中、国際秩序を巡り米国などに対抗姿勢を示した。
習氏は19日の演説で、中央アジア諸国との関係が「新しい時代に入る」と強調し、中央アジア5カ国との関係を誇示した。習氏は、アジアへの関与を拡大している米国の存在を念頭に、「外部勢力が地域国の内政に干渉することに断固反対する」と訴えた。
サミットには、中国のほか、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタンが参加した。6カ国首脳が対面で集まるのは初めて。会議では2年に1度の定期開催を決め、次回は2025年にカザフで開くこととなった。
中央アジアは、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」の主要ルートとなっている。習氏は、共同記者会見で、一帯一路が今年で10年の節目を迎えるとして、中央アジア諸国と産業・投資の協力拡大などを進める方針を表明した。
中国としては、中央アジアと連携を強化し、隣接する中国新疆(しんきょう)ウイグル自治区へのテロ流入を防ぐ狙いもある。習氏は演説で、旧ソ連諸国で相次いだ政変「カラー革命」や宗教過激主義などを共に防ぐよう呼び掛けた。(後略)【5月19日 産経】
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「西安宣言」には、「人権問題などの政治化に反対する」、「どのような統治様式を選択するかは、その国の権利であり、干渉の余地はない」といった西側の価値観とは一線を画した内容が盛り込まれています。
中央アジア諸国にしてみれば、中国がどれだけカネを出してくれるかが関心事でしょう。習近平主席は、新たに260億元、およそ5100億円の支援などを行うと明らかにしました。
【グローバルサウスを意識する中国・G7】
“中国は、欧米諸国とは距離をおく国々との連携を強化し外交で存在感を示すことで影響力を誇示したい考えです”【5月19日 日テレNEWS】
“欧米諸国とは距離をおく国々”・・・近年、グローバルサウスと称される国々をいかに取り込むかが、欧米側・G7にとっても重要課題となっています。今回G7でもそのあたりが強く意識されています。
ウクライナ支援など、欧米の「常識」がグローバルサウスでは必ずしも通用しないという現実が露わになっているためです。
しかし、現実は厳しいものがあるようにも。
****ロシア語が優先する中国主導の国際会議…「広島サミット知らない」希薄なG7の存在感****
(中略)
■広島G7サミットの開催を知らない記者たち
今回の「中国・中央アジアサミット」は、日本で開かれるG7の「広島サミット」とほぼ同じタイミングで開かれる点でも、注目されている。
今回の「中国・中央アジアサミット」は、日本で開かれるG7の「広島サミット」とほぼ同じタイミングで開かれる点でも、注目されている。
記者としてはもちろん、西安の「中国・中央アジアサミット」と、広島の「G7サミット」について、日本や中国以外の国の人たちが、どのように見ているのかは、当然気になるところだ。(中略)
しかし、(インタビューを申し込んだ会議を取材している記者たちから)そのようにして返ってきた答えは、面食らうものだった。多くの記者たちが、日本でサミットを開催していること自体を知らなかったのだ。
■したたかな中国の戦略 低下するG7の存在感
話を聞いたのはウズベキスタンの記者3人と、カザフスタンの記者1人、カメルーンの記者1人の、合計5人だ。
中国については、文化的な共通点は全くないものの、やはりその「経済力」に期待するという声が多かった。中央アジアの国々にとっては、これまで頼りにしてきたロシアが、ウクライナ侵攻によって国力が落ちてきているので、相対的に中国の重要性が高まっているのかもしれない。
また、アフリカも、地理的には全く離れているが、現地でインフラ建設などを積極的に行っている中国の存在感は高いものと思われる。
また、アフリカも、地理的には全く離れているが、現地でインフラ建設などを積極的に行っている中国の存在感は高いものと思われる。
さらに中国は、遠方の国の記者たちを呼び寄せ、自分たちの活動をアピールすることに長けている。今回の「中国・中央アジアサミット」でも、ウズベキスタンの記者を西安市内の観光名所に案内し、『中国文化』を熱心に宣伝していたのが印象的だった。
一方、それらの記者から聞かれた日本の印象は非常に薄く、5人中3人が、G7サミットが広島で開かれることさえ知らなかった。「『グローバルサウス』を重視する」と、岸田総理は国際会議のたびに強調するが、こちらのサミットでは、日本の存在感をそこまで強く、感じることはできなかった。
「国際社会では英語が通じるものだ」という私の常識が通じなかったように、「G7サミットの一挙手一投足に世界中が注目している」という考えも、もはや過去のものなのかもしれない。【5月19日 テレ朝news】
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【ウクライナ・ゼレンスキー大統領 G7・アラブ連盟首脳会議参加 支援の裾野を広げたい思惑】
グローバルサウス重視ということでは、G7にサプライズ対面参加したウクライナのゼレンスキー大統領も同じです。
G7参加の目的としては、「支援疲れ」が云々される欧米諸国の支援を確実にすることに加えて、必ずしもウクライナ支援が「常識」としては通用しないグローバル諸国への対応もあるようです。
****ゼレンスキー大統領が来日 G7広島サミット“対面参加”に強くこだわったワケ***
ウクライナのゼレンスキー大統領が20日午後、G7広島サミットに出席するため、広島に到着しました。ロシアから侵攻を受けて以降、初めてのアジア訪問となったゼレンスキー大統領。“戦時下の大統領”として、ウクライナから8000キロ以上離れた日本まで足を運ぶ狙いとは…。(中略)
◇
ゼレンスキー氏がG7広島サミットに参加することは、今年3月に岸田首相がウクライナを訪問した際に決まっていましたが、対面ではなく“オンライン”の予定でした。しかし外務省によると、その後、ゼレンスキー氏から「実際に出席したい」との強い希望があったということです。
■ゼレンスキー氏の狙い(1) G7との連携
ゼレンスキー氏は先週から今週にかけて、イタリア・ドイツ・フランス・イギリスとG7各国を相次いで訪問しました。G7の首脳が一堂に会する場で、支援の継続を訴えるとともに、“ウクライナ支援についてG7とウクライナが一枚岩であること”をアピールする狙いがあるとみられます。
■ゼレンスキー氏の狙い(2) グローバルサウス
今回のサミットにはG7のほかに、インドやブラジルなど、対ロシアで中立的な立場をとる国々が招待されています。インドの地元紙によると、ゼレンスキー氏はモディ首相と会談する予定があるといいます。
ウクライナ情勢に詳しい慶応義塾大学の廣瀬陽子教授は、インドなど「グローバルサウス」と呼ばれる新興国・途上国への説得も、ゼレンスキー氏の狙いの1つだと指摘します。
慶応義塾大学 廣瀬陽子教授
「『グローバルサウス』などの、かなりこの戦争で鍵を握る国と一度に会える機会があるかもしれないというのは、非常に大きなメリットだと思います。とりわけインドは、戦争開始以前と比べて22倍ものエネルギーをロシアから買っている。インドの存在が、ロシアの経済を支え、ひいては継戦能力を高めて いるということがあります。インドをウクライナ寄りにすることができれば、『ロシアの支援をやめてほしい』ということを訴えていく可能性は、極めて高いです」
■ゼレンスキー氏の狙い(3) 核の脅威
また廣瀬氏は、被爆地・広島でロシアの核の脅威に対抗する狙いもあると指摘します。
慶応義塾大学 廣瀬陽子教授
「ウクライナ戦争の中で度々、ロシア側は核のどう喝ということをやってきています。改めて核問題を広島で提起することによって、ロシアを国際的にけん制していくという狙いもあると思います」(後略)【5月20日 日テレNEWS】
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ゼレンスキー大統領は広島入りする直前に、シリアの復帰で注目されたアラブ連盟首脳会議にも出席していますが、その狙いも、アラブ諸国の支援取り付けにあるようです。
****来日予定のウクライナ・ゼレンスキー大統領、サウジアラビアに到着 アラブ連盟の首脳会議に出席へ****
G7広島サミットへの出席のため20日から来日する予定のウクライナのゼレンスキー大統領はアラブ連盟の首脳会議に出席するため、サウジアラビアに到着しました。
ゼレンスキー大統領はサウジアラビア西部のジッダで開催されるアラブ連盟の首脳会議に出席する予定です。
サウジアラビアはこれまでもロシアとウクライナの仲介を繰り返し申し出ていました。多くのアラブ諸国は欧米のロシアに対する経済制裁などに参加せず、ウクライナ侵攻について「中立」の立場をとっているところが多く、ゼレンスキー大統領としてはアラブ諸国の理解と支援を取りつける狙いがあるものとみられます。
ゼレンスキー大統領はサウジアラビア訪問後に日本に向かう予定です。【5月19日 日テレNEWS】
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軍事面では欧米諸国の支援が不可欠ですが、国際社会でウクライナの立場をアピールするためには、欧米支援だけでは足りない、支援の裾野を広げないと・・・ということでしょう。
就任当初は資質についてとやかく言われたゼレンスキー大統領ですが、堂々たる戦時大統領ぶりです。