孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ  再び銀行破綻 受け皿用意の整理破綻だが・・・ 再び債務上限で与野党チキンレース

2023-05-03 23:36:55 | アメリカ

(【5月2日 TBS NEWS DIG】)

【受け皿を用意した整理破綻ではあるものの・・・】
アメリカでは3月にシリコンバレー銀行とシグネチャー銀行が相次いで経営破綻。その不安からの預金流出で、今度はカリフォルニア州を地盤とするファースト・リパブリック・バンクが経営破綻しました。
アメリカ金融機関としては史上2番目、リーマンショックが起きた2008年以降では最大の経営破綻となります。

****米ファースト銀が破綻 史上2番目の規模、JPモルガンが買収****
米金融当局は1日、経営不振の米地銀ファースト・リパブリック銀行を公的管理下に置き、資産を米金融最大手JPモルガン・チェースに売却したと発表した。米国の銀行破綻としては史上2番目の規模となった。

カリフォルニア州サンフランシスコを地盤とするFRCは先週、第1四半期の決算発表で1000億ドル(約13兆円)以上の預金残高減少を公表し、株価が急落していた。

米地銀は3月にシリコンバレー銀行、シグネチャー銀行の破綻が相次ぎ、影響の波及が懸念されていた。

同州の規制当局は、FRCの破綻管財人として米連邦預金保険公社を指名。FDICの声明によると、FRCの全預金とほぼ全資産をJPモルガン・チェースが引き継ぐ。

FDICでは破綻処理による負担額をおよそ130億ドル(約1兆7800億円)と見積もっているが、FRCの支店84店舗は1日からJPモルガンの支店として通常営業を再開する。

3月の2行に続く今回のFRCの破綻が今後どのような影響を及ぼし得るか、関係者は注視している。 【5月1日 AFP】
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バイデン大統領は、「預金者は保護される」「規制当局の迅速な対処によって銀行システムの健全性は確保される」「納税者は責任を負わない」と語り、金融不安が更に拡大しないように務めています。

****米大統領「銀行システムの健全性は確保される」****
アメリカのバイデン大統領は1日、ファースト・リパブリック銀行の経営破綻について、規制当局の迅速な対処によって銀行システムの健全性は確保されると述べました。

バイデン大統領:「はっきりさせておきたいのは、預金者は保護されるが銀行の株主は投資を失うということだ。決定的なことは、納税者は責任を負わないということだ」

経営破綻したファースト・リパブリック銀行はFDIC=連邦預金保険公社の管理下に置かれ、大手銀行のJPモルガン・チェースがすべての資産や預金を買収することで合意しました。

バイデン大統領はファースト・リパブリック銀行の売却を促した規制当局の措置によって、すべての預金者が保護され、納税者の負担も回避できたと述べました。

そのうえで、今回の措置によって銀行システムの安全性と健全性が確保され、中小企業を保護することにもなると強調しました。

また、トランプ政権時代に緩和された銀行の規制を再び強化することの重要性も訴えました。
バイデン政権としては今回の経営破綻にともなう市場の混乱を最小限にとどめることで、金融不安の再燃を払拭したい考えです。【5月2日 テレ朝news】
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このまま金融不安が拡大してリーマンショックの再来・・・といった事態になれば、バイデン大統領の再選が吹き飛ぶだけでなく、日本を含めた世界経済は大混乱に陥る・・・という重大事ではありますが、今回のファースト・リパブリック銀行については、事前にJPモルガン・チェースという受け皿を用意して、混乱が拡大しないように準備した「整理破綻」だったということで、すぐに火の手が拡大するという事態は回避されているようです。

****米ファースト銀が経営破綻でも「米市場の動きが堅調」なのはなぜか****
全米14位のファースト・リパブリック・バンクが経営破綻
(中略)
飯田)2023年3月以降、2ヵ月間で3件目です。このニュースが昨日(5月1日)の昼過ぎに入ってきて、株が下がるかと思いましたが、それほど下がりませんでした。

一銀行の経営問題であり、金融システム全体が揺らぐことはない 〜株式は堅調な動きで混乱はない
経済アナリストのジョセフ・クラフト氏)最大のポイントは、この破綻が金融危機にはつながらないということです。実は4月28日の時点でFDICが公的管理下に置く準備を進めていると報じられましたが、その日はスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が0.8%、S&Pの銀行セクター指数が2.6%上がっているのです。

(中略)要するに流動性の問題であって、リーマンのときのように資産価値が大きく目減りするような状況ではありません。市場としてはファースト・リパブリック一(いち)銀行の経営問題であり、システム全体が揺らぐわけではないという反応で、昨日も株式は堅調な動きでした。

これからも何社か弱い銀行の破綻は予想されますが、それが金融システム全体を巻き込むような混乱には至らないということが、今回の最大のメッセージです。

事前にJPモルガン・チェースが買収する準備が進められていた
クラフト)もう1つ、シリコンバレーバンクのときは唐突に発表されて驚きがあり、当局の対応も早かったのですが混乱しました。しかし、今回は週末にJPモルガン・チェースがすばやく買収しました。(中略)

シリコンバレーバンクのときは買収に誰も手を挙げなかったのですが、今回はJPモルガン・チェースがすぐに手を挙げた。つまり、事前に準備されていたのだと思います。(中略)

ファースト・リパブリックは、4月から「いずれは」と当局も予想していたので、裏でJPモルガンと「いざというときには入ってくれ」と話していたのだと思います。今回は買収されて守られたという安心感もあったと思います。

ファースト・リパブリックは地銀のような存在 〜ここが破綻すると金融市場が揺れるので介入が入り、時間をかけて計画的に破綻へ
飯田)シリコンバレーバンクなど2銀行が破綻したとき、ファースト・リパブリック・バンクには銀行各社が預金し、既に資金の融通や支援が行われていましたからね。

クラフト)そうなのです。シリコンバレーとシグネチャーについてですが、シリコンバレーはデジタル、シグネチャーはビットコインなどの暗号資産に特化していた銀行であり、特別な銀行です。対してファースト・リパブリックは地銀のような存在です。(中略)

そこが急に破綻すると金融市場が揺らぐので、当初は介入が入り、徐々に時間をかけて今回の整理破綻になったのだと思います。(後略)【5月2日 ニッポン放送 NEWS ONLINE】
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ただ、混乱が拡大しないように準備した「整理破綻」だったとは言うものの、アメリカ経済(原因は政治ですが)はもう一つの不安要素を抱えています。そちらで混乱が拡大すると、金融不安も連動して・・・という事態もあり得ます。(5月2日のダウ平均株価は後述のように大きく下げています)

【再び連邦政府債務上限引き上げで政権・与党と野党のチキンレース】
その“もう一つの不安要素”というのは、連邦政府の債務上限をめぐる議会での与野党の駆け引きです。
「またか・・・」の感があるアメリカ恒例の問題ではありますが、予断を許さない状況とも。

債務上限引き上げが認められないと、早ければ6月1日にも連邦政府の資金は枯渇し、アメリカは債務不履行(デフォルト)に陥ることにもなります。(やり繰りによる多少のアローワンスはあるのでしょうが)

****アメリカ、6月1日にも資金枯渇と財務長官が警告 債務上限引き上げ求める****
アメリカのジャネット・イエレン財務長官は1日、連邦政府の債務上限を議会が引き上げるか一時凍結しない限り、6月1日までに財政資金が枯渇すると警告した。

債務が上限に達した場合、米政府は新たな借り入れができなくなる。
イエレン長官は連邦下院で、現在31兆4000億ドル(約4315兆円)となっている債務上限の解決に向け「早急に」行動すべきだと訴えた。

ジョー・バイデン大統領は、この件について9日に議会トップらを招集し協議する予定。(中略)

議会予算局(CBO)もこの日、「財務省が6月初旬」に資金不足に陥るリスクが大いに高まった」と警告した。
CBOは、「今後数週間の歳入の収入と支出について、そのタイミングと金額を予測することは困難なため、枯渇が予想される日は不確定だ」としている。

連邦債務の上限は1960年以降、78回にわたって引き上げや凍結、改定がされている。

デフォルトの危険性
アメリカが史上初のデフォルト(債務不履行)に陥った場合、世界の金融市場が混乱し、ビジネスパートナーとしてのアメリカの信用も崩れる可能性がある。

またアメリカ政府は、公務員や軍人の給与、社会保障給付、防衛関連の契約業者への支払いといった責務を果たすための資金を借りられなくなる。

さらに、天気予報にも影響が出る可能性がある。天気予報には、連邦政府が資金を提供している国立気象サービスのデータが利用されているためだ。(中略)

議会の反応
下院の共和党議員は、債務上限の引き上げに賛成する代わりに、大幅な歳出削減に加え、学生ローン救済プログラムやグリーンエネルギー税控除といったバイデン氏の一部政策を撤回するよう民主党側に求めている。

上院の民主党議員やバイデン氏はこれに反発している。バイデン氏は先週、この問題は「交渉できるものではない」と述べている。

一方でバイデン氏は、全米商工会議所などを含む企業団体から、共和党の案を検討するよう圧力をかけられている。

民主党のチャック・シューマー上院院内総務とハキーム・ジェフリース下院院内総務は1日に発表した共同声明で、「6月1日まで待って、デフォルトを回避するためのクリーンな法案を可決し、我々の経済と何百万もの家庭の破滅的な結果を防ぐという贅沢(ぜいたく)は、今のアメリカはできない」と述べた。

「共和党は、右翼の過激派に国家を人質にとらせてはいけない。議会は何世代もの間、年間予算のプロセスの一環として歳出入の決断を下してきたし、今もその最中だ。(中略)議会こそ、アメリカの財務状況を話し合うのにふさわしい場所だ。過激な『アメリカを再び偉大にしよう(MAGA)』派の共和党員が、アメリカで過激な施策を行おうとして人質を取っているような状況で協議してはいけない」

一方、共和党のケヴィン・マカーシー下院議長は、バイデン大統領が「職務を拒否」し、「アメリカが史上初のデフォルトに陥いると脅している」と非難した。

マカーシー氏は声明で、「時間は迫っている」と指摘。「バイデン政権が何カ月も動かなかった結果、議会が動いた。こうしている間にも、上院にはデフォルトのリスクを抑えるための法案がある。上院と大統領はすぐに仕事をするべきだ」と語った。

イエレン長官は今年1月にも下院宛ての書簡で、財務省が政府のデフォルトを防ぐための「特別措置」を始めたと述べていた。【5月2日 BBC】
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この連邦政府の債務上限がしばしば政治問題化するのは、アメリカの財政制度によるものですが、議会の“ねじれ”が問題を複雑化します。

****アメリカ債務上限バトル開始****
アメリカ議会で始まった債務上限の引き上げをめぐる攻防について、髙橋解説委員です。

(中略)
A1)アメリカでは、政府が国債を発行して借金できる上限が、あらかじめ法律で定められています。この天井を引き上げるためには議会の上下両院で承認が必要です。

いま下院は野党・共和党が多数派です。共和党のマッカーシー下院議長は、天井を引き上げる代わりに、大幅な歳出削減を義務づけ、いわば蛇口を絞って水位上昇を止める法案を取りまとめ、先週、僅差で可決に漕ぎつけました。

一方、上院は、与党・民主党が多数派です。バイデン大統領と民主党指導部は、天井を無条件で引き上げるよう求めて、歳出削減は拒絶。イエレン財務長官は、債務上限を引き上げなければ、資金不足でアメリカ国債は、デフォルト=債務不履行に陥るリスクがあると警告しています。

Q2)なぜ民主党は歳出削減に応じない?
A2)共和党が求める歳出規模では、来年の選挙を控えて、バイデン政権が進める気候変動対策や低所得層への支援策などを賄えないからです。「アメリカ国民と経済を人質にとるような交渉には応じられない」と言うのです。こうした攻防は、過去に何度もくり返されてきましたから、最終的に共和党側が折れるだろうという読みもあるようです。

ただ、今回は波乱要因も指摘されています。(中略)
下院共和党の保守強硬派「フリーダム・コーカス」です。歳出削減を強く求めて、妥協を拒み、マッカーシー下院議長の選出の際にも最後まで抵抗しました。

保守強硬派は、2011年、現在と同じ“ねじれ議会”のもとで自らの主張を押し通し、交渉が難航した末、アメリカ国債が史上初めて格下げされたこともありました。仮にそうなると、市場の混乱は避けられず、影響は世界に及びます。

銀行の相次ぐ経営破綻に加えて、攻防がいよいよ本格化してきた債務上限の引き上げ問題。再選をめざすバイデン大統領による経済の舵取りは、正念場を迎えます。【5月2日 NHK】
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攻防の舞台は上院。上院では与党民主党が多数派ですが、法案可決にはフィリバスター(議事妨害)を抑え込むため、クローチャー(討論終結)決議に必要な60票の賛成が必要となります。

****米債務上限巡り与野党の応酬継続、バイデン氏「交渉の意向なし」*****
米民主党のシューマー上院院内総務は2日、歳出削減を伴わない債務上限引き上げに向けた超党派による「クリーン」な法案を可決する必要があるという民主党の立場に「変更はない」と言明した。

シューマー氏は上院で、歳出削減を伴わない債務上限引き上げ法案を上院で採決する時期については明確にしなかったものの、「われわれの立場に変わりはない。両党は過去3回デフォルト(債務不履行)に直面した際と同様、6月1日の重要な期限を迎える前にデフォルト回避に向けクリーンな超党派案を共に通過させるべき」と語った。

上院は民主党が51対49で過半数議席を握っているものの、無条件での債務上限引き上げ案を通過させるには、共和党議員少なくとも9人の支持が必要。(中略)

上院共和党ナンバー2のスーン院内幹事は、下院が先週可決された今後10年間の大幅な歳出削減を伴う債務上限引き上げ法案をバイデン大統領は受け入れるべきとし、下院共和党が主導する同法案に対し「強い支持がある」と強調した。

ホワイトハウスのジャンピエール報道官は、来週予定されるマッカーシー下院議長ら議会指導部との会合で「バイデン大統領は債務上限引き上げを巡り交渉するつもりはない」と改めて強調。同時に共和党が望む「歳出を巡り別の対話をする意向がある」と述べた。また、前トランプ政権下では、債務上限が問題なく3回引き上げられたとも指摘した。

上院共和党トップのマコネル院内総務は、バイデン大統領は下院で可決された債務上限に関する共和党案を受け入れるか、交渉に臨むかを選択する必要があるという認識を示した。

シューマー氏は、来週のホワイトハウスでの会合を待ち、上院での今後の方針を決定すると述べた。【5月3日 ロイター】
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債務不履行となった場合、政権・与党と野党共和党のどちらに責任がより大きいと考えるかの世論の動向など見ながらのチキンレースとなりますが、次期大統領選挙も控えていることで互いに後に引けないレースになる危険も。

アメリカ政治のチキンレースに付き合わされる世界各国はいい迷惑ですが・・・。
市場も懸念しています。

****NYダウ 一時600ドル超の大幅な値下がり 銀行の経営悪化に懸念****
2日のニューヨーク株式市場は前日にアメリカの銀行が経営破綻したことを受けて、ほかの銀行の経営も悪化して景気が落ち込むことへの懸念から売り注文が膨らみ、ダウ平均株価は一時、600ドルを超える大幅な値下がりとなりました。(中略)

その後は値下がり幅が縮小し、終値は前日に比べて367ドル17セント安い、3万3684ドル53セントでした。(中略)

市場関係者は「アメリカの債務上限問題への懸念が広がっていることも株価下落につながっている。投資家の間では銀行の経営に一段と厳しい目が注がれていてさらなる破綻につながらないかが当面の焦点だ」と話しています。【5月3日 NHK】
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****原油先物5%安、5週ぶり安値 米連邦債務上限引き上げ巡る懸念で****
米国時間の原油先物は約5%下落し、5週ぶりの安値を付けた。米連邦債務上限の引き上げを巡り与野党の攻防が続いていることを嫌気した。(後略)【5月3日 ロイター】
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