孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

BRICS首脳会議 13か国が加盟する「パートナー国」の新設 「反米」については露中と印で温度差

2024-10-24 22:09:20 | 国際情勢

(23日、ロシア中部カザンで、BRICS首脳会議の写真撮影に臨む(手前左から)インドのモディ首相、プーチン露大統領、中国の習近平国家主席=AP【10月23日 読売】)

【20か国以上の首脳級が参加し、36か国が代表団を送る 背景に新興国・途上国のG7への不満】
ロシア・中国の欧米に対抗する国際的枠組みともなっているBRICSはブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの5カ国から、エジプト、アラブ首長国連邦(UAE)、エチオピア、イランを含むより広範なグループに拡大しており、トルコやサウジアラビアも新規加盟を検討しています。

そのBRICSの首脳会議がロシア中部カザンで開催されていますが、20か国以上の首脳級が参加していて、36か国が代表団を送っているとのことです。

****プーチン大統領の狙いは…ロシアで「BRICS」首脳会議 20か国以上の新興国の首脳級が参加****
ロシア中部で、20か国以上の新興国の首脳級が参加する「BRICS」首脳会議が開催されています。(中略)

ロシアは、自国における過去最大級の外交イベントだとアピールしています。欧米との対立を深めるプーチン大統領は、自国開催のBRICSを主導し、数多くの新興国との連携を見せつけたい狙いです。

プーチン氏は先ほど始まった首脳会議の冒頭、「BRICSは世界の安定にプラスの影響を与えている」とした上で、「世界の多数派の願望を満たすBRICSの権威と影響力が高まっている」と強調しました。

また、今回から9か国に増えた「BRICS」に、新たに30か国以上が参加を希望していると明らかにしました。

一連の首脳会議には、中国やインドなど20か国以上の首脳級が参加していて、36か国が代表団を送っています。プーチン氏は数多くの新興国を取り込み、欧米の制裁に対抗できる経済システムの構築を目指します。

一方で、参加国には欧米に近い国や経済的な利益を追求するだけの国もあり、プーチン氏が目指す反欧米陣営の結束強化につながるかは不透明です。

首脳らの共同宣言では、ウクライナ情勢についても盛り込まれる見通しで、BRICSとして、どのようなメッセージを打ち出すかも注目されます。【10月23日 日テレNEWS】
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多くの新興国がBRICSへの参加を希望している背景には、欧米主導の現在の国際的枠組み、欧米的価値観の“押しつけ”への不満があります。

****グローバルサウス、魅力に映るBRICS G7に不満、加盟の流れ****
(中略)
こうした国々が加盟を目指すのはなぜか。背景には、G7など欧米諸国が、第二次世界大戦後の国際政治を主導してきたことへの反発や不満がある。
 
例えば、開発資金などを融資する国際通貨基金(IMF)や世界銀行のあり方だ。欧米の影響力が強く、途上国側の目には「説教ばかりで、融資条件が厳しい」と映る。
 
そんな不満を熟知するBRICSは15年に「新開発銀行(NDB)」(本部・上海)を設立した。すでに新興・途上国向けに96プロジェクト、320億ドル(約4兆5000億円)を融資している。(中略)

先進国にとって「手ごわい存在」に
 ■遠藤乾・東京大教授(国際政治)
「グローバルサウス」(新興・途上国)は、急激な経済成長でそれぞれの国が力を付けつつある。そこに米国の指導力低下が重なり、相対的に存在感が高まった。

米中両国の対立が続く中、ロシアのウクライナ侵攻でこの動きが加速した。西側諸国も中露両国も「味方につけよう」と動くことで、重要性が増している。
 
一方、グローバルサウスの国々は「それなら言いたいことを言わせてもらう」と積極的に発言するようになった。いま、こうした二つのダイナミズムが重なり合って起きている。
 
拡大したBRICSは、対立する事項の討議は避け、合意が可能な案件だけを議論して結束力を示そうとするはずだ。一国だけでは達成が不可能な事項でも、グループが一致すれば力を持つ。その可能性が高まるほど、加入したい国は増える。先進国にとっては「手ごわい存在」になるだろう。【2023年5月31日 毎日】
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【プーチン大統領 「孤立しているのはロシアではない。西側だ」】
ロシア・プーチン大統領にとっては、「ロシアは孤立していない」と、更には多くの新興国やグローバルサウスはロシアとともにあり、「孤立しているのはむしろ欧米の方だ」とアピールする場となっています。

****「孤立しているのはロシアではない。西側だ」BRICS首脳会議で巻き返すプーチン大統領****
<ロシアでBRICS首脳会議が開かれ、プーチン大統領が中国、インドなど36カ国の首脳もてなした。西側諸国はBRICSを脅威と単純に見なすべきではない>

国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状が出ているロシアのウラジーミル・プーチン大統領は10月22日、3日間の日程でロシア南西部の都市カザンで始まったBRICS(新興国)首脳会議で中国、インド、イランを含む36カ国の首脳をもてなした。

プーチンは早速、中国の習近平国家主席と会談し「この75年間に露中関係は包括的パートナーシップと戦略的協力のレベルに達した。現代世界における国家間関係のあるべき姿のパラダイムになったと自信を持って断言できる。1~8月の二国間貿易は4.5%増加した」と胸を張った。 

習主席も「400年前、お茶を運ぶ両国間の道もこのカザンを通っていた。われわれは非同盟、非対立、不干渉という大原則の下、大国関係を構築する正しい道を歩んできた。両国はあらゆる分野における多面的な戦略的交流と実務協力を絶えず強化・拡大する」と応じた。 

■米国の経済制裁の威力を減じるのが狙い
プーチンはインドのナレンドラ・モディ首相とも会談し「ロシアとインドの関係は特別な特権的戦略的パートナーシップを特徴としており、発展を続けている。貿易も順調だ。大型プロジェクトも一貫して進展している」と歓迎した。 

モディ首相は「われわれはロシアとウクライナの紛争に関し定期的に連絡を取り合っている。問題は平和的手段によって解決されなければならない。一刻も早い平和と安定の確立を全面的に支持する。人道を優先し今後も可能な限りの支援を提供する」と釘を刺すのを忘れなかった。 

ドル取引を減らし、西側の経済制裁の威力を減じるのがサミットの狙いだ。国連のアントニオ・グテーレス事務総長は昨年と同様、サミットに出席、ウクライナや西側諸国を怒らせた。グテーレス事務総長は、ウクライナ侵攻は国連憲章違反とのお題目を繰り返すのが精一杯だった。(中略)

世界は今、ウクライナを軍事支援する西側50カ国以上と、ロシアを積極的に支援するベラルーシ、シリア、イラン、北朝鮮、中国。そしてインドや南アフリカ、ブラジル、トルコ、サウジアラビアなどの「第三勢力」に三分する。 

■BRICSの行方が世界の未来を決める
ケガのため今回のサミットを欠席したブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領は「誰に対しても敵対するものではない」とBRICSが反米ブロックになるのを防ぐよう努める。 

シンクタンク、カーネギー・ロシア・ユーラシア・センターのアレクサンダー・ガブエフ所長は米誌フォーリン・アフェアーズ(9月24日付)に「BRICSの将来が世界秩序を形作る」と題して寄稿している。 

BRICSは世界経済の35.6%、人口の45%を占め、G7(主要7カ国)のそれを上回る。西側が国際秩序を形作る力を失いつつある中、BRICSは西側以外の国が自律性を強化するための選択肢の一つになっている。 

BRICSの中では、米国主導の世界秩序に挑戦する中国やロシアと、既存秩序を民主化・改革したいブラジルやインドの間で大きな意見の違いがある。 

ロシアは経済制裁を避けるためBRICSを使ってドルに依存しない決済システムを構築しようとしている。これに対し、ブラジルとインドは西側との関係を断ち切ることなく、BRICSを利用して多極的な世界の中で中立的な立場を取ろうとしている。 

西側にとって重要なのはBRICSを脅威と単純に見なすのではなく、その背景にある不満を理解し、「第三勢力」取り込みのため、より柔軟な外交を展開することだとガブエフ所長は指摘している。【10月23日 木村正人氏 Newsweek】
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【中国 新興・途上国と連携して対抗軸を構築し、米欧主導の国際秩序の切り崩しを図る】
ただ、“米国主導の世界秩序に挑戦する中国やロシアと、既存秩序を民主化・改革したいブラジルやインドの間で大きな意見の違いがある。”というように、主導国間でも思惑が異なります。

ロシア同様に中国も、加盟国を拡大して、欧米への対抗軸を形成したいとの狙いがあります。

****BRICS首脳会議 共同宣言で「パートナー国」創設を支持 非欧米陣営の拡大狙う****
中国やロシアなど新興国でつくるBRICSの首脳会議は全体会合を行い、「パートナー国」の創設を支持することなどを盛り込んだ共同宣言を採択しました。

ロシア プーチン大統領 「BRICSはダイナミックに発展しており、国際情勢において、その権威と影響力が強まっている」
23日に行われた全体会合の冒頭で、プーチン大統領は世界でBRICSの存在感が増していると強調しました。

共同宣言には、ドルに代わる新たな国際決済システムの構築を目指すことや、BRICSの「パートナー国」創設を支持することなどが盛り込まれました。

「パートナー国」について、ロシア大統領府は13か国が認められる見通しだとしていて、トルコやインドネシア、タイ、マレーシアなどが取り沙汰されています。

24日にはアジアやアフリカの各国が参加する拡大会合が開かれる予定で、ロシアはグローバルサウスの取り込みを加速させたい構えです。【10月23日 TBS NEWS DIG】
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****中国、BRICS拡大に前のめり 米欧への対抗軸狙い****
(中略)米欧主導の国際秩序の切り崩しを図る習政権は、新興・途上国と連携して対抗軸を構築したい考えで、加盟国の拡大に前のめりだ。(中略)(拡大路線は)習氏と、国際的孤立を回避したいロシアのプーチン大統領の思惑が一致し、働き掛けを強めた結果だ。  

中国の官製メディアは「拡大したBRICSが世界の国内総生産(GDP)に占める割合は、購買力平価換算で先進7カ国(G7)を上回る」と強調。タイやトルコなど30カ国以上が新規加盟に関心を示しているとして、影響力の増大を誇示する。  

新興・途上国にとって、巨大な経済力を持つ中国とのつながりに加え、国際社会において新興国がより大きな発言権を持つべきだという習政権の主張は「魅力的に響く」(北京の外交筋)。  

一方で、加盟国や加盟検討国の立ち位置はまちまちだ。ブラジルは米中間のバランス外交を重視し、日米豪と「クアッド」を形成するインドは中国との間で国境紛争がくすぶる。

タイやいまだ正式には未加盟と報じられるサウジアラビアは米国と同盟関係にあり、BRICSが反米的色彩を強めれば距離を置く可能性がある。  

BRICS拡大を推進する習政権だが、加盟国が増えれば、統一的な方向性を打ち出すことが困難になるとのジレンマも抱えている。【10月23日 時事】 
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記事最後にあるように、参加国が拡大すればするほど、中国・ロシアが期待するような反米路線は薄められていくというジレンマがあります。

【インド 多極的なグローバル・ガバナンス・システムの構築を構想】
拡大路線、反米路線については主要国でもバラツキがあります。特に、中国と領土問題で対立し、アメリカとも一定の関係を持つインドの立場が注目されます。

****BRICSグループ化の将来の鍵を握るインド****
(中略)そもそもインドと中国は、この組織をどのように進めるべきかについて意見が一致していない、とアナリストらは言う。 

インドは多極的なグローバル・ガバナンス・システムの構築を構想しているのに対し、中国は米国とその同盟国・提携国に対抗するメカニズムを模索している。(中略)

国際金融協会(Institute of International Finance)の元専務理事で、国際通貨基金(IMF)元副総裁のトラン(Tran)氏は、「BRICSがインドのアプローチに従うなら、途上国間の協力を促進し、その上でG7に関与して、国際経済・金融システムの改革や気候変動の影響などの地球規模の問題に対処する方法を話し合うことができる」と書いている。(中略)

「これは、現在の国際経済・金融システムの改革を望んでいるが、明確に米中のどちらかの味方をすることを望んでいない多くの発展途上国にとっては、魅力的に映るだろう」とトラン氏は指摘する。

「中国が勝利すれば、BRICSグループは反米政治活動の場となり、おそらく多くの発展途上国に具体的な利益をもたらすことができなくなるだろう」

多くのアナリストは、BRICSが中国の傀儡組織となり、一帯一路構想やグローバル安全保障イニシアティブなど、中国の地政学的野心を推進し、最終的には多くの新興国を犠牲にして中国の利益を増進させるのではないかと懸念している。 

中国とロシアで権威主義が強まり、多くのBRICS諸国が権威主義的な支配を受けやすくなっていることも、グループの方向性に対する懸念を高めている。(中略)【5月16日 INDO PACIFIC DefenseForum】
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そのインドと中国が、懸案の国境問題で一定の合意にこぎつけ、5年ぶりに首脳会談も行われていますが、中国・インドの対抗関係は基本的には変わっていません。

****中印首脳5年ぶり会談、緊張緩和狙う 習氏「意思疎通と協力を強化」****
中国の習近平国家主席とインドのモディ首相は23日、主要新興国による「BRICS」首脳会議に合わせて露中部カザンで会談した。

習氏は冒頭で「双方は意思疎通と協力を強化し、相違点を適切に管理しなければならない」と関係改善を呼びかけた。両者の会談は2019年以来、5年ぶり。国境係争地での衝突による緊張を緩和したいとの思惑で双方が一致した形だ。
 
両国のメディアによると、習氏は「中印は発展途上国の団結の模範を示し、世界の多極化の推進に国際的な責任を負わなければならない」と指摘。モディ氏も中印関係の重要性を強調し「国境の平和と安定を維持することが我々の優先事項であるべきだ」と応じた。
 
近年、中印両軍はヒマラヤ山脈付近の国境係争地で小競り合いを繰り返し、20年6月には互いに死者が出るほど激しい衝突が起きてトップ外交が停滞していた。
 
ただ、互いに隣国との決定的な対立は望んでおらず、今回の会談に先立ちインド外務省は21日、中国との間で係争地でのパトロールに関する取り決めに合意したと発表するなど、双方が首脳会談のための環境整備を図っていた。
 
一方で、今回の会談が本格的な関係改善につながるかは不透明だ。国境紛争を巡っては過去にも緊張緩和で合意しながら摩擦が再燃してきた経緯がある。
 
南アジアを舞台とする両国の綱引きも激化しており、習指導部はインドと対立するパキスタンの後ろ盾となり、スリランカやモルディブなどとも連携を進める。

こうした動きを警戒するインドは、米印豪日(クア(*´∀人)ありがとうございます♪ッド)のメンバーに名を連ねて米国主導の対中包囲網に加わる動きを見せて中国をけん制している。【10月23日 毎日】
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ロシア・中国・インドなどの思惑が渦巻くBRICS首脳会談です。
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