「男の道具がなぁ」
突然の言葉に「うっ」となったが男の道具とは、やはり男の道具のことであった。
88歳になるおじさんが私に話す。
耳が遠いため必然的に声も大きい。
いくぶん小声で言っているようにも取れた。
寒くて男の道具が小さくなっているということを言うのだが話の内容は全く別のことであった。
今日はオムツをしているとのことだ。
男女兼用のオムツを買ってあって、それを最近試しているという。
オシッコの切れが悪くて終わった後にも染み出すことがある。
それをオムツは吸い取ってくれる。
その吸い取った水分を感じさせないので快適だ。
肌触りもよく、この季節はパンツよりも暖かいそうだ。
臭いも消してくれるから安心感もある。
老人にとっては、ありがたい物だという。
ただしお金がかかる。
そんな内緒でなくても、おおっぴらに言えないことを教えてくれた。
私がオムツの世話になるのは、もう少し先の話であろうと高を括っているが、もしそうなったとしても安心して利用できそうだ。
おじさんの結婚式当日の写真を見せてもらった。
おばさんは面影があり、すぐに分かったがおじさんは顔が変わってしまっている。
「これは、おばさんの前の夫ですか?」
と言うと、ひときわ大きな声で笑った。
私の生まれる数年前の写真だった。