家訓は「遊」

幸せの瞬間を見逃さない今昔事件簿

漁業の町でランチ

2013-10-16 08:30:28 | Weblog
漁業の町にある飲み屋。

そこに土日だけ開くランチがある。

11:30オープンだがノレンが出ていない。

店の中の電燈は点っている。

妻がのぞくと「やっているよ」と言う。

入ってカウンターについた。

「いつものこと。ノレンの出し忘れ。それでもお客さんは入ってくるよ。それもいつも通り」と店主は空き時間に笑いながらノレンを出した。

ランチ定食があるので、それを頼んだ。

魚のフライと生シラスと刺身の乗った皿が出てきたので食べ始めていたら煮魚も出た。

「そうだった。定食は煮魚だった」

皿に結構な量が乗っていたものだから、てっきりこれだけだと勘違いした。

「魚は取れた物を出すので決まっていない。コロコロ変わる」と笑う店主。

確かにメニューには煮魚としか書かれていない。

「ここはお酒を飲みながら食べたい」と思った。

バスと電車を乗り継いで弁天島駅に着いた。

弁天島の砂浜と舞阪のドックには多くの釣り客が秋晴れの陽を浴びて糸を垂らしている。

赤く塗られた小さな橋を渡ると、その店「てっちゃ」がある。

今日はノレンはおろか電燈もついていない。

それでも入れることは分かっている。

「生ビールと刺身盛り合わせ」をすぐさま頼んだ。

茹でたカニが見えたので、それを頼み後は定食を頼んだ。

男が入ってきた。

バケツを持っている。

カウンターの奥に入りバケツを置くと黙って出ていった。

今しがた漁から戻り売れない魚を持ってきたのだ。

バケツの中は、ほとんどシラス。

ただし、ほんの少し他の小魚も交じっている。

それで売り物にならないのだ。

「これね、かき揚げなら問題ないもんでね」と店主が手に取って見せてくれた。

漁師と呑み屋の良い関係が見られた気がする。

「こんな人たちが出入りしているなら古くなった魚なんて出すはずもない」と確信した。

「ご飯のおかわりは?」奥さんが私に聞く。

先日お変わりしたことを覚えていてくれたのだ。

今日は生ビールが腹にたっぷり入っているので、お断りした。