宮崎正弘の国際 ニュー ス・ 早読み 平成31年(2019年)3月16日(土曜日) 通巻第6019号
サウジ、パキスタンに続き、バングラデシュへ200億ドルを投資 中国とのバランス回復が主目的。イスラム圏の安定目指す
バングラデシュの主力産業は繊維、縫製加工、中国資本の工場がおよそ500社、100万人のミシン女工を雇用している。バングラデシュは世界最貧国の一つだが、出稼ぎ労働者による送金で外貨収入の30%近くを占める。
最大の援助国は日本である。しかしJICAの職員十名がダッカでテロリストに殺害されて以来、バングラへの派遣を尻込みする日本人若者が増え、次々と投資を拡大する中国とは対比的である。
バングラデシュからサウジアラビアへの出稼ぎは2017年ピーク時に280万人。ついでインド、フィリピンと続いたが、原油代金下落によるサウジの不況入りによって陸続と出稼ぎ組は帰国しはじめた。とくにフィリピンでは出稼ぎ組の帰国をドゥテルテ大統領自らが空港に出向き慰労した。
2016年10月、習近平はBRICS会議の帰路、バングラデシュを公式訪問し、1320メガワットの発電所建設に16億ドルなど、合計260億ドルのプロジェクトをぶち挙げて大歓迎された。そのなかにはチッタゴン港の近代化も含まれていたが、後者のプロジェクトはバングラデシュ政府が断ったという。
直前にインドはバングラデシュに対して20億ドルの信用供与を約束していたが、中国はいきなりインドの十倍以上の金額を提示し、ハシナ政権の度肝を抜いた。しかし例によってプロジェクトは遅々として進まず、大半は具体化せず、中国の誠意のなさに苛立って、サウジアラビアと水面下の交渉を続けてきたのだ。
カショギ事件のほとぼりも冷め、ハシナ首相は二月にリヤドを訪問し、サルマン国王と会見した。
100メガワットの太陽光発電への投資、チッタゴン近郊の工業特区建設とバイオ薬品の共同開発プロジェクトなどおよそ200億ドルの投資が決まった。
地政学的にはチッタゴンが最重要であり、インド洋を扼し、ベンガル湾航路の死活を制することが出来る。中国海軍にとってはマラッカからミャンマーの西海岸に港を建設し(チャウッピューが最有力候補)、ついでチッタゴン、スリランカのハンバントタはすでに海軍基地化が進み、モルディブからパキスタンのグアイダール、その先がてジブチに造成した中国軍初の海外基地へと繋げる。
▲バングラの頭痛のタネはロヒンギャ避難民だ
ミャンマーから逃げてバングラデシュに入ったロヒンギャはおよそ90万人、スーチー政権は国際的な非難に晒され、窮地に陥った。孤立したミャンマーの政治空白に入り込んだのは中国だった。
ところでロヒンギャ難民をかかえるバングラデシュは、国連や支援団体を通じて、いまのところ53万人を難民キャンプに収容している。不衛生で下水設備などあるはずがなく伝染病で死亡する犠牲が絶えず、急ごしらえの墓所もあちこちに出来た。
この事態に対処するためバングラデシュ政府は、新しいキャンプ兼職業訓練センターを建設し、雇用に活用する方針に切り替えた。そのためベンガル湾の無人島を開発し、ここに10万人の難民を収容して、工業団地とする。すでに造成工事は開始されている。
ジュネーブの国連、人権ウォッチ委員会は14日に人権状況の年次報告を発表し、ロヒンギャ問題を引き続き深刻な問題としたが、同時に中国新彊ウィグル自治区における100万人の強制収容所を人権侵害の典型として報告した。
https://www.state.gov/j/drl/rls/hrrpt/humanrightsreport/index.htm#wrapper
国連ジュネーブのキュリエ米大使は、イスラム諸国に対して「同胞が虐待されている現実を前に、なぜ中国非難に立ち上がらないのか」とし、最近、エルドアン大統領が中国の遣り方を「人類の恥」と非難したが、このトルコの路線変更を高く評価した。