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ふるさとの海

2006-08-18 10:56:58 | テレビ番組

真夜中、寝苦しくて、テレビをつけていた。化学なのだろうか、砂糖と食塩の実験で電解質と非電解質の説明をしていた。それが終わってチャンネルをまわすと、中国の田舎の景色が写った。西安という文字も出た。なんだろう。チャンネルを回さずに見ていた。

取材班の車は西安からさらに離れた村に行く。そこに一人の残留日本人女性がいた。名前は水崎秀子、77歳。中国が発行した彼女の身分証明書には日本人の記載がある。彼女は14歳のとき両親と中国にわたり、どういう事情で取り残されたのか、失念してしまったが、散々だまされ、辛い目にあって、30年前に今のご主人と結婚した。そのご主人がとってもいい人だった。彼女は白内障でほとんど目が見えない。日本語は忘れてしまったが、自分の名前と親の名前、福岡・今津浜に住んでいたことは覚えていた。もう一度、ふるさとの海を見たい、そこで帰国の申請をしていたが、身元が確認できないと申請はずっと却下されていた。取材班が彼女を追った。まず身元調べからだ。戸籍は死亡として抹殺されていたが、福岡には彼女を覚えている同級生達がいた。写真も残っていた。身元調べはそんなに大変なものではなかった。なのになぜ?

そこで厚生労働省へ行くと、ここでびっくりするような事実に直面した。「水崎秀子」という人物が中国の認定を受け、日本人として既に帰国していたのであった。だから、本人の申請が認められなかったのだ。

その偽の「水崎秀子」を追ううちに新たな事実が浮かび上がってきた。国籍ブローカーの暗躍であった。中国・福建省には不正をしてまで移住したがる人々が集まっている、それを斡旋して不法移住させるブローカーがいる。そのブローカーの一人、リンとい人物が自分の母親を水崎秀子に仕立て上げ、日本の国籍を取得して、移住させてしまったのだ。そのブローカーも東京に在住していた。水崎秀子さんのことが中国の新聞に取り上げられて、事細かな生い立ちが載ったことが、悪徳業者に利用される原因になったのである。

これに対して厚生労働省も法務省も、中国側が日本人だと決定したもので、法的には不備はなかった、と責任のなすりあいをしていた。

取材の影響もあって、厚生労働省ももう一度調査をし、本人にも会いに来た。そして念願の認定がされ、60余年ぶりにのふるさとの海を見ることとなった。夫が付き添って。一番したかったのは両親の墓参り。ふるさとの人々は温かく迎えてくれた。滞在中の世話をしてくれたのは、在留孤児の世話を続けている女性、彼女も引揚者で、一歩間違えば、残留孤児になりかねない経験をしてきた。だから運悪く取り残された弱い立場の人々の手助けをするのが彼女の役目だと思っている。自宅に泊め、国から支給される費用を、少しでも残留者のために使えるように全て無償でやっているとのことだった。彼女は盧溝橋に立ち、ここから始まった歴史と悲劇を語る。

短い滞在期間の間、ふるさとの同級生達がお金を出し合って、水崎秀子さんに白内障の手術を受けさせた。ほとんど見えなかった目が、視力は0.4まで回復した。これなら自分で歩けることが出来る。水崎さんは日本語の勉強を始めたそうだ。

麻生外務大臣の発言により、まだ350人以上の人々が中国やモンゴルに残留していることがわかった。地元で尽力してくれる現地の人々もいるが、なかなか埒があかない。日本政府の言い分はいつも「日本人と認めるには証拠不十分だ」というのである。戦後61年、まだまだ、戦争がもたらした悲劇は終わっていない。

一方ブローカーは両国の政府が認めたんだから、偽者ではない、と言い張る。しかし偽の水崎秀子の消息は分からない。偽の水崎秀子も、福建省のふるさとの海を見たがっているかもしれない。日本への移住を希望する人々がいる裏で、暗躍する請負人がいることはボートピープルの問題のときから知っていた。パスポートも国籍もお金で買えることも。しかし、その裏で本人が帰れない事情は知らなかった。その後、リンの息子が不法斡旋容疑で警視庁に逮捕されたが、リンは逮捕されてはいない。

                              

終わってから新聞を見た。この番組はTBS「ふるさとの海~残留日本人~水崎秀子にとっての祖国にっぽん」というタイトルだった。1:25~2:25まで一時間もの。再放映だったのだろうか、こんな時間に放映されるとは。

コメント
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